俺は
先日、俺は不思議な力を授かった。
それは……。
その日の放課後、俺は高校からの帰り道を歩いていた。
「おい、にいちゃん」
背後から霊が寄ってくる。
「俺が見えるかー?」
知らんぷりして歩き続ける。
「気づいてんだろてめえ!?」
霊がラリアットをしてくるので、俺はしゃがんでかわした。
「うお!?」
驚き戸惑う霊。
「あのさ、死んでるって自覚してるなら早く成仏しなよ」
「そんなの俺の自由だろ! それより、若くて綺麗な女の子いないか?」
「さあな」
「ちっ!」
去っていく霊。
暫くして、悪しき気配を感じた。
「なんだよ。また来たのか?」
振り返ると、そこには人のそれではない、恐ろしいものが立っていた。
「ば、化け物だと!?」
「お前の魂、うまそうだ。食ろうてやろう」
俺は咄嗟に踵を返し逃げ出した。
「待て!」
追いかけてくる怪物。
「うおおおお! なんなんだよこいつうううう!?」
俺は全速力で家に向かう。
だが、怪物の手が迫り、俺は捕まってしまった。
殺される——そう思った俺は、この状況を打開する方法を模索した。
しかし、これと言っていいアイデアは浮かばず、半ば諦めかけていたその時。
どこからともなく、長い黒髪の女性が現れる。
黒と白の縞々の装甲を身につけたその女性は、長い鋭利な爪で怪物の腕を切り落として俺を救出する。
「ぎゃああああ!」
悲鳴を上げる怪物。
「くっ! 鬼め!」
怪物はもう片方の腕で女性を吹っ飛ばす。
「きゃあ!」
痛恨一撃を受けた女性が水平に吹っ飛んで壁に突っ込む。
「おい!」
俺は女性に駆け寄った。
「邪魔!」
女性が俺を振り払って怪物に突っ込む。
怪物は女性の攻撃をかわし、片腕で路面へ叩きつけた。
「がはっ!」
吐血する女性。
「貴様、てんで弱いな」
怪物の大振りが女性を吹っ飛ばす。
俺の足元に伏す女性。
「大丈夫か!?」
「くっ……どうやら私では力不足のようだ……」
女性が俺を見つめる。
「お主、多少の霊力を持っているようだな」
女性は少し考え、口を開いた。
「お主に私の力を授けよう」
「は?」
「説明している暇はない。今からお前の胸に私の爪を突き立てる。うまくいけばお前の中に私の力を移し込めるはずだ」
「一体何を?」
「このままではお前も私も奴に殺される。何もしないよりかはマシだ」
「何が何だかわからないんだが……」
「どうする?」
「どうするって?」
「鬼になるか、ならないのか?」
「鬼?」
「鬼になればあいつを倒す力が身につくぞ」
「よくわからないけど、やらなきゃならないみたいだな」
女性の爪が俺の胸に突き刺さる。
刹那、女性の体が俺の体内へと吸い込まれていく。
俺の体は光を放ち、先ほどの女性へと姿を変えた。
「えっと、これは……?」
何が起こったのか、俺には理解できていなかった。
「トドメだー!」
怪物の一撃が俺へと迫る。
俺は勢いよく飛び退いた。
どうやら身体能力が向上しているようで、一飛びでかなりの距離を移動できるみたいだ。
「ほおう? まだ動ける力が残っていたか」
「だからなんなんだよ?」
俺は一瞬で怪物の懐に潜り、その首を切り落とした。
「え?」
疑問符を浮かべて消滅する怪物。
「倒した……のか……」
力を使い果たした俺は気を失って倒れた。
「はっ!」
目を覚ました俺はベッドから起き上がった。
「あれ?」
俺は自宅の自分の部屋で目を覚ましたようだ。
どうやら夢を見ていたらしい。
すごいリアルな夢だった。
「ん?」
錠前の形をした黒い物体が、枕元に置いてある。
「なんだこれ?」
「それはオーガ戦闘許可証です」
俺は声のした方を見た。
見知らぬ少年が立っている。
「誰だ? ていうかここ俺の部屋……」
「僕は
「聡美さんって?」
「その錠前を体に当ててみてください」
「こう……か?」
俺は錠前を体に押し当てた。
肉体から俺の意識が飛び出すと同時に、夢の中の女性の姿へと変容する。
「こ、これって……」
「それこそ、聡美さんがあなたに託した鬼の力です」
「鬼の力?」
「地獄はわかりますね?」
「わかるけど……」
「聡美さんは地獄出身の鬼なんです。鬼は現世で悪行を働く怪物、デモンと戦う使命を帯びてるんです」
「はあ……」
「どうしてかはわからないけど、聡美さんはあなたと融合してしまったようですね」
「融合?」
「はい。あなたのその姿が何よりの証拠です」
「元に戻せないの?」
「現状、融合してしまった魂魄を戻す方法は地獄でも確立されていません。なので、あなたには聡美さんの鬼としての仕事を代行してもらいます」
「はあ? 何勝手に決めてんの?」
「あなたに拒否権はありませんよ」
俺は眉間に青筋を立てた。
「てめえ……」
「そういえば、あなたのお名前をまだ伺ってませんでしたね」
「如月 晴人」
「晴人さん、ですか。僕は
「で? 仕事っていうけど、何をすればいいんんだ?」
「デモン退治と浮遊霊の導きですね。浮遊霊なら昨日の夕方、あなたにラリアットをした方がいますよね」
「お前、いつから見てたんだ?」
「あなたがデモンに襲われる前からですよ」
「なんで襲われる前にこねえんだよ?」
「聡美さんはお忙しい方ですからね。他のことをやってて遅れたんです」
「そうかよ。……まあ、乗りかかった船だ。やってやるよ」
「あなたならそういうと思ってました。今後は情報があったら伝えに来ますので、今は羽を休めていてください。それじゃ」
御影はそういうと、煙に包まれて消え去る。
こうして、俺は鬼としてデモンと戦う使命を背負うことになるのだった。