ミレニアム・ピンクアーカイブ   作:オサシミの化身

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エンジニア部と出られない部屋
しないと出られない部屋


 

『ネライ君!』

『まだ起きているかい!』

 

時刻は23:00。明日は休日であり、久しぶりにトリニティ辺りまで足を伸ばすためにもさぁ寝ようと布団に入った矢先のこと、モモトークの通知が入った。通知を切り忘れていた過去の自分を恨みつつ画面を見ると、そこに表示される相手の名前は白石ウタハ。エンジニア部の部長を務める先輩だ。

 

若干、いやかなり嫌な予感はするが、既読をつけてしまった以上無視するのも悪い。長くなりそうなら切り上げてしまおうと思いつつ返信する。

 

『起きてますが』

『こんな時間になんですか』

『もう寝ます』

『スタンプ(おやすみなさい)』

 

『待ってくれ!』

『いやなに』

『先程新たな発明品が完成してね』

『明日、その実験に協力して欲しいのさ』

『今回のはどうしても男である君の力が必要でね』

 

─────やっぱりか。

 

『嫌です』

 

『まぁそう言わずに』

『決して君にとって悪い話ではないさ』

『明日10:30、エンジニア部の部室で待っているよ』

 

『まだ行くとは言ってない』

 

だが、それ以降彼女が既読をつけることはなかった。行かなければ休み明け、いったいどんな目にあうかわかったものではない。

 

「せっかくの休日が……」

 

そう独りごちてスマホの通知を切り、今度こそ俺は布団の中でまどろみの中に落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ついに完成したぞ!S○Xしないと出られない部屋だ!」

「何作ってんだこの人……っ!」

 

翌日、部室を訪れた俺を待っていたのは、やけにハイテンションなウタハ部長と、ピンク色に飾られたコンテナハウス、そして満足気に頷くクラスメイト2人の姿。

 

「ご説明しましょう!」

「ご高説は結構だ……っ」

「S○Xしないと出られない部屋とはその名の通り、密室に閉じ込められた状態でS○Xをすれば脱出することができるという単純明快な脱出条件をクリアするゲームで、俗に言うエロシチュのひとつですね!」

「コトリ、少し黙れ……っ」

「ただ簡単に脱出できると味気ないから、外部、内部ともにありとあらゆる衝撃、環境の影響を受けないよう特殊合金と最先端素材を使用した複合素材外壁。内部からの破壊も外部からの破壊も、全て防ぐことができるの」

「ヒビキ。お前は頭がおかしくなっちまったんだ。落ち着け」

「防弾に防爆、対衝撃性能に腐食耐性、さらには放射線防護機能まで着いた複合素材外壁は宇宙船に流用できる最高傑作ですね!あっ、もちろん内部は完璧な居住スペースになってますし、外部の様子を確認するカメラも搭載。食料と水の備蓄もありますよ!」

「そんなもんシェルターにしろっ。なんでこんなしょうもないものに使った!」

「しょうもなくなんてっ」

「そんなことない。これもロマン」

「正気かお前ら!?」

「もちろん自爆機能も搭載しているよ!」

「それは外せ!?」

 

ミレニアムの発明コンテスト、ミレニアムプライスにシェルターとして出展すれば最優秀賞待ったなし。こんなまともなものを作れたのかとユウカ先輩は涙することだろう。

 

だが現実は非情である。エンジニア部はこの高性能シェルターをよりにもよってS○Xしないと出られない部屋として完成させているのである。しかも謎の自爆機能付きで。

 

「む、こういうのは男の夢だと聞いていたが。あまりテンションが上がっていないようだなネライ君」

「上がるわきゃねぇだろ……っ」

 

不思議そうに首を傾げるウタハ先輩に呆れる。むしろ俺からしたらこんな厄ネタを持ってこられる方が面倒なのだ。テンションなんて上がるはずがない。

 

「─────たが、そんな君にも内装を見てもらえば伝わるはずだ」

「伝わんねぇし変わんねぇよ」

「まぁまぁ!」

「まずは入ってみて。話はそれから」

「押すな馬鹿ども。おい、やめろっての」

「さぁ、おいで!なに、内装に関して男子の意見が欲しいだけだ。悪いようにはしない」

 

スっと後ろに回り込んで背中を押すコトリとヒビキ。自分より小柄だというのになんというパワーだろうか。さすがキヴォトス。そんな2人に対抗していると、一足先にコンテナハウスへ乗り付けたウタハ先輩が手を差し伸べる。

 

─────まぁ、内装についてだけなら……。

 

「……わかった。中見るだけだぞ」

「そのお返事待ってました!」

「いいね。早速行ってらっしゃい」

「行くから押すな」

 

凄まじく濃いクマを残した淀んだ目を途端にギラつかせた2人によって、俺はウタハ先輩の待つコンテナハウスに押し込められる。

 

「ようこそ!S○Xしないと出られない部屋へ!」

「……いや、なんか、普通だな。部屋の名前の割に」

 

コンテナハウスの中はそこまで変わったものではなく、どことなくちょっといいビジネスホテルくらいの感覚だった。唯一トイレとは別になったシャワールームがガラス越しによく見えること以外は。

 

「キヴォトス全域で運営されているビジネスホテルを参考にしているからね。内装は普通さ。私もそういったホテルには行ったことがないから参考にしようがないしね」

「どうりで。……む、結構しっかりしてるんですね」

「ふむ。ネライ君は名前を聞いてどんな内装を想像した?」

「もっとこう、ピンクとか紫で、ピカピカ光ったりして、あと、回るベッドついてる、とか」

「しれっと知らない情報を追加してくれたね。……回るベッド……。そんな状況でも出来るものなのか」

「深く考えないでください。あと、俺も詳しく知らないんで」

 

実際のところ、というか当然なのