ALICE   作:オンドゥル大使

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第69話 堕ち行く『煉獄』

 

 異空間を漂いながら、見出したのは裂け目である。それが現実世界に戻る唯一の術だと兎真は飛び立って数刻経った後に感じ取っていた。

 

「アップリュー、攻撃を!」

 

 亀裂が走り、緑色の異空間が割れて兎真はガラスを破るようにしてビルの屋上に転がっていた。

 

「……ここは……現実? 戻って来れたの……?」

 

 しかし、様子がおかしい。

 

 アルセウスフォンを取り出してみて時間感覚を取り戻そうとするが、示しているのは午後三時過ぎ。だと言うのに。

 

「……何で、こんなにも暗く……?」

 

 学園都市は昏く沈んでいる。昏睡の只中にあるような現実世界の空が赤い燐光を帯びて直後には割れていた。

 

 降り注ぐ赤銅の雨。壊れた空域を突っ切っていくのは流星群を思わせる岩礁であった。

 

「……何が起こって……! ヒメ! 有栖……! 繋がっていないの……?」

 

 アルセウスフォンに呼びかけるが、返事はない。それどころか、アルセウスフォンの液晶画面は沈黙し切っており、通常の画面ですらノイズが走る。

 

「……これって……まさか“カタストロフィ”が……?」

 

 しかし、“ゲーム”の終焉であるところの“カタストロフィ”ならばチェシャーから通達されるはずだ。だと言うのに受付嬢からの連絡はなく、そして揺籃の世界を打ち砕くように空が砕けていく。硝子細工を想起させるように青空のテクスチャが剥がされ、時空の裂け目が顕現していた。

 

「……あれって、鏡面界の……? でも、そうだとすれば……!」

 

 この学園都市で最も高い建造物である姫宮財閥のツインタワービルの直上で世界が崩壊していく。地表へと堕ちた赤い流星群の正体はそれぞれがイニシャライズしたポケモンであった。直後には咆哮を帯びて市民を襲い始める。

 

 まさに地獄絵図。

 

 しかし、“カタストロフィ”の通達はないままだ。これまでも何度も世界崩壊に等しい物事は起きてきたが、受付嬢からの連絡がないのは初めてである。

 

「……どうなって……! チェシャー! 応じなさいよ!」

 

 通話先は砂を食んだようなノイズで満たされている。アルセウスフォンの権能も当てにならない。こんな状態で見放されたのでは兎真自身もどうしようもない。

 

「……一体何が……! チェシャーの連絡もつかないだけじゃない……何かが起こってる……! どうすれば――」

 

 その時、不意にこの世界崩壊の光景には不釣り合いなコール音が鳴り響く。

 

 それはアルセウスフォンではなく、普段使いしている自分の端末への着信であった。兎真は非通知着信と表示されているスマホを耳に当ててコール先の声を聞く。

 

『……繋がったようですね。貴女は、早谷兎真様ですね?』

 

「……チェシャー?」

 

『……残念ながらわたくしは貴女方のよく知るチェシャーではありません。同じ性質を持つ存在ですが、違うのです。はじめまして。わたくしは姫宮財閥所属のオペレーター、姫宮綺咲お嬢様の直属です。名乗るとすれば……コハクとでも名乗りましょうか』

 

 コハクと名乗った女性オペレーターの落ち着き払った声音に兎真はこの現象でさえも綺咲は予感していたのだと察知する。

 

「……何が起こってるの……? こんな異常事態を……ヒメは予期して……?」

 

『お嬢様は十二年前よりこの時が訪れるのを予感……いいえ、“預言”されていらっしゃいました。だからこそ、この世界に“ポケモン”と言う概念は満ちた……と、あまり悠長にお喋りしている時間もありませんね。早谷兎真様、可能なら姫宮財閥の本社ビルまで来られますか? 全てをお話しする時が来たようですので』

 

