ウワァー!!!オンパロスだこれッ!?   作:ありがとうオンパロス

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感想に反応していきたいが、書く手が止まらないので時間がない。
愉悦しながら全てに目を通してます。本当にありがとうございます。


マズイ!もう一杯!

 

 

 2回目の永劫回帰、《死》の抱擁によって俺の魂は冥界に送られてしまった。このままでは彼女たちの元に戻れない俺は、冥界の出方を探りながら考える。どうすれば現状を打破できるのか。

 

 

 俺は今回、カイザーの兵士として訓練を積んできたが、正面から敵を倒すことは最後までできなかった。今後カイザーの軍に入ったとして、武功で成り上がるのはまだまだできそうにない。挙句の果てには、キャストリスのことも泣かせてしまった。俺には力が必要だった。

 

 ファイノンに会うのも、黄金裔のみんなに最期まで寄り添うのも、生き抜く力を持っていることが前提にある。

 

 結局、地道に鍛えることだけが全ての解決策になることがわかった。

 

 

 最後まで冥界から出られず迎えた3回目の永劫回帰……俺はステュクスの中で目を覚まして、そのまま溺れて死んだ。

 

 


 

 

「貴方はもういないのですね」

 

 《死》の半神として冥界に来た時、あの人の魂は《死》の権能では見つけられなかった。今度は自分で巻いたリボンを握ってくれる人は……どこにもいなかった。

 

『さようなら』

 

 あの人の顔も声も、体温も存在していたはずなのに。まるで最初から存在していなかったみたいだった。忘れないようにリボンを握る。これは……あの人がくれた物ではないのに。

 

「忘れたくない……」

 

 

 咲き誇る花海が雫で少し俯いた。

 

 


 

 

 4回目の永劫回帰、半分狂いながら迎えた目覚めはちゃんと大地に足が着いたものだった。前回の永劫回帰は俺の完全なトラウマになってしまい。課題に目覚めのコントロールが追加された。

 

「今はどの時代だ?」

 

 

 それから俺は何度も戦場で命を落とし、何度も黄金裔たちの最期を見届けた。ある最期ではカイザーたちに合流できず、ある最期では孤独の中で、ある最期ではタイタンに身を裂かれて。俺は計150回の様々な死を迎えた。だが、俺は死ぬことより黄金裔の皆の悲惨な最期を見ることの方が遥かに苦しかった。

 

(血を流せ、()()()()()()()()()()

 

 


 

 

 そして迎えた155回目の永劫回帰、俺は兵士としてそれなりに戦えるようになっていた。

 

「クレムノスに敗北を与えた戦士よ。貴様に褒美をやろう」

「でしたら、貴女様の《剣旗卿》に教えを賜りたいです」

「ワタシか?」

「私は強くならなければいけない。貴女様の剣技を学ぶ機会を、どうか頂けないでしょうか?」

 

 やっとまともな武勲を立てられた褒美に俺は《剣旗卿》に剣を教わり。遂に戦乱の時代から最初に目覚めた時代、ケリュドラがオクヘイマの統治者となった時代まで生き抜くことができた。

 

 

「ようやく……だ。戻ってきたぞ、オクヘイマ」

 

 目標に1歩近付いたことを実感していると、潮の香りと綺麗な声音が俺の隣に来ていた。

 

「《誠剣卿》、カイザーが呼んでいたぞ」

「今行きます、師匠」

「師匠はよせ、ワタシの鯉」

「……そうでしたね、ヘレクトラ様」

 

 今回は俺の忠誠もカイザーに届いたようで、今までで1番順調な永劫回帰になっている。今回こそ悲惨な最期にはさせない。これからの3300万回の永劫回帰全てで彼女たちから悲しみを消し去ってやる。そう胸に決めて、俺はカイザーの部屋に参上する。

 

「来たか、《剣旗卿》、《誠剣卿》。これから、暗黒の潮への遠征の作戦会議を始める」

 

 

 この世界を終焉へと呼び込む暗黒の潮……思い返せば、俺はまだ暗黒の潮に呑まれたことはなかった。冥界に繋がるステュクスで死んだ時はまた冥界に囚われることになったが。壊滅の力を宿した暗黒の潮……その中で死ぬと一体どうなるのだろうか。

 

「《誠剣卿》、何かあるのか?」

「いえ、お気になさらず、カイザー」

「……本当にそうか? お前はいつも言葉足らずだ。僕が許す、話せ《誠剣卿》」

「……暗黒の潮の中で死ぬとどうなるのかを考えていました」

「それで、お前の見解は?」

「冥界……西風の果てに行くことができないのではないかと考えます」

「そうか、今考えることではないな。集中しろ《誠剣卿》」

「これは少し酷くないですか?」

 

