GX世界の英霊デッキ使い 作:超融合は許さない
十代がダークネスと気力を出し尽くす激しい死闘を行い、勝ちながらも気絶をしてしまい寝たきりになってからしばらくが経った。
今はもう早朝と言える明るい時間であり、翔や隼人も現れて十代の様子を見ている。
目を瞑る十代は酷い悪夢でも見ているように魘されており、翔が彼の手を握って懸命に見守っている。
「兄貴……」
「ん、んぅ……」
十代は少し落ち着きを取り戻したように呻きが収まり、静かに小さい寝息をたてて寝ている。
隣に眠る吹雪さんもまた明日香に手を握られながら安らいでおり、十代と吹雪さんの胸元に輝くペンダントがそれぞれ淡い光を放っている。
翔に声をかけられる度に十代は身じろぎをして、そして静かに目を開き始める。
「翔、優花…….」
「兄貴っ!起きたんだね……!」
「おはよ、十代」
「ああ。つっても、あんまし寝てた気はしないんだけどな」
「無理もないよ、兄貴はあんなにダメージを受けたんだから」
「まだ、寝足りない?」
身体を起こした十代の瞼はまだ半目であり、彼は目を擦りながら間の抜けた浅い欠伸をした。
十代は寝惚け眼のまま近くに置いてあった自身のデッキを手に取り、癖のようにデッキの中を確認している。
彼は懵々としながらそのデッキを1つに纏めてケースへ戻し、背中を伸ばして大きく欠伸をする。
「ふぁ〜、まだ眠いぜ」
「……十代は、もう起きたみたいね」
「明日香……」
「よっ、明日香」
「ええ、おはよう十代。身体の調子はどう?」
「んー、まだ全快じゃないけど...悪くはないぜ?」
「そう……」
十代が肩を回しながら答えた返答に明日香は安心したような心配したような顔をして振り返り、未だ寝息をたてている吹雪さんの方を見始めた。
吹雪さんは眠ったまま起きる気配はなく、明日香は彼の頬を軽く撫でてから抱き寄せ、柔らかい笑みを浮かべる。
ふと視界の端に気になるものが映り、十代と翔を挟んだ先にある保健室の窓の外を見ると、何かが木の枝にぶら下がっているのが見えた。
「うわっ!」
「「?」」
私が大声を上げると2人がその声に反応し、驚いた顔をされた後に2人に小首を傾げられる。
私の視線の先には1匹の黒い蝙蝠がおり、小さい身体に赤く鋭い目がこちらを見つめている。
大徳寺先生経由で影丸理事長から聞いた、カミューラの眷属の特徴に合致する存在だった。
「何でもない。私、そろそろ行かないと」
理事長からはカミューラが円滑に鍵の守り手達とデュエルできるように補佐することを命じられており、黒い蝙蝠はカミューラからの呼び出しの合図として用意されたものだった。
私はこれから本格的にセブンスターズのアサシンとして活動し、セブンスターズと鍵の守り手の間に立って軽い橋渡しをしなければいけない。
カミューラの眷属であり蝙蝠に促されるままについていけば、私はセブンスターズの第二の刺客カミューラの待つ場所に着くはずだ。
「あっ、そうだ」
「どうしたんすか?」
「?」
私は十代に渡さなければいけない物があったことを思い出し、ふと立ち止まって振り返る。
カミューラの眷属の蝙蝠は私の唐突な行動にずっこけるようによろめいて窓にぶつかり、そのままゆっくり地面に落ちていった。
案外可愛いかもと思いながらそれを視界から外し、私はポケットにしまっていたカードのうちの1つを十代に渡す。
「はいこれ、渡し忘れてた」
「これって……」
「カードっすか?」
「うん、約束したから」
「約束?ああ、精霊の世界の時のか。別に気にしなくていいのにな……」
「むぅ、兄貴と優花さんだけで分かり合ってる感じがして狡いっすよ」
翔からの指摘を私と十代は笑って誤魔化し、無事にカードの受け渡しを済ませることができた。
私が渡したカードは『英霊 耀星のハサン』であり、それが十代の強いドロー力と組み合わされば、強い運用のできる良いカードになれると思う。
それになんとなく、十代に近しい何かを感じた。多分これは、目に見えない縁なんだと思った。
「ま、ありがたく貰っとくぜ。じゃあな、優花」
「うん、昼か夜にまた来るね」
「ばいばいっす!」
2人に手を振って別れ、待たせてしまっているカミューラの眷属の下へ向かうために保健室を出て廊下を歩く。
そして出口を通って外へ出てから保健室の窓辺へと向かい、そこの地面に倒れている弱々しい蝙蝠を見つける。
障子ぐらいなら破りそうな勢いで窓にぶつかってズルズルと地面に落ちていった様子は見ていたが、どうしてそのまま落ちた体勢で固まっているのだろう。
「蝙蝠は普通、地面から飛び立てるほどの筋力を備えてはいない。だからもし地面に落ちればそのまま2度と元の生き方には戻れぬままに餓死することになる」
「へぇ、それじゃあ、さっきは悪いことしちゃったかな」
「まぁ、適当に持ち上げて手を離してやれば、そのまま飛び始めるだろう。それっ」
「おぉ……」
エミヤから軽い解説を挟みながら状況を教えられて、その上で問題を解決してもらうことができた。
蝙蝠が元気よくエミヤの周りを飛び回り、そして彼に向けて優雅に一礼してから道案内を始めた。
私はゆっくりそれについて行き、道中の木陰でアサシンとしての衣装に着替えてから続けて蝙蝠の後を追う。
案内されたのは思わず溜め息が漏れるくらいには立派なお城であり、そのまま中に入るとカミューラの元まで案内される。
薄暗い廊下を通り、洋風な屋敷の装飾を見回しながらその凝り方にどことなく、カミューラの性格面が垣間見えて私の口からは思わず笑みが溢れた。
