ウワァー!!!オンパロスだこれッ!?   作:ありがとうオンパロス

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自分の重罪ものの勘違いによって1部訂正しました。


しかし、本当にそうでしょうか?

 

 

 トリスビアスの旅立ちの日、俺は彼女の傍で火種が受け継がれる瞬間を見守っていた。彼女は火種をタイタン()から奪い取ったのではない。凋落寸前のタイタンの運命を引き継ぎ、人々を導くために立ち上がったんだ。

 

 それが大きな災いに繋がる行為だろうと、俺は彼女の信念を尊重する。尊重する上で……俺は彼女を護ると決めたのだ。

 

 

「私は……使命を引き継いだ」

「ああ、ちゃんと見てたよ。大丈夫……俺もいるから」

 

 最初の半神……最初に神の運命を背負った人の子。彼女が流す涙は運命を背負い続けてきたタイタンに、亡き母との約束に。人であった自分への決別のために流された。

 

 泣いている彼女を胸の中に抱き締める。こんなに細くて……今にも折れてしまいそうな人。そんな人を、どうして1人にできるだろうか?

 

「火種に手を出さんとする者よ! 今すぐ武器を下ろし、門を開けて投降せよ!」

「……行こう、トリスビアス。俺から離れないで」

「やっぱり……そんな短剣だけで戦うというの? 貴方が怪我でもしたら……私……」

 

 彼女は不安に震えて俺の服を掴む。その手にそっと手を重ねて、彼女の綺麗な赤い髪を撫でる。あの弱かった日々には意味があった。だから今の彼女を護れる。彼女のためなら……何でもできる気がしてくる。

 

「こう見えても俺は戦士だった。そして今からは……君だけの騎士として、その身を護ろう」

 

 門を開けた先に長槍を構えた守衛が並んでいた。武器のリーチも、人数も、地の利すら絶望的に差がある。それがどうしたと乗り越えるだけの理由が俺にはある。彼女が千人に砕けるのなら、俺も魂を千に裂こう。

 

「聞け! 聖女様は人々の運命のため、オンパロスの明日のためにタイタンの火種を受け継いだ! 彼女への忠誠を裏切る者、俺の剣に斬り伏せられる覚悟がある者だけが道を塞げ!」

 

 


 

 

 全ての守衛を倒した俺たちは最後の門の前に着いた。この門の先には彼女が知らない世界、壮絶な戦争が待っている。俺たちは再び向き合い、抱き合った。

 

「『汝は千の破片に砕かれ、異郷の地で朽ち果てるだろう』。タイタンは私にこう預言したわ。共に行くと誓い合ったけど……私は千の破片となり、このオンパロスに預言を広めないといけない」

「君が代償を払わせられるのなら、その身に尽くす俺もまた……代償を背負おう」

「……っ! どうして、貴方まで代償を払う必要なんて」

「2人で一緒に……そう誓っただろ?」

 

 俺は彼女が持つ《門と道》の火種に手を伸ばす。権能は要らない……ただ、代償だけでも一緒に背負う。そう伸ばした手が火種に触れる瞬間、大地が震えた。

 

「きゃっ!」

「うわ!」

 

 大地が裂け、その中から暗黒の潮が溢れてくる。暗黒の潮から生まれる造物が俺たちを瞬時に取り囲み、ここら一帯はすぐに造物たちで埋め尽くされた。

 

「どうして暗黒の潮が?」

 

 突然現れた造物たちを見て愕然とする。今のはおかしい、あまりにも不自然だ。問答無用で襲い来る造物共を蹴散らしながら、俺はトリスビアスを後ろに隠して必死に護る。

 

「■■■■! 私のことはもういいから。お願い……貴方だけでも逃げて!」

「俺は貴女の騎士だ。いいから最後までしっかり護られてくれ」

 

 傷が1つ、2つと増えていく。視界を埋め尽くす造物の攻撃を、守衛から奪った長槍と短剣で捌いていく。俺は黄金裔なんだ、彼らのような英雄の隣を歩くならこの程度……試練にもならない。

 

 

 

 鬼神の如く戦い続けて……俺はようやく最後の一体を葬った。身体には無数の裂傷と刺さった矢で酷い状態だが、意識を保ったまま彼女を護りきった。

 