 会議は基本、カイザーの作戦を実行できるかどうかを確認するだけの場である。時々、俺に意見を求めるが俺は少し補足する意見しか出せない。カイザーの声を聞いているだけで、特に何もなく会議は終了した。

 

「ワタシの鯉、この後どうだ?」

 

 会議終わりの帰り道、ヘレクトラが杯を傾けるジェスチャーで誘ってくる。彼女は生粋の宴好きなはずなのだが、最近のような宴がない時は俺をこうして誘ってくれる。

 

「またですか?」

「いいだろう?」

「いいですけど……」

 

 もちろん、断る理由もないので毎回付き合うのだが、俺はメーレに弱いので毎回記憶がない。何かやらかしてないか不安になるが、こうしてヘレクトラが誘い続けてくれるということはそんなに悪い酔い方はしていないのかもしれない。

 

 


 

 

「俺が絶対幸せにしてやる、ヘレクトラ」

 

 泥酔した彼はいつもより口が回るようになる。彼の言葉はどれも嘘がなく、心地よい。惜しむらくは、酔った記憶を覚えていないことだろうか。

 

「本当にありがとうヘレクトラ。貴女のお陰で俺は強くなれた」

「キミの決死の覚悟が実を結んだんだろう。あのクレムノス軍を相手に正面から突撃した時は正気を疑ったが……やはり、何か仕込んでいたんだろう?」

「俺は正面から敵を倒せるようにならないといけないが、剣や肉体だけでは勝てない。ならば使える手を全て使ったまで……。兵法を少しは理解できた気がする」

「その言葉を他の者が聞けば憤慨するだろうな」

 

 彼と酒の席を共にすることは愉快だ。カイザーは戦後にしか祝宴をしないが、彼とのこの小さな宴はいつでもできる。彼はワタシの言うことは断らないから、全てワタシの望み通りだ。

 

「ああ……ヘレクトラ。最近、宴をしていないな。貴女は宴が好きだろう? ヘレクトラが言いにくいなら……俺が、カイザーに……」

「……ふふ、覚えていないのによく言う」

 

 どうして彼はいつもワタシの望みを叶えてくれるのだろう。けれども、彼の視線は確かにワタシに向けられているのに、目が合わない。彼の目を奪ってしまえば……その視線を独り占めできるだろうか?

 

「ヘレクトラ……」

「なんだ? ワタシの鯉」

「今度こそ……最期まで……」

 

 そう言って、彼は寝落ちしてしまった。ワタシは残った肴とメーレを平らげて彼を寝台へ乗せると、その隣に身体を預けて眠りにつく。気持ちよく酩酊した後、眠るまで彼の髪をとくのが好きだった。それだけでワタシは幸せだったんだ。

 

 


 

 

 準備が整い、暗黒の潮への遠征が始まった。

 

「怯むな! 勢いをつけさせたら陣形が崩れる。倒すことより足を止めることを第一に考え、足を止めさせたら素早く仕留めろ!」

 

 指示を飛ばしながら剣で造物を斬り倒していく。暗黒の潮の造物との戦闘経験は対人経験より少ないから心配していたが、積もり積もった3万年分の戦闘経験は裏切らなかった。

 

「う、うわああ!」

「怯むな! カイザーが誇る兵士であるならば、戦い抜け!」

 

 戦況はこちらが有利だが、敵の数が多く不明瞭な分、兵士たちの負担が大きい。しかも、いつもの小手先の仕掛けも暗黒の潮相手では通じない。耐久戦に持ち込まなければならないが、長引けばこちらが不利になる。

 

「《誠剣卿》、避けろ!」

 

 ここまで順調だったから油断していたのか。強くなったことに自惚れていたのか。その造物の矢は、傲慢な俺を裁くかのように俺の胸を貫いた。瞬間、身体中に壊滅のエネルギーが流れ込み、俺の意識を刈り取った。

 

 

 

「鯉……?」

 

 


 

 

 黄金裔たちに流れる黄金の血……それは、壊滅の因子の証明。このオンパロスを包み込む壊滅がもたらした最初の祝福。そして、この物語の登場人物である証である。

 

 

 壊滅のエネルギーが心臓から全身に流れるのを感じる。一瞬でも気を許してしまえばボロボロに砕けてしまいそうになる。しかし、壊滅(それ)に悪意はない。それは誰のものでもない衝動であり、いずれ世界を救う種だ。

 

「……ん」

「起きたか、ワタシの鯉」

「ここは……、遠征は?」

「安心しろ、ワタシたちは暗黒の潮の凱旋に成功した。ただ、キミは矢を受けて気を失っていただけだ。目が覚めて……本当によかった」

 

