「何ー? ヒメ、昨日はひっきりなしに通話を送っていたみたいだけれど」
そろそろカラオケボックスから帰宅しなければならない朝方になって、ようやく兎真は綺咲からの鬼電に気づき、かけ直すなり通話口から彼女の圧のある声が返ってくる。
『……今さら何を言っているの。あなた、相当に頭が回っていない様子ね』
「ヒメ、怒んないでってば。あーしは……そうだなぁ。美しき友情を見た、と言う感じかな」
『……何の事? チェシャーからの説明があるかもしれないけれど、私達の応援となる新たな転生者が選出されたわ。それに関しては追々……』
「……幸子ぉ……っ」
対面の有栖が取り残された幸子の手紙を読んで熱い涙を流す。震える指先はこの結末以外になかったのかと言う悔恨に塗れている。
『……篠崎さんが居るの……?』
「あー、うん。ちょっとね。……あのさぁ、ヒメ。あーしなりに思うんだけれど、これって回避出来なかったのかな? 大切な親友や、大事な家族と……こうして殺し合わないといけないなんて、何よりも残酷だよ」
『……そんな事は分かり切っているわ。チームロワイヤルを選択した時点で、私達には逃げ場所なんてどこにもない。この勝負で勝つ事でしか、己の存在価値を示せないのよ。負ければ全て水泡に帰すわ』
「結果論として、勝ったほうが正義、かぁ。……やるせないね。異空間でチェシャーに現状を聞き出すか、それかヒメのお膝元のほうがいい?」
『姫宮財閥に来てちょうだい。昨日今日で破壊工作は不可能のはず。少しの安全は保障するわ』
この物言いだと、昨晩に起こったのは自分達の戦いだけではないらしい。やるせなさを感じつつも、兎真は有栖へと言葉を振る。
「有栖、どうする? ヒメのお膝元なら、ハッキングだとか盗聴の心配はなさそうだけれど」
有栖はぐしゃぐしゃに濡れた目元を拭い、それから決断しようと何度か口を開きかけて、それでもまだ決断出来ずに声を出せていない。
「……酷い顔だよ? オールと煤で、せっかくの綺麗な金髪が台無し。まるで雨風に汚れた子猫みたい」
「……そ、それでもあたしは……! あたしは……幸子ともお姉ちゃんとも……戦いたくない……んです」
『それに関しても情報を統合する必要性がある。隠しても仕方ないので、ここで言うわ。昨晩、仕掛けてきたのは篠崎さんのお姉さんだった』
どこかで予見出来ていた可能性だったが、有栖にとっては意想外であったらしい。眼を見開いて慄いている。
「……お姉ちゃんが……転生者に……?」
『詳しい事は調査中だけれど、一晩でシステムを復旧させるのは難しいわ。篠崎さん、それに早谷兎真。二人とも早急に姫宮財閥のメインビルに訪れてちょうだい。このままでは押し負けるだけではない。きっと……致命的な何かを見落としてしまう。そんな気がするのよ……』
「ヒメの勘は当たるからなぁ。あーしもその方針は賛成。有栖はどうする?」
突き付けられた選択に有栖は息を呑んだようであった。
「どうする……って」
「サッチーとの戦いも、お姉さんとの戦いも、やりたくないって言うのなら、あーし達は別の策を取る。けれど、有栖自身の意志を聞かせて。あーしは可能な限り、それを尊重する。ヒメもだよね?」
『……勝手になさい』
ぶっきらぼうではあるが、それでもこの決断に要らぬ言葉の装飾を施さないのが窺える。有栖は手紙をぎゅっと握り締め、それから枯れた喉から声を絞り出す。
「……あたしは……あたしは幸子の事を大事に思ってます。もちろん、お姉ちゃんの事も。けれど、それが対立になってしまうのなら……あたしはそれでも進む。進まなくっちゃいけない……! どんな運命が待っていても、あたしはあたしの選択に後悔したくない……っ!」
