ミレニアム・ピンクアーカイブ   作:オサシミの化身

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南部工業団地暴徒鎮圧作戦

 

 

ミレニアムサイエンススクール自地区、南部工業団地。そのほとんどが電子製品の工場と倉庫であり、ミレニアムの電子製品のうち10パーセントの生産を行うそこでは、現在大規模な破壊工作が行われていた。

 

無所属やアウトローなオートマタと自立兵器が中心となって団地中の工場施設を破壊して周り、どこかの学園からドロップアウトしたのであろうヘルメットを被る生徒たちが納品を待つばかりだった電子製品を片っ端から盗み、持ちきれない分を壊していく。

 

銃声、爆発、怒号と罵声、そして緊急事態を記せるアラームのけたたましい音は、最初の爆発から15分もかからず団地中に混乱を引き起こした。

 

我先にと工場で働いていた市民やアルバイトをしている生徒が逃げる中、その流れに逆らうように1人のメイドが駆けていく。

 

「コールサイン・ゼロワン現着っ」

 

暫く走り、逃げ惑う集団を抜けた更にその先。少し開けた場所に出たコールサインゼロワン、一ノ瀬アスナは、そこでアサルトライフルを見境なく乱射するオートマタ達の姿を捉えた。

 

「いたっ。ゼロツー、ゼロスリー、準備はOK?」

『狙撃準備完了、何時でも行ける』

『こちらも大丈夫です。彼の合図があり次第、セミナーの保安部を突入させます。時期に到着するヴァルキューレの方々には無力化した敵戦力の捕縛をお願いしてありますので、おふたりは気にせず前に出てください』

「おっけー、よろしくぅ」

 

ゼロツー、角楯カリンは上空からの狙撃支援。ゼロスリー、室笠アカネは保安部と応援の取りまとめを行っている。

乱射しつつも工場に爆薬を設置しようとしている彼らから見えない物陰に隠れつつ、通信機越しに後輩2人の声を聞いて、アスナは1度隣に立つ工場の屋根上を見やる。

 

屋根上にしゃがみこみ、目線だけでこちらを見下ろしながら左手でグッドサインを出す男子生徒の姿があった。

 

「そっちも、何時でも行けそうだね」

 

同じくグッドサインを突き返すと、彼はひとつうなづいて手にしたウッドストックの狙撃銃を構え、狙う。

 

『コールサイン・ゼロフォーから全体へ、これより作戦行動を開始する。俺とゼロワンが強襲による敵戦力の各個撃破を目指す。残りはフォローをお願いします。作戦開始まで─────3(ドライ)2(ツヴァイ)1(アインス)

 

通信機から流れてくる彼の声に合わせて愛銃、サプライズパーティーのトリガーを絞る。

 

0(ヌル)

 

ゼロカウントとともに彼の居た地点から5回連続でマズルフラッシュの光が瞬いた。少し遅れて銃声が5回聞こえ、ロボット兵の乱射する銃声は聞こえなくなった。

 

それと同時に物陰から飛び出してクリアリングを開始する。目の前にいたロボット兵達は手にしていたアサルトライフルか右腕を破壊されており、強襲による動揺も相まって戦闘ができる様子ではなかった。

 

だが他にいたヘルメット団4名がまだ残っている。うち3人は恐らくそこそこの手練、直ぐに気を持ち直し、姿を見せたアスナめがけ銃を構える。

 

しかし─────。

 

「ゼロツー!」

『あぁ』

 

空からの一撃。音もなく放たれたそれは1人のヘルメットを貫通し、容赦なく気絶させる。高度300m付近、ヘリコプターに乗ったカリンの一撃だ。

 

「なにっ!?」

「ナイス!」

 

場馴れした傭兵であれど、密集した工場地帯において上空から狙撃が来るとは思わなかった。流石にこれには気を持っていかれる。だが腐っても傭兵、銃は決して離さない。アスナはぎりぎりこちらへ意識を保っていそうな方(・・・・・・・・)を狙い、撃つ。

 

アサルトライフル故に多少バラけるものの、放たれた弾丸は胸の前に持った銃を砕き、バイタルエリアに点々と打ちつける。続けてもう1人、同じようにバイタルエリアを打ちつける。

 

「うんっ、オールクリアっ」

「よし、次だ」

 

それを確認してネライが屋根上から飛び降り、音もなく着地する。慣れた手つきで弾丸を装填し、首元の骨伝導イヤホンに指を添える。

 

