万能孤高ヤンデレ姫は年下宮廷魔術師の父性に溺れる! 〜姫に懐かれすぎて王からクビ宣告。王の命令で結婚を退職理由にしたら姫の目から光が消えた〜   作:ダイヤモンド鈴木

11 / 28
11話

 

 

 

「――――なんのつもり? カレン――」

 

 

 

 凍えるほどに冷たい声。

 

 背後を振り返った姫は、半身になってカレンさんの腕を掴んでる。

 

 ぎちり、と。強く握る音が聞こえてくるほどの静寂。

 

 でも、ほとんど間をおかずに。

 

「……さあ続け。この小生に――」

 

 一緒にここまでやってきた、残りの二人の影たち――彼らが事前に示し合わせた通りに、左右から姫に向かって駆けていく。

 

 カレンさんと僕が目立っている最中、二人には人だかりに紛れてもらってたんだ。さっきのカレンさんは惜しくも止められたけど、今度こそ。

 

 そんな、期待が……。

 

「――小癪」

 

 氷のように冷たく吐き捨てて。

 

 直後、姫の体から銀光が散る。

 

 そして――カレンさんの体が宙を舞った。

 

「ぅおぉう――小生、人間ハンマーの如く――」

 

 姫の片手一本で、体全体を振り回される。

 

 カレンさん、なんとも気の抜けるセリフだけど……。これ、めちゃくちゃ危ないよね。勢いついたカレンさんを武器にして、向かってくる二人へぶつけようとしてる。

 

 これ下手したらカレンさん、大怪我しちゃうから――間に合うかな、魔術……!

 

「【風】、突風(ガスト)――」

 

「! っもう……」

 

 迅速に、カレンさんたちを守る魔術を発動しようとした瞬間だった。僕をちらりと見た姫の口から、いたしかたないとばかりに吐息が漏れる。

 

 そして、姫の腕からすこし力が抜けるのを見た僕は、安心して仕掛かり中の魔術を散らし。

 

 その直後、姫は三人の影を瞬く間に――――一蹴。

 

 揃って地面に叩きつけられたカレンさんたちが苦悶の声を上げる。

 

「ぐぅ……ッ。ここまでやっても、ダメとは。さすがご主人……」

 

 ごろごろと転がったカレンさんは、姫を見上げながら惚れ惚れするように言葉をこぼした。

 

 感心してる場合じゃないんだけど……まあ、よかった。こてんぱんにされたとはいえ、姫が途中力を抜いてくれたおかげで、大きな怪我はしてないみたいだし。

 

 姫のあの銀の魔力、まとうだけですごい怪力になるからね。身体強化とは別のものみたいだけど、正直よく分からない。あれのせいで固有魔術を扱いきれないくらいのじゃじゃ馬だし……。

 

 と、まあ。それは置いておいて。

 

 ――奇襲、失敗しちゃった。正面から姫を止めなきゃいけなくなっちゃったね。

 

 初手で姫を倒しきれる場合は考えなくてよかったけど、これからは周りの邪魔もどうにかしなきゃ。対策考えてはいるけど……。

 

 でも、さっきの奇襲、やっぱり不可解だ。カレンさんたち、だいぶうまくやってくれたと思うんだけどな。

 

 なんでバレたんだろ? 僕が知らない魔術なり技術を使ったのかな?

 

 そう首を傾げていると。こっちをじっと見る姫が、ぽつりと呟く。

 

「――目、よ。アルベルトの」

 

「……目?」

 

 それはどういう……。

 

「……べつに、三人に狙われてることに気づいてたわけじゃないの。――――わたしはずっと、アルベルトのことしか見てないわ」

 

「僕を? ……もしかして。目って――」

 

「そう。わたしがずうっと見つめてたのは――アルベルトの、やさしい緑の瞳。そしたらアルベルト、わたしと話してるのに…………わたしのこと、見てくれてなかったから」

 

 そして、姫は昏い目で僕を見て言うのだ。

 

 「アルベルトの視線で気づいたの」と。

 

 ……うーん。まさか、奇襲失敗の原因が僕だったとは。確かに、意識はずっとカレンさんたちに向いてたから、無意識にそっちを見てたかも。

 

 でも、相手の視線から別の相手の動きを読むとか、そんな武術の達人みたいなこと……って思ったけど。そういえば、姫って万能の天才だったもんね……。

 

「ごめんカレンさん、みんな。僕の認識が甘かったみたい」

 

「うむ。小生らの動きは問題なかった。アルベルト氏の問題であるからして、あとはうまくやるように」

 

「手厳しい」

 

 地面を転がっていた彼女らは、いまや周囲の者たちに取り押さえられてる。

 

 そんな状況でよく軽口叩けるなあ……。でも、当然奇襲で片を付けられなかったときのことも考えてるし、ここからはその想定通りに僕が頑張るしかない。

 

 ということで。

 

 魔力を体外に漏らさないよう注意して励起しながら、ゆっくり姫のもとへ近づこうとしたその時だった。

 

 姫に視線を向けて気づく。

 

 姫、なんか怨念じみた暗い雰囲気をまとってる。その状態でずっと僕のこと見てるし。怒りともまた違うような気がするけど……。

 

 と……そんな疑問は、すぐに姫自身が回答してくれた。

 

 

 

「――わたしがいるのに。目の前で、ほかの女の面倒見ないで……」

 

 

 

 ……。なんだって?

 

 見てよカレンさんのあの目。表情自体はないけど……僕のこと消し去りたそうに睨んでる。

 

 しかも、いまここには僕たち以外にもたくさんの人がいる。カレンさんたち以外の影に、少数ながら騎士団や宮廷魔術師まで。

 

 そうなると当然いくつも向けられる驚きと猜疑の視線。べつに僕はなに思われたっていいけど、姫には立場があるのに。

 

 だったらもう、これ以上状況が悪くなる前に。……仕方ないなあ――姫は。

 

「――それなら、構えてください。魔力も切らさないで。そんなに自分以外見てほしくないっていうなら――――もういっそ、二人っきりで踊りましょうか」

 

 そう言って、にこりと微笑みかけると。

 

 姫はその頬を赤く染め、困ったように僕を見る。

 

 しかし、そんなかわいらしい様子とは裏腹に。

 

 ――その全身からは、膨大な魔力の渦が立ち昇っていた。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。