それが無理をしているのは火を見るよりも明らかだ。凍えたように震えた指先に、頬の筋肉がひりついている。それでも、唇を真一文字に引き結び、その青の瞳に浮かべた決意だけは、疑いようのない彼女の心の真の姿であろう。
「……だってさ。ヒメ、あーし達はチームロワイヤルで負けるわけにはいかない。手段を選んでいる余裕はない。今から向かうよ。行こっか、有栖」
「は、はい……っ」
カラオケボックスを後にする際、兎真はある一つの事を考えていた。
果たして――相手チームを牛耳っているのは誰なのか、と言う名の問いだ。マオフェンであるのだと推測していたが、美月も独自権限を持っているように映る。その上でこのような攻勢を仕掛けてくる旨味をまるで感じないのだ。仲間同士で対立し、時にはお互いに反発する事もある。それは――今回のチームロワイヤル戦と言う趣旨から逸れている気がしてならない。
本来ならば一糸乱れぬ統率が必須であろう時に、惑うような余力はないだろう。
路面電車を乗り継ぎ、終点間際の朝方の駅は空気が澄んでいる。それはただ単に気持ちがいい朝なだけではなく、宙を舞う姫宮財閥の飛行船の持つ循環装置が働いているせいもあるのだろう。学園都市において、姫宮財閥の持つ技術力の粋は無敵だ。0から1を作るだけに留まらず、1から10も作り上げてみせる。その手腕、そして生活の全てを握られている感覚はこの街に住む誰もが持っているだろう。
「……綺咲ちゃん。メインビルに入ってって言ってたけれど」
「まぁ、アポもなしに入れるわけもないよね。一応、受付に聞いてみる?」
絢爛豪華な姫宮財閥メインビルに務めている人々は小奇麗な格好をしており、女子高生でしかない自分はいささか浮いている。それでも気圧されないように足を踏み締め、兎真は受付嬢へと声をかけていた。
「すいませーん。姫宮綺咲さんに会える方法ってないっすかぁ?」
「ちょ、ちょっと! 兎真さん……。あまりにも軽率って言うか……」
困惑した有栖をちょっとばかしからかってやるつもりだったが、受付嬢の受け答えは迅速であった。
「早谷兎真様、篠崎有栖様ですね? お嬢様より言付かっております。直通のエレベーターへとどうぞ」
今度はこっちが毒気を抜かれる番で、どうやら綺咲は既に自分達の事は説明済みらしい。
「えーっ! もっと有栖を困らせたかったのにぃ!」
「……兎真さん、ふざけてます?」
「ふざけてないない!」
「こちらへ」
鳥籠を思わせる瀟洒なエレベーターで三十階建てのビルの屋上まで一直線だ。その最中、兎真は緊張を張り巡らせていた。
どこからマオフェンらが仕掛けるのかはまるで分からない。だからこそ、ここで有栖を守らねばと思っていたが、存外簡単に屋上付近の綺咲の部屋まで案内される。
「こちらです。お嬢様、早谷兎真様と篠崎有栖様が訪問されました」
『入れてちょうだい』
受付嬢が恭しく頭を垂れ、それから離れていくのをどこか遊離した気分で眺めていると、綺咲の追及が飛ぶ。
『何をしているの。時間は有限なのよ』
「……それもそうだ。入るねー、ヒメ」
ドアの設えは真鍮製の白のドアであったが、入った途端に視界に入るのは高い天井と最新鋭のデータベースを閲覧可能なデバイスの数々であった。それだけの物に囲まれていても綺咲は霞む事はない。むしろ、逆だ。
それらが姫宮綺咲と言う存在を引き立て、そして彼女の高貴さの証明になっている。
「……その……来たよ」
有栖が明らかに場違いだとでも言うように声を小さくさせる。その気持ちは分からないでもない。
「そう。そこのソファに座ってちょうだい。お茶を振る舞うわ」
「そんな……! 悪いって……!」
「いいのよ。あなた達を呼んだのは私なのだから。二人ともコーヒーでいいわよね?」
綺咲はコーヒーを抽出しつつ、部屋の中で浮かび上がる薄緑色のホログラムを器用に操作する。それは今この瞬間にも、学園都市の全ての情報が精査されているという事だ。
