ウワァー!!!オンパロスだこれッ!?   作:ありがとうオンパロス

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すっごい沢山の人に閲覧されてる……怖


辛辣ゥ!

 

 

「おい、誠忠卿」

「なんでしょうかカイザー?」

「お前は……その、弱いな」

 

 偉大なるカイザーは配慮もできる。俺の醜態を見ても必死で言葉を選んでくれたのだろう。だが、その言葉は俺の心をとてつもない速度で貫通し、俺は崩れ落ちた。

 

「非力、鈍重、剣の腕も並……だが、頭の回転が速く参謀としての素質はある」

「褒めてるのか貶してるのかどっちなんですか?」

「最初の臣下が武力に劣っているとなると、やはり武力に長けた者を登用する必要があるな。このままではろくに攻勢に出れん」

 

 

 永劫回帰1回目、俺はこの事態に狂う間もなくカイザーの忠臣として働き始めた。俺が目覚めた時代は紛争紀、タイタン(神々)と人が戦争している時代だった。

 

 俺を起こしたケリュドラはまだ皇帝に成り上がる前の、《法》の火種を手にする前のカイザーだった。俺は彼女の最初の臣下となり、これからの征途を歩もうという時、俺の現状が露呈した。

 

「私は商人なんです! 剣なんてまともに持ったことありません。武力を求められても困ります」

「では商人、商品はどこだ?」

「……私は商人ではありません!」

 

 俺はクソの役にも立たない臣下だった。鎧を着れば木偶の坊、剣を振れば回らない独楽。かと言って見窄らしい身なりに寒い懐は到底商人とも言えず。千年積み上げた俺の商人としてのプライドは酷く傷付き、あまりの悔しさに俺は市場に飛び出した。

 

「絶対にカイザーのお役に立ってみせます! 今に見てください、軍資金なんて簡単に賄ってみせます!」

 

 

 

 数年後、俺は小さな質屋でささやかな利益を得るに至った。

 

「誠忠卿……」

「……何も言わないでくださいカイザー。……あ、これは腕に自信がある者のリストです。コンタクトは取ってるので気になる者を登用してください」

 

 リストを取り出した途端、カイザーが見たことのない表情になる。やはり俺に失望したのだろうか。あれだけ大言壮語を口にしておきながらこの体たらく……切腹を考えた方がいいだろう。

 

 カイザーは呆れたようにため息をついてリストを手に取り目を通すと、再びため息をこぼした。

 

「行くぞ誠忠卿」

「今からですか?」

「お前のせいで数年動けなかったからな。まずは王冠を手に入れる。着いてこい誠忠卿、栄光の始まりを見せてやる」

 

 


 

 

 征途は万事順調とは言えないものの、カイザーの威光はオンパロス中に轟くことになった。その過程で分裂した最初の半神、トリビーを保護し再創世の神託を法令とした。これが火を追う旅の始まりであり、永劫回帰の地獄を生み出す要因となる。

 

 

「誠忠卿、お前から見て彼女はどうだ?」

「ヘレクトラ殿ですか? 剣の達人であり一騎当千の戦力となる傑物かと。あとは《海洋》の火種は彼女にしか継げないだろうということくらいですかね」

「……そうか、では彼女を《剣旗》とする。異論ないな?」

「なぜ私に聞くのですか?」

 

 カイザーの周りには優秀な人材が集まった。女皇たる彼女は英雄たちを従えるのが相応しい。しかし、いつまで経っても彼女の隣は俺のままだった。

 

「セイレンス、私はなぜカイザーに重宝されていると思う?」

「……どうしてキミはそう自己評価が低いんだ、鯉。キミは作戦参謀だ。重宝されるのは当然だと思うが」

「私には兵法の心得なんてありませんが?」

「だがキミはよくカイザーとチェスを打っていると聞くが」

「私は机上遊戯と戦場を一緒のように考えることはできません。そもそも、彼女に1度も勝てた試しはない。私の作戦が今まで上手くいってるのもたまたまです」

「……まあ、これでも飲め」

 

 愚痴りたい口を一度閉じて差し出されたメーレを一気に呷る。セイレンスにはいつも付き合ってもらって悪いが、この時間がないとやっていけないくらい俺はやさぐれていた。冷えたメーレが喉を伝い、アルコールが全身を駆け巡る。

 

「いつも付き合ってもらって悪いなセイレンス。また宴でもしようか。他にも何かあればなんでも言ってくれ」

「本当に……何でもか?」

「ああ、こんな美人の頼みを断れる奴はいないさ。俺は……君たちのためならこの魂すら捧げていいと思っている。全てを君たちの幸せに捧げることこそ俺が今生きてる理由なんだ。幸せになってくれ、ヘレクトラ」

「……まったく、キミはいつもそう言ってくれるな」

 

 酩酊後の記憶はいつも無いが自室で目が覚める。愚痴をこぼし、酒を飲み、介抱されて目覚める、そしてセイレンスに介抱の礼をするまでルーティン化してしまっている。情けないと思いながらも、俺は自身を騙すためにセイレンスに迷惑をかけ続けた。

 

 


 

 

