シン 鬼滅   作:ファイネス1

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蟲柱編 前編

「お待ちしておりました!!」

 

 新時代の幕開けは、その言葉と共に始まった。

 昼の繁華街、セミロングの金髪と金眼で、男性用の服さえ着ていなければ女性と見間違うような、いや、男性の格好をした女性と言われても頷けてしまえるような見た目の中学生くらいの少年が、白髪で虹色の瞳の180センチはあろうかという偉丈夫で美形の男性に抱きつき、タイプが違うものの「美しい」という形容が相応しい彼等の、まるでロマンス漫画か映画のクライマックスシーンであるかのような光景は、老若男女問わず道行く人々の中でその余裕がある者達の足と手を思わずひきつけた。

 恋人に再会したかのような喜びを満面に表して抱きついてくる少年を見下ろした白髪の男はやや困ったように頭を掻いて言った。

 

「ええっと···君···誰?」

 

───────────────────

 

 不可解且つ美しい名場面が醸し出された場所の近くにある喫茶店。

 白髪の青年が座るテーブルの対面には、例の金髪の女の子と見紛う、マニアックな言葉で言えば「男の娘」と称するような中学生くらいと思われる少年が座り、

更にその隣には小学生かと思われる黒髪黒瞳のあどけない少年が興味津々な様子で目を大きく見開き、青年を眺めていた。

 

 金髪の美少年はニコニコと目の前の青年に話しかけた。

 

「お早く記憶を取り戻していただけてよかったです、童磨様。」

 

 白髪の青年は一見爽やかな、しかし人をみる眼に長けた者からしてみたら張り付いたと評されるような笑みで、しかしその口調には懐かしさを感じさせながら言った。

 

「君が今の極楽教教祖だとはね、万世夕亞音(ゆあね)くん。

 正直今も続いているとは驚きだよ。

 てっきりあんなカルトとっくに潰れちまったかと思ってたのに。」

 

 かつて教団の長にいた者とは思えない、外部者以上の遠慮ない侮蔑の言葉を受け、しかし金髪の少年、夕亞音は思った通りの反応という感じだった。

 

「教団ナンバー2の教主とはいえ、俺が生きていた当時君はまだ鬼血術には目覚めていなかったはずだけど、どうだい?」

「多少悶着もありましたが、あれから頑張って冥界と繋がる鬼血術に目覚めたのが好都合でして、故人とのメッセージの橋渡しというイタコ業により教団としての面子が保たれましたはい。」

「おや、羅利阿(らりあ)君も元気なようだね。」

 童磨は夕亞音の傍らで黙って話を聞いていた少年に話を向けると、夕亞音は彼の頭をくしゃくしゃと撫でた。

「食った人数は2桁程度ですのでまだ鬼血術などには目覚めていませんが今では雑務がすっかり板につきまして。

 ほら、挨拶しなさい。」

「(ペコリ)」

「あの方やそれに連なる俺達上弦のような強い鬼は大正の決戦と共に滅び、生き残ったのは君や支部長達のような、血鬼術に目覚めなかったり目覚めたとしても戦力にならない『弱い』鬼だったか。」

「恐竜やマンモスが滅んで、ネズミや虫なんかが生き残って進化した歴史を見ても分かるでしょう。

 戦う強さと生き残る強さは別ですよ。

 無惨(やつ)にとって鬼殺隊との闘いで役に立つ者以外は虫けら以下の者で関心が全く無かったからむしろその支配を逃れて生き延びるのに都合が良かったというのも、皮肉ですよ。

 それで童磨様。

 何とか『居場所』は守りましたし、満を持して···

 帰っていただけませんか?教団に。」

「うん、断る。」

 

 童磨からのきっぱりとした断言と拒絶に、金髪の少年は大きくため息をついた。

 

「ハァー···どうせ貴方、この時代の現世でも居場所なんかありはしないでしょう。」

「ホントにねえ、地獄でも出来れば俺を再び生まれさすような真似はしないでくれよとお願いしたんだけど所詮は罪人のお願いを聞き入れてくれるような慈悲何かは向こうの鬼さん達にはなかったようで。」

「人々が自身や他人の無駄に長く、有り余っている『生』に辟易している今現代こそ、貴方による『救い』が必要何ですよ。」

「今の鬼の世は、もう、君と阿羅沙(あらしゃ)ちゃんでやっていけてるじゃないか。」

「彼女だって貴方相手でしたら喜んで現在の鬼の長の地位を譲りますよ。

 何て言ったって彼女は···」

「俺は鬼に戻る気はないよ。

 確かに昭和に青い彼岸花が見つかったことで日の光を克服して、鬼は最早実質人間の上位種といって差し支えない。

 けど、それだと『彼女』と一緒になれないからね。」

「···血鬼術で知ってしまった後も到底信じられなかったのですが···やはり『蟲柱』ですか···!」

 

 その時、それまで穏やかな口調で話していた夕亞音が、髪が逆立たんばかりの気迫を漲らせた。

 

───────────────────────

 

大阪

 

「こりゃまた、厄介なことになったなあ。」

 

 ため息をついた女性の持つスマホの画面には、先程まで通話していた「夕亞音」という名前が示されていた。

 髪は赤毛で肩くらいまでのショートカットに外はねがついたもの。

 見た目の年齢は20歳かそこらの若々しさで艶のある肌。

 髪の色と同じ赤いワンピースを着ていて、そのままモデルとしても通用しそうな美女だった。

 

「どうしましたか?先生?」

 

 赤毛の女性と同年代かと思われる黒髪のショートカットの女性の問いかけに、先生と呼ばれた赤毛の女性は胡乱に応じた。

 

