ウワァー!!!オンパロスだこれッ!? 作:ありがとうオンパロス
A.
美人に囲われた生活
宇宙ステーションはどこを見ても最先端で無機質なデザインで構成されている。たまに見つける植物も彩りや機能のみを目的としたもので、そこに生命の息吹は感じられない。
急激な環境の変化にも慣れてきて、懐かしのあの場所を恋しく思うのは俺が人として健全に生きている証だった。そんな自分を客観視して微笑ましくも、少し恥ずかしくもなる。
「みんな元気にしてるかな」
宙の星々を眺めて感傷に浸っていると、手首に着けられたデバイスから機械音が鳴り響く。恐る恐るメッセージの送信者を確認して、束の間の憩いの時間が終わってしまったことに項垂れる。
【来て】
あまりにも短いメッセージ。しかし、それには文面以上の彼女の感情が多分に含まれていた。
「……さぁて、どれだ?」
どうか酷いことにならないよう祈りながら、俺は重い腰を上げて彼女の元に向かうのだった。
「遅い」
開口一番に彼女は苛立ちを隠そうともせずそう言った。どうやら今日は少々大変な思いをすることになるらしい。靴音を響かせて眼前に迫る彼女は身長差のせいで自然と俺に対して少しだけ上目遣いになる。
自賛が全く過剰にならない、むしろ一般化された言語体系では的確な単語が見当たらない美貌を持つ彼女の尊顔に惹き込まれていると、不機嫌な彼女は可愛らしく目を細めて更に俺との距離を縮めた。
「聞いてるの? 人の顔を穴が空きそうなくらい見つめて……そんなに私の顔が好きなんだ」
「好きだよ。ヘルタはいつ見ても美人だなと思って」
「……私を賛美する声は宇宙にごまんとあるけれど、どれも明け透けた下心やくだらない野心が含まれていた。でも、あなたの言葉はいつでも忌憚のない等身大だね。そういう所は好感が持てるよ」
自他ともに認める天才──ヘルタは胸を張って髪をかき上げる。相も変わらず露出の激しい魔女衣装に目のやり場に困るのはいつもの事で。見下ろすことで胸元の上部や肩から背中にかけて惜しみなく晒した素肌が更に視界を肌色に染めるのもまたいつもの事だった。
「可哀想に、オンパロスの人たちはあなたに並々ならぬ想いを抱いているのに、当のあなたは私にぞっこんだなんてね」
「確かに俺はヘルタにぞっこんだ。なにしろ、ヘルタがいないと俺は生きていけないからな」
「呑気な人。どうせ今自分が何を言ったのか理解していないんでしょ? 私に言う分には構わないけど。……あなたに深い関係を迫る黄金裔とかいたんじゃないの?」
黄金裔の誰かと恋人以上の関係に……そんなこと一度も考えたことなかった。俺の彼女たちに対する感情は「愛」と呼べるものだと胸を張って言えるが、そういった俗っぽいものというより崇拝に近いものだ。そもそも、彼女たちだって俺とそんな関係になることを望んでいるとは思えない。
「彼女たちとはそういうのじゃないよ。みんなは俺にとって何より大切な仲間だ。俺みたいなのが彼女たちと契りを結ぶことなんて有り得ないよ」
「ふーん。まあ、あなたの覚悟を知っている身からするとそれも不思議じゃないのかもね。どのみちあなたが私のものであることに変わりはないのだから気にすることでもないけど……」
どうやら今日はご機嫌を戻すのが早いようで。とんでもない実験に巻き込まれることはなさそうだと安堵しかけたその瞬間、見計らっていたかのようにヘルタは俺の不意をついて襟を掴んできた。
「そういえば最近……実験でもないのにルアンとよく2人きりになっているらしいじゃない。こんなに梅の匂いを付けられて……。あなたは私のものって自覚が足りないんじゃない?」
さっきまでの好転した雰囲気はどこへやら。襟をはだけさせた首元に鼻を近付けた彼女は今日一番の不機嫌になっていた。
「誰にでも尻尾を振る悪い人には首輪が必要……そうは思わない?」
鎖骨から顎のラインにかけて細く優美な指がなぞられる。下に引っ張られて屈む俺は、背筋に不思議なものを感じながら耳に入る妖艶な囁きに体を震わせる。
「ダメですよ、ヘルタ」
間に挟まれた透き通った声は、閉じられようとした2人の空間に静かにメスを入れた。俺を管理するもう1人の天才、ルアン・メェイはなんの遠慮もせず俺たちの前まで歩いてくる。ヘルタは俺の首に手をかけたまま彼女を横目に見つめ、手癖のように俺の鎖骨を親指でさする。
「何がダメなの?」
「過度な拘束は余計なストレスを与えかねません。それでは十分なデータが取れなくなります」
「ふぅん……。彼は首輪くらいでストレスが溜まるようには思えないけど」
首輪の輪郭を想像しているのか、首を弄る指先に繊細さが宿る。ヘルタの思い描くイメージを言葉ではなく触覚のみで共有されて、俺たちが言語を扱う必要性について問いたくなる。まあ、目の前の天才たちはくだらないと吐き捨てるような問だろう。
「あなたの拘束具は大袈裟なものばかりです。メアレス、こちらをどうぞ」
ヘルタを眼中にも収めずルアン・メェイが俺の首に着けたのは碧い宝石を拵えたチョーカーだった。彼女が離れる際、髪がふわりと揺れて梅の香りが鼻をくすぐる。妙に気持ちが落ち着くその香りは彼女自身か、または首のチョーカーから出ていた。
