ウワァー!!!オンパロスだこれッ!?   作:ありがとうオンパロス

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もう今作書いてる時私(理性)が微塵も存在していないんです。
正直、どうしてこうなったと考えている私(理性)です。


ありえない? アリエールでしょ

 

 

「まずは賞賛を送らせてください。試練の突破、おめでとうございます」

 

 オンパロスの果て、また連れて来られた空間で鉄の生首が何か喋っている。顔を見た瞬間に反射で首以外を消し飛ばしたが、それでも彼は気にする様子はない。常に余裕を崩さない奴だと知っているが、首だけで揚々と話しかけてくるのは中々不気味なものがある。

 

「しかし、結果といたしましては、『壊滅』に傾きつつあった貴方の運命は今や『虚無』を終着点とするものになってしまいました。起死回生の偉業を成し遂げた貴方はしかし、存在意義を失い、尚も消滅の運命だけは避けられなかった」

 

 あまりにもこちらの動きに対してノーリアクションなのが剣先を鈍らせる。いきなり拉致してきて賞賛とか本当に何を考えているのか分からない。

 

「正直、貴方が試練を乗り越えられるとは思ってませんでした。只人であった貴方は『壊滅』の因子を身に宿して黄金裔となり、更には半神となった。貴方が変数であることを抜きにしても、十分過ぎるほどの偉業と言えるでしょう」

「よく喋るな。本題はなんだ?」

「貴方は《虚無()》によって魂を3()()()()()()()()()。1つは貴方がファイノン(カスライナ)に渡した剣、もう1つがここにいる貴方自身。率直にお聞きします……()()()1()()()()()()()()()()()()?」

 

 俺は剣を下ろしてため息をつく。どうやら、『神礼の観衆』様も計算ミスをするらしい。

 

「最後の1つ……? ()()()()()()()()()

「最後の1つは貴方(破片)の比にならない虚数エネルギーを有していました。もしかすると、星神()に傷を付ける可能性があるくらいには。貴方がそれを投擲する直前に《歳月》の権能を使っているのは確認しています。私は貴方が投げた(最後の1つ)の行先を確認する必要があるのです」

「……この状況で随分と強気だな」

 

 転がってる鉄の生首を片手で持ち上げると、ライコスと目線の高さが合う。こいつはどうやら俺に消滅させられるとは微塵も考えていないようだ。

 

「こうは考えなかったのか? 俺が『虚無』でこの世界(オンパロス)に強制的に終焉をもたらす……とかな」

「いいえ、貴方はそのような手段を選びません。オンパロスを『虚無』にしてしまえば貴方自身はおろか、貴方が尽くす彼女たちまで消えることになります。そもそも、ファイノン(カスライナ)()を与えた貴方にはそれだけの力は残っていない」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()、俺のことを的確に見抜いている。悔しいが……こいつの言う通り俺は根本的な解決方法は得られなかった。

 

「貴方の歩みは『虚無』という終点に着きました。次は、その魂の翼でどこまで飛べるのか。どうか私に見せてくだ」

 

 放っておくといつまでも話し続けるものだから粉々に壊す。部品が地面に散乱してようやく静かになった。次の永劫回帰があるっていうのにとんだ道草を食わされたもんだ。

 

「はあ……。元から、俺の行為の全てに意味は無い。徒労だとしても、俺のやることは変わらない。()()皆に寄り添い続けるだけだ」

 

 

 慣れた激痛に身を任し、俺は()()()()()()()()永劫回帰に挑む。

 

 


 

 

「それで……貴方は僕の知っている『店主』なのか?」

『そうだな……君が困惑するのも無理はない。まずは()の知っていることから話そう』

 

 158回目の永劫回帰、僕はやっと『店主』と時間を気にせず会話することができた。店主はなぜか永劫回帰の記憶を引き継げるようで、何度地獄を見ても手探りで黄金裔の皆に尽くそうと頑張っていたらしい。変わらない在り方に微笑みたくなるが、彼の決意と覚悟は痛みと喪失を伴う物だと僕は目撃している。

 

『そんな顔をしないでくれ。私はこんな姿になってしまったけど、心から嬉しいんだ。これで君の支えになれる』

「嬉しいけど……僕は火種を集めなくちゃいけない。貴方も見ていたと言っていたけど、僕はこれまでも彼らを傷付けてきた。それは」

()()()()()()()()()()()()。必要であれば皆の血を流すことも厭わない』

「……どうしてだ?」

 

