ウワァー!!!オンパロスだこれッ!? 作:ありがとうオンパロス
本編の内容を思い出せない?
そうかではもう一度読んできてくれ。
暗い道を歩いている。その歩みは決して速くなく、走ってはいない。何処かへ目指している訳じゃないその歩みは、軽快な足音がする。近所を散歩するようなその歩みは、思いのほか険しい顔にさせる。
また明日。
そんな約束が果たされる日が来ることを心待ちにしていた自分がいる。これは、『愛』が紡いだ物語。俺が愛する皆の物語
包丁がまな板を叩く音が一定の間隔で耳に入る。カーテンの隙間から射し込む光にくすぐられ、重い体を起こす。腰にしがみついているセファリアを撫でるとゴロゴロと喉を鳴らすが、嬉しそうに体をくねらせるだけでまだ寝ているようだった。
白くて清潔な部屋には観葉植物が生き生きと根を張っている。宇宙ステーションにはない生命の息吹がそこにはあった。息を吐く。肺に空気が取り込まれ、心臓が脈打つ。俯瞰者の感覚では得られない肉の体が温かい。俺は生きていると今日も知る。
「あっ、おはようございます。メアたん」
「おはよう、ヒアンシー」
「もうすぐ朝ごはんできますから、サフェル様を起こしておいてください」
「わかった」
様子を見に来たのだろう、ふわりと柔らかな笑みを浮かべたヒアンシーの姿が見えなくなると、脚の上で寝ているセファリアの肩を揺らしてやる。
「セファリア」
しかし、いくら揺すっても起きる気配がないものだから、頬を軽く叩く。決して痛くないよう、こう……ペチペチと。
「セファリア、起きて」
「んぅ……メアレス?」
「もうすぐ朝ごはんだそうだ。起きてくれ」
「そっか……こっち来てたんだね」
溶けた目と目が合うと、意外にもすぐにセファリアは起きて伸びをする。ドロス人の彼女の背中は柔軟に反り上がる。相変わらず柔らかいなと思いながら自分も体をほぐす。全身に淀みなく血流が回り始める頃には良い匂いが鼻腔をくすぐった。
「んー、いい匂い! ほら、早く行こ」
リビングの大きなテーブルの上には鮮やかに盛り付けられた皿が並べられていた。今しがた大皿を置いたのはこの家で最もエプロンが似合うシェフだった。
「おはよう、モーディス」
「よく眠れたか?」
「ああ、昨夜は心配かけてすまない」
「救世主の奴もそうだが、一人で抱える必要はない。俺たちが力になれることなら遠慮なく頼れ」
「……ありがとう」
椅子の数は12個、そのうちの1つに座る。隣にセファリアが座り、正面にはモーディスが自分用のグラスを置いた。
「おはよう、ワタシの鯉」
「おはよう、ヘレクトラ」
次の瞬間には反対側の隣にヘレクトラが座っていた。わざわざ自分の椅子を俺の椅子にくっつけているせいで普通に座るだけで身体が触れ合う。セイレーン特有の冷涼な地肌が寝起きの頭を覚ましてくれる。
「ねえ……なんか近くない?」
「気にするなネコザメ」
「……ふーん」
そんなこんなで続々と席は埋まっていき、ついに12の椅子全てが埋まった。トリスビアス、ケリュドラ、アグライア、セイレンス、セファリア、モーディス、アナイクス、キャストリス、ヒアンシー、ファイノン……そして、キュレネ。いつだったか願った顔ぶれが並んだ。
皆が同じ場所に集い、笑いながら同じ物を口にする。俺は、皆に穏やかに、幸せになって欲しかった。その光景を
「はい、メアレス」
トリスビアスが俺の目の前に置いた皿から湯気が立ち上る。手前には1人分のカトラリーが整列している。鮮やかな朝食、美味しそうな匂いが……なんだか遠く感じた。
「
一瞬、何を言っているのか理解できなかった。そのためにこの席に座ったというのに、心は俺がここに居ないと言っているようで。幽霊になったみたいに全てすり抜けてしまいそうな予感がしていた。
「……ああ」
もし、これが夢なら……、
「大丈夫。これは嘘じゃない。あたしたちも……あんたも。みんなここに居る」
セファリアの手に握らされたフォークで皿の上の料理を捉える。ゆっくりと口に運んだ料理はとても温かくて、期待を裏切らない美味しさだった。
「美味しい」
「遠慮するな、たくさん食え」
俺が零した一言にモーディスは当然と言いながらも優しく微笑んだ。俺が食べるのを待っていたのか、みんなも朝食を食べ始める。
「ワタシの鯉」
ヘレクトラに促されるまま口を開けると料理が入ってくる。美味しい、少し酸っぱい味。
「辛いか?」
「え? 少し酸っぱい」
「ふふっ、そうだな。からかってみただけだ」
そのまま俺に食べさせたフォークを使って自分も食べ始めるヘレクトラはどこか嬉しそうだった。
そういえば、彼女たちは間接キスとか気にしないのだろうか。長い間一緒にいるから感覚が麻痺していたが、うら若い女性にしては抵抗というか、嫌悪感が垣間見えることが一切ない。それだけ信頼関係を築けたと思うと嬉しい反面、その無防備な姿に気を狂わせる者が出てこないか心配になる。
「メアレス~」
「はいはい」
