GX世界の英霊デッキ使い   作:超融合は許さない

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万丈目サンダー来航

 

 

 俺はデュエルアカデミアを飛び出し、ノース校でキング万丈目サンダーとなった。

 そして俺は今、潜水艦の中で寛いでいる。

 アカデミアとの交流デュエル、そしてそのデュエルで俺と十代との雌雄を決するためだ。

 

 

「おい、お前たち。もっと楽にしていいぞ」

 

「「ありがとうございます!万丈目サンダー!!」」

 

 

 俺の配下となったノース校の連中と一緒にいるのだが、この広間に俺専用の空間を作ろうとしてその他の奴らが鮨詰め状態で端に寄っている。

 こいつらから素直な気持ちで慕われるのは悪い気分にはならないが、流石にこの有様でいられるとこっちも居心地が悪い。

 今だって「寛げ」と言ったのに、誰一人としてほとんど動こうとしない。

 

 

「お前ら、用がないなら自分たちの部屋に帰れ」

「はっ!すぐに戻らせます!」

「戻らせるってお前……」

 

 

 広間の中から出て行かせようとするとリーダー格の元キングが動き出し、下っ端の奴らから順に寝床へ送り返し始めた。

 そうして残ったのは元キングの1人と、元四天王の4人だけとなった。こいつらはやることが一々極端だな。

 元四天王の1人が俺の肩を揉み始め、そして他の奴がジュースを持ってくる。その姿を見て俺は自分がアカデミアで暴君だった頃の、人を顎でこき使っていた頃の記憶を思い出す。

 

 目を閉じて思い出すのは学園の日々、上を見ようとせずに蓋をして、そうして自分が1番上に立った気になって威張っていた。

 だがそんな虚飾に塗れたプライドを抱えた日々は退屈で、だからいつしかデュエルを微塵も楽しいと思わなくなっていた。

 恥をかき、プライドを踏み躙られ、堕ちて、堕ちて、堕ちて、そうして辿り着いたここが、俺が俺らしくデュエルできる場所なのかもしれない。

 

 


 

 

 慣性で身体が宙へ引っ張られる感覚によって、意識を現実へと引き戻される。

 潜水艦が止まったらしい。つまりここは既に、俺が元いたデュエルアカデミアだ。

 鉄の梯子を掴んで登り、日照りの強い空の下に上がる。

 

 

「俺は帰ってきたのか、デュエルアカデミアに……」

 

 

 周りを見渡すと視界に広がるのは俺を慕う仲間達、そしてその向こうに聳える孤島だった。

 そしてノース校の船が泊まる港には、本校からきた教師陣や一目見ようとこちらを除いてくる野次馬の生徒達もいるようだった。

 人混みの向こうから見知った人影が現れ、聞き覚えのある上機嫌な声色を上げている。

 

 

「おお〜!すげぇじゃん!それでそれで、俺のデュエルの相手ってのはどの生徒だ?」

「十分、急ぎすぎ。走って疲れた」

 

 

 来た。現れた、遊城十代が。

 その小憎たらしい笑みが鼻につく、前と変わらない様子だった。

 俺の精神もこの旅で随分と変わったと思っていたが、やはり数日経とうが数ヶ月経とうが、こいつの態度が癇に障ることは変わらなかったらしい。

 

 

「俺だ」

「万丈目?」

 

「万丈目さんだ。そう、貴様のデュエルの相手はこの俺だ」

「え、えええ!?マジでか!?」

「当然だ」

 

 

 配下達が道を避けて立ち、俺の道を作ろうと整列する。

 そして俺はその道を歩いて抜け、アカデミアの港へと降り立つ。

 帰ってきたのだ、デュエルアカデミアに。今度は敵として。

 

 

「俺はこの数ヶ月で、幾つもの修羅場を乗り越えてきた。全身全霊を持ってかかってこい、遊城十代」

 

「へへっ!良いぜ、そう来なくっちゃな!俺も全力でやらせてもらうぜ。万丈目!」

「万丈目さんだ!」

 

 

 俺と十代は、互いにデュエルをする相手として見つめ合う。

 相手の瞳に宿るその闘志を見据え口角を上げ、そして燻る魂を早くこの熱で発火させたいと願う。

 そんな情熱に焦がれ燃える中、上空からヘリコプターのプロペラ音が聞こえてくる。

 