「……全てって……こんな状況で言っている場合……! ヒメも有栖も……どうなったのか分からないって言うのに……!」

 

『それはこちらでも観測しておりますが、お嬢様はこの厄災の時、いえ、鏡面界にしてみれば祝福が訪れる瞬間を常に預言していらっしゃいました。地表に降り立ったポケモン達を見過ごせない、と仰るのならばご心配なく。既に放たれております。我が社の誇る最大の兵士――セーフガードの中でも精鋭達で構成された、ポケモンレンジャー達が』

 

「……ポケモンレンジャー……?」

 

 視界の中で巨大なポケモンであるギャラドスが市民へと襲い掛かろうとしている。兎真が鉄柵に足をかけて防ごうとする前に、緑色の制服を着込んだ一団が歩み出ていた。

 

「全体、前へ。キャプチャを開始する」

 

 そう言って取り出されたのはコマのような形状の装備であった。武装とも呼べない、まるで玩具のようなそれを高速回転させギャラドスの周囲を取り囲む。

 

 途端、紡ぎ出されたのは縄を思わせる包囲陣であった。それが円形を象ってポケモンを囲んだ途端、赤い燐光に包まれていたギャラドスから戦意が凪いでいく。ヒトとポケモンが言葉で説得されるはずがないのに、それはまるで説き伏せたかのような感覚でさえも生じさせていた。調教師のように洗練された動きでポケモンレンジャーと評された者達が暴走ポケモンを調伏させている。

 

「これでちょっとはマシなはずね! 隊長ぉ~、こっちは終わりましたよ。おっ! あれって例の転生者ですかね? こっちに気づいてる? お~い! 見てるぅ~?」

 

「コード:トリア。転生者には関わるな。彼女にもここまでの苦労があったはずだ。お嬢様だけではない。……我々はイニシャライズした暴走ポケモンをキャプチャしていく」

 

「はいは~い。隊長は相変わらずの堅物さんだねぇ……。そこの!」

 

 呼びかけられ、兎真は少しだけうろたえてしまう。帽子を傾けた女性隊員はウインクしていた。

 

「終わらせたら、話そっか! こっからの未来とか……明日とか? に関してね~。ちょ~ッと待ってて! 出現ポケモンは全部、キャプチャ対象ですよね! 隊長ぉ!」

 

「当たり前だ。各員、一匹とて例外を許すな。市民の生活を守り、安全を保障する。それが我々レンジャー――姫宮財閥所属、鏡面界対策部ガッツィー・インシデント・ガード――GIGの理念を遂行する」

 

「GIG……」

 

 イニシャライズポケモンをコマの機動武装で包囲し、縄の軌跡を結んでそれを確立させていく。彼らは一様に軽業師めいた動きでポケモンの背面を即座に取り、放たれる技の威容に怯む事もなく、ポケモンを鎮め調伏を果たしていく。

 

『早谷兎真様。お嬢様より言伝がございます。この状況になった場合のみ、明かして欲しいと』

 

「……あんた、チェシャー……じゃない、コハクだっけ? この状況を、ヒメは予想していたって言うの? 何だってこんな……」

 

『鏡面界と現実世界との境界が消えつつあります。これは、“ゲーム”における第四の選択肢――即ち、“全得点を使用して願いを叶える”が実行されたと思われる事象でしょう。誰が願いを叶えたか、は重要ではございません。この選択が取られた、と言う事が重要なのです。学園都市の崩壊だけではなく、これより出現する大元と、我々は戦わねばならないのです』

 

「大元……?」

 

 その時、不意に天空の亀裂が瞬く。時空の裂け目を中心点として天蓋が割れていた。

 

 出現したのは山脈である。茶褐色と銀の荒々しい山稜がダイマックスの赤い燐光を帯びて、今、学園都市の直上に顕現する。

 

「……あれって……ヒスイ地方……?」

 

『お察しの通り。あれは鏡面界、ヒスイ地方です。その境目が消え去り、今、現実世界と溶け合おうとしています。それは貴女方にしてみても無関係ではございません』

 