 あれだけ必死に彼らを守ろうとしてきた彼からは考えられない発言だった。それなのに、彼の声音は平然としている。理由を聞いた僕の声は恐怖で震えていた。

 

『……すまない、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。だからこそ、私は君に寄り添える』

 

 身の毛もよだつような、想像を絶する答えに言葉も出なかった。

 

「そ……え……?」

『私のことは気にしなくていい。ただの少し強い剣くらいで考えてほしい。もし不要であれば棄ててくれても構わない。私は君の意志を尊重し、最後まで寄り添いたい』

 

 狂気の沙汰ではない。そんなものとうに凌駕したナニカが僕の手の剣に宿っていた。

 

『この終わりの見えない永劫回帰、君の前に立ちはだかる一番の脅威は破片()だ。その時は、迷わず私を使ってくれ』

 

 

 運命はどれだけ……どれだけ彼を苦しめ続ければ気が済むんだ。

 

 


 

 

 ■■■回目の永劫回帰にて。

 

 

「《銀翼卿》、いるのか?」

 

 返事のない部屋からは微細な硝子が漂っていた。《銀翼卿》のあの翼は非常に繊細な結晶体だ、手入れも相当苦労するのだろう。忠誠を誓った僕の声も聞こえないくらいには。

 

「入るぞ」

 

 部屋の中には予想通り《銀翼卿》が透明な硝子の翼を広げていた。彼は手の中に背中から生えているものと同じ結晶を持ち、祈るように()()()()()を行っているようだった。彼は特定の信仰を持たないと言っていたが、祈言を呟いているあたりまったくの無信者ではないらしい。

 

「おい、聞こえているのか?」

 

 再度声をかけてもなんの反応もない。僕を無視するなんて、普段の彼からすれば十分異常事態と言えた。

 

「一体何を……? これは?」

 

 彼を心配する気持ちはあった。しかし、前々から彼の結晶に対する好奇心は募らせており、無防備な姿を見て僅かに好奇心が勝ってしまった。僕は……彼が持っている結晶に触れてしまった。

 

「痛っ!」

 

 突然頭の中に流れた光景に気を取られ、結晶で手を切ってしまう。触れた瞬間に見えた。……結晶の中には()()()()()()()()()()。ただの死体ではない。全てが《銀翼卿》の死体だった。この小さな結晶の中で沢山の《銀翼卿》が死んでいる。

 

 そして、頭の中に溢れ出した“知らない記憶”。一度に多くの衝撃が襲ってきて頭がどうにかなりそうだったが、()()()()()()()()()()()()()を前にして決して膝をついてはいけない。何よりも、《 ()()() 》に聞かなくてはいけない。

 

「おい、起きろ! 《誠忠卿》……貴様、何をしている」

「……カイザー? あれ、どうして私の部屋に?」

「何をしていると聞いているんだ!」

「何と仰いますと……贄作りですかね」

「贄? 贄だと? ()()()()()()()()()()!」

 

 疑問は多く浮かび上がってきたが、僕は彼がそれを贄と呼んだことが許せなかった。彼の命は僕の物だ。たとえ彼自身だろうとぞんざいに扱うことは万死に値する。

 

「何のための贄だ? 言ってみろ!」

「……試練です」

「贄が必要な試練だと? そんなものは……そんな……え?」

「はい。これは、カイザーの《法》の試練のための呪われた血(黄金の贄)です。《歳月》の力に慣れるのに時間がかかりましたけど、ようやく()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「僕の……ため?」

 

 いや、僕の……せいじゃないか。彼の忠誠に甘えた結果、彼がどのような末路を迎えた? 全て僕の力不足が招いた結果なんじゃないのか?

 

「…………やめろ」

「え?」

「今すぐやめろ!!」

「どうして……カイザー」

「今からお前を幽閉する。もう二度と貴様を危機には晒さん」

 

 

 なあ……《誠忠卿》。お前は何度苦しんで来たんだ? 今回こそ、僕が守り抜いてみせよう。我が最初の忠臣にして…………

 

「……ぃの臣下よ」

 

 

 

 

「カイザー……」

「……嘘だ」

 

 彼が処刑人に殺された。あれだけ言い聞かせたというのに、僕を庇って彼は処刑人の剣に心臓を穿かれた。

 

「あぁ……あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!」

 

 今回こそはと何重にも策を練った。“知らない記憶”みたいには絶対にさせないと誓ったのに。彼は僕の目の前で死んだ。

 

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!」

 

 

 僕はまた守れなかった。

 