「こちらゼロフォー。A(アルファ)確保」

『こちらも保安部を突入させました』

「了解、無力化した敵の捕縛をお願いします。こちらはゼロワンと合流。B(ブラボー)を目指します」

『こちらゼロツー、所属不明の攻撃ヘリ、敵装甲車3台無力化した。上空からはこれ以上の戦闘車両は確認できない』

「了解、続いて警戒と狙撃支援をお願いします。ゼロワン、援護します。Bを目指します」

「おっけー、背中は任せるよ!」

「はい」

 

アスナが先行して敵を叩き混乱させ、ネライが的確な射撃で次々と無力化していく。もしくはネライが先んじて狙撃し、混戦に持ち込む。まだ訓練で10回、実践で3回しかした事の無い連携だが、恐らく最高のタッグ。

 

もう1度、お互いの目を見合わせた2人は、再び前へと走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスナは直感的に、ネライは俯瞰的に、自然とお互いを補完しあったそれは確実に敵戦力を撃破し、進んでいく。

 

B(ブラボー)では報告を聞いてか構えていた15人に行く手を阻まれたものの、密かに先行していたアカネの爆破によりそのほとんどが戦闘不能。制圧はあっという間に終了。

 

そしてC(チャーリー)、最後の敵戦力団を制圧すべく、アカネを加えた3人は進んだのだが─────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文字通り雨粒のように張り巡らされる圧倒的な弾幕ほど恐ろしいものはない。どれだけ撃ち込もうとその銃弾をものともしない装甲は、こちらの戦意を確実に削ぐ。そしてそ遮蔽物の上からこちらを見下ろすまであるその巨体から放たれるプレッシャーは凄まじいものだ。

 

つまり何が言いたいか。

 

─────ゴリアテは反則だろ……っ!

 

「っ!リロードっ」

「カバーっ!」

 

心の中で絶叫するが戦場は待ってくれない。アサルトライフルの射撃音を背景に心もとないラストマガジンをリロードし、遮蔽物の影から走り出る。

 

ゴリアテ、カイザーインダストリーが開発、販売している強化外骨格。ただカイザーPMCが運用しているものと武装や造形の違いや、必ず残さなければならないカイザーのロゴマークがないことを考えると、ミレニアム内にある民間軍事会社の工廠で建造されたOEM機体だろうか。

 

『─────っ!』

「くっ」

 

こちらに気がついたゴリアテがアクチュエータをきしませながら上体を旋回させ、両腕部に搭載された武器でこちらを狙う。6砲身のバルカン砲をそれぞれ3連装ずつ、計6連装から放たれる7.62mmの鉄の豪雨は、バラバラという轟音と共にアスファルトを砕く。

 

「グッ」

 

咄嗟にコンクリートの柱へと身を隠すが、何発か被弾を貰ってしまった。出血の有無を確認しつつ、しばらくの冷却の後、再び始まった轟音に削られていくコンクリートから、次の遮蔽物を見繕う。

 

『こちらゼロワン。ごめん、残弾心もとないかな……。あと身体中ぼろぼろで、立つのもキツイかも』

『こちらゼロスリー……。すみません、限、界です……』

「ゼロフォー。今装填してあるのが最後だ」

 

骨伝導イヤホンから聞こえる2人の声は限界の様子。それもそうだ。アスナ先輩はここにたどり着くまでに100人規模を相手にしているし、アカネ先輩も最後方からB地点まで移動した上で爆薬の設置まで完璧にこなしていたのだ。2人とも体力がきれていてもおかしくはない。

 

─────せめてもう一手あればっ。

 

射撃音がやんだ。恐らく余裕を確信したのだろう、搭乗者の笑い声がスピーカーに乗って響き渡る。

 

しかし今のままでは反撃は叶わない。体力的にも限界のアスナ先輩と残弾のない俺では蜂の巣にされておしまいだ。

 

だが、そこにひとつの通信が入る。

 

『こちらゼロツー、到着するぞ!』

「っ!」

『カリン!』

『と、言うことは……』

 

─────どうやら、祈りは届いたようだ。上空を通り過ぎていくるプロペラ音とともに、骨伝導イヤホンから新たな回線が入ったことを知らせる電子音がひとつ。

 

『コールサインダブルオー。掃除を始める』

 