 今も拡大の一途をたどる鏡面界は逆さまの大地となって空を破る。降り注ぐ赤い流星と、それに込められたダイマックスポケモンの出現にポケモンレンジャーの者達が構えを取る。

 

「うろたえるな! キャプチャ・スタイラーが全てのポケモンに有効なのは実証済みだ!」

 

「とは言っても隊長ぉ~……! いざ目にすると違いますよ……!」

 

「キャプチャ……開始……!」

 

 コマの武装が線を辿って迸り、ダイマックスポケモンを囲っていく。その線が円形を象った瞬間に、ダイマックスポケモンから今も逆立つオーラが減少していくが、途端にコマが砕け、その調伏の儀式が失敗に終わる。

 

「キャプチャ・スタイラーに異常発生! ……隊長! やはりダイマックスポケモンのキャプチャは……!」

 

「……くっ……! 数値上は安定していると言うのに……か!」

 

「隊長ぉ~。一旦退きましょぉ~」

 

「弱音を吐くな! 我々はGIG……! 姫宮綺咲お嬢様直々の特殊部隊だぞ……!」

 

「……ヒメが、あの人達を……?」

 

『早谷兎真様。どうやらGIGだけの練度では厳しい様子。援護していただけると助かります』

 

「……それは命令? それとも、受付嬢としての?」

 

『先にも申しましたが、わたくしはチェシャーであってチェシャーではないのですが……まぁ、良いでしょう。貸し一つと言う事で』

 

 チェシャーがそのような冗談を言うとは思えない。となれば、本当に別人なのだろうか。疑っている間にも被害が広がっていく。ダイマックスポケモンが戦火を押し広げるのを黙って見ているほど人でなしでもない。

 

「……ああっ、もう! こういう時にこれまでならスルー決め込んでたって言うのに……! あーしも焼きが回ったってもんだし!」

 

 鉄柵を足掛かりに跳躍し、アップリューに飛翔を任せながらボールから繰り出す。

 

「行け! タルップル!」

 

 タルップルがその堅牢な表皮でダイマックスポケモンの放つ火炎放射を防ぎ、さらに返答の蜜を噴出させてその表皮を削っていく。

 

「助かったぁ~! あなた、転生者? お嬢様のお友達だよね?」

 

「……まぁ、ヒメとはトモダチ? みたいなのやらせてもらっているけれど、あーしにしてみればこの状況も不可解。これ、ヒメが預言したって言うの?」

 

「そこ、危ないぞ!」

 

 キャプチャ・スタイラーが発射され、今しがたタルップルで受け止めたダイマックスポケモンの勢いを削ぐ。さすがの兎真も困惑を隠せないでいながらも、隊長と呼ばれている男の手腕には舌を巻く。

 

 まるで転生者を人為的に作り出したかのような洗練された動きであった。

 

「隊長ぉ! 助かりました~……」

 

「トリア、キャプチャ・スタイラーを装着し直せ。本社からのデータリカバリーで破損したキャプチャ機構を修復する。そうすれば、ダイマックスポケモンとの戦闘も少しはマシになるはずだ」

 

「ちょっと! あんたら、あーしがせっかく助けてあげたって言うのに……!」

 

「……早谷兎真だな? お嬢様から報告書は受け取っている。今は、市民の安全のために戦うほかない。それに……もう空が割れている。まだまだ無尽蔵にダイマックスポケモンが襲って来るぞ。それだけじゃない。ヒスイ地方には強力なポケモンが数多く存在していると報告があった。……来る!」

 

 隊長が飛び退ったその時には赤銅色の流星が無数に大地を穿ち、そこから生まれ出でたのは赤くぎらついた眼を持つ巨大なポケモンであった。

 

 だがダイマックスポケモンのようなエネルギーを撒き散らしているわけではない。純粋な個体の差として大きく強大な四肢を持ち、その咆哮は放たれるだけで人々を委縮させる。

 