 時は過ぎ、カイザーは黄金裔の英雄たちを招聘し、黄金戦争を終結させた。カイザーの偉大な名は歴史に刻み込まれ、聖都オクヘイマの統治者に君臨したカイザーは俺に問うた。

 

「誠忠卿……貴様、なぜ老いない?」

 

 とうとう来てしまった、と思った。出自不明、年齢不明、そして不老の化け物。黄金裔でもない俺は再び金糸の裁定を受けることとなった。

 

 しかし、懐かしさを感じながら行われた裁定は無事に俺の忠義と誠実を表し、俺はカイザーの臣下として正式に受け入れられた。

 

「まったく、そういった類のものは事前に言っておけ。無駄な時間を使った。貴様……他にも僕たちに言ってないことはないだろうな?」

「もうありませんよ。不老(これ)のことも忘れていただけで……」

「いい加減にしろ! どうしてお前はいつも重要なことを後から伝えてくるんだ」

「そんな……資材明記も各都市国家の動向も、カイザーへの報告が滞ったことはありませんよ!」

「そういうことを言っているんじゃない!」

 

 カイザーの臣下としての生活は充実したものだった。作戦参謀として祭り上げられてはいるが、黄金裔たちの力になれているのが前回より実感できている。それが堪らなく嬉しかった。

 

 


 

 

 しかし、これは永劫回帰。そろそろ永劫回帰の張本人であるファイノンがケリュドラに接触しようとするだろう。ファイノンの目的は偽りの再創世の阻止、火種の回収。初めは平和的な解決を模索する彼だが、幾度も繰り返される輪廻で仲間たちの生存を諦めるようになる。

 

 俺の第1目標はファイノンの精神を限界まで支えること。第2目標は黄金裔たちの安らかな最期を見守ること。第3目標は……いや、これ以上を望むことはない。

 

 

 ケリュドラに火を追う旅から舵を切ってもらうための準備を俺は水面下で進めてきた。全ては彼らの幸せのために、俺は首を切られる覚悟を持って事を進めた。

 

「よし、あとはファイノンが来るだけだ」

 

 全ての説得材料が整い、残すところはファイノンの来訪のみとなった時、自室の扉が叩かれた。

 

「誠忠卿、少しお話があるのですが、今大丈夫でしょうか?」

 

 扉の向こうから聞こえたのは聞き覚えのある声だった。扉の前まで歩く最中、なぜか窓から射し込む黎明が薄ら寒い気がした。嫌な直感を信じて慎重に扉を開ける。しかし、扉の先に現れたのは信頼する部下の1人だった。ホッと胸を撫で下ろし、要件は何かと聞こうとして

 

「この……裏切り者め!」

 

 突然強く押されたが、なんとか後ろに倒れずに済んだ。しかし、腹が熱い……いや、寒い? 全身から力が抜けていく不思議な感覚だった。

 

「どうして裏切ったんだ!」

 

 部下は俺を押し倒して何かを抜いた。赤い血がベッタリと付着したそれは、俺が記念に与えたナイフだった。そこでようやく、俺は刺されたのだと気付いた。

 

「この! この!」

 

 1回、2回、馬乗りになった彼が俺の内臓を壊していく。俺の1回目の永劫回帰は……呆気なく終わった。

 

 


 

 

「……誠忠卿はどうした?」

 

 ファイノンがオクヘイマに来ることになって、ケリュドラは自身の最も忠実なる臣下に意見を求めようとした。しかし、彼の姿はどこにも見当たらない。他の臣下に聞いても揃って知らないと口にするばかりである。初めてのことに憤りを感じながらも、寛大なカイザーは一先ずファイノンに会うことにした。

 

「全て話そう。なぜ神託から外れて、再創世の道を探さなければならないのか……」

 

 ファイノンの話はとても信じられるものではなかった。確かに、金織卿や運命卿の神託を言い当てたのは驚愕ものだったが、神託の再創世の否定は信じるには情報が曖昧すぎると感じた。何より、まだ最も己の近くに居るべき臣下の意見を聞けていない。

 

「まったく……どこをほっつき歩いている?」

「誠忠卿はこの頃とても忙しくしていたからな。きっと疲れて休んでいるだけだろう」

「それでも僕が求めれば必ず現れるのが誠忠卿だ。そうだろう?」

「それは……そうだが……」

 

 静かな回廊に不穏な空気が漂い始める。

 

「彼の部屋は見てみたのか?」

「いや、まだだ……」

 

 嫌な予感はますます膨れ上がり、部屋へ向かう2人の足は気付かぬうちに速くなっていく。

 

「すまないカイザー、先に行く」

 

 耐えきれなくなったセイレンスが全速力で廊下を駆ける。道中の障害物などお構いなしに一直線で部屋の前に来たセイレンスの鼻に、嫌な匂いが入る。

 

「ぅ……」

 

 堰を切ったように逸る気持ちが溢れ、扉を力ずくでこじ開けた。セイレンスは願った。どうか杞憂であってくれと……。

 

 

「あ……ああ……あああああ…………!」

 

 

 

「剣旗卿!」

「来るな、カイザー!!」

「……は?」

 

 

 ()()は、見覚えのある服装をしていた。()()は、赤い血だった。()()は、()()は、()()は、()()は……

 

 

 

 

 死んだ忠臣だった。

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