GX世界の英霊デッキ使い 作:超融合は許さない
体育の時間。
男子達は野球をやって楽しんでいるらしい。
しかし男子達が野球コートを貸し切っているため、私達女子は屋内でバレーボールをしていた。
「小鳥遊さん!そっち行ったよ!」
「んっ」
「優花、お願い!」
「ほいっ!」
私は明日香達と一緒のチームでやっていた。明日香はリベロを選び、サポートに徹してくれている。
だから私は明日香や他のチームメンバーの指示に従い、思い切り敵陣営に叩き込んでいった。
本来なら、オベリスクブルーの生徒はデュエル以外の授業は参加しなくても良かったりするのだが、明日香とその友達は普通に参加している。
そんなこんなで、私達は試合に勝ち、気持ちの良い状態で授業を終えた。
「おい、ジュース。あとマッサージだ」
体育の授業が終わり、教室でクロノス先生を待っているとそんな声が聞こえてくる。
声の方を振り向けば、案の定万丈目がいつも通り威張っていた。
その万丈目に向かってオベリスクブルーの生徒達が冷たい視線を向け、皆で陰口を叩いている。
「おい万丈目。お前どこ座ってんだよ」
「どこって、ここは俺の...」
「違ぇよ、ここは俺の席だ」
「お前、何を言ってやがる。ちゃんとここに俺の名が...俺の名が、ない?」
「もうここはお前の席じゃないんだよ。お前の席はあっちだ」
「あ、あんな端っこに!?」
どうやら、万丈目の取り巻きをしていた人間を始め、全ての生徒や教師が万丈目を見放しているようだった。
クロノス先生曰く、万丈目がオシリスレッドとの、十代とのデュエルで敗北したのが、この冷遇措置の理由らしい。
万丈目は嫌な奴だ。傲慢だし、理不尽だし、ある種選民思想のような気さえ持っている。
しかし、この扱いは流石に不当だと感じる。彼がオベリスクブルーに入った実力は確かなのに、彼にはラーイエローやオシリスレッドよりも冷遇のある措置が一部取られている。
万丈目と私は別段知らない仲じゃない。何度かお互いにデュエルを見学したりしてるし、道に迷った時なんかは悪態ついて喧嘩しながらも後ろを歩かせてくれた。
だから、万丈目は嫌な奴でもあり、良い奴でもあるのだ。少なくとも、こんな扱いを受けて良い奴じゃない。
万丈目のことが気に掛かりながら、私は今日の授業を終えた。
十代達は、今日の体育の授業で相手への命令権を賭けた勝負に負け、その命令権を使った「ペンキの塗り直しに協力してくれ」という命令に従い、今になって三沢の部屋から寮に帰ってきたらしい。
十代達に万丈目について私が思っていることを話すと、十代は「確かに最近のあいつの周りは酷いよな」と同意し、翔は「そうっすか?今までやってきた分、やり返されて当然だと思うっすけど」と言っていた。
三沢は教室でクロノス先生も言っていた、寮の入れ替えデュエルについて話し始めた。
三沢も万丈目に思うところがあるようだったが、デュエルが始まれば全力で戦う、と言っていた。
一通り話した三沢は疲れが溜まっていたようで、十代と一緒に床に倒れて、2人で大口開けて鼾をかいて眠りはじめる。
その2人を眺め、翔と2人で苦笑いをしながら、翔と隼人に手を振ってその場を離れた。
潮風でも浴びて気分を変えようと港に出ると、そこで万丈目がカードを持った手を振り上げていた。
その姿を確認した私は慌てて止めに入り、万丈目の腕を掴む。
驚いて振り向く万丈目をじっと見つめ、そして彼の揺らいだ瞳の真意を探る。
「デッキを捨てるなんて、何考えてるの?」
「ッ!うるさいッ離せッ!俺のカードをどうしようが俺の勝手だろう!」
「それデッキでしょ?デュエリストの魂だよ。それを無下にするだなんて、例え持ち主だとしても……」
「違う、これはデッキじゃない。俺が不要だと思った……カード達だ……」
「……貸して」
「はッ!誰が貴様なんかに!」
隙を見て彼の手から奪い取る。
彼が声を上げて奪い返そうとしてくるが無視して避ける。そしてそのカードの束を確認すると、その中にはモンスター、魔法、罠がちゃんとしたバランスで入っており、中にはちょっとしたレアカードまで入っている。
カードの枚数も40枚。どう見てもこれは「いらないカードの束」ではなく、確かに「人が組んだデッキ」だった。
「モンスターも魔法も罠もバランス良く入ってるし、この中にはちゃんとコンボになるような組み合わせもある。これのどこがいらないカードなの?」
「ッ!うるさい!とにかく返せッ!それはここで捨てるカードだ!」
「なら理由を教えてよ!」
我武者羅にデッキを奪い取ろうとする万丈目を避け、彼を押し倒して押さえつける。
そして腕を抑えられた万丈目が暴れて踠くのを押さえつけ、その震えた目を真っ直ぐ見つめる。
彼が観念したように抵抗を止め、全身の力を抜いた後に目を伏せ、顔を背けた状態でぽつりと呟く。
