ウワァー!!!オンパロスだこれッ!?   作:ありがとうオンパロス

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最後にあなたは、『おいバカやめろ』と言う!


ガチャは悪い文明……せやっ!

 

 

 155回目の永劫回帰、《誠剣卿》が矢を受けて眠る簡易医務室にて、ケリュドラと《剣旗卿》は睨み合う。

 

「落ち着け《剣旗卿》」

()()()()()()()()()。なら早く黄金裔の誰かの血を輸血すればいい。簡単なことじゃないか!」

「落ち着けと言っているのが聞こえないのか《剣旗卿》!」

 

 あまりにも珍しい2人の言い争いに周囲の臣下は萎縮しきってしまい。衛生兵は手を動かせないでいる。数秒の差が命に関わるこの場面でも、ケリュドラはただ一人冷静だった。

 

「貴様も知っているだろう。《誠剣卿》は黄金裔ではない」

「なら何故、鯉は金色の血の中に倒れていたんだ」

「……僕は見た。《誠剣卿》の血は流れ出た後、()()()()()()()()()

 

 ケリュドラは思い返す……あの時、倒れた《誠剣卿》の血はいつもの赤い色をしていた。しかし、暗黒の潮の造物の矢が()()()()()()()()()()()と、彼の流れ出た血が黄金に変わっていった。

 

『これは……』

 

 最初は見間違いだと思った。だが、見慣れたそれを見間違える訳がない。忠臣の異常に落ち着きを取り戻そうとする中でも、ケリュドラは見逃さなかった。彼の口から漏れ出る血は……未だ赤い血であった。

 

『鯉……ワタシの鯉!』

『……っ、衛生兵!』

 

 速やかに救命措置を行ったことで命に別状はなかったが、失い過ぎた血液を輸血しないと危険な状態だった。そこで問題に戻る。彼にはどちらの色の血液を輸血すべきなのか。

 

「もういい、ワタシの血を輸血すればいい。衛生兵」

 

 セイレンスに呼ばれた衛生兵は我に返って必要な器具を取り付けようとして……ケリュドラがその腕を掴んだ。

 

「いや、僕だ……僕の血を輸血させた方がいい」

 

 その後も喚く《剣旗卿》を無理矢理黙らせ、ようやく《誠剣卿》への輸血が始まった。

 

「《誠剣卿》への輸血は僕の血を使う。決して他の血を入れないように!」

 

 今の彼の状態を考えたらこれが唯一考えられる選択だった。純正な黄金の血より、少々特殊な自分の血を輸血する。後は、彼の忠誠心が報われることを願うだけだった。

 

「ポーンがプロモーション(昇格)へ至ったのか。はたまた……それが()()だというのか」

 

 凱旋の道中で輸血用に血液を採血されながら、ケリュドラは彼の異常について考える。傷を受けたことによる黄金裔への覚醒……それにしては不完全すぎる覚醒だ。流れ出た血だけ黄金に変わる事例なんて聞いたこともない。しかし……もし彼が黄金裔として覚醒したのならば彼も贄にできる。

 

(……いや、彼は赤い血だ。黄金裔ではない)

 

 思い浮かんだ自身の仮説に目を瞑り、彼をセイレンスに託すべきだと判断する。もし自分に何かあっても、あの2人ならなんとかなる。そう断言出来る自慢の忠臣だ。

 

(2人なら……そう、あの2人は……仲が良いからな)

 

 


 

 

「失望しましたよ、カイザー」

 

 彼の底冷えた失望の声は、反旗を翻されることより恐ろしかった。彼ならば理解してくれると心のどこかで希望を抱いていた。例え全てを誤ってしまったとしても、彼だけは傍に居てくれると思っていた。

 

「カイザー、《法》の火種を渡してください。忠誠を誓ったはずの《誠剣》は愚かにも女皇へ剣を向け、多くの黄金裔を殺して《法》を奪い去っていった。これが俺の考えた結末です」

 

 なのにどうしてお前は、僕の元から離れようとするんだ?

 

「誠剣……卿?」

 

 どうして、僕を庇うんだ?

