魔法少女リリカルなのは Desert punk   作:15ブロック

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いつの間にかユーノ君とフラグ立ててるクーゴ君。
……べつに変な意味じゃないよ?
すごく仲の良い関係って感じなんだよたぶん。


005/砂と雨

 僕の名前はユーノ・スクライア。

遺跡の調査、発掘を生業としているスクライア一族の一員だ。

 

最近はこの第87管理世界で新しく発見された遺跡で発掘調査の指揮を任されたんだ。

この世界は数千年前に文明が滅んでいて、見渡す限り砂漠と遺跡が広がっている。

朝はとても暑く夜は凍えるように寒い、食料や飲み水を手に入れる事も難しく、凶暴な魔法生物だって生息している。

僕達も魔法生物が入ってこないように結界を張ったり、定期的に補給を受けないとすぐに全滅してしまいそうだ。

 

そんな地獄のような世界でも現地の人々はしぶとく元気に生きている。

元気すぎて誘拐されたくらいだ。

まあ、そのおかげで面白い人に出会えたんだけどね。

彼が来てくれなかったらどうなっていたかわからない。

とても感謝している。

 

……あれは今から数週間前の出来事だった。

水を飲もうと現場を離れた時、不意に後ろから羽交い絞めにされ口元に布を押し当てられたんだ。

何かの薬品が染み込んでいたようで、僕はすぐに気を失ってしまった。

そして目が覚めると、身動きができないほど縛られていて、偉そうにしていた男にデバイスも奪われてしまった。

このまま殺されるんじゃ無いのかと不安と恐怖で頭がいっぱいになった時、ガラスが割れる音がして彼が現れたんだ。

御伽噺で言う白馬の王子様って感じではないけれど、僕を抱えて悪いやつらから助け出してくれた。

奪われたデバイスを取り戻した時は怖い思いもしたけれど、敵の親玉を倒した時はカッコ良かったなぁ。

こうヒューンって飛んで上からドカーンって敵の親玉を倒したんだ。

それでその後もよく依頼をお願いするようになって、最近は依頼が無くても僕のところによく来てくれて様子を見てくれるようになったんだ。

休憩中には面白い話を聞かせてくれたり、一緒にご飯を食べてくれたり、砂漠で使える魔法を教えてもらったりもした。

もしも僕に兄さんが居たら、あんな人が良いな。

 

……ちょっと子供っぽくて意地汚くて乱暴な時もあるけどね。

 

ん? おっと、噂をすれば……

 

「おーい、ユーノー!」

 

声のする方を見ると奇妙なヘルメットを被りマントを羽織った人物が僕に手を振りながら歩いてきた。

そして彼は僕の前まで来ると、懐から紙袋に包まれた荷物を取り出した。

 

「ほら、お前宛ての荷物、持ってきてやったぞ」

 

そう、彼が僕を助けてくれた人物だ。

みんなからは『砂ぼうず』って呼ばれてるけど……

 

「ありがとう、……クーゴっ」

 

僕は彼の本名と素顔を知っている。

変身ヒーローの正体を知っているみたいでちょっと嬉しい……かな?

 

「だーかーらー! 砂・ぼ・う・ず! だっつーの!」

 

クーゴの声が聞こえた瞬間、強い力で頭をワシャワシャ撫で回された。

 

「うわっ!ちょっとクーゴ!」

 

「むっまだ言うか!」

 

「え? うわっちょっと! 痛っ痛いよ!」

 

今度は素早く僕の背後に回り首に腕を回してぐりぐりと拳骨を頭に押し付けてきた。

ちょっとイタズラっぽく言ったのがいけなかったのかな? って痛い! 痛いよクーゴ!

手加減してくれているようだけど、拳のちょうど尖った部分が当たっているので地味に痛い。

 

「ちょっと、誰か、見てないで誰か……ってなんで笑ってるのさ!?」

 

ひっしにもがいて周囲に助けを求めようかと見てみると、皆は微笑ましそうに見つめている。

というか笑っている。 鬼だ。 でも皆からすると僕達は兄弟みたいに見えてるのかな?

