魔法少女リリカルなのは Desert punk 作:15ブロック
「奪われたデバイスを取り戻してほしい?」
『うん……』
蛙一家からユーノを助けだした二日後、今度はユーノから仕事の依頼をされた。
その日の前日は仕事の依頼が無かったので、今日はデバイスの点検でもしようかと思ったらこれだよ。
プライベート通信なのでババアが勝手に依頼を受けるって事は無いが、ちょいと危ない臭いがしたので俺は詳しい話は直接会って話を聞くと伝えユーノがいる遺跡の発掘現場に向かった。
発掘現場に着くと、事情を知っていたのか作業員の一人が近付いてきて遺跡近くの建物に案内してくれた。
休憩所に案内されたようだが、中には人がおらずガランとしている。
ユーノもまだ発掘作業に時間が掛かるのでしばらくここで待っていてくれとのことだ。
まあ通信で終わらす内容だったのを無理して押しかけたんだ仕方ない。
何時間でも待つさ、どうせ暇だしねー。
立ちっぱなしで待つのはさすがに疲れるのでパイプ椅子に座っていると、作業員がグラスに水を注ぎ差し出してくれたので礼を言って受け取った。
俺がグラスを受け取るのを確認すると作業員は発掘現場に戻ってしまった。 忙しそうだねぇ~……
「さーて、まだまだ時間が掛かりそうだし点検でもするか……」
手持ち無沙汰になった俺は腰に携えたデバイスを傍の机に置き、簡単な自己診断をさせる事にする。
腰のポーチから端末を取り出し、装甲を展開させて端末とコードで繋ぐ。
端末を操作して自己診断モードを起動、後はデバイスがやってくれる。
「何か問題があったら報告してくれ」
『
愛銃に設置されているコアが点滅し囁くように応えた。
もう少し喋ってくれたら良いんだが、まあ仕方ねぇか……
一応コイツはインテリジェントデバイスに分類されるんだが、ちょっとした理由で自分から喋る事はほとんど無い。
喜怒哀楽などの表現はコアの点滅でわかるので、一方的な会話にはなるがそれなりの会話は成立している。
しばらく点検作業をしている愛銃をじっと眺めていたら少し照れたように点滅したので、仕方なくパイプ椅子に背中を預け天井を見上げる事にした。
さーて、また暇になった……考える事って言ったら今回の依頼の事だが。
まあ、それはユーノが来てからで良いか。
・
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・
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……あれから20分くらい経っただろうか?
しばらくはぼーっと天井を眺ていたが、首が痛くなりそうになったので今は体勢を戻し外をぼんやりと眺めている。
外では相変わらず作業員が走り回り作業をしている。
ユーノの来る気配は無い。
二日前に攫われていたってのにアイツも大変だな……
後で知った事だが、アイツは責任者の子供では無くこの遺跡発掘の指揮者なんだと。
遺跡を狙う賊などにユーノが狙われて、発掘作業を妨害されないようにするため偽の情報を流したは良いが、まさか身代金目当てで誘拐されるとは思っていなかったようだ。
優秀な魔導師って話だが俺より年下の子供に現場の指揮をさせるかねぇ……
この前の事件もあるし用心棒でも雇った方が良いんじゃね? 俺はやらねーがな。
そんな事を考えながら待つこと約30分、ようやく発掘作業がひと段落したのかユーノが現れた。
バリアジャケットは展開していなかったようだ、耐熱式のフードを脱ぎながら走ってこっちに向かってくる。
「ごめんっ! 遅くなった!」
「いや、そんなに待ってねーよ?」
……なにこのデートの待ち合わせみたいな会話?
そんな事を思いつつユーノを見ると、乱れた呼吸を整わせつつワイシャツの胸の部分を引っ張りパタパタと扇いでいる。
「……」
喘ぐように息を乱して汗をかき、上気した肌は艶っぽく見え、汗で湿ったワイシャツにうっすらと浮かび上がった肌、扇いでいる時にチラリと見える鎖骨に一瞬ドキリっとしたが、そこで気が付いてしまった。
「……ん? どうしたんだい?」
「いや、いろいろとズルイなって思っただけだ」
「?」
残念だけどユーノって男の子なんだよね……本当に残念だ。
「さて、詳しく依頼を聞きたいんだが」
「……うん」
大切なデバイスなんだろうな、ユーノは顔を曇らせ依頼内容を説明した。
盗まれたのは二日前、つまり蛙一家に誘拐された時に奪われたっつー事か。
待機状態が高価なアクセサリーに見えた為、蛙一家の親分に気に入られ取り上げられたそうだ。
管理局には通報してあるので奴らにデバイスの事も任せればと言ってみたが、受け渡しに時間が掛かりこの世界での滞在期間が長くなってしまうので管理局に任せるのは控えたいとの事。
また、ユーノが持っていたのは遺跡発掘で見つけたデバイスという事もあり希少価値が高く、更に高性能なインテリジェントデバイスなので管理局が責任を持って保管し所持する事にもなりかねないそうだ。
「それに僕が初めて見つけたデバイスだから、信頼できる人に渡したいんだ」
「ふーむ……」
しかし一度出し抜いた奴らを相手取るのはちょっと危険度が上がるんだよなぁ。
できればもう少し時間を空けて受けたい……といっても時間を延ばすと管理局が蛙一家を捕まえるので、最悪奪われたデバイスが戻って来なくなってしまう。
「ダメ……かなぁ?」
そんな捨てられた子犬のような目で俺を見つめるんじゃない。
判断が鈍る、即決したくなるから上目遣い禁止!