その声とともに聞こえるのは軽快なサブマシンガンの連射音。俺はやせ細ったコンクリート柱から身を翻した。

 

そこには両腕の駆動部から煙をあげるゴリアテと、瓦礫の上に立つ小柄な生徒がいて。

 

「おいおい、みっともねぇなお前ら。あたしがいないってだけでこのザマか?」

 

金色の龍と舞い散る桜。スカジャンをはためかせて彼女はそう嗤った。

 

「……あんたが遅かったから、疲れてんだ。まだやれる」

「あっはは。リーダーが来たから気合い入っちゃうなぁ……っ」

「……私も、寝ていられませんね……っ」

 

乱れた呼吸は整えた。銃剣を抜き、着剣する。少し離れたところから、アスナ先輩のリロード音とアカネ先輩が立ち上がる音が聞こえる。

 

「ゼロツー現着、アスナ先輩、マガジンを。アカネ先輩もこれこれ」

「ナイスカリンっ。これでいけるね!」

「これは……。よし、ネライくんも、大丈夫ですね」

「あぁ、こっからが本番だ」

「─────上等だ。気合い入れろよ、大掃除だ!」

 

両肩部に搭載された8連装ミサイルをネル先輩のサブマシンガンと俺の狙撃で撃ち落とし、駆動音とともに軋む両腕を接近したアスナ先輩の蹴りと後方に構えたカリン先輩の狙撃が襲う。

 

『な、なんなんだよお前らァ!もう終わりだっただろぉ!なんで来るんだよぉ!』

 

方や弾かれ、方や肘の駆動部からちぎれたことに動揺したのか、スピーカー越しに響く搭乗者の悲鳴に近い叫びに、アカネ先輩の声が答える。

 

「普通のお掃除から爆破でのお掃除─────」

 

続く爆発音。倒壊した建物の一部がゴリアテへと降り注いだ。

 

『ぐぇぁ!?』

「表の姿は献身的なメイド部……っ!」

 

続くカリン先輩の射撃によって、残った片腕も撃ち落とされる。俺の銃と同じ意味のホークアイ(フォルケンアウゲⅡ)は対物狙撃銃、いかに最新技術と合金を使用した複合装甲といえど、関節は弱い。元々の劣化もあるのだろうが、これまでの戦闘にネル先輩の攻撃が合わさり、限界を迎えたのだ。

 

「でもホントの顔はエージェント!」

 

再び発射されようとする両肩部のミサイルポッドに、新たなマガジンをセットしたアスナ先輩の射撃が刺さる。半ば暴発したそれはこれまで使用されていない頭頂部の主砲からも黒煙をあげさせた。

 

『め、メインキャノンが、やられたぁ!?』

「─────それがあたしたち、C&Cだ」

『なっ』

 

軽くとんでゴリアテの上、主砲と前面装甲の間に収まる操縦士に二丁のサブマシンガン、ツイン・ドラゴンが狙いを定める。

 

『お、おのれC&Cぃ!』

「あばよ、このままスクラップに─────」

『まだだぁ!』

「なっ」

 

引き金を絞ったその刹那、主砲を含める上部装甲がスモークとともに弾け飛んだ。

 

突然にゴリアテの上半身を丸々覆い隠すスモークはネル先輩の視界を遮り、それでいて操縦士は備えていたようにそのスモークから抜け出してきて。

 

「まだ、まだ終わらない!厄災の狐に載せられた時とは違うんだ、今度は、今度こそ自分たちの手で成功させると─────」

「─────それは無理だな」

 

走りさろうとするその背中を、銃剣で強かに打ちつける。もんどりうって地面に転げたところに、銃剣を突きつけた。

 

「これで終わりだ。諦めろ」

「くそっ……C&Cめぇ……っ!」

 

なおも懐から拳銃を取り出す操縦士を、俺は容赦なく撃ち抜く。そしてついに、最後の敵が倒れた。

 

「─────俺は、C&Cじゃない」

 

気絶した操縦士に聞かせるようにぽつりと呟いた一言は、だんだんと近づいてくるヴァルキューレのサイレンにかき消されていった。

 

 

 

 

 

 

つぎにみたいのをさんこうまでに

  • ○○○TS編
  • ゲヘナ編(ゲヘナピンク無関係)
  • しないと出られない部屋再来編
  • シャーレ当番編
  • NLP編
  • なんかとりあえずイチャイチャピンク
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