……だったらちょっと嬉しいかな? ちょっと痛いけど。

 

「ったく俺の本名は秘密だってのに毎回毎回……」

 

「ううっ」

 

皆の生温かい視線に耐えかねたのか、ようやくクーゴは僕を解放してくれた。

ううっ髪がボサボサだよ。

 

「お前達は昼間っからなぁーにイチャついてるんだ」

 

「え?」

 

「あ?」

 

ぶつくさと文句を言っているクーゴの隣でボサボサになった髪を直していると何処からか声が聞こえてきた。

クーゴがキョロキョロと周囲を見回しているが見つけられないようだ。

僕も探してみるけど見当たらない。

背後は建物の壁になっているのでおそらく正面の何処かにと思ったんだけど……

 

「どこにいやがる!?」

 

「ここだわさ」

 

焦れたクーゴが声を出すと、頭上から声が聞こえてきた。

もしやと思い、僕達は数歩進んで背後にある建物の屋上を見上げると一人の男が座り込んでいた。

ダークブルーの帽子と体をすっぽり覆えるほど大きなマントを着込み、顔をマスクで隠し双眼鏡のようなバイザーが爛々と輝いている。

 

「テメエは……雨蜘蛛!」

 

「危ない人だ!」

 

「黒雨だ。それと譲ちゃん、おじさんは危ない人じゃあないぞ?」

 

彼は傭兵の黒雨さん。

僕とクーゴがピンチになった時に助けてくれた人なんだけど……とっても危ない人なんだ。

だってさ、バインドで縛り上げた人たちに、無抵抗で何もできない人に酷い事をしたんだよ。

詳しくはクーゴに目を塞がれて見えなかったけど、凄い叫び声が聞こえたんだ。

あれは拷問か何かをされたんだと思う。 クーゴもどん引きしてたし。

それに、凄く臭かった……

 

そのままその場を離れたからその後の事は分からないけど、クーゴが言うにはアイツ等は魂を抜かれたんだって。

あと一生痔には困らないそうだ。

……どういう意味なのかな?

 

バインドに複雑な結び方を組み込んでいるから教えて貰おうかなとも思ったけど、正直ちょっと近寄りたくない。

というかこの人、僕のことをいつまでも女の子扱いするのも気になるんだよなぁ。

よし、今のうちに誤解を解いておこう!

 

「譲ちゃんじゃない! 僕は男だ!」

 

「なにぃ……男っ!? 男の娘だと?! そうか、そうなのか、譲ちゃんは男の娘か!」

 

「そうだよ、僕は男の子なんだ……よ?」

 

「……なんか間違ってねぇか?」

 

隣に居るクーゴがあきれたように呟いている。

……うん、僕も何か間違っているような気がする。

 

 

 

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 さーて、どうしたもんかねぇ……

ユーノと別れた後、俺は黒雨の隣りに立って発掘作業を眺めている。

正直言うと黒雨(コイツ)が現れた理由に少しばかり心当たりがあった。

というのも数週間前にスクライア一族から依頼があったんだが、そいつが言うにはユーノが殺し屋に狙われているとの情報が流れてきたそうだ。

おそらくただの噂話だという事なので、とりあえずユーノには内緒で俺がしばらく一緒に行動して問題が無ければそれでお終いという形で依頼を受けた。

俺があっさり依頼を受けた理由としてはババアが報酬に目が眩んだってのもあるが、殺し屋がユーノを狙っているという情報はまったくの出鱈目だと思っているからだ。

いくら有能と言ってもユーノの話を聞く限りだとそれほど大きな活躍してねぇしな。

それにまだ若い、殺し屋を雇ってまで殺すほどの地位も実力も無いはずだ。

まあスクライアの一族が殺し屋に依頼したってならなんとなく判るが、依頼してきたのはその一族だからなぁ……

だが、そんな時、コイツが現れた。

しかもふざけたのか何かは知らねぇが気配を消して俺の前に現れた、ご丁寧に『魔力の反応まで消して』だ。

……警戒しすぎなのかもしれないが、いちおう確認してみっか。

 

「……ここに来た理由は何だ?」

 

「……ふっふっふ、お前がそれを聞くのか? ええ? 砂ぼうず?」

 

こりゃあ俺は殺し屋だって言っているもんだな。

さっさと仕掛けるか? いや、ここは目立つ一旦離れて……いやいや相手は俺と同じ小細工中心の技巧派。

下手に誘って罠に引っかかったら目も当てられない。

 

「くっくっく……さぁて」

 

「!?」

 

チィッ!! ここで動くか!

このまま後手に回るのは危険っ! だが、下手に動くと罠に嵌るっ! ならば、小細工されないように正面から一気に突破するっ!

思考に陥ること約一秒、すぐさま俺が奴に愛銃を突きつけると相手も同様に銃を突きつけていた。 という事はやっぱり……

 

「「やっぱりお前(キサマ)が殺し屋だな!?」」

 

「「ああ!?」」

 

……どういうことなの?