 彼女は嘘をついた……何が嘘なのかはわからないが、彼女と長い間過ごしてきた直感が彼女の嘘を見抜いた。周囲を見渡しても、輸血用の管しか見当たらない。その輸血液パックも、丁度取り外されたばかりのようだった。

 

「赤い血の輸血液があったんですね」

「……ああ。体の方は大丈夫か?」

「もう少ししたら動けると思います。カイザーへの報告は任せていいですか? ヘレクトラ様」

「了解した。キミは安静にして寝ておけ、ワタシの鯉」

「いや、その必要はない《剣旗卿》」

 

 部屋の中を覇気を纏った声が切り裂いた。いつの間にか扉の前に居たカイザーは俺を見て目を細める。……安堵、しているようだ。

 

「《誠剣卿》、傷の方はどうだ?」

「問題ありません。戦闘に支障はないでしょう」

「そうか……。貴様、わざと矢を避けなかったな?」

「……な、な、なんのこ」

「黙れ。貴様、避ければ僕に当たると一瞬迷ったな?」

「……」

 

 戦場での負傷なんて当たり前にあることなのに、どうしてカイザーはこんなに俺を気にかけるのか。これが分からなかった。

 

「前の戦場でもそうだったな。お前はどうして戦いながら常に僕の位置を把握しているんだ」

「いえ、カイザー、貴女は前に出過ぎです。今回の戦場は遠征でしたが籠城戦のようなものでした。もっと後方で」

「黙れ」

「……はい」

 

 反射的に正座になった俺をカイザーが見下ろす。わからない……、カイザーが俺の何に怒っているのかわからない。彼女の炎冠は激しく燃え盛っているのを見ると、相当だ。やっぱり切腹の準備をしよう。

 

「……だから、今度はお前を僕から離す」

「切腹ですか?」

「次の戦場、お前は最後方だ。そのつもりでな。休養は必ず取るように」

 

 そう言って、カイザーは部屋を出て行った。今回のカイザーの真意を俺は読み悩んでいた。切腹用の小刀は気付けばヘレクトラに取られていたし、俺もまだまだ鍛錬が足りないな。

 

「もう寝ろ、ワタシの鯉。キミは疲れてるんだ」

 

 血液不足という点では……否定できなかった。

 

 


 

 

 次の戦場は、『第1次火を追う旅』。カイザーは《海洋》のタイタンへ剣先を向けた。カイザーとヘレクトラが物語から退場するきっかけとなる戦いであり、多くの黄金の血が一度に流れる戦いでもある。

 

 俺は、最後方に配属されたことを激しく後悔することになった。

 

「今回は一緒の所だな、ワタシの鯉」

 

 今回の戦いで、カイザーは多くの黄金裔を《法》の試練の生贄として犠牲にするつもりだ。最強の戦力であるヘレクトラが最後方に居てはカイザーを止められない。最悪なのは、今のままではカイザーの試練の犠牲の数が足りないということ。それが原因でカイザーは狂い、ヘレクトラの剣によって最期を迎える。

 

 だが、今回は生きた俺がいる。

 

 ようやくと言うべきか、俺は初めて彼女たちの最期へ挑戦する権利を得た。

 

 

「報告します。後方から《海洋》の造物が接近!」

「行くぞ、ワタシの鯉」

 

 剣がこれまでの道のりを示すかのように重く感じたが、俺は覚悟を持って剣を握った。もう俺は非力でも鈍重でもない。俺は強くなった。

 

「ヘレクトラ様、急いで終わらせよう。嫌な予感がする」

「ああ、キミがそう言うならそうなんだろう」

 

 襲い来る《海洋》の造物を殲滅し、海路を断つのに時間を取られていく中、俺は運命の2文字を思い出していた。

 

 


 

 

「カイザー!」

「早かったな、《剣旗卿》に《誠剣卿》」

 

 俺とヘレクトラが前線に戻った時、先遣軍は既に全滅していた。カイザーは俺たちが来たことを確認すると、狂気に飲まれた目を向けた。俺は遅すぎたのだ。

 

「カイザー……聞かせてください。先遣軍の意味を」

「意味? 彼らは僕のために死に、僕が《法》の神となる道を整えてくれたのだ」

「……《法》の試練ですね?」

「流石だな《誠剣卿》。なら話が早い」

 

 カイザーと対峙する俺を、ヘレクトラは困惑した顔で視線を彷徨わせた。

 

「待ってくれ。つまりカイザー、キミは彼らを犠牲にしたと? 彼らの忠誠心は、キミにとってなんの価値もないものだったのか!?」

「『火を追う旅は喪失の道。その中では、命さえも些事となる』」

「ならなぜ、ワタシと鯉を遠ざけた?」

 