「……あれが……オヤブン個体、ですか」

 

 GIGの隊員の声に隊長が首肯する。

 

「行くぞ……! オヤブン個体をキャプチャすれば、我々の戦闘にとって優位となる。……早谷兎真。君は我々に任せて下がれ」

 

「は、はぁ……! 下がれって……今援護しなかったら、その子やられていたって言うんだけれど……!」

 

「トリアの命を救ってくれたのは礼を言う。だが、我々は上位セーフガードの身分として、この学園都市を守らなければならない。それに、君は転生者だ。もっとやるべき事があるのだろう?」

 

 そう問い返されて、兎真は手元のアルセウスフォンを見返す。未だに反応はないが、綺咲も有栖もきっと危険に晒されているはずだ。

 

 自分だけ現実世界に出てしまったのはともすれば下策だったかもしれないとチェシャーに繋ぎ直そうとして何度も交信が途切れる。

 

「チェシャー……? チェシャーってば! ああっ、もうッ! こんなじゃあーしだって安心して離脱出来ないし! それに、現実がこんな有り様じゃ、転生者だからって言うのは……!」

 

 咄嗟に落下してきた岩タイプポケモンの連撃を回避しながら、兎真はタルップルの蜜を放出させてその頑丈な外皮を溶かす。

 

「アップリュー! Gの力!」

 

 重力磁場で敵ポケモンを縛ると同時に隊長のキャプチャ・スタイラーが流れるようにしてポケモンを包囲し、軌跡が光り輝くと同時に赤く煮え滾ったような眼差しであったオヤブン個体のポケモンから敵意が凪いでいく。

 

「よし! オヤブン個体のキャプチャに成功! 各員、オヤブン個体を狙ってのキャプチャに移行せよ! ……早谷兎真、助かった」

 

「……別にそっちを助けるつもりなんてなかったんだけれど……って、これじゃツンデレじゃんか……。あーしはヒメと有栖達の居所が分かったら、すぐにそっちに向かう。その時までのちょっとの間の援護でいいのなら……ね」

 

「心強い。さすがは歴戦の転生者だな」

 

 転生者に関しての情報はどこまで割れているのかは分からないが、兎真はGIGの者達と今は共闘するほかないと感じていた。このままでは学園都市は血の海だ。市民の被害は最小限度に留めなければならないだろう。

 

 その時、不意に視界の隅に留まったのは子連れの主婦であった。足を挫き、その場から動けないでいるところをオヤブンポケモンが襲い掛かる。

 

「……いけない……ッ!」

 

 アップリューの重力磁場でその動きを阻害しようとしたがオヤブンポケモンの膂力は通常のそれを遥かに上回っている。重力の投網を解かれ、オヤブンポケモンが今に牙を軋らせて喰いかかろうとしたのを遮ったのはキャプチャ・スタイラーで囲われたGIGの操るポケモン達であった。

 

 横合いから突進で攻め込み、直上から斬撃を浴びせる。

 

「大丈夫ですか! ……隊長、避難民の保護の許可を」

 

「許可する。……オヤブンポケモンはダイマックスポケモンに比べればまだ御しやすいようだが……油断は禁物だな。GIG! 総員、かかれ! 可能な限りキャプチャを遂行し、我々の戦力を増強させるのだ!」

 

 隊長の宣言に全員が応! と果敢にも前進したのは彼らの統率力の高さからだろう。キャプチャ・スタイラーを走らせ、オヤブンポケモンへとキャプチャしたポケモンをぶつけていく。兎真はその中でも今にキャプチャ効果が切れそうになっているポケモンをすぐさま発見し、オヤブン個体に追い込まれる前にアップリューを差し挟む。

 

「Gの力!」

 

 重力を拡散させてオヤブン個体の動きを鈍らせた直後には、キャプチャ・スタイラーがそのポケモンを支配下に置くが、逆に今しがたまで使っていたポケモンは自由の身となっていた。