 

「いや、お前が殺し屋だろぉ? ご先祖様の名前も取り立て屋も止めちゃったし? クソッタレな傭兵だし? 依頼されたら何でも仕事するでしょ?」

 

「い~やいや? どうみてもそっちの方が適任でしょ? あの妖怪ババアの跡取りだしぃ? いつまでも貧乏だし? そろそろキサマの親父みたいに外道に堕ちるんじゃなぁ~い?」

 

コイツ……さらっととんでもねぇ事を言いやがったな。

 

「「いやいや」」

 

とりあえず距離を取ろうと奴に愛銃を構えながら横に数歩移動すると、ヤツも同時に動いていたようだ。

考える事はいっしょってか?

 

「「いやいやいや」」

 

少しでも距離を取ろう、歩こうと思ったが相手も同様に歩いている。

周囲の発掘員もこの異様な雰囲気に気が付いたようだ、作業を止めて俺たちに視線が集中する。

それでも俺たちは立ち止まらず早歩きに切り替える。

それも互いに銃を構えたままだ。

発掘員はすでに作業を止めて俺たちの奇行を見つめている。

 

「「いやいやいやいやいやいや」」

 

終には横向きに銃を構えたまま走り出して並走していた。

全力では無くあくまで相手に合わせるように、迅速に素早く視線から逃れるように走った。

そしてそのまま発掘現場の外まで走り前方に岩場が見えてくると、どちらとも無く後ろに飛んで距離を取った。

 

「ぜーはー……な~るほど、またかち合ったってことかい雨蜘蛛さんよぉ!?」

 

「ヒーヒー……だ~から俺は黒雨だぁっての!」

 

最近よく会うんだよなぁ……特にユーノ絡みで。

軽く話を聞いた限りだと管理局経由で依頼されたようだ。

なんでもユーノを暗殺するってぇ内容の手紙を出してきたんだと。

で、ここで気が付いたんだが……

 

「なあ、雨蜘蛛さんよ? その手紙の差出人で殺し屋が判るんじゃね?」

 

「……え?」

 

いや、「え?」じゃねーよ。

なんか通信機出して確認してるし……

 

「あー……そうか、了解した」

 

「誰がユーノを狙ってるんだ?」

 

「江戸川の三兄弟だってよ」

 

「……俺、妹しか居ねぇんだけど? あと言いたくないけど俺は“水野”だ」

 

「……おお、そういやぁそうだったなハハッ」

 

俺は黙って愛銃の引き鉄を引いた。

 

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 数時間後、辺り一面に空の薬莢がばら撒かれ岩場には戦いの激しさを物語るかのように無数の銃弾が刻まれていた。

俺の一発が引き金となり、雨蜘蛛(コイツ)が応戦したせいでこうなってしまった。

小細工派どうしが警戒しすぎて戦うと本当にただの撃ちあいになるんだな。

この勝負でよぉーくわかった。

すんごく疲れた、もうやりたくねぇ……

 

「ゼーゼー……」

 

「フーフー……」

 

俺の魔力はスッカラカンになってしまった。

昔っから魔力の才能はなかったからなぁ……

目の前の雨蜘蛛(バカ)はまだまだ余裕があるみたいだな。

ぐぐぐ……ちょっと悔しい。

でもまあ、魔力が無くなって妙にすがすがしい……な

 

「ヘッヘヘヘ……」

 

「ふっふふふ……」

 

俺と雨蜘蛛……いや、黒雨はヨロヨロと互いに近付いて、互いの肩に腕を回した。

 

「「アーハッハッハッハ!!」」

 

そして俺たちは狂ったように笑いあった。

なんとなく俺たちの間に友情……のようなものが芽生えた瞬間である。

ひとしきり笑った後、俺たちはその場に座り沈む夕日をじっと眺めていた。

 

「なかなかやるじゃねぇか砂ぼうず……オメェの親父を思い出したよ」

 

「へっ……」

 

しばらく何も喋らず戦いの余韻に浸っていたら、ふいに黒雨が呟いた。

あまり褒められる事がないのでなんとなく気恥ずかしい気分になってしまう。

……ん? 遺跡の方から誰か来るな。

 

「おーい!」

 

その誰かは手を振りながら俺たちの方へと向かって来る。

ああ、あの声はユーノか……って!!

