万能孤高ヤンデレ姫は年下宮廷魔術師の父性に溺れる! 〜姫に懐かれすぎて王からクビ宣告。王の命令で結婚を退職理由にしたら姫の目から光が消えた〜   作:ダイヤモンド鈴木

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2話

 

「――いやあ、すみませんね。王都を離れてこんなに遠くまで。魔術師のみなさんは基本に王都を出ないと思いますが、我々の活動範囲は王国全土なもので」

 

 迎えの騎士の言葉を聞きながら、家々が立ち並ぶ間を進んでいく。目的地は村長の家らしい。

 

「本当なら我々だけで解決したかったんですが。……どうも、敵に手練れの魔術がいるみたいで。魔術に万全の対策を持つ騎士はめったにいないので、みなさんにお声がけした次第でして」

 

「ふむ、そうですか。正式な依頼内容は責任者から……でしょうか?」

 

「はい、すみません……。機密にも触れるので、師団長から直接でお願いします。それに、師団長もご自身で直接ってのを楽しみにしてまして」

 

「楽しみ?」

 

 聞き返したら、騎士さんは「あっ、やべ」みたいな顔に。はいはい、聞かなかったふりをしておきます。

 

 でもまあ、師団長さんの話を聞く前から、というか王都を発つ前から、ある程度の事情は聞き及んでる。

 

 近辺の農村を襲う武装勢力の排除に協力すること。それが今回僕の小隊が招聘された理由だった。

 

 でもこの依頼、なぜか僕を指名してきて、姫からめちゃくちゃ反対されたんだよね。

 

 ただ、僕に話を通す前に姫が依頼主について調べたらしいけど、別に怪しいとこはなかったらしい。なのに、「補佐がわたしからはなれちゃダメ!」とごり押しされそうに……。

 

 それでも、僕は姫の補佐である前に宮廷魔術師でもあるから。しかも部下を持つ上級。

 

 それに。正直、農村が危機に陥っているという話を聞くと……どうしても故郷のことを思い出しちゃう。

 

 たいていのことにはこだわりを持てない僕でも、多少なりとも助けにならなきゃって気になる、と。そう伝えたらしぶしぶでも受け入れてくれる辺り、やっぱり姫は素直ないい子。

 

 そういえば、もう一つ気になることがった。昨日久しぶりに会ったスウさんが、なぜか妙に上機嫌で言うんだ。

 

 なんだかいつも以上に芝居がかった態度で、「明日から王都の外に行くって? 大変だろうけど、どうか頑張って。とっても素敵なサプライズとかあるかもだから!」って。

 

 ……なんでスウさん僕が依頼で遠征すること知ってたんだろうね。それに、サプライズって?

 

 なんて、そんなことを考えていると。

 

「――つきました! ここが村長宅です。予定より少し早いですけど、すぐに歓待の準備はできるはずですので!」

 

 騎士さんがそう言ったのは、この村で見た中で一番大きな家の前だ。僕たちは促されるまま家の中に入っていく。

 

 そして、ときおり廊下で忙しそう女性たちとすれ違いながら向かった先は、大きな長テーブルを真ん中に据えた大部屋だった。

 

「……なにか、見たことない料理ばっかりだな」

 

「ふむ。私も寡聞にして知らないものが多いな。物は試しか」

 

 あ。二人は勝手に席について、まだ配膳途中の料理に手を伸ばし始めた。

 

 ちょっと行儀悪すぎない? さすがに注意を、と。

 

 そう思った、その瞬間だった。

 

「――……っ! 到着、したんだね! 待ってたよ!」

 

 ん? 背後から声。しかもつい最近、聞き覚えが……。

 

 振り返るとそこにいたのは。

 

 女性ながらすらっとした長身に、赤いインナーカラーが入った長い黒髪。

 

 そして、その身にまとうのは獅子のエンブレムが刻まれた軽鎧。一般の騎士が身につけるものより装飾が多く、位の高い騎士であることがわかった。

 

 だけど。そんな高位の騎士だろう彼女は、その切れ長な瞳で僕を見るや……。

 

 ――にっこりと、ほんとうに嬉しそうに笑みを浮かべて。目をくりっと瞬かせた彼女は、身振り手振りでも喜びを表現しながら言った。

 

「聞いてたよりずいぶん早かったんだね! でも、キミと離れなきゃいけない時間が短く済んで嬉しい誤算だよ。――ぁあ、ごめんね、今は立場上もう少し真面目にしなくっちゃ。部下も見てるからさ」

 

「そ、そうですよ団長っ。なんで急にそんなテンション高い……というか初めて見ましたよそんな感じ! 団長でも笑うことってあるんだ……!」

 

「……む。……なにかおかしいところがあったかい? ボクはいつもにこやかで、接しやすい団長だと思うけれど」

 

「っひぃ……。そそそ、そうでしたね! 失礼しましたぁ!」

 

「ふう……まったく余計なことを。……さて! それじゃあ気を取り直してだね。――今日は、ボクの召集に応じて来てくれてありがとう。この姿(・・・)では初めましてだし、改めて自己紹介を」

 

 そして、彼女は告げた。

 

 

 

「ボクは大獅子騎士団『鬣の盾』の師団長――――スカーレット・クレイだよ。……どうだい? 驚いたかな、アルくんっ」

 

 

 

 そんな彼女の言葉を聞いた僕の心境は。まさに……彼女の言う通り、驚き一色に染め上げられてしまって。

 

「――スウさんが……師団長……!? でもスウさんは侍女のはずじゃ――」

 

「やっぱり、気づいてくれたね。キミなら一目でわかってくれるって、そう思ってたよ……っ」

 

 なんだかスウさんは感動してるみたいだけども。そんなことより、おかしいでしょ。なんで師団長が侍女の格好を? じゃあ、いつものあれは何かのカモフラージュだったってこと?

 

 ええと、まずは何を聞けば、と。すこし混乱する頭で考えていると。

 

 ……あっ、あの二人また勝手に――。

 

「――これは、お初にお目にかかります、スカーレット師団長殿。私はアルバス侯爵家の嫡男、キーレンス・アルバス。貴女の招集に応じ、はせ参じました。……しかし、最年少で師団長に上り詰めた美貌の剣士という評判に違わぬ美しさだ……」

 

「あ、こいつまた……。同僚が失礼……ですが、師団長殿はすでにそいつ――じゃなくて、うちの小隊長と知り合いみたいだし、俺も便乗してぜひ自己紹介を。――イグナーツ・エーデル、宮廷魔術師です。こいつほどいい家柄じゃないですが、腕にはそこそこ自信があります。もしこの任務で役に立てたなら、ぜひ取り立ててもらえれば」

 

 ふむ。まあ、別に失礼なことを言ってるわけじゃなし、今回は注意はいらないかな。

 

 そうだ、ついでに最後の一人も紹介しちゃえば……と。そんなことを考えていたんだけど。

 

 ……なんかスウさん、めちゃくちゃ表情険しくない? うちの部下が何か気に障ることでも――

 

「……キミたち、いまの話だとアルくんの部下みたいだけど。――……その割には、ずいぶんと彼を軽んじてないかい?」

 

「え?」

 

 

 

「――――ひどく、不快だよ。ボクはアルくんと二人で話がしたいんだ。キミたちはとっととここを出て行ってくれるかい」

 

 

 

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