 

「……やはり現状のキャプチャ機構では……通常ポケモンでは十五分が限界か……!」

 

 オヤブンポケモンでキャプチャの解けた個体を蹴散らし、隊長は次なる標的を見据えているようであった。兎真はアップリューを飛翔させ、俯瞰させながら戦闘において優位な位置関係を把握する。今の学園都市はほとんど逃げ場などない。こんな状態では避難民の道は塞がれたままだ。

 

「……アップリュー! グラスフィールドで少しでも戦火を止めて! タルップルはリンゴ酸で野生ポケモンの動きの阻害を!」

 

 しかし、と兎真はこの戦局のまずさを感じる。明らかに野生ポケモンは天上の鏡面界から無限に降り注ぐのに、自分達は有限の戦力を食い潰すばかり。これでは遠からず限界も訪れるだろう。

 

 キャプチャ・スタイラーの軌跡を辿らせ、先ほどトリアと呼ばれた隊員が一際大きいポケモンを従順にさせ、その巨大な丸太のような腕で殴り掛からせる。

 

「兎真さん! ここは私達にお任せを……! あなたにはやらなくっちゃいけない事があると、隊長やお嬢様から伝え聞いておりますので!」

 

「……でも、少しは援護も……」

 

「ご心配なくっ! 我々、これでもエキスパートですのでっ!」

 

 帽子を傾けて得意げに宣言するトリアの微笑みを前に、ここでの停滞は意味を持たないのだと兎真はコハクへと繋ぐ。

 

「チェシャー……じゃなくって、コハク! あんた、チェシャーと同じだって言うんなら、あーしをイニシャライズさせるコトも出来るんでしょう! ……今すぐに霧のゲートが開く場所を誘導なさい!」

 

『わたくしも真の意味では受付嬢と言うわけではないのですが……既に解析済みです。現在地より二百メートル先、イニシャライズ反応増大。そこからお嬢様達へと接触するゲートを形成いたします。ただし、直通かどうかは五分五分ですが』

 

「それでもいい……! 何も出来ないまま……死んで堪るもんですかってね!」

 

『では……ご健闘を』

 

 コハクからの通信が途切れると同時に兎真の視界には濃霧のゲートが出現していた。ちょうど二百メートル前後。炎に巻かれた都市部を駆け抜けていると、不意打ち気味に地面が裂け、コンクリート片を周囲に撒き散らしながら地面タイプのダイマックスポケモンが出現する。今に身を引き裂かれかけた兎真であったが、アップリューの鉤爪を掴んで瞬発力を活かして立体的に攻撃を回避する。

 

「退けぇ――ッ!」

 

 アップリューの生み出した「グラスフィールド」の樹木がダイマックスポケモンに纏わりつき、タルップルの「りんごさん」がコンクリートの散弾を即座に融かし、兎真への直接攻撃を無効化する。降り立った瞬間に肩に留まっているカミッチュが口腔部をすぼめてそこから矢継ぎ早に放ったのは粘ついた弾丸であった。着弾と同時にダイマックスポケモンの四肢の一部を溶かして地面と一体化させて動きを鈍らせる。

 

「この技は水飴ボム! さぁ……爆ぜるといいし!」

 

「みずあめボム」が直後には起爆し、ダイマックスポケモンをよろめかせる。その隙をGIGの者達がキャプチャの線を迸らせ、僅かな間ではありながらしもべとする。

 

「……けれど、飛び込んだ先が……地獄とも限らないし……! ここはコハクの言い分を信じるしかないのが歯がゆいけれど……あーしに出来る事、やってのけるのが精一杯……っ!」

 

 生み出されたイニシャライズの霧を中心軸にした異空間への扉に、兎真は飛び込んでいく。

 

「……待ってて……! 有栖、それにヒメも……! 終わりだけには、絶対にさせない……!」

 

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