「……う、ぐぅ……ふ……」

「■■■■!」

「はは、やったぞトリスビアス。これで俺も黄金裔の英雄……かも……」

 

 グチリ……嫌な音が耳に入った。限界まで張られていた糸が切れたように、俺の身体から自由は消えていった。

 

「■■■■……? いや……いやっ!」

 

 頭が垂れて視線が落ちた先、俺の胸から生えた()()()を認識するが早いか俺は短剣を背後に突き刺した。しかし、返ってきたのは無意味に弾かれた感触だった。

 

「……流石と言っておきましょう、《囚人》」

 

 


 

 

「はぁっ!」

 

 私を護るために彼は傷付いている。不屈の精神で以て決して倒れないその背中は頼もしくも、酷く不安定なものに見えた。黄金に塗れていく彼の姿から目を逸らそうとする自分を制し、私は彼の勇姿を見守り続けた。遂に最後の一体を倒した彼はいつもと同じ笑顔を浮かべて手を広げる。

 

「■■■■!」

 

 私は彼を抱き締めるために駆け寄った。こんなに血だらけになりながらも彼は笑う。すぐに手当してあげたいけど……彼が抱擁を求めている。私も、彼の存在を確かめるためにも抱擁を求める。2人で生き抜いて、これからも2人で旅に出ると思っていた。

 

 

『ずっと一緒にいよう』

 

 2人だけの寝室……蝋燭の火だけが灯っていた部屋で、彼とそう誓い合った。2人だとこのベッドはやっぱり狭いねなんて笑いあって、2人で勉強する時は肩を寄せあった。このまま死ぬ時まで喜怒哀楽を共にして、くだらないことも楽しめると思っていた。

 

 

「逃げろ……トリスビアス」

「■■■■っ! そんな……こんな……こんなことって」

 

 運命が人々を導くのなら……彼の運命はどうして彼に試練しか与えないの?

 

「行け、トリスビアス! 君には使命がある!」

「でも……貴方を置いていけない。誓ったでしょう! 私の騎士!」

「……ああ、クソ」

 

 彼は胸を貫く腕を掴み、鈍く歪む音が響く。彼を貫くアンティキシラ人はその事に驚愕して咄嗟に腕を引き抜く。ぽっかり空いた穴からまた黄金の血が零れた。

 

「諦めてください。貴方を彼女とは行かせません」

「俺の聖女様が俺を求めているんだ。最期までやってやるよ。それに、ほんの一瞬だが……怯えたな?」

 

 獰猛な笑みを携えて彼は槍を構える。しかし、対峙するアンティキシラ人は動かない。

 

「あなたはまだご自身の立場を理解していないようだ」

 

 その時、空を覆い尽くすほどの矢が降り注いだ。

 

「……え?」

 

 一瞬の出来事だった。突然誰かに押し倒されて、耳を轟音が貫いて、ゆっくりと開いた視界に映っていたのは、私を庇った■■■■だった。

 

「■■■■?」

「安心してください。貴女は千に砕かれた時、既に彼のことを覚えていません。なので貴女はただ使命に従って神託を広めればいいのです」

 

 彼の顔から垂れた黄金が私の頬を伝う。輝きを失った瞳の中に私はもういない。彼の背中に手を回す。いつも暖かかった彼の身体がその温度を急速に失っていく。

 

「え……?」

「彼は死にました。愚かにも運命を変えられると勘違いした《囚人》は、あなたを庇って死んだのです」

「■■……■■……?」

「彼の魂は千に分裂して、それぞれに肉体を得る可能性がありました。彼がもたらす変化は全て徒労ですが、変数が各地に散らばることは許容できません」

「なにを……?」

「理解できずとも構いません。すぐにでもあなたは今起こったことを忘れ、神託を広める旅に出るのですから」

 

 

 アンティキシラ人の言葉に呼応するかのように、手の中の火種が私の中で燃え上がる。

 

「いや……やめて、忘れたくない」

 

 消えていく……彼の顔が……声が……体温が……

 

「お願い……」

 

 過ごした日々の中から彼だけが取り除かれていく……

 

「消さないで……」

 

 誓ったことさえ……なかったことに……

 

 

 

「……明日へ進まなきゃ」

 

 何かを失った気がするけど、千人もいれば寂しくないわ。

 

 


 

 

『久しぶりと言っとこうか? 《神礼の観衆》』

 

