ALICE   作:オンドゥル大使

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第12話 それぞれの『動機』

 

「あーら。とんでもない被害じゃん」

 

 中枢部で正午前に巻き起こった事故に関して、姫宮財閥はガス爆発の一点張りを報道すると決めたのだと聞いた、その直後であったので綺咲は学校の屋上で構えを取る。

 

「……早谷兎真……。ここはあなたの学校じゃないけれど」

 

「そんなコト言いっこなしじゃにゃーい? ……よっと」

 

 ポケモンを使って屋上まで辿り着いたのだろう。綺咲は嫌悪感を隠しもせずにその行動を咎める。

 

「……酷い被害ね」

 

「でも、“今回”に限って言えば随分と大人しいじゃん。ヒメは何で急行しないの?」

 

「……転生者が居るとウチの監査部がね。先んじて報告したと思えば、どうやらダイマックスポケモンにやられたみたい」

 

「社長令嬢も大変だねぇー。一つ、イイコト教えたげようか?」

 

 柵にもたれかかった兎真に綺咲は眉をひそめる。

 

「……要らない。私の敵は私が排除するだけよ」

 

「その敵とやら、に関して。昨日遭遇した子に接触したみたい。確か、篠崎有栖、だっけ?」

 

 まさか、と綺咲は視線を振り向ける。

 

「……篠崎さんが、あの中に……?」

 

「急ぐんなら、今だと思うけれど? まだ呪い状態の傷を受けたままのジャラコじゃ、本領発揮は難しいでしょうし」

 

「転生者同士で……共闘でも……」

 

「ヒーメ。ヒメが孤独を深める理由は知っているつもりだけれど、あまり我慢しても仕方ないと思うけれどにゃー」

 

 だとすれば、昨夜交戦した転生者である可能性が高い。

 

「……いや、ゴーストタイプ使いなのだとすれば、私が出てくれば相手の思うつぼよ」

 

「ゴーストタイプの射程は短いけれど、呪いの傷を関知してヒメの居場所は分かるだろうし。なるほど、現れてしまえば、篠崎有栖にヒメが敵なんだと吹き込まれちゃえば厄介だねぇ」

 

「……それよりも、あなたはいいの? 今回の戦いにまるで関与しないようなポジションだけれど」

 

「えー、だってさ。旨味がないのにクビ突っ込むのは自殺行為でしょ。あーしはヒメが一番の障害だと思っているから、潰し合いにも干渉しないしー」

 

 兎真のスタンスは変わらず、ここでの静観を貫くつもりなのだろう。それも転生者としての戦い方の一つだ。

 

 しかし綺咲には傍観と言う名の選択肢はあり得ない。一手でも他の転生者よりも先んじなければ、と耳に嵌めたインカムに呼びかける。

 

「追跡班。篠崎さんの位置情報は?」

 

『それが……すいません、お嬢様。完全に撒かれました。イニシャライズポケモンの被害規模が大きく……』

 

「あーあ。一手先んじられちゃった」

 

 煤けた風が屋上に吹き抜ける。如何に姫宮財閥が優れていても、ポケモンを使える転生者に優位を取られている状況は変わらない。

 

「……私を誘っている、と言う事ね」

 

「どーすんの? ヒメが勝てないって言うんなら、あーしが切り拓いてあげてもいいけれど?」

 

 兎真が手の中のモンスターボールを中空に放りながら自分に交渉する。それを綺咲は冷たく断じていた。

 

「いいえ。早谷兎真。あなたには頼らない。……篠崎有栖がどれほどのものか、見せてもらいましょう」

 

「おっ。その手腕に期待ってところ? けれどねー、転生者って言ったって、まだ新人ちゃんだし。案外、ヒメの思うようにはいかないかもよ? そうなってもいいの?」

 

「そうなってしまえば、その時は仕方ないわ」

 

 一つ結びにした髪を屋上で吹き抜ける風になびかせ、綺咲は言い放つ。

 

「……敵になれば、そこまでの話よ」

 

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