 

「ヘレクトラ様……カイザーを頼みます」

 

 

 

 

「カイザー、奴を追うぞ。……カイザー!」

「……お前だけで行けばいいだろう」

「カイザー?」

「僕はもう……彼の主君じゃない。行ってこい、お前は彼の師匠だろ?」

「こんな時に何を……」

 

 いっその事、怒りのまま剣で貫かれればよかったんだ。消えない忠誠に生かされるより、そっちの方がましだった。

 

「《法》の火種も、カイザーとしての信頼も、全て失った。僕にはもう何も残ってない」

「ふざけるな!」

 

 セイレンスが胸倉を掴んで持ち上げられる。このような体格差を気にする気力すら、僕には残っていなかった。

 

「彼の忠誠が残っているじゃないか! それに応えるのが、キミがカイザーとして生きる理由だ!」

 

 彼を裏切った……それが彼の忠誠を失わせるだろうか? 彼に傷を負わせた……それが彼の忠誠に傷を付けるだろうか? ……否だ。彼は何があろうと僕の忠臣で、僕の剣だった。

 

「……すまない《剣旗卿》。少々取り乱していた」

「謝罪はいらない。今は一刻も早く……」

 

 

「彼のことを……教えてくれないか?」

 

 何が僕の剣だ。全てを誤った僕に……一体何が許される?

 

 


 

 

 彼から黄金の血が流れていく。その黄金の血液は、赤い血の英雄だった彼を侮辱するみたいに光沢を帯びていた。

 

「ワタシの鯉に触れるな!」

 

 僕の腕の中の彼がセイレンスに奪われるが、もう彼は生きていない。あの日、彼は人の本質は想いだと語ってこのネックレスをくれた。この永劫回帰の中、僕の名前を呼んでくれたその人を、他ならぬ僕が殺したんだ。

 

「鯉……大丈夫か? ……鯉?」

 

 セイレンスは何の反応も返さない彼を呼び続ける。触れた瞬間には気付いたはずだろうに、健気に彼に声をかけ続けた。

 

「なあ……ワタシの鯉。目を覚ましてくれ。キミの寝顔は見飽きることはないが、今は寝る時間ではないぞ。ああ、酷い怪我だ。今すぐ衛生兵を呼ぼう。また輸血が必要になるな。今度はワタシの血で輸血しよう。治ったら稽古をつけてやる。キミは頑張ってるからそろそろキミの剣を鍛冶師に打たせなきゃと思ってたんだ。この戦いが終わったら受け取る予定で……プレゼントしようと……」

 

 彼の話を聞きたかったが……それどころではないようだ。この場を立ち去ろうと踵を返すが、カイザーが僕を呼び止めた。

 

「待て。貴様はなぜ火種を狙う」

「……僕の全ては()()()()()()()()。安心しろ、カイザー。君たちの命は奪わないと彼と約束した」

「安心……安心だと? 僕の最も忠実なる臣下を殺しておいて……」

「僕は彼との約束を破りたくはない」

「……」

 

 背を向けて歩く僕をカイザーの炎が襲いかかることはなかった。そのまま場を離れた僕は、また再創世を阻止するために火種を集めていく。

 

 

 結局、今回の永劫回帰で彼が何者だったのか知ることはできなかった。

 

 


 

 

「ワタシの鯉……」

 

 彼の体はこんなにも冷たく、重かっただろうか? まだ中に残っている《これ》は、元々こんな色をしていだろうか? あれだけ長く一緒だったのに、彼のことは知らないことばかりだ。

 

「剣……セイレンス」

「どうした、カイザー。そうだ聞いてくれ。ワタシの鯉がまだ目を覚まさないんだ。寝過ぎるのも体に悪いのだろう?」

「セイレンス!」

「そんなに大きな声を出さないでくれ。ワタシの鯉が驚く」

「《誠剣卿》は……■■■■はもう死んでいる」

 

 知らない、知らない、知らない!

 

「そんな姿を■■■■に見せる気か? 死者に縋り付くそんな姿を!」

 

 カイザーは嘘つきだ。

 

「……行こう、セイレンス。■■■■に生かされた者同士、この命尽きるまで戦わなければならない。仇を打つぞ。あの男を……拷問すら生ぬるい、未だ存在しないほどの苦痛を味わわせて殺してやる」

「カイザー……」

 

 

 

 それから、ワタシとケリュドラは表向きには行方不明ということになり、あの男を探す復讐の旅に出た。

 

 ケリュドラもワタシも、彼の死を受け入れられていない。お互いの傷を誤魔化すようにワタシたちは寄り添い合い、暗黒の潮に呑まれるまで旅を続けた。

 

 

「確か彼は、暗黒の潮に呑まれると冥界には行けないと推測していたな」

 