 

「あれは、万丈目グループの……」

 

「そうだ!準!」

「久しぶりだなぁ準!元気にやっているか!」

 

「くっ、長作兄さん!正司兄さん!何しにきた!」

 

「もちろん、お前の勝利を祝福するためにさ!」

 

 

 ヘリコプターが近くに止まり、その回転翼の煩い羽音が止まる。

 2人の兄が地上へ降り立ち、そして俺を見下ろす。

 2人とも綺麗に仕立てられたスーツに身を包んでおり、黒いスーツを着る長作兄さんと青いスーツを着る正司兄さんが揃って上に立っていた。

 

 

「あまり心配をかけさせるなよ、準」

 

 

 2人は自信に満ちた笑みを浮かべている。

 兄さん達がいつも俺に見せてくる、余裕と嘲りの籠った瞳だった。

 兄さん達の周りには、他にも学園に関係のない者達が集まっていた。

 

 

「は〜い良いお顔ですねぇ、この画いただきます。次、2カメで万丈目くん映して〜」

 

 

 突然現れた男達が抱えていたカメラが、俺のいる方向へと向けられる。

 突然現れた予定外のカメラマン達、そしてしたり顔の兄さん達、間違いなく2人の仕業だった。

 一体何のために?何を思って?

 

 

「待ちたまえ、この騒ぎは一体どういうことだね」

「ありゃ、聞いてないんすか?今年は大々的に、デュエルアカデミアの対抗試合をテレビ中継するんですよ!」

 

 

 現場監督らしき男がそう告げて、校長2人は1度頭を捻った後、それを受け入れた。

 十代は未だに大声で叫んでおり、テレビ中継されていることに驚いている様子だった。

 カメラマンがその十代の顔にズームインしているため、今全国のお茶の間には十代の間抜け面が映っていることだろう。放映される家庭の者も不憫なことだ。

 

 


 

 

 あの場は一旦校長2人が収め、試合が始まるまでの間は校長達2人で試合についての説明をするという形で解放された。

 そうして解放された生徒達は各々自室に戻るなり、観客席の確保をするなりの行動をしており、十代は何やら慌ただしく身嗜みを気にし始めたようだった。

 しかし俺は1人長作兄さんと正司兄さんに呼び出され、ロッカールームで3人の時間を作ることになった。

 

 

「どういうつもりなんだ。兄さん達!」

「決まっているだろう。これは俺たち兄弟の目標を叶えるための一プランなんだよ」

 

「一プランだと?」

「そうだ。政界、財界、そしてカードゲーム界の頂点に立ち、世界に万丈目帝国を作り上げるのが俺たちの夢。そこで俺たちは今日、お前をプロモートし、そしてお前をカードゲーム界のスターにするのだ」

 

 

 正司兄さんは真剣な表情で、俺に訴えかけてくる。

 長作兄さんの方を見れば、それは彼も同じつもりのようだった。

 2人が俺に向けてくる目は冷たく、情や期待は一才と孕んでいなかった。

 

 

「準、クロノス教諭とやらに聞いたが、貴様どうやら3ヶ月前にこの学園から退学したそうじゃないか」

「それは……」

 

「いいか準!お前は元々、俺たち兄弟の落ちこぼれ!」

「我が万丈目グループ主催でテレビ中継するからには、絶対に負けることは許さん!」

 

 

 2人から告げられた言葉はあまりにも残酷で、あまりにも情に欠けていた。

 デュエルのことなど欠片も知らず、それでも「勝て」と言ってくる。

 正司兄さんが荷物として持ってきていたケースを、押し付けるように渡される。

 

 

「ここには、俺と兄貴が金に物を言わせたカードが山と入っている!このカード達を使い、最強のデッキを組み立てるのだ!」

「いいか準、決して万丈目グループの顔に泥を塗るようなことはするなよ?」

 

「「いいな、準!」」

 

 

 念押しするように言葉を繰り返し、何度も言われた。

 その言葉は胸に深く突き刺さり、俺の心を闇に堕としていく。

 俺が過去に兄さん達に抱いてきた劣等感、恐怖、罪悪感、畏敬、それらが足枷となって俺を縛る。

 

 

「くそっ」

 

 

 指が震える。

 小刻みに指が振動し、寒い心を温めようと、その気持ちを怒りに変える。

 怒って、怒って、怒って、フラッシュバックする負の感情を振り切るように怒って、俺は座っていた青いベンチを蹴り飛ばす。

 

 

「くそっ!くそっ!くそっ!!