「やっぱりあなたにはシンプルな装飾の方が似合いますね」
「ありがとう、ルアン・メェイ」
「喜んでくれてよかったです」
「へぇ……」
そして何故かヘルタの機嫌は地盤を突き抜けた。確かに、彼女の想像していた首輪は囚人が着けるような仰々しいもの……お世辞にも、このチョーカーのようにシンプルなものとは言えなかった。
「彼の所有権はヘルタと私で分割されていますが、肉体に関しては私に優先権があります。あまり勝手なことはしないでください」
「それをルアンが言うんだ。この前の実験を見逃してあげたの覚えてないの? あの後大変だったんだから」
今の会話でどの実験だったっけ、となるくらいには馴染んでしまっている自分に驚く。黄金裔のみんなと一緒に旅に出ることはできないが、凡人には接点を持つことすら叶わない天才2人と毎日のように実験に明け暮れているのは俺にとって充実した生活と言えた。
今の俺は誇張でもなんでもなく2人がいないと生きていけない。この肉体と精神は彼女たちが造ってくれたものであり、彼女たちが俺を不要と見れば指先一つで俺を削除することができる。それでもこうして彼女たちが俺を日々実験に付き合わせるのはそれなりに気に入られているからだろう。
「とにかく、今は私が呼び出したんだから余計な口は挟まないで。ほら、行くよ」
「ああ、じゃあまた」
「……いってらっしゃい」
ヘルタに手を引かれるまま俺はルアン・メェイに手を振る。またヘルタの機嫌が悪くなった気がするが、もう何しても悪くなるから半分諦めた。なんだかんだ、今日も今日とて実験日和なようです。
「はぁ……はぁ……」
「よしよし。よく頑張ったね」
息が不規則に乱れ、朦朧とする意識の中、誰かに頭を撫でられている。彼女の慈しむ声は感覚器官を通さずとも意識に直接響いているようで、それが不安定になった心を酷く安心させた。
「ヘルタ……」
無意識に回した腕を彼女は受け入れた。薄い……あまりにも薄く感じる腰に怯える腕に彼女は手を添える。
「こんな状態になってもそんなんだから私が……なんだよ」
聴覚がまだ復活していないせいで彼女の言葉を上手く聴き取れない。シミュレーション内とはいえ
「……ヘルタ?」
「起きた? 寝坊助さん」
火照った体内の熱は冷めて、ヘルタと密着している結果だけが残っていた。力の入らない肢体は名残惜しいと訴えるかのように彼女の体を離さない。それでも、ヘルタは笑って受け入れてくれる。ヘルタの抱擁は、まだ実感の湧かない自分の存在が許されている気がして心地良かった。
「どれくらいかかった?」
「今回はそんなにかからなかったよ。1システム時間くらいかな」
天才たちの実験の後はいつも意識混濁の副作用が生じる。ヘルタたちの話によると、強烈な負荷に生存本能が刺激されるのか発情状態に陥っているらしい。
でも、ヘルタたちを本性のまま襲ったりはしていない。永劫回帰の影響のせいか、俺は理性と欲求のバランスがガタガタになってしまっているらしい。新生の元となった『記憶』から不調をきたしているから、こればかりは今後の調整が必要とのことだった。
「こんなことで収まっちゃうなんて……可愛い」
つまり……発情は抱擁だけで十分に発散できるらしい。ヘルタもルアン・メェイも、実験の後は俺の抱擁を受け止めてくれている。今更そんなことを恥ずかしがることはないが、柄でもなく高揚してしまう自分がいた。
アグライアやヘレクトラなど、人々に美しいと称される女性と長い時を共に過ごしてきたが、ヘルタやルアン・メェイもとてつもない美人だ。そんな女性と日々発情状態で抱擁するというのは、俺の中に未知のものを芽生えさせるには十分と言えた。
「『調和』は流石に苦しかったみたいだね。お疲れ様」
データを確認しながらもヘルタは俺の頭を撫で続けてくれる。働きに対してよく頑張ったって言ってくれる。真っ暗な中で歩き続けるのとは違う、傷付いていた心が癒されて満たされていく。ヘルタには伝わっていないかもしれないけど、本当に俺はヘルタにぞっこんになってしまっているのかもしれない。
「もう少し……このまま」
「はいはい」
自分から求めることが許されているこの環境は最初こそ戸惑っていたが、ヘルタの優しさに浸っているうちに甘えるのが少し上手くなったかもしれない。この時間があるから俺はどんな実験も頑張ることができていた。
「う……おぇ……」
「上手です。そのまま全部出し切ってください」
また別の日、その日はルアン・メェイの実験の手伝いだった。薬物を摂取して反応を確認した後、嘔吐剤を飲まされて一度全部吐き出す。背中を擦りながら耳元で囁く彼女の声に導かれるように、俺は体内のものを排出していく。
「よく出来ました」
嘔吐を褒められるのはイケナイ事をしているようで、背徳感が押し寄せてくる。脳を溶かす梅の匂いが出て行ったものの代わりに体内を満たしていき、抗えない欲求がふつふつと湧き上がる。
