万能孤高ヤンデレ姫は年下宮廷魔術師の父性に溺れる! 〜姫に懐かれすぎて王からクビ宣告。王の命令で結婚を退職理由にしたら姫の目から光が消えた〜   作:ダイヤモンド鈴木

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4話

 

 椅子から立ちあがり、僕の目の前まで軽い足取りでやってくる姫。

 

 姫目線だと、僕は結婚退職しようとしたいのにそれが許されない状況にいるはず。姫のところに来たのだって抗議のためと分かるだろうに。

 

「姫。僕がここに来た理由、わかりますよね? 楽しい話をしに来たわけでは……」

 

「むぅ。そんなに怖い顔しなくってもいいじゃない……。理由はともあれ、朝から会えてうれしいのはホントよ?」

 

 悲しそうに眉尻を下げる姫。

 

 怖い顔してるつもりはないけど、真面目な話をしにきたので。いま僕、立場的に非常にまずいんだよね。無理を通そうとしてる姫にはなんとか諦めてもらわないと。

 

「それで、姫。今回の件、さすがに無茶しすぎじゃないですか? ここまで僕を買ってくれてたことには感謝しますけど……」

 

「無茶?」

 

「ええ、無茶ですよ。本来の職制を飛び越えて宮廷魔術師の人事に口を出したり。さっきも――まるでクーデターの脅しみたいなことまで」

 

「……だって」

 

 姫は僕の言葉に顔をうつむける。

 

「わたし――どうしても、アルベルトと離れたくなかったんだもん……」

 

 口をとがらせてかわいく言ってるけども。にしても限度ってものが。

 

「……その気持ちは、すごくうれしいんですけどね。でも、さすがにやりすぎです。特に脅しの方は」

 

「でも」

 

「でもじゃありません。たしかに姫は陛下から頼りにされてますし、すでに重要なお仕事も任されてます。しかも、その髪や固有魔法――初代様の再来といわれる理由もある。けど、だからこそ――――姫が口にする王位簒奪は、あまりにも現実味がありすぎる」

 

 そう。姫はすでに一部の貴族の間で、陛下の後継者と目されている。

 

 稀に王家の者に現れる銀色の髪。王家相伝の固有魔法。いずれもアトラス王国の初代国王が持っていた特徴と同じだ。

 

 そしてそれを理由に、王太子である兄君を差し置いて、姫を次期国王に担ぎ上げようという動きまであるのだ。

 

 下手を打てば国を割るような事態になり得るし、姫の身にだってどんな危険が及ぶことか……。

 

 そんな僕の心配は、正しく姫に伝わったようで。

 

 顔を上げた姫は目を潤め、うっとりと僕を見つめて。

 

「うれしい。心配、してくれてるのね」

 

「そりゃします。姫は僕の大事な教え子なんですから」

 

「…………でもあくまでも教え子、なのね」

 

 ん? 最後のはよく聞こえなかった。姫の顔が曇って、目から光が消えた気が。

 

 というか。なんか今日の姫、ずっとあのごっこ遊びモードなんだけど。いつもは姫の合図があって初めて始まるはず。

 

 首を傾げていると。

 

「でもね、アルベルト。わたし、あなたの教え子って立場はぜったい手放さない。なに言われてもぜったいよ……」

 

「それは……でも――」

 

「わかってるもん。奥さんが、って言うんでしょ」

 

 先に言われてしまった。

 

 でも、そう。僕が姫に言える理由はもうそれしかない。陛下から辞めろと言われてることは伝えられないから。

 

 そして姫がそれを理解してくれてるなら――

 

 

 

「安心して? ――奥さん、ここに連れてきてあげるから」

 

 

 

「え?」

 

「奥さんも一緒に王宮で暮らすの。わたし、ほんとはアルベルトの一番になりたいけど……。でも、がんばって我慢する。奥さんも……いなくさせたりはしないから」

 

 めっちゃ唇噛んでる。自分の意思を律しきれてないよ。

 

 というかこれ、非常にまずい展開では。実在しない人物を連れてくるなんて不可能なわけで。

 

「いやあの、姫。でもね。僕の奥さんになる人は故郷を離れたくないと言ってまして」

 

「それ、ぜったい? それくらいなら譲ってくれない?」

 

「う、うーん。難しいと思――」

 

「――……わたしのアルベルト、盗ったのに?」

 

 うわ、目つきが……! 駄々をこねる子どものような色から、明確に怒りの色に。

 

「わたし、大事なアルベルトの一番は譲ってあげるのよ? それでもまだ、ひとつ残らず自分のものにするまで納得できない? わ、わたしからぜんぶ奪うの――ッ?」

 

「姫、ちょっと落ち着い――」

 

「――わたしには、アルベルトしかいないのにッ!」

 

 普段はクールな顔を歪めて。姫は必死に訴えかけるように叫ぶ。

 

 ……まさか、ここまで。好かれてる自覚はあったけど、これはちょっと異常なほどの執着。

 

 ただ、これは困ったぞ。姫は意地でも僕を逃がさないと言ってる。そうなると、どう頑張っても陛下との対立は避けられない。

 

 それに、僕がついた嘘で姫を傷つけたというのも心苦しくはある。

 

 どうしようかなあ。

 

 ぷるぷる震えながら僕を見つめる姫に困る。解決策が見つからないぞと、しばし考え込んでいると。

 

「ねえ。アルベルト、なんとか言ってよ……。わたしのこと、き、嫌いになっちゃったの?」

 

「……そうだと言ったら、大人しく辞めさせてくれます?」

 

「ッぜったい、イヤ! アルベルトに嫌われちゃったとしても、それでも、そばにいてくれるだけで……! 最悪手足しばってわたしの部屋に――」

 

 ダメだこれ。うーん。

 

「嫌いになんてなってないです。ただ、困ってるだけで……」

 

 今この状況では名案を思いつきそうもない。姫も息を荒らげて、冷静に会話できる状況でもなさそうだ。

 

「今日のところは、これくらいにしておきましょう。今後どうするかはまた、ちょっと頭を悩ませてみます」

 

「アルベルトになにを言われたってこれだけは譲れないわ……! あなたが教えてくれないなら、奥さんの居場所はこっちで探す! ぜったい、アルベルトのこと諦めないんだからぁッ!」

 

「……。じゃあ、今日はこれで失礼します。また、来ます」

 

 地団駄を踏む姫に頭を下げて部屋の出口へ。

 

 これ――――ほんと、どうしたものかな?

 

 

 

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