 

 

 怒りに任せ蹴り飛ばしたことで部屋のベンチが全てひっくり返った頃、俺の震えは止まっていた。

 俺は倒した青いベンチを全て元の位置に戻し、それらに傷がついていないかだけ確認した。

 俺は一息を吐いて座り直し、正司兄さんに渡されたケースを見た。

 

 

「金に物を言わせたカード、か……」

 

 

 俺は、自分のデッキへと視線を落とす。

 最初に目に映ったカードがおジャマ・イエローであることに顔を顰めながら、デッキのカードを1枚ずつ捲っていく。

 そして1枚捲る度に思い出す、そのカードを手に入れた場所、そしてそのカードを使ったデュエル。

 

 苦難の末に掴んだ、俺の全身全霊が籠った40枚だ。

 確かに、正司兄さんが集めたカードの中には、こんな雑魚カード達じゃ相手にもならないカードが山のようにあるのだろう。

 だがしかし、俺にはそのカードを使って、このデッキ以上に信頼できるデッキを作るのは不可能だと思えた。

 

 

「長作兄さんと正司兄さんには悪いが、やはり俺はこのデッキでいく。文句なら後で聞こう」

 

 

 デッキを懐に蔵い、徐に立ち上がる。

 これからデュエルするというにはあまりに重い足を前に進め、俺はロッカールームの出口へと向かう。

 兎にも角にも、先ずは頭を冷やさねば...

 

 

「やっほ、万丈目」

 

 

 扉を開けると、小鳥遊優花がいた。

 いつからそこにいたのかも分からない彼女が、ゆっくりと部屋の中に入ってくる。

 呆気に取られてその姿を目で追うと、既に椅子に腰掛けている彼女から、俺も座るように促される。

 

 

「座って」

「貴様、何のつもりだ」

「良いから」

 

 

 俺は彼女に導かれるまま椅子に座り、舌打ちをして視線を向ける。

 彼女は懐からカードの束を取り出す。トランプカードだ、それを1枚ずつ2人分配り始めた。

 こいつは一体、俺に何を求めてやがるんだ。まるで意味がわからん。

 

 

「遊ぼうよ、万丈目。ババ抜きで」

「万丈目さんだ。ババ抜きだと?何故俺がそんなことを」

「良いから良いから」

 

「おい、俺はやるだなんて一言も──」

「じゃあ最初は万丈目のターンね」

「万丈目さんだ!」

 

 

 一体なんなんだこいつは、何をしたいんだ。

 俺は26枚の手札を広げ、数字の被っているカードを捨てていく。

 俺の手に残ったのは6枚のカード、優花の手札には7枚のカード。

 

 

「ジョーカーは、貴様の手札にあるのか」

「うん、そうみたいだね」

 

 

 奴の手札から1枚のカードを引く。

 2のペアを作って捨て、相手に引くように促す。

 俺は手札の7を引かれ、優花の手札からペアが捨てられる。

 

 

「万丈目はさ……」

「万丈目さんだ。なんだ」

 

「デュエル、怖いの?」

「なっ!」

 

 

 奴の手札からカードを引き抜く。

 俺が引いたカードは、ジョーカーだった。

 手に力が籠る。汗が滲み、先ほど怒りで覆い隠した気持ちが表面に漏れてくる。

 

 

「何を根拠にそんなことを……!」

 

「ねぇ、万丈目」

「……なんだ?」

 

 さんだ、と訂正する余裕はなかった。

 奴が何を求めてこんなことを始めたのか、それを聞くために耳を傾ける。

 手札のカードを引き抜かれ、相手がペアを作るのを視界の端に収めながら相手の目を見る。

 

 

「デュエルは、楽しいよ」

「何を……」

 

「勝っても負けても面白いのがデュエルだよ」

「は?」

 

 

 負けても面白い?何を言ってやがる。

 俺は勝っても負けても、なんて言ってられない。

 俺は勝たなくちゃならない、それが万丈目なんだ。それが万丈目準なんだ。

 

 

「勝ったら嬉しい、負けたら悔しい、それが楽しいんだよ。デュエルって」

 