とは思いつつも、俺はヘレクトラと反対側に密着するセファリアにパンを食べさせる。柔軟性を活かしてヘレクトラより密着するセファリアは相変わらず甘え上手だ。無防備だなと思いながら俺はセファリアを甘やかし続ける。
「行儀が悪いですよ、セファリア。メアレスに迷惑かけないでください」
「いいよアグライア。俺がしたくしてるんだ」
「ライアちゃんももう少し素直になったら?」
「師匠?! わ、私は別に……」
皆で食卓を囲む新しくも懐かしい、賑やかな朝食。この空間が温かいと感じるのは俺の『心』が息をしているからだった。少しだけ、この命が地に足ついたような気がした。
朝食を終えて、木を背に黄金の穂波を静かに眺める。新生したこの星の風はとても優しい。俺の事なんて憶えていないだろうに、労うように髪を撫でてくれる。綺麗に輝く地平線の先にはまだ俺の知らないオンパロスがあるのだろう。
「隣いいかい?」
「どうぞ」
白髪の青年は俺の隣に腰を下ろして同じように穂波を眺める。互いに同じ方向を向いて、肩を寄せて、静かに息をしている。しばらくして、青年は口を開いた。
「恨んでるかい?」
「まさか」
呟きみたいな短い言葉だけが流れて、再び静寂が訪れる。爽やかな風が二人の間を通り抜けた。今度は俺が口を開く。
「君自身の願いごとはできた?」
「いや……まだ探しているよ」
また風が吹いた。
「よく頑張ったな」
ファイノンの頭を撫でながら抱き締める。光を受けた白髪は金色に輝いて見えた。
「ありがとう。俺たちの救世主」
「ぁ……っ……!!」
2人の間に多くの言葉は必要なかった。俺たちは互いに唯一の理解者だった。しばらくの間、黄金の麦畑が広がる景色の中、俺は風の音しか聞かなかった。
「やっぱりここにいたのね」
そう言って、俺たちを見つけたピンク髪の美少女は妖艶に微笑んだ。その顔は見たことがある。なにか、悪戯を思いついた顔だ。俺の隣に座った彼女は俺の顔を覗き込む。
「ファイノンを泣かせるなんて……悪い人♪」
「酷い風評被害だ」
「メアレスは一体、どれだけの人を泣かせるの?」
「俺は悪い人だ。どうしようもなく。誰か俺を殺してくれ」
「嘘嘘、冗談よ!」
「キュレネ、彼をあまり困らせないでくれ」
俯く俺を慰めるように背中を摩るキュレネの手が温かい。こうした接触が、数々の体感が俺が生きていると教えてくれる。
「まだ……苦しんでいるの?」
「……ほんっと。キュレネに隠し事はできないなあ」
「メアレス」
芳ばしい麦と甘い花の香り、2人の抱擁が俺の体を包み込む。何故、この2人なのか。一層特別な存在であったからか。葉を垂らす露が落ちたように、頬を伝う雫の意味を知る。
俺は確かに此処に、生きている。生きたいと叫ぶことが許されている。
世界が『記憶』したのは皆の物語じゃなく、
「さっさと受け入れろって話だよな……」
「大丈夫よ。メアレスのペースでいい。あたしたちはいつまでも貴方に『愛』を伝え続けるから」
「どれだけ時間がかかろうとも、僕たちがメアレスを支えるよ」
「まったく……」
これは、俺たちの物語のその先。誰も内容を知らないけど、確実により良いものになっているだろう。
「大好きだよ」
だから、これで良かったんだと思う。
「「知ってる」」
「ははっ、敵わないや」
満開の笑顔で俺は言った。
「あ、そう言えば晩餐にメーレは出るのか? 久しぶりのあの味が」
「ダメだからな?」
「え、でも」
「やめておいたら?」
「いいじゃないか減るもんじゃないし」
「減るよ? 彼女たちの理性が音を立てて」
「え?」
「え?」
「……え?」
忙しいなりに書いてはいるのでよろしくお願いします。
個別ルート的な絡みも書いていきたい。
奪われ先
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ヘルタ&ルアン・メェイ
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トリスビアス
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アグライア
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セイレンス
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ケリュドラ
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ヒアンシー
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キャストリス
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サフェル
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キュレネ
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開拓者