 

「お、おいっマズイぞ砂ぼうず!」

 

「っっ!! 伏せろユーノォォォォォ!!」

 

「え?」

 

ユーノが俺の声で立ち止まった瞬間、乾いた音と共に左肩から血が噴出し仰向けに倒れた。

間に合わないと思いつつも急いで駆け寄ってみると、ユーノは苦悶の表情で蹲っていた。

 

「ユーノ!!」

 

「うっううっ!!」

 

横たわるユーノを見てみると左肩を抑えている手から鮮血が溢れていた。

一瞬呆然となるが、口の端を噛み自身に渇を入れて俺は腰のポーチから布を取り出しそれで止血をした。

 

「ちょっと痛いが、我慢しろよ?」

 

「うっ! クーゴ……」

 

「……っち」

 

血を出しすぎたのか、ユーノは弱々しく俺を見つめている。

最悪だ……馬鹿やって護衛対象(ユーノ)を傷つけちまった……

黒雨はというと舌打ちしながらも俺たちの周りに結界を張って警戒をしている。

……凹んでいる場合じゃねぇな、この落とし前はキッチリつけてやるよ。

携えていた愛銃を構え、俺も周囲の警戒に加わる。

 

【へっへっへ……砂漠の妖怪も魂の取り立て屋も大した事がねーなぁ!】

 

【いっとくがさっきのは挨拶代わりだぜ?】

 

【ボディガード忘れて潰し合ってくれたからなぁ! これは俺たちなりのハンデだ!】

 

【【【ギャーハッハッハ!!】】】

 

そんな俺たちの行動を嘲笑うかのように念話が聞こえてきた。

ユーノのほうを見ると、呆然とした表情で俺を見ている。

まあそうだろうな、なんせ任務そっちのけで馬鹿やって敵にナメられたんだからよ。

 

「クーゴ……」

 

【まあその馬鹿やったおかげで砂ぼうずは魔力切れ、雨蜘蛛も戦力半減になったワケだ】

 

【まっててねユーノ君、すぐに殺してあげるからさ!】

 

【ヒャーハッハッハ!!】

 

クソッ……何も言い返せねぇ……

 

「黒雨だバカヤロウ……ユーノ君、怪我は大丈夫かね?」

 

「……え? あ、止血のおかげでなんとか……」

 

「そうか、それは良かった。 砂ぼうず!」

 

「……なんだよ」

 

「さっさと狩るぞ」

 

……重く冷たい一言だった。

殺し屋の三兄弟はもちろん、俺やユーノにもその言葉に何も言えなくなってしまった。

いや、俺は少し違ったようだ。

 

「……へっ」

 

依頼とか護衛対象を守れなかったとかそんな事はさっきの言葉で吹き飛んでしまった。

そしてふつふつと湧き上がるこの感情。

 

「そうだな、俺も三流の殺し屋程度にナメられただけで終わるつもりは無いね」

 

【なんだとぅ!?】

 

湧き上がったのは殺し屋程度にナメられた事による怒り、そして。

 

「すまねぇなユーノ、結界が張ってある遺跡なら安全だと思っていた俺のミスだ」

 

「クーゴは……悪くないよ」

 

ユーノを傷つけてしまった事に対しての自身の不甲斐ない自分への怒りだ。

 

「行くぜ、黒雨」

 

「だから黒……っふ、ああ行くか」

 

【はっははは……狩れるもんなら狩ってみやがれ!】

 

【テメェ等を倒せば俺たちは有名になれる】

 

【かかって来いよォ!】

 

馬鹿三人の罵声を軽く流して俺たちは結界の外へと出る。

すると背後のユーノが声援を飛ばしてきた。

 

「クーゴ! 黒雨さん! 絶対に戻ってきてよね!」

 

俺は振り向かずに愛銃を空に掲げ声援に応えた。

黒雨も同様に正面を見据えて右手をヒラヒラ振っていた。

 

「って砂ぼうず、そういや魔力無くなったんだろ? 大丈夫か?」

 

「ああ、そりゃあ大丈夫だ」

 

正直コイツにコレを見せるのは避けたかったが仕方が無い。

俺たち便利屋「砂ぼうず」が妖怪として名を轟かせた秘密の一つを使うことにした。

 

「なんだそいつぁ?」

 

怪訝な態度を取る黒雨を尻目に、俺は左手を腰の後ろに回してそこに取り付けていたホルスターから一丁の拳銃――S&W M10――を取り出した。

 

 

 

 




クーゴの魔力量は、そこら辺のモブ魔導師より少し上程度と考えています。
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