「……ヒメさ。どったの? 何だか怒ってる?」
「別に。怒っていないわ」
「……ウソ。ヒメ、こういう事はしないもん」
兎真は早速ソファにもたれかかってくつろぎながら長く吐息をつく。思えば連戦からの幸子との舌戦も繰り広げたのだ。疲れていないわけがない。それは有栖も同じようで、許可を取らずに自分の隣に座り込む辺り、精神をすり減らしているのだろう。
「……誤魔化しは利きそうにはないわね。ええ、そうよ。怒っているわ。いいえ、腹立たしく思っている、と言い換えてもいいのかもしれないわね」
「それって言い換えてないんじゃないの?」
「昨晩、連絡が取れなかった。その釈明は?」
意見を封殺して綺咲が詰問する。それは答えなければここから先の協定に影響してくるだろう。
「隠し立てはためにはなんないかぁ。……有栖の親友のサッチー……高峰幸子と交戦した」
「……高峰幸子と?」
綺咲が眉を跳ねさせ、こちらの反応に疑問を抱いたようであった。
「うん。まぁ、ヒメはリー・マオフェンが仕掛けてくるもんだと思っていたんだろうけれど、実際には斥候みたいなものだったのかな? あーし相手なら、新参者の転生者で充分ってコトでしょ」
「その結果として、何で連絡が取れなったの。死んでいたわけでもあるまいし」
有栖へと目配せする。ここでの説明権は任せたとでも言うようにウインクすると、有栖はおどおどと喋り始める。
「そ、そのね……? カラオケボックスに行く事になって……」
綺咲の抽出の腕がぴたりと止まる。それから、今しがたの言葉を信じられないかのように繰り返していた。
「……失礼。今、あなた達は戦闘の後にカラオケに行ったと言ったの? その足で?」
「うん、そだけれど? なにー、もしかしてヒメも同席したかったクチー?」
「……ふざけた事を言わないで。舌を引っこ抜くわよ」
「おっと、失敬。このトーンの時のヒメはマジだ」
引き時くらいは心得ている。兎真は差し出された豪奢なコーヒーカップから立ち上る濃厚なコーヒーの香りに、ようやく朝が来たのだと自覚する。
「……飲んでいい……の?」
「有栖はマジメちゃんだなぁ。ヒメがいいって言ったんだから、グイっと行っちゃって!」
「早谷兎真。それに篠崎さんも。私に言う事がいくつかあるでしょう?」
テーブルの上にある甘味へと手を伸ばそうとして、綺咲の厳めしい声に封じられる。さすがに誤魔化し続けるのは不可能か、と兎真は早々に肩を竦めていた。
「……まぁ、そうだよね。協定関係を結ぶって言ったんだし、情報は共有しないと。……昨日、あーしは高峰幸子に強襲された。ただ、勘違いして欲しくないのは、あれはどっちかって言うとこちらの実力を試すため……そして高峰幸子の実力を浮き彫りにさせるための、向こうのチームのやり方なんだと思う」
「あ、あのね……! あたしも……そこに遭遇しちゃって……。あ、それと霧子さんからのビデオメッセージがあって……」
「赤沢霧子から? ……この局面を読んでいたというわけ。彼女から何か?」
「……何があったって、恨みっこなし、だって」
そこに有栖の覚悟が集約されているのは見て取れていた。何があっても、憎しみ合う事も、恨む事もない。自分達は“ゲーム”の転生者。このレートに上がった以上、泣き言を聞くような余力もないのだ。
「恨みっこなし、ね……。赤沢霧子らしいわ。一応、うちのセーフガードが調査を進めている。殺害されたのは間違いないけれど、その手腕に疑問点があるとの事よ」
綺咲自身、キッチンにほど近い椅子を引き寄せて雅な所作で紅茶に口をつける。身に沁みついた社長令嬢としての立ち振る舞いは流麗で見入ってしまいそうだ。
「……霧子さんを殺したのは……マオフェンさん達じゃないの?」