 だったら彼は……西風の果てで安らかに眠れているだろうか。

 

「1人で眠るのは久しぶりすぎて……寒いな」

 

 もう一度……キミの体温で眠りたい。

 

 


 

 

 魂だけになった俺は身を焼くような痛みに苦しんでいた。肉体は既に死に、存在していないはずなのに。全身が幻肢痛を起こしているようだった。

 

 違和感自体は38回目の永劫回帰から感じていた。欠損のしすぎでとうとう幻肢痛を治せなくなったと思っていたが……これは違うと断言出来る。これは『壊滅』だ。推測してはいたが、俺は『壊滅』の因子との適性が悪い。どこからか入り込んでいた『壊滅』の因子が突如活発化したんだ。

 

 たった1度だけ、黄金裔になろうと神血を体内に取り入れたことがある。その時は全身から赤血を吹き出して死んでしまったが、俺が黄金裔になれない証明になった。

 

 

 だというのに、この痛みはなんだ? まともにオンパロスを眺めることも出来ないほどの苦痛が今後付きまとってくるのなら、遠くない未来に俺の魂は砕け散ってしまうだろう。永劫回帰の際の激痛でさえ慣れるどころかトラウマになっているのに……このままでは肉体が構築されたとしても廃人同然になってしまう。

 

(俺の魂に……何が起こっている?)

 

 これが成長痛のような、より強靭になる為の痛みであるなら良い。しかし、俺の限界を示しているものだとしたらあまりにも早すぎる。まだたった3桁の永劫回帰で音を上げてしまうなんて有り得ない。ファイノンに会えたのだってまだ1回だけだ。ふざけるなよ俺。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 苦痛に悶えているうちに、次の永劫回帰が始まった。

 

 


 

 

 ……本当に、俺が目覚めるメカニズムが分からない。俺の変化に合わせて対応しているのか。真相は謎のままだ。

 

「貴方はどこから入って来たんですか?」

 

 課題としてコントロールしようと何度も試みてはいるんだ。規則性を見つけようともしたし、何かしらの因果関係を仮説してみたりもした。

 

「あの……」

 

 ステュクスの中で目覚めたようにすぐに死ぬような状況で目覚めることも稀にあった。天罰の矛の眼前で目覚めた時はキレ散らかしたがまだ受け入れた。理不尽だが……そういう時もあると。

 

「その……何か言ってほしいのだけれど……」

 

 でも……トリスビアス(聖女様)の寝室はなしだろ!

 

 


 

 

 何とかトリスビアスに納得できる説明(作り話)をし、俺は部屋の隅で正座して切腹の準備をせこせこ始める。

 

「突然知らない場所に飛ばされる呪い……。きっと《詭術》のタイタンによるものでしょう。そう、今まで大変だったのね……って何をしているの?」

「不本意ながらも清らかな乙女の寝室に侵入してしまったんです。償いきれなくとも、切腹の1つや2つ当たり前です」

「切腹? 待ってそのナイフはどこから取り出したの」

「いざ……」

「ちょっと待ちなさい! どうして自分のお腹にナイフを突き立てているの。ま、待って!」

「離してください! 私は貴女を汚したんです! 切腹させてください!」

「まーちーなーさーいー!」

 

 切腹する手をガッチリと止められ、ナイフの取り合いにもつれ込む。俺の手からナイフを奪い取ったトリスビアスは俺を押し倒した。再構築されたとはいえ戦場を渡り歩いてきた俺の膂力を上回るなんて、聖女は怪力でないとなれないのだろうか?

 

「……弱」

 

 さり気なく呟かれたその一言は、俺のカスみたいなプライドを粉々に砕きさった。心の中では仕方ないと思っている。筋力はどれだけ鍛えても再構築されれば元通りの貧弱な肉体になってしまうと理解している。だが、まともに戦えるようになってから再びその言葉を聞くことになろうとは。

 

「……」

「……あ、ごめんなさい。ああ、泣かせるつもりはなかったの」

「弱くてすみません。全て俺が悪いんです」

「ごめんなさいってば!」

 

 俺は弱かったあの日々を思い出してしくしく泣きました。

 

 


 

 

 監禁された聖女、トリスビアス。彼女は《門と道》の火種を継ぐ最初に半神となった黄金裔。彼女の存在こそが神託の元に黄金裔たちを団結させ、人々を導く指標となる。今の彼女は神託を受けて旅立つ前のトリスビアス。彼女の1000年以上の旅路はまだ始まっていない。