そして蝙蝠に導かれるままに辿り着けたのは水音の響く浴槽であり、そこには薔薇を浮かべたお風呂で湯浴みをする綺麗な女性がいた。
「あら、来たのねアサシン。それとも、小鳥遊優花って言った方がいいかしら?」
「……知ってるんだね」
美しい緑髪、玉のように白い肌、そして歪んだままそれが残っている口角、その女性が自身の自慢の肢体を見せつけるように湯船から上がり、彼女の眷属が運んできたタオルで身体を拭き始める。
そして彼女は赤いドレスに身を包み、血のように赤い口紅をその唇に塗り直す。
強く美しく、そして恐ろしい吸血鬼として彼女は立ち振る舞い、私の方を見ながら意味深に微笑みかけてくる。
「全部知ってるもの、この子達のおかげでね」
「この子達?」
「そう、私の眷属」
カミューラは暗い部屋の中で薄く微笑み、左腕を倒すように伸ばして地面と平行な位置に置く。
そうすると彼女の白い腕に飛び移るように1匹の黒い蝙蝠が現れ、その蝙蝠が彼女の指先に捕まってぶら下がる。
そしてその蝙蝠に続くように、周囲からはいくつもの羽音が鳴らされて一斉に蝙蝠が闇の中を動き出す。
「うひゃあ!?」
「あら、意外と可愛い声を出すのね?驚いたかしら、これが私の眷属。昔、私が育てていた子達でね、その頃はもっと数が少なかったのだけれど……って、そんな話じゃなかったわね」
うじゃうじゃと部屋の中を旋回する数の多い蝙蝠達を見て呆けていると、機嫌の良い様子のカミューラからペラペラと調子良く話しかけられる。
そして彼女は自身の眷属の話をしてから一旦その話を止め、闇のゲームに関する話へと話題を移行させた。
彼女は眷属の蝙蝠達を使って様々なデュエリストのデッキを覗いているらしく、自分だけが相手の戦術を全て頭に入れた上でデュエルするつもりらしい。
「ん?それってつまんなくない?」
「あなた、何言ってるの……?これは命を賭けたデュエルなのよ?そのくらいの準備はやって当然ってものでしょう」
「そっか……」
「それよりも、私の対戦相手のことよ」
彼女は事前に鍵の守り手達のことを調べ尽くしており、誰と対戦するかも要望があるようだった。
まず眉目秀麗な男性、そして魂の持つ魔力量が大きいこと、との条件をつけられる。
そして彼女からは最初の相手として青い髪の高身長の男と指定され、私はカイザーを彼女の元まで連れて行く役目となった。
次の日、空も覆い隠すほどの厚い濃霧の広がる湖の上で、彼女は木製ボートの上に立って畳まれた赤いカーペットに魔力を通し、眷属の蝙蝠に命じてその布が湖の上に道を作る。
私はアサシンとしての黒い外套に身を包み、彼女に指定されたカイザーを戦わせるためにその道を歩き、湖の向こうに固まっている鍵の守り手達に接触する。
集まっているのはクロノス先生、カイザー、万丈目、そして三沢の4人であり、その4人が話し合っている後ろから私は声をかける。
「こんにちは」
「ッ!」
「何者ナノーネ!」
「セブンスターズか……!」
「くっ、向こうからやってくるか」
優しい声音で話しかけた瞬間に警戒心を剥き出しにして構えられ、様々な言葉をなげかけられる。
鍵の守り手だけで集まっていたことからも分かったが、やはり向こうにはこちらがセブンスターズだと気付かれているようなので、その説明は省略する。
そして相手の言葉から誤解されていそうな場所を探し、それを訂正するために私は待ったをかける。
「私の名はアサシン、セブンスターズとあなた達の仲介役です」
「仲介者だと...?」
「つ、つま〜リ、進行を円滑にする審判に近しい存在ということでスーノ……?」
「そんなお優しい奴なら良いがな……」
「お前がここまで来た用件はなんだ?」
私の説明は正しく伝わり、その上で飛び切りの警戒と懐疑心が私へと向けられる。
彼らは私の正体を探ろうと私のことを観察してくるが、しかし私の衣装はメディアが私の魔力を流用しながら魔術で作ったものであり、高ランクの隠蔽と気配遮断が付与されている。
そのため私の正体がバレる可能性はないに等しく、特に危ない橋でもないために私は本来の目的を進める。
「カイ……丸藤亮。彼女は貴方を対戦相手に選びました」
「俺が……」
「いきなりカイザーを指定すると〜ハ、中々豪気な性格ナノーネ!」
「向こうから指定されたんじゃ、俺に異論はないぜ」
「俺もだ。行ってくれ、カイザー」
カミューラがカイザーを誘っていることを話すと向こうもスムーズに話を進め、カイザー自身も意を決したように足を踏み出す。
そしてカミューラもまたその足を踏み出し、赤い舞台の上で彼女が左腕に備えられた金のデュエルディスクを構える。
妖しい光を放つ月光の下、視界が塞がりそうなほどの強い濃霧の中、静かに凪いでいる湖の上で、闇のデュエルが始まる。
戦士族・闇・星5・攻2000/守1500
①:このカードをドローした時、このカードを相手に見せて発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。
②:このカードは直接攻撃できる。
③:このカードが相手モンスターと戦闘を行う場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠・効果モンスターの効果を発動できない。
小鳥遊優花:雑用してる人。空を飛ぶ生き物と集合体が苦手。
作品の問題点がどこにあるか教えてほしい
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