「普通に考えれば、その線で見るべきなのでしょうけれど。いくつか不自然な点もある。赤沢霧子は確かに、転生者にしてみれば少し領分を超えた知識があったのは事実。けれど、あのタイミングで殺す事が出来るのは、少し奇妙ではある。まるで……チームロワイヤルになる事を予め分かっていたような……」
「となると、余計に相手チームの仕業じゃないの? あーしも有栖も被害を受けたわけだし」
綺咲は納得がいっていないのか、目線を彷徨わせて透明度の高い紅茶に落とす。
「……何か……致命的な間違いを犯しているような気がするのよ。それが分からない以上、下手に確証めいた事を言えない」
「ヒメ特有の、勘って奴だね。いいよ、それには期待してる」
兎真はコーヒーを啜りながら考えを巡らせる。チームロワイヤルがチェシャーとシュレディンガーによって成立したのはあの夜――霧子からチェシャーの弱点を教わってから。そのタイミングで果たして霧子殺害に至る動機はあっただろうか。
ともすれば、殺したのは転生者ではなく――。
「……喋り過ぎたわね。情報交換だと言うのならば、あなた達の苦労だけではなく、私の課題も言うべきだわ」
「課題? ヒメってば、何かやらかした?」
「……ええ、そうね。出てきていいわよ」
綺咲がパチンと指を鳴らすとクローゼットで寝入っていた少女が不意に顔を出す。その様相に有栖と自分は思わずホルスターに指をかけていた。
「……転生者……!」
警戒しかけた自分達へと、綺咲は落ち着き払って少女に声をかける。
「よく眠れた?」
「うぅーん……狭くて涼しいから好きだけれど、何だか人間としての尊厳が失われたような気が……」
金髪に、赤い民族衣装を纏い、その透明度の高い水色の瞳の目頭を揉んで少女は悩ましいとでも言うように首を傾げる。
「……紹介するわね。私達の新たな戦力、転生者、名前は――」
「わたしはカイ。あなた達が転生者なんだね。うんうん! いい選択だよ! 後悔させないよ!」
カイと名乗った快活な少女を有栖と共に警戒の眼差しを注ぎつつ、いつでも交戦に出られるようにしていたが、綺咲は冷静に紅茶を飲んでから言葉を継ぐ。
「安心なさい。彼女は味方。チェシャーの用意した転生者よ」
「チェシャーの……? 本当なんでしょうね、チェシャー」
アルセウスフォンから浮かび上がったチェシャーは恭しく頭を垂れ、スカートの裾を摘まんで略式の礼節とする。
『間違いなく。しかし、本来ならばイレギュラーを排するべきであったのですが、時間がなかったのでこうなってしまいました』
「時間がなかった? 何を言っているの……?」
「早谷兎真。カイ……は、記憶がないみたいなのよ」
その言葉に兎真は目を見開く。しかし、転生者で記憶喪失など話を盛り過ぎだ。そこまで有り合わせの設定もないだろう。
「……ウソはその口調だけにしてよね。記憶喪失で、あーしらの味方? ……どうかしてる」
「それはわたしも同じ気持ちなんだけれど、本当なの。わたしはこっちに呼ばれてからの常識はある程度叩き込まれているけれど、その代わりそれまでの記憶が一切ない。隠し立てしたってためにはならないから、綺咲さんには言っておいたの」
兎真は綺咲へと視線を流す。彼女は落ち着き払ったまま、それらの疑念全てに頷く。
「その通りみたい。一応、諜報部門に依頼して彼女の素性を探ってみたけれどね。それでも一夜では捜索範囲も少ないし、情報も限りはある。ハッキリしているのは、カイもアルセウスフォンを持つ転生者である事。そして、この“ゲーム”の事をある程度は理解して、私達の味方に付いてくれている事くらいね」
「……一つ聞く。有栖、今の説明を聞いて信じられる?」
「……綺咲ちゃん。あたしも少しは信頼すべきかもだけれど……この人、何か違う……」