「うっ……はぁ……はぁ……」
「いいですよ。我慢しないで来てください」
全て出し切って、体力を使い尽くした身体は無意識に彼女を求め始めた。力無くもたれかかる体が彼女の富んだ弾力に包まれる。それはどこまでも沈み込んでしまいそうな沼のような、触れる者を接合しようとする梅の木のような抱擁だった。
「また少し逞しくなりましたね。良い傾向です」
「ルアン……」
「もっと腕を回してください。それじゃ辛いでしょう?」
膨らむ熱に歯止めが効かなくなって、より深く、深くルアン・メェイにのめり込んでいく。
「うぁ……はぁ……」
「ふふ……あなたとの実験は楽しいですね」
服の下から滑り込んできた彼女の手がヒヤリと冷たくて気持ちいい。繊細な実験を行う彼女の手先は器用に腹部から首までの輪郭をなぞる。俺にも自覚させるように凹凸を優しく……丁寧に……。軽い発情状態の肉体には過ぎた刺激に破裂しそうだった。
「おやすみなさい」
幸いにも、力尽きた肉体は情欲の爆発を待たずして眠りについた。俺にはまだ……これ以上のことは厳しかったらしい。
「どうして2人はまだ俺を捨てないんだ?」
俺の存在が特殊なことは自覚している。だから天才たちは俺を手元に置いた。でも、実験する価値が見出だせなくなったら? 俺という存在に飽きてしまったら?
天才たちと過ごしてきて、彼女たちがかなりの飽き性であることに気付いた俺は、どうしようもない不安を口にした。俺の言葉に呆気にとられた2人の天才は顔を見合せクスリと笑う。
「もう私たちはあなたを実験体として見ていませんよ。あなたはもう立派に私の助手です。ヘルタは分かりませんが、少なくとも私は見捨てませんよ」
「なにそれ。あなたは私のものなんだから、面倒を見るのは当たり前でしょ?」
2人はそう言って、俺を見る。俺はまだまだこの世界のことを知らない。それでも、彼女たちが一般的でない特別な存在だということは理解できる。そんな2人の天才の寵愛を受けられる生活は恵まれているとも思う。
『いつでもこっちに戻って来ていいからね』
もし俺が天才たちに捨てられても、黄金裔のみんなは俺を無条件に受け入れてくれるだろう。でも、俺の価値を認めてくれて、俺の居場所がこの世界にあると教えてくれるヘルタたちに捨てられたくないと思うのは当然のことだった。
「そっか……よかった」
「……」
「……」
安堵する俺に、2人は徐々に距離を縮めてくる。美人の圧というものは凄いもので、ただ静かにこちらに近付いてくるだけなのに俺は壁端に追いやられた。
「えっと……2人とも?」
「ねえ」
彼女の機嫌は良いのに……背筋が冷える感覚は不穏な気配がするそれだった。ヘルタは俺の顔を掴んで上を向かせると、そのアメジストの瞳に俺という存在を吸い込もうとしてくる。一瞬たりとも逸らすことが出来ない。俺は既に彼女の所有物で、彼女の一部であるとこの時ようやく自覚した。
「逃げようなんて考えないでよね。あなたは、私のものなんだから」
「私たちの……ですよ、ヘルタ」
ヘルタが指を振ると、自分のものに名前を書くみたいにチョーカーにアメジストが新たに埋め込まれた。
「ふふ」
「そろそろ……次に行きましょうか」
意味深に笑う天才たちの考えはやはり読めない。もしかしなくても、彼女たちの地雷を踏んでしまったのかもしれない。俺にできるのは実験を受け入れるように、彼女たちに身を差し出すことだけだった。
「お……お手柔らかにお願いします?」
チョーカーに付けられた2つの宝石は、妖しく輝いていた。
なんか……メアレス君の童〇が天才たちに食い散らかされそうなんですけど……
R18一発目はトリスビアスを考えてたのに……
アンケート取ります!
みんなでメアレス君の貞操の奪われ先を決めよう!
R18は流石に別枠で上げるから次こっちで投稿できた時告知するよ!
失踪したら自分で見つけてね!
奪われ先
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ヘルタ&ルアン・メェイ
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トリスビアス
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アグライア
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セイレンス
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ケリュドラ
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ヒアンシー
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キャストリス
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サフェル
-
キュレネ
-
開拓者