「それは──俺のカードじゃない……」
「?どういうこと」
「それは明日の対戦相手の、三沢のデッキだ……」
「つまり、万丈目は対戦相手のカードを海に……?」
「ッ!ああ、そうだよ!」
私は、万丈目を拘束していた手を緩める。
万丈目は苦虫を噛み潰したような顔で奥歯を噛み締め、こちらを睨んでくる。
彼に睨まれながら、私は彼の手を離して見つめる。
「どうして、そこまで勝つことに拘るの?」
「……なんだと?」
「万丈目の実力なら、ラーイエローになってもすぐにオベリスクブルーに戻れるでしょ?」
「そうじゃない……!そうじゃないんだ……!!俺は絶対に、1番じゃなきゃいけないんだ!!」
「なら、その理由を教えて」
「それは、俺が……」
万丈目が自分を鼓舞するように虚勢を張った後、それが尻すぼみに落ちていく。
理由を聞いても彼に口を噤まれる。
彼は縋るような目で、どうしようもなく追い詰められたような態度で震えている。
「万丈目が、どうしたの?」
「ッ!そうだ、俺が万丈目だからだ!俺が、優秀な兄さん達に挟まれッ!俺も優秀であることを求められたッ!だから俺は……!俺はッ!!」
「万丈目...」
彼から辛そうに語られる内容は、家族のいない私には理解することの難しい家族の問題だった。
必死の思いで語られるそれは、体験したことのない私でも思わず心を揺さぶられる力が籠っていた。
彼にぶつけられた気持ちに圧倒されていると、万丈目が動きだし、私の手の三沢のデッキが奪われる。
そして、彼が私を押し退けてそのデッキを握り締め、それを海へ投げ捨てた。
「ハハッどうだ!これで明日、あいつはカードを失くして不戦敗。でなくとも、デッキから溢れた雑魚カードの急造デッキだ!」
「万丈目……」
「俺は勝つ、勝って、俺はオベリスクブルーのままクロノス教諭を見返して、そしてトップに返り咲いてやる!フハッ!フハハハハハ!!」
「万丈目ッ!!」
「ッ!なんだうるさい……」
万丈目に睨まれる。
だけど関係ない。万丈目は今、自分を見失ってる。
彼はカードを愛せていない。彼はデュエルを楽しめていない。
そんなの、そんなの……
「万丈目は、弱いね……」
「なんだと……!」
彼に襟首を掴まれ持ち上げられる。
彼の手の震えはなくなり、その声と顔には怒気が滲んでいる。
だが込められた力も、当てられた怒気も、全てが空虚だった。
「貴様はこの万丈目の、何を見てそう言っている!!」
「だって万丈目、さっきから怖がってるまま……」
「俺が、怖がってるだと……?」
万丈目は怖がっている。
それはそのお兄さん達のことかもしれないし、負けることそのものかもしれない。
それでも、弱音を吐いた時から、そして力任せに私へ迫っている今も、彼の瞳はずっと震えている。
「怖がるの悪いことじゃない。でも、怖いのを認めないと前にも進めない」
「俺は──何も恐れて、なんて……」
「万丈目……」
彼が私を掴み上げている腕の力を緩めていく。
彼が力なく私を下ろし、瞳を大きく震わせる。
万丈目の手から離された私は、彼に1枚のカードを渡す。
「これ、使って」
「これは……」
「これも縁だから」
それは、いつの間にか手の中に現れていたカード。
それが私との縁で現れたのかもしれないし、万丈目との縁で呼ばれたのかもしれない。
ただ、それは私の手に握られていて、私はそれを万丈目に渡したいと思った。それだけで十分だった。
「誰が、貴様から貰ったカードなど……」
「なら、預かっておいて。万丈目がそのカードを必要としないくらい強くなったら、その時は返してもらう」
「くっ」
彼は苦い顔でそれを受け取る。
彼の元へ行ったそのカードは、それに合わせた魔法・罠カードを新しく作り、万丈目のデッキに馴染むように縁を作るだろう。
彼はそのカードを自身のデッキに入れ、自分の横に置いた。
「何する気?」
「……いや、こんな小細工をしていたのがバカらしくなってきたところだ。拾って集めた後、元の場所に戻す」
「……そっか」
「なんだ、その顔は」
「万丈目、良い顔になった」
小鳥遊優花:万丈目を止めた後、手に握っていたカードをあげた人。
万丈目準:止められた後、毒気を抜かれた人。
主人公の名前を今さら小鳥遊優花にするのはあり?
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名前の法則的にそっちの方があり
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ここまできたら慣れたからなし
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どっちでもいい