 

 残り2枚になった手札から、ジョーカーのカードを相手に引かせる。

 有利になったことに北叟笑みながら、彼女の言葉を飲み込む。

 心当たりが、ないわけじゃなかった。

 

 

「勝つことだけ考えてたら、負けるのが怖くなって弱くなっちゃうよ」

「何を知った風に言ってやがる……」

「知ってるよ」

 

 

 相手の持つ2枚のカードから1枚を引く、ジョーカーだった。

 顔を顰めながら、持っている2枚カードを構える。

 優花が僅かに微笑み、それに釣られるように、俺の口角が僅かにあがった。

 

 

「万丈目が、本当は強いって知ってるよ」

 

 

 その言葉に呆気に取られる俺を無視して、相手がカードを引く。

 ジョーカーが俺の手札に残り、優花の手札は0枚になった。

 悔しさに顔を歪ませる。彼女の勝ちだった。

 

 

「どう?万丈目、楽しかった?」

「は?何が」

 

「ただのトランプだけど、楽しかったでしょ?」

「それは……」

 

 

 否定できなかった。デュエルとは違う、プレッシャーも何もないただのゲーム。

 勝つかもしれない、負けるかもしれない。相手の思考を読もうとして考えを巡らせ、何も躊躇わずにただ只管に勝利を目指す。

 それがただ、楽しかった。

 

 

「デュエルも一緒だよ。だから、もっと気楽に楽しんで」

「お前、まさかそのためだけにババ抜きなんかを?何でわざわざ……」

 

 

 優花が視線を逸らし、外方を向く。

 髪を弄りながら息を吐き出し、視線だけをこちらに向けてくる。

 そして言いにくそうに口を窄めながら、口を開き始めた。

 

 

「……だって、そうしないと万丈目、話の途中でどっか行っちゃいそうだったから」

 

 

 彼女は何の他意も感じさせず、ただこちらを気遣う言葉を紡いでくる。

 まさか、彼女は俺のためにこんな行動をしたのか?

 デュエルへの恐れとプレッシャーを抱える俺を、激励するために?

 

 

「ハッ!ハハハハッ!!」

「何さ、万丈目」

 

「ハハッ!ハハハッ!あぁもういい、分かった。もう全部がバカらしくなってきたところだ」

 

 

 こんな阿呆みたいな励まし方をされて、今さら自分が落ちこぼれだ何だと気にするのも馬鹿らしい。

 俺は立ち上がり、愛すべき馬鹿の頭を乱雑に撫で回す。

 こいつに呆れの感情を抱くのは何度目かも分からないが、こいつのお陰で今はもう、俺は交流戦デュエルを全力で楽しんでやろうという気概が湧いて仕方なくなっている。

 

 

「髪が...」

 

 

 困った顔で乱れた髪を手櫛で直す優花を見て、俺の僅かばかりの負の感情がスッと抜けていく感覚になった。

 謝罪の意味を込めて先ほど使っていたトランプを片付けてケースに蔵い、髪を整え終わった彼女へと手渡した。

 ジトっとした目で抗議の視線を送られながら、謝罪の言葉は口に出さずに俺は扉へ向かう。

 

 

「俺はもう行く」

「うん、応援してるよ」

「……貴様は本校側だろうが」

 

 

 彼女はまるで、こちらの味方かのような笑みで俺の背中を押してくる。

 反射的に思わず口に出した言葉は彼女には響かず、優花は笑みを浮かべたままだった。

 彼女が破顔した顔で口を開いた。

 

 

「うん。十代と万丈目、両方応援してるよ」

「はぁ……」

 

 

 呆れて物も言えんとはこのことだな。

 十代はバカだが、こいつはアホだ。

 だが阿呆に励まされたのは事実だ。

 ならば俺は全力でこの阿呆の期待に応え、十代とのデュエルを楽しむとしよう。

 

 






万丈目準:サンダーの心を失いかけた人。トランプで負けて「負けても楽しい」を理解した。絶好調。

小鳥遊優花:サンダーを正気に戻した人。トランプはレッド寮に置いてあった物を持ち出した。

主人公の名前を今さら小鳥遊優花にするのはあり?

  • 名前の法則的にそっちの方があり
  • ここまできたら慣れたからなし
  • どっちでもいい
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