 


 

 

 ■■■■回目の永劫回帰にて。

 

 

「キャストリス、君に触れてみてもいいだろうか?」

「えっと……それは、やめておいたほうがよろしいかと」

「……駄目、だろうか?」

「あう……。そんなに見つめないでください」

 

 前に乗り出した彼の睫毛が私のそれと擦れてしまいそうになる。彼の距離感が近過ぎるのは今に始まったことではないが、私の心臓は毎度破裂してしまうんじゃないかと心配するくらいにドキドキしてしまう。耐え切れず視線を逸らしてしまった私に彼は微笑み、隙ありとばかりに私の手を取った。

 

「あ」

「……大丈夫そうだ」

 

 《死》の前の刹那の温もりではない、今を生きる生命の温もりが私の指先を包み込んだ。自然ともっと触れ合いたいと思う感情が芽生え、指を彼の指と絡める。身勝手にも指を絡めたことを彼は責めることはなかった。それどころか、彼は笑みを深めてもう片方の手も同じように絡めてくる。

 

「君と触れ合える方法をずっと探していた。《歳月》では難しかったから別の方法を試してみたんだけど……成功したみたいだ」

「あの……一体どのような方法を?」

「……秘密だ。そんなことより、暖かい?」

「はい。とても……とても暖かいです」

 

 こうしていると、街中で見るような恋人同士になったみたいだった。周囲に人影は見えないけれど……もし、誰かに見られたら私たちは恋人同士に見られてしまうのでしょうか。そう思うと気恥しさに悶えると同時に、もっと触れ合いたいと考えてしまう。そのことを察したのか、彼は手をゆっくり離して大きく広げた。

 

「いいよ。おいで」

 

 彼に誘われるまま胸に飛び込んで抱擁を交わす。手先だけだった温もりを全身に感じて、これ以上ない幸福感が私を満たしてくれる。ドクン、ドクン、心臓の鼓動が聞こえる。私のより大きくて力強い男の人の心臓。いつまでもこうしていたい安心があった。

 

「また……お願いしてもいいでしょうか?」

 

 私の卑しいお願いにも、彼は優しい慈愛に満ちた表情で肯いてくれた。

 

 

 

 

 

「ダメ、ダメです。目を開けてください!」

 

 突き飛ばされたかと思えば、彼は倒れ伏していた。処刑人の剣からは彼のものと思われる黄金の血が滴り落ちていて。抱き寄せた彼の体にあの温もりは感じられなかった。

 

「嫌……」

 

 酷く傷付いた心臓は鼓動を打てずに力尽きた。幸福は絶望に変わり、冷たい肢体はいつまで経っても《死》の祝福を拒む。

 

「寒い……」

 

 体温を全て奪われてしまった私は、凍える寒さを久しぶりに噛み締めていた。全身の血液を抜かれてしまったかのような喪失感が空虚になった血管を満たし、流す涙の軽さだけが私の生命を証明しようとしていた。

 

 彼だけが私の抱擁を受け止めてくれる。それは死んでも変わらなかった。あの温もりを懐かしむように、冷たい彼を抱き締める。

 

 

「冷たくなっても……ずっと一緒ですよ……」

 

 


 

 

 ■■■■■回目の永劫回帰にて。

 

 

 私の前に降り立ったその人は天使のような輝く翼と、聖母のような微笑みを持っていた。

 

「聖女トリスビアス。貴女のことを探していました」

 

 彼は輝く翼で私の部屋を照らし、手を引いて私を外の世界へと導いてくれた。神託を受けた私が火種を奪う時も、ヤヌサポリスから旅立つ時もずっと一緒だった。私たちは2人で1人の存在みたいだった。

 

「『汝は千の破片に砕かれ、異郷の地で朽ち果てるだろう』……。千どころか、砕かれる兆候もないのだけれど」

「いい事じゃないか。トリスビアスが千人になってしまえば、私はどの貴女について行けばいいか分からなくなる」

「それもそうね。私が1人だけなら、貴方を独り占めできるもの」

 

 肩を寄せ合って焚き火を眺めていると、なんだか不思議な気持ちになる。これまで多くの時間を彼と過ごしてきたけれど、彼の私を見る目は変わらない。別に今のままでも不満はないけど……そのことに少し悔しくなる。

 

「ねえ、最近は背中のやつ出さないわよね? どうしてなの?」

「え……いや、特に理由はないけど」

「じゃあ1回くらい触らせてよ。ずっと触ってみたかったのよね」

「わかった」

 