まあ、そんな冗談はともかく簡単には受け辛い仕事って感じだよな。
親分が気に入ったって事はそいつを倒さないと取り戻せないって事だ。
小細工や戦術でなんとかなりそうなんだが無駄に魔力が高いってのが気がかりだな、最悪
……アレ?何で受ける方向で俺は考えているんだ? まあいい、とりあえず結論から言うとだな。
「二日前に出し抜いたばかりで危険すぎる。 受けるとしても……それなりの報酬を貰うぜ?」
「うっ」
そうきたかって表情だな。
悪いな、俺も命が大切なんだよ……報酬次第でなびく薄っぺらい命だがな。
ユーノはしばらく難しい顔で手元の端末を弄っていたが、納得できる金額をだしたのか俺に見せてきた。
「……これでどうかな?」
「ぶっ!!」
見せられた金額に目玉が飛び出るかと思ったぞオイ!?
わりと高めに想定していた金額より0が二桁多いってどうなんだ?
失礼な言い方だがスクライア一族ってのは金銭感覚ってのを知らないのか?
「お前の金銭感覚はどうなってんだよ……」
「部屋に居るのにヘルメット被っている君には言われたくないよ……」
いや、俺だって室内じゃメット取りたいよ? バリアジャケット解除したいよ?
とはいえ地味に有名になったから正体バレたらマズイんだよね最悪突き止められて襲撃される。
まあそんなプライベートな事はどうでもいい、問題は今回の依頼だ。
戦闘面ではまあギリギリって所だが、それに報酬が合わさり受けたくなってしまう。
さーてこりゃ断れなくなってきたぞ? どうしてくれようか……
『その依頼、受けましょう!』
俺が悩んでいると、どこかから声が聞こえてきた。
聞き覚えのある声だったので、恐る恐る机においていた愛銃を見てみると通信回線が開いていた。
『
愛銃が申し訳なさそうに俺に向かって謝ってきた事でだいたいの事は理解した。
いや、謝らなくていいよ……これは俺のミスだわ。
まあ簡単に言うと……やっちまったって感じだな。
簡易点検モードを使うと家にある端末とリンクして状態確認するから逆探して会話とか聞き取れるんだよね。
そんな事を忘れてホイホイ点検開始して依頼主に会って会話しちまったんだ。 家族に内緒で!
んで、最悪な事に一番聞かれたくない人に聞かれちゃいました。
『便利屋“砂ぼうず”の名にかけて! 依頼を必ず成功させます!』
その声が聞こえた瞬間、俺とユーノの間に空間モニターが開き、俺と同じヘルメットを被ったエプロン姿の女性が現れた。
『……って、あらあらまあまあ可愛い依頼主だこと! 男の子かな? 女の子かな? ウフフ』
いきなりの事で何も言えないユーノと気まずそうにしている俺をそっちのけで喋る。
ウフフじゃねーよ……
『息子はご迷惑をお掛けしませんでした? 出来の悪い息子でしてねぇ~』
そう、俺のカーチャンだ。オカン、母上、マミー、OK?
俺が呆然としている間にもマシンガントークは炸裂し、ユーノは呆気にとられ思考が停止している。
『……という訳で末永くお付き合いお願いしますね? あ、クーゴ!! アンタは盗られたデバイス取り返すまで帰ってくるんじゃないわよ~?』
おいいいいいいいぃぃぃぃぃぃ!! 本名言うんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
『あっそれと
遠くで妹の声が聞こえた瞬間、通信が切られたのか空間モニターが閉じる。
最後は何を言おうとしたんだよ……
「……」
「……」
ユーノ、俺、しばらく無言。
「……クーゴって名前なんだ」
「正確にはクウゴだ、民族名だってあるぞ?」
「そうなんだ……えっと」
「何だ?」
落ち込んでいて気が付かなかったが、何故かユーノがもじもじと恥かしそうにしている。
しばらく返事を待っているとユーノが上目遣いにこう言った。
「依頼、受けてくれるよね?」
「はい、よろこんで」
母よ、あんたはユーノに何を吹き込んだ。
妹にこれされると無条件でいい返事してしまうんだよな。
って……ユーノって男だよな俺マジで大丈夫か?
ま、まあともかく依頼は成立してしまい、ユーノのデバイスを取り戻すまで家に帰れなくなっちまった。
蛙一家の親分か……俺、生きて帰れるかな……
「あ、クーゴ! 明日は発掘作業がお休みだから手伝うよ」
「いや、手伝うのは良いがお前って現場監督だろ? 大丈夫なのか?」
「こう見えても補助魔法は得意なんだ! それに、やっぱり自分の手で取り返したいんだ」
「下手したら命を落とすかもしれないぞ?」
「それはクーゴだって同じだろ?」
「……っは! 言うじゃねーか! 怪我しても知らねーぞ?」
「そっちこそ!」
こうして上手いこと乗せられた俺は蛙一家からデバイス奪還する為、ユーノとコンビを組むことになった。
結果がどうなるか判らないが不思議と上手くいきそうに思え何故か根拠の無い自信が溢れてくる。
「クーゴ、頼りにしてるよ?」
「おう、まかせとけ」
俺達は夜遅くまで作戦会議を開き、蛙一家にとある手紙を送ることにした。
さーて、今度は潰す気でいくから覚悟しろよ? 蛙一家の皆さん?
余談
「そういや盗まれたデバイスってどんな名前なんだ?」
「名前? ああ、レイジングハートって言うんだ」
「レイジングハート、不屈な心……ねぇ」
「クーゴのデバイスは?」
「俺のデバイス? ああ……あれ?」
「クーゴ?」
「いや、名前はあるはずなんだが、思いだせないんだよ」
「どういうこと?」
「ひとつ言える事は作者が決めてないって事だ」
「なにそれこわい」