「意見は一致したみたいだね。ヒメ、実力を絞めさせてちょうだい。種の割れていない味方なんて一番に信用出来ないからさ」
「あら。もうとっくの昔にそれは証明済みでしょうけれど」
綺咲の言葉を完全に理解する前に、兎真はテーブルに置かれたコーヒーから温度が消失している事に気づく。否、温度だけではない。黒々とした水面が凍て付き、一瞬にして凝固した高級品のマグカップは真っ二つに割れていた。
「わたしの手持ちはグレイシア。得意なのは、精密な氷結攻撃。今回はあなた達のコーヒーをアイスコーヒーにしてあげたつもりだけれど」
いつの間にポケモンを繰り出したのか、カイに付き従う水色の体表を持つ四つ足のポケモンは一オクターブ高い声を発する。まるで鈴を鳴らすような鳴き声と共に瞬時に屋内が極寒の色調に染まる。
空調システムに介入し、体感温度が10℃ほど下がったところで綺咲が手で制する。
「カイ、これ以上は部屋が壊れるわ」
「実力を見せろって言ったのはそっちだよ?」
不服そうに唇を尖らせるカイに、兎真は額に浮かんだ脂汗が伝い落ちるのを感じていた。これだけの氷結速度と攻撃の精度を一瞬で展開してみせたのはこれまでの転生者では初めてだ。加えて、ポケモンを出した事を悟らせもしない。
「……実力者……って、コトか……。けれど、ヒメ。こいつが味方になったところで、あーしらの戦力はまだ足りていない。5対5のチームロワイヤルなのに、まだ4人でしょう? これじゃ不公平なんじゃ……」
「それに関してなんだけれどね。……篠崎さん、考えがあるようね?」
凍て付く風が鎮まってから、有栖は乾いた唇を一文字に引き結ぶ。
「……信じてもらえないかもしれないけれど、最後の一人は確保している……でも、その人は戦闘に出たくないって……殺し合いは真っ平御免だって……。だから、その人のアルセウスフォンはあたしが握っている」
鞄からアルセウスフォンを取り出した有栖に、なるほどまだ自分も有栖に信頼されているわけではなさそうだと兎真は胸中に結ぶ。
「……その人物が誰かを教えてもらうコトは……。やっぱムリ?」
「そ、その……兎真さんの事も、綺咲ちゃんの事も信用しているけれど……。あたしの個人的な心象で、この人を巻き込みたくないの」
その一言である程度の人間関係は絞れるが野暮な事は言わないでおく。綺咲は少しだけ思案するように顎に手を添えていた。
「となると……私達は最大で4人……これは不利ね」
「相手は絶対に5人揃えるだろうし、頭数だけの話じゃ、ねぇ」
こちらの物言いに綺咲は目線を振り向ける。
「……何か手があるって言うの?」
「おっ、さすがはヒメ。分かってるぅ~」
「……冗長な事はいいから、話しなさい。私達には時間もない。“カタストロフィ”が訪れてからでは遅いのよ」
「そりゃー、そうだ。……いやさ、あーし、そっちのカイだっけ? その戦い方の見事な構築を見ていると、ちょっとだけ思い浮かんじゃった」
「わたしの? そんな大した事じゃないと思うけれど」
「いやいや、謙遜謙遜! ……実際、あーしらの中じゃトップクラスだってば。あーしだってカジッチュ三体を常に最善の状態で回せるわけでもないし。それはヒメもでしょ?」
「……ジャラコを進化させてしまったわ。だから、私だって大げさな事は言えない。それで? カイに何を頼みたいの?」
話は早いとでも言うように兎真はカイへと指鉄砲を向ける。
「つまりはさ。ちょっとしたお願いがあるんだよね。これはあーしらの……言ってしまえば生命線だし、それに有栖だって無関係じゃないんだよ?」
不意に話を振られたせいか、有栖が目を白黒させる。
「あ、あたし……?」
「そっ。あーしらは強くならなくっちゃいけない。そのために……有栖とカイの力がどうしたって必要になってくる。二人とも、気張ってよ。だってチームロワイヤルなんだからさ」