OGRE   作:桂ヒナギク

1 / 1
1.融合

 俺は如月(きさらぎ) 晴人(はると)。高校生だ。

 先日、俺は不思議な力を授かった。

 それは……。

 

 

 その日の放課後、俺は高校からの帰り道を歩いていた。

「おい、にいちゃん」

 背後から霊が寄ってくる。

「俺が見えるかー?」

 知らんぷりして歩き続ける。

「気づいてんだろてめえ!?」

 霊がラリアットをしてくるので、俺はしゃがんでかわした。

「うお!?」

 驚き戸惑う霊。

「あのさ、死んでるって自覚してるなら早く成仏しなよ」

「そんなの俺の自由だろ! それより、若くて綺麗な女の子いないか?」

「さあな」

「ちっ!」

 去っていく霊。

 暫くして、悪しき気配を感じた。

「なんだよ。また来たのか?」

 振り返ると、そこには人のそれではない、恐ろしいものが立っていた。

「ば、化け物だと!?」

「お前の魂、うまそうだ。食ろうてやろう」

 俺は咄嗟に踵を返し逃げ出した。

「待て!」

 追いかけてくる怪物。

「うおおおお! なんなんだよこいつうううう!?」

 俺は全速力で家に向かう。

 だが、怪物の手が迫り、俺は捕まってしまった。

 殺される——そう思った俺は、この状況を打開する方法を模索した。

 しかし、これと言っていいアイデアは浮かばず、半ば諦めかけていたその時。

 どこからともなく、長い黒髪の女性が現れる。

 黒と白の縞々の装甲を身につけたその女性は、長い鋭利な爪で怪物の腕を切り落として俺を救出する。

「ぎゃああああ!」

 悲鳴を上げる怪物。

「くっ! 鬼め!」

 怪物はもう片方の腕で女性を吹っ飛ばす。

「きゃあ!」

 痛恨一撃を受けた女性が水平に吹っ飛んで壁に突っ込む。

「おい!」

 俺は女性に駆け寄った。

「邪魔!」

 女性が俺を振り払って怪物に突っ込む。

 怪物は女性の攻撃をかわし、片腕で路面へ叩きつけた。

「がはっ!」

 吐血する女性。

「貴様、てんで弱いな」

 怪物の大振りが女性を吹っ飛ばす。

 俺の足元に伏す女性。

「大丈夫か!?」

「くっ……どうやら私では力不足のようだ……」

 女性が俺を見つめる。

「お主、多少の霊力を持っているようだな」

 女性は少し考え、口を開いた。

「お主に私の力を授けよう」

「は?」

「説明している暇はない。今からお前の胸に私の爪を突き立てる。うまくいけばお前の中に私の力を移し込めるはずだ」

「一体何を?」

「このままではお前も私も奴に殺される。何もしないよりかはマシだ」

「何が何だかわからないんだが……」

「どうする?」

「どうするって?」

「鬼になるか、ならないのか?」

「鬼?」

「鬼になればあいつを倒す力が身につくぞ」

「よくわからないけど、やらなきゃならないみたいだな」

 女性の爪が俺の胸に突き刺さる。

 刹那、女性の体が俺の体内へと吸い込まれていく。

 俺の体は光を放ち、先ほどの女性へと姿を変えた。

「えっと、これは……?」

 何が起こったのか、俺には理解できていなかった。

「トドメだー!」

 怪物の一撃が俺へと迫る。

 俺は勢いよく飛び退いた。

 どうやら身体能力が向上しているようで、一飛びでかなりの距離を移動できるみたいだ。

「ほおう? まだ動ける力が残っていたか」

「だからなんなんだよ?」

 俺は一瞬で怪物の懐に潜り、その首を切り落とした。

「え?」

 疑問符を浮かべて消滅する怪物。

「倒した……のか……」

 力を使い果たした俺は気を失って倒れた。

 

 

「はっ!」

 目を覚ました俺はベッドから起き上がった。

「あれ?」

 俺は自宅の自分の部屋で目を覚ましたようだ。

 どうやら夢を見ていたらしい。

 すごいリアルな夢だった。

「ん?」

 錠前の形をした黒い物体が、枕元に置いてある。

「なんだこれ?」

「それはオーガ戦闘許可証です」

 俺は声のした方を見た。

 見知らぬ少年が立っている。

「誰だ? ていうかここ俺の部屋……」

「僕は御影(みかげ)。聡美さんのサポーターです」

「聡美さんって?」

「その錠前を体に当ててみてください」

「こう……か?」

 俺は錠前を体に押し当てた。

 肉体から俺の意識が飛び出すと同時に、夢の中の女性の姿へと変容する。

「こ、これって……」

「それこそ、聡美さんがあなたに託した鬼の力です」

「鬼の力?」

「地獄はわかりますね?」

「わかるけど……」

「聡美さんは地獄出身の鬼なんです。鬼は現世で悪行を働く怪物、デモンと戦う使命を帯びてるんです」

「はあ……」

「どうしてかはわからないけど、聡美さんはあなたと融合してしまったようですね」

「融合?」

「はい。あなたのその姿が何よりの証拠です」

「元に戻せないの?」

「現状、融合してしまった魂魄を戻す方法は地獄でも確立されていません。なので、あなたには聡美さんの鬼としての仕事を代行してもらいます」

「はあ? 何勝手に決めてんの?」

「あなたに拒否権はありませんよ」

 俺は眉間に青筋を立てた。

「てめえ……」

「そういえば、あなたのお名前をまだ伺ってませんでしたね」

「如月 晴人」

「晴人さん、ですか。僕は御影(みかげ) 裕二(ゆうじ)。自由に呼んでください」

「で? 仕事っていうけど、何をすればいいんんだ?」

「デモン退治と浮遊霊の導きですね。浮遊霊なら昨日の夕方、あなたにラリアットをした方がいますよね」

「お前、いつから見てたんだ?」

「あなたがデモンに襲われる前からですよ」

「なんで襲われる前にこねえんだよ?」

「聡美さんはお忙しい方ですからね。他のことをやってて遅れたんです」

「そうかよ。……まあ、乗りかかった船だ。やってやるよ」

「あなたならそういうと思ってました。今後は情報があったら伝えに来ますので、今は羽を休めていてください。それじゃ」

 御影はそういうと、煙に包まれて消え去る。

 こうして、俺は鬼としてデモンと戦う使命を背負うことになるのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。