 そう言うと、彼の背中から肌を文字通り突き破って翼が生えてくる。翼といっても羽ばたいたりとかは出来ないらしく。本当に翼みたいな何かだった。いつ見てもその輝きは見惚れるほど美しく、彼の銀色に変わった瞳も相まって本物の天使のようだ。

 

「あら、血も出てるじゃない。痛くない? 大丈夫?」

「出す時に皮膚が裂けるからね。痛みも慣れたから大丈夫。触るのならどうぞ気をつけて」

「こんな形だったかしら?」

 

 前見た時より結晶が細かく見えるけど……出す度に形が変わっているのかもしれない。お言葉に甘えて恐る恐る結晶に触れる。感触は予想通り硬いけど、冷たくも熱くもない不思議な感覚だった。鉱石……とはまた違う。指で撫でていると、つい指先を切ってしまった。

 

「あっ」

 

 

 そして溢れ出す、“知らない記憶”。それが別の世界線の出来事であることを理解するのに長い時間は必要なかった。

 

「……ねえ、■■■■。もしかして私たちって、前にも会ったことがあるの?」

「いきなりどうして?」

「そ、その……ほら、『ずっと一緒にいよう』って誓ったの……まだ覚えてる?」

「そんなことしたっけ?」

 

 彼は嘘をつく時、必ず右の口角だけ上がる。さっきは上がらなかったから嘘をついていない。じゃあこの記憶はどこから来たというの?

 

 

「そもそもトリスビアスとは()()()()()()()()()()()。……あれ? え……なんだ? どうして俺……」

 

 私が頭を悩ませている横で、彼は顔を蒼白にさせて蹲ってしまう。彼は頭を抱えて焦点の定まらない目でうわ言を呟きだした。

 

「なんで忘れて……いや、そんなはずない。だってあれは……。『虚無』の影響? にしても早すぎる。大切な記憶なんだ。1番奥にしまったはずなのに……」

「■■■■? ……■■■■!」

 

 いてもたってもいられず彼を抱き締めるとキツく抱き返してくる。私の存在を確かめるように隅々まで体を触られるが、私は彼に身を委ねてまさぐられる。今の彼から一瞬でも目を離してはいけないと本能が警告する。その一瞬で彼が消えてしまうような気さえした。

 

「トリスビアス……許してくれ。全てを捧げると覚悟を決めていたのに……君たちを忘れていくのが堪らなく怖い。きっと、俺は新しい思い出すら覚えることも叶わなくなる。自我も消え……それでも君たちに寄り添えるか不安になる。……一緒に居られないと分かっていても、君たちを見ていると希望を幻視してしまう。俺も……肩を並べることができるって。全てを捧げて英雄になっても俺は『虚無』なんだ。空っぽの偉業と、空っぽの未来しか持てなかった。許してくれ…………トリスビアス」

 

 彼の言葉を全て理解することはできなかったけど、私は彼を撫でることはできた。落ち着くまで彼を慰めて、私は彼の顔を両手で包んで彼の瞳に訴える。

 

「大丈夫。たとえ消えてしまうとしても、貴方は『今』を何よりも大切にする人だって知ってるわ。貴方が不安なら、私がその不安を消してあげる。これは『今』を生きている私にしかできないことよ。だから大丈夫よ、■■■■」

「トリスビアス……」

 

 そのまま、彼の額と私の額を擦り合わせる。焚き火が作る私たちの影は1つになって、とても長い間……2人が離れることはなかった。

 

 

 

 

「ねえ……■■■■。私たち、とても遠い場所まで来たのね」

 

 抱き抱える彼の体から黄金の血が流れていく。ああ、お願いだからもう少し待ってほしい。まだまだ……後少しだけでも……彼の温もりを感じさせてほしい。

 

「最初に貴方を見た時から、貴方と私は長い付き合いになるって確信したのよ。色んな都市国家を回って、火を追う旅を始めて、様々な人に出会った」

 

 手を重ねると、無理やりお揃いにした指輪が仲良く輝く。彼は左手の薬指にだけは絶対着けないなんて変なところで拒んでたりしてたっけ。

 

「見て、■■■■。凄く良い景色よ」

 

 崖の上の空に黎明はもう灯っていない。終焉に抗ってる人々の声は昔のものとなってしまった。崖際で最後に、眠る彼に口付けをした。

 

 

「一緒に西風の果てに行きましょ?」

 

 私は空中でも離れないよう彼を強く抱き締めて……身を投げた。

 

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