 

「ねえ、またお話を聞かせてくれる?」

「いいよ。前回はどこまで話したっけ」

「《紛争》のタイタンから逃げたところからよ。貴方の話はまるで実際に経験してきたかのように感じるわ」

 

 固く閉ざされた監禁室は2人だと少し狭く感じて。今日も彼女は俺の話に耳を傾ける。突然始まったこの不思議な同居生活にも慣れてきて、お互いに心を許すようになった。

 

「どれも面白いけど……1番好きなのはやっぱり街の隅の小さなお店の商人の話。多くの英雄と共にして支え続けてきた姿は、きっと誰からも愛されていたに違いないわ」

「……その商人は、英雄たちを支えることが出来ていたと思う?」

「そうね……商人は言葉足らずだけど実際に行動して英雄を支えていた。それは必ず、英雄たちも分かっていたと思う」

「……そっか」

 

 

 久しぶりに戦場と遠い場所に滞在することになって、俺はトリスビアスに話しながら自分のこれまでを振り返っていた。

 

 永劫回帰は序盤も序盤だが、俺は一定の戦闘力の獲得とファイノンに会うことに成功した。しかし、俺の脆弱性も露呈した。魂に刻まれつつある痛みが今後増していくのであれば、俺はやはり永劫回帰の最後まで意識を保つことが難しくなる。

 

 そうなると俺の最期の目標を達成できない。残る遺恨を無くすためにも、俺は第3目標、《運命を変える力》の獲得を急ぐべきだろう。

 

 

「ねえ、私がタイタンの火種を継ぐって言ったら……どうする?」

 

 肌着で鍛錬していると、いつもとは少し違う真剣な声音でトリスビアスが聞いてきた。俺は汗を拭き取りながら彼女に合わせて少し真剣に答える。

 

「貴女の選択を尊重するよ。何があっても俺が護るから、気負いすぎるなよ」

「ふふふ、私より力が弱いくせに?」

「弱くてごめんなさい俺は何も守れないし人を悲しませるのが特技だしずっと我儘だけで生きててごめんなさい」

「あ……ごめん、ごめんってば!」

 

 

 

 彼女の旅立ちの日が近付くにつれて、俺は彼女をどうやって護るか思い悩んでいった。彼女は半神となった代償に千人に分裂してしまう。その多くが戦争によって亡くなり、戦争が終わった頃にはたった3人だけになっていた。俺の身体は1つだけだ。オンパロス中に散らばる彼女をどうやって護ればいい?

 

「■■■■、血が出てるわよ。こっちへいらっしゃい、手当してあげる」

「ん、どこだ?」

「ほら、その指先。こんな室内にいても怪我ってするのよね。でもまさか……■■■■も()()()()()()()()()

「……ん?」

 

 彼女の言っていることが理解できなかった俺は指先を確認してみる。おお……確かに彼女の言う通り黄金の血が出ている。そうか、俺は黄金裔だったのか。

 

「はぁ?!」

「なによ、急に叫ばないで」

「お、おお、俺は黄金裔なのか?」

「だからそう言って……気付いてなかったの?」

「……」

 

 全力で首を縦に振る。トリスビアスは特大のため息を吐いた後、華奢な指を俺に突き刺してきた。

 

「自分のことなんだから普通分かるでしょう! タオルにも付いてたし」

「いや、あれはトリスビアスの血かと……」

「なんで一緒のタオル使ってるのよ!」

「使ってるじゃないか」

「…………そうだった」

 

 もう同居生活に慣れ過ぎていて気付かないとは……。魂が痛むのはほぼ確実にそれが原因だろう。前回、何かがきっかけになった変化だと思うが、これは良いことだ。これで俺は……()()()()()()()()()()

 

「言葉足らずだけじゃなくて……色々と抜けてるだけなのね」

 

 試練で力を得られれば、俺の目標は達成しやすくなる。多少の代償はあるだろうがそんなものもう誤差の範囲だ。……代償?

 

「もういいから。ほーらー、早くこっちにいらっしゃい」

 

 例えば彼女は、『汝は千の破片に砕かれ、異郷の地で朽ち果てるだろう』という予言を受けて、実際に魂が千人に分裂した。

 

 

 

 魂を……分裂……

 

 肉体だけが滅びる永劫回帰……

 

 護る……方法……

 

 

 

「閃いた!」

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