 オンパロスの外側、冥界でも暗黒の潮の中でもない空間で、目の前のアンティキシラ人……ライコスに気さくな挨拶を投げかける。

 

『どうやら、何かが貴様の琴線に触れたらしいな』

「あなたの起こす全ての事象は徒労なのですよ、《囚人》。あなたは最初に、そのことを理解する必要があるでしょう」

 

 この機械もどきはオンパロスの悲劇の黒幕、全部こいつが悪い。俺の目的を全部達成するならこいつを滅ぼすのが1番早い。俺が最も滅ぼしたい相手だ。

 

『すまないが、何を言っているのかさっぱりだ』

「あなたの行動理念には矛盾が生じてます。あなたは一体……何のために彼らに関わるのですか?」

『彼らと関わることに言語化による表面化が必要なのか?』

「……」

 

 初めて魂ごと誘拐されて混乱しているが、この場ですべきことは何一つ情報を落とさないことだと理解している。相手は正真正銘の天才だが、執着がその視野と思考を狭めている。そこに付け入る隙がある。

 

「まあいいでしょう。あなたが何をしようと、この世界の運命は変わりません」

『世界の運命?』

「再創世を越えられないあなたには関係ないことですが。永劫回帰に呑み込まれているあなたには薄々分かっているのではありませんか?」

『……』

 

 肉体が死んでいることが何より悔やまれる。そのふざけたデザインの頭部を今すぐにでも粉々にしてやりたい。

 

「気付いていますか? あなたの魂にはヒビが入っている。『壊滅』の因子は少しずつあなたの中に入り込み、その魂を『壊滅』の運命へと歩ませている。あなたに流れる黄金の血こそ、その証拠です」

 

 俺の推測は当たらずとも遠からずといった所だったらしい。この魂に『壊滅』が流れているのは自覚できた……しかし、ヒビが入っているのか。

 

「あなたには運命を変えることはできません。あなたにはその力も方法もない。それでも、まだ彼らに関わりますか?」

『……? 言ってることがよく分からないな』

「あなたは凡人だ。凡人は凡人らしい末路を辿るべきです」

『……?』

「……あなたはなぜ、諦めないんですか?」

『ああ、そういうこと。凡人が抗っちゃいけないのか? そういう運命だと受け入れたままがいいのか? お前の目的は知らないが、俺に諦めて欲しいんだろう』

 

 

『知ったこっちゃないね。世界の運命とか俺の魂とか。俺はいつだって心に従う。お前とは世界の見え方が根本から違うんだよ』

 

 

「あなたとファイノン(カスライナ)は違います。彼は完璧な器、すぐに壊れることはありませんが。あなたはもうあと数回も耐えられる状態ではありません」

『今更そんなことを言うために殺しに来たのか? 暇なんだな』

「いいえ、あなたのことに興味が湧きました。()()()()()()()であるあなたが、一体どこまで歩めるのかを」

 

 

『だったら黙って眺めてろ。俺の試練に茶々を入れるな殺すぞ』

 

 この物語(原作)はお前の味方じゃない。俺が最後まで存在できないことなんてとっくの昔に受け入れている。いいだろう。お前の監視の下で、俺がどこまで行けるか試してやろうじゃないか。

 

 

「では、楽しみにしていますよ。《囚人》」

 

 


 

 

「うぐ……ぐぅ……」

 

 157回目の永劫回帰。意識を保つのもやっとの苦痛の中、俺は目覚めた。前回で無理をし過ぎたのもあるのかもしれない。少なくとも今回は戦闘をできるだけ避けるべきだろう。

 

 

「トリス……ビアス……」

 

 誰もいない目覚めは嫌いだ。どうしても涙が止まらなくなるから。暗い感情を呼び覚ましてしまうから。悲しませてしまったことを思い出してしまうから。俺はもう……彼女たち無しじゃ生きていけない。

 

「ごめん……なさい……」

 

 徒労だと言われるのは本当は辛い。俺はいない方がいいんじゃないかってずっと思っている。でも、ずっと一緒にいたいって……そんなに罪な願いなのかな?

 

「早く来て(来ないで)……救世主(主人公)……」

 

 

 

 

 

「誰かいるんですか?」

 

 ああ……黄金裔(彼女たち)に寄り添わないと。

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