「大正以前から、お互い深く関わりおった鬼殺隊と鬼の間のロマンスは割とあってな。

 どちらかが喰うか、殺すか、或いは心中か。

 例外なく人間の価値観では『悲劇』と呼ばれる形で終結しおって、

平成世代の、まだ鬼になって20年そこそこのおまはんには、想像も出来ん、美しくも悲しく、おぞましい恋愛模様が繰り広げられておった。

 うちとしては当人同士の気持ちを尊重して、例えその行く末が『悲劇』だろうとアシストするスタンスなんやが···

 深く愛し求めたとしても、愛される側も、そしてうちら外野の者達にも、色々都合があるんや。」

 

 鬼にその人生を乱され、悪鬼達の邪悪さや身勝手を目のあたりにし続けてきた大正時代の鬼殺隊隊士だったら思わず耳を疑うような正論を述べた後、ハアーっとため息をついた。

 

「よりにもよってあのお方が入れ込んだ相手が···『蟲柱』とはな。」

「どういうことですか先生?

 他の柱ではなく、『蟲柱』自体がヤバいということですか?」

 

 赤毛の女性は助手らしき女性の前にいくつか写真を並べた。

 どれも大正時代に撮られたと思われる古さではあるが各々の特徴をしっかり捉えた顔写真だった。

 

「これが当時の『柱』。

 こん中でお前、誰が一番怖い思う寧々(ねね)?」

「ん~···こっち、かな。」

「霞柱か。

 まあ、そいつもかなりおっかない奴ではあるが。

 うちら大正を知る鬼に尋ねたら、ほぼ皆こいつ選ぶで。」

 

 そう言って赤毛の女性はトントンと、写真の1つを指した。

 

「それが···」

「そうや、こいつが鬼殺隊『蟲柱』胡蝶しのぶや。

 信じられんいう顔やな。

 女で、しかもこんなどこぞのお嬢さんのようなべっぴんさんがおっかない言われてもと。

 だがな。こいつこそ当時の鬼の悪業と人間の闇が産み出した、大正の怪物や。

 こいつの来歴自体は、そう、珍しいものではあらへん。

 無惨派の悪鬼によって、家族を目の前で殺され、鬼殺隊に救われ、拾われ、血の滲むような努力で柱にまで到達した、それ自体は鬼殺隊としては十把一絡げでいる、むしろマイナーな方や。

 問題は、こいつの実家が医者だったことと。

 こいつ自身は力が弱かったことや。」

「?」

「胡蝶しのぶは、小柄で力が弱く、自身では鬼の首を切り落とす力に決定的に欠けていた。

 故に彼女の鬼への殺意と狂気は、別の方面に発揮されたんや。

 実家の毒や薬の技術を駆使して鬼への新たな闘い方を見出だし、それを極める為に、鬼をただ殺すのではなく、毒の実験台として、そして奴の狂気と復習の現れとして、あらん限りの拷問と解剖を行い、鬼に対する非道の限りを尽くした。

 後の大戦で人間が731部隊などで自分の同族に行ったようにの。」

「·········」

「その残酷さを目の当たりにした鬼達は、自分が死ににくいことをこのときほど後悔したことはなく、未だ蝶の印を恐れとる程や。

 知っての通り、うちら支部長や十鬼衆(じゅっきしゅう)は、殆ど大正を生き抜いた身や。

 鬼殺隊、柱の危険性は十分知っとる。

 殊に鬼への憎しみや悪意が半端ないあの女が、もし、童磨様との関わりで、うっかり記憶を取り戻し、鬼が現代社会に生き抜いていることを知ったら、きっとその根絶を目指し、再び多くの鬼達が苦しめられることになる。

 事はな、2人だけの問題やないんや。

 『蟲柱』は鬼と人が共に生きるこれからの時代には、いてはならない存在や。

 分かる?」

「はい···身の毛がよだちます。」

「という訳で特別任務や。

 休業の看板出しといて。」

「?ええ、と。今の流れで仕事、ですか?」

「うちを誰やと思っとる。

 片思い、出会い、結婚、不倫関係は勿論のこと、

縁切り、離婚といったものまで何でもござれ、万世極楽教大阪支部長、万世樹利亜(じゅりあ)や。」

「ええ。」

 

 寧々が取ってばさりと置いた雑誌の写真には、赤毛の女性と

『人に言えない恋のお悩みを是非!

 人気鑑定士、万世 樹利亜(じゅりあ)』というロゴがつけてあった。

 

「事は鬼の存続に関わる問題や。

 他人事ではないとはいえ、遠慮せずに報酬も期待してええしな。」

「相変わらず先生お金に目がないですね。」

「当然や。この世界における愛の充足も、貧乏の心配とは無縁の金あってこそや。

 とりあえず、まずは休業の看板置いた後は。

 腹ごしらえといきまっか。」

「はい。」

 

 事務所の奥の私室に入った樹利亜は冷蔵庫からパックを2つ取り出した。

 パックに入っているのは、それだけ見たらスーパーで売っている普通の肉と何ら変わらない、赤身を帯びた肉ではあるが

付いているシールには「20代 日本人 男性 モモ」と書かれていて、

更に別の所からは「30代 日本人 女性 肝臓」と書かれた見た目はレバーのような肉も1パック出し。

 キッチンの瓶からは梅干しを出すのと変わらない手つきで人間の目玉いくつかを取り出し、

レバーを大皿に盛り付けてテーブルの中央に、モモ肉を皿2つに目玉と共に盛り付けてテーブルの両側に配置した。

 

「今日はお前の好きなモツ入ったで。」

「わあ。おいしそうです。

 目玉に合うんですよねこれ。

 いただきまーす。」




gptによって作成された夕亞音の画像

【挿絵表示】

冒頭の挿し絵

【挿絵表示】

背景が昼であることと
夕亞音の服をユニセックスにすることを忘れてしまった
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