「失望しましたよ、カイザー」

 

 俺の言葉にカイザーの瞳が揺れ動いた。彼女もまた、運命に傷付けられた1人なのだ。そのことが確認できた俺は、剣を立てて忠誠を誓う構えを取る。

 

「貴女が仰れば、私も手伝いました」

「鯉っ!」

「先遣軍の顔ぶれを見たら貴女が黄金の血を求めていたことがわかります。私は贄にはなれなかった。ならば私に命じて下されば、知性のない造物共より素早く終わらせていました。悲鳴も怒号も、貴女ではなく私に浴びせられていたはずです」

「……《誠剣卿》」

「私の忠誠はこの魂が燃え尽きようと消えない! 貴女がどのような非道を歩もうと、私は支え続けると誓ったんです!」

 

 俺は剣をカイザーの首へ向ける。震えてしまいそうになる手を冷酷に抑え、間違っても傷にならないようにする。

 

「カイザー、《法》の火種を渡してください。忠誠を誓ったはずの《誠剣》は愚かにも女皇へ剣を向け、多くの黄金裔を殺して《法》を奪い去っていった。これが俺の考えた結末です」

「待て、鯉。ワタシの言うことを」

 

 次の瞬間、何者かが急速に接近してきてカイザーに斬りかかった。カイザーに最も近かった俺が反応して間に入ったが、その者の剣は容易く俺を斬り裂く。意識を落としそうになるのは耐えたが、どろりとした血が腹から溢れ出した。

 

「誠剣……卿?」

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()。彼がどのように火種を集め、どうして仲間に剣を向けるようになったのか。彼は救世の道を歩む者、俺は影に残り続ける者、少なくとも今……俺にとってお前は敵であり、支えるべき対象だ。

 

()()()()()()

「火種を……渡せ」

 

 さあ、感動の再会だ。

 

「ヘレクトラ様……カイザーを頼みます」

「っ! 待て《誠剣卿》!」

 

 俺はカイザーが持つ《法》の火種をかすめ取り、全速力で走り出す。そういえば、初めてカイザーの命令に逆らった気がする。誠実な忠臣を貫き通していたはずなのに……こんな形でカイザーを裏切ることになるなんて。

 

「火種が欲しいのか?」

「……火種を渡せ。そうすればお前は無駄な苦しみを感じなくて済む」

「優しいな……()()()()()

 

 


 

 

 目の前の死にかけの男には得体の知れない不気味さがあった。ついさっき受けた傷は致命傷には至らなかったものの、滴り落ちる血は無視できるものではないはず。それでも、目の前の男は不敵に笑った。

 

()()()()()、俺の敵よ、今こそお前に立ち向かおう。両者の信念の為に。お前を敵にさせない為に」

 

 どうしてか僕の名前を知るその男は、死にゆく体で剣を握った。

 

「お前は誰だ?」

「今……お前に名を明かせるほど俺は冷静じゃない!」

 

 彼の剣は既に繊細さを失っていたが、それを補い有り余るほどの重さがあった。彼の赤い血は、彼が黄金裔ではないことを表している。これまでの永劫回帰で赤い血を持つ英雄は見たことがない。僕の前に初めて現れた英雄は、だけど僕に底見えぬ程の敵意を抱いていた。

 

「ずっと……ずっとお前を探してた! 何度諦めようとしたか。何度、お前のせいで狂ってきたか!」

 

 彼が剣を振る度、彼の傷口から血が飛び散る。命を散らしながらも彼の瞳から輝きが消えることはない。まるで、壊れた水瓶のように言葉は彼の口から零れ続ける。

 

「誰1人……見捨てたくない! 何度もあると安堵したくない! いつか救われる君たちの……今日に手を差し伸べたい! ……コフッ」

 

 ついに赤い血は彼の気道を塞ぎ込んで、不屈の剣は地に落ちた。倒れゆくその男を、僕は何故か受け止めていた。

 

 

「ごめん……ファイノン……こんなことを言うつもりじゃなかったんだ」

 

 男は《法》の火種を僕の手に乗せると、力無く呟いた。

 

「『君の救世の道は必ず果たされる』」

 

 その預言は、神託よりも強い力を帯びていた。

 

「カイザーたちを殺さないでくれ。そんな光景は見たくない」

 

 彼の瞳の中の輝きが曇っていく。

 

「……ああ、その首飾り……まだ着けてくれ……た……」

「っ! 待て、お前は……いや、貴方は……!」

 

 

 最後に零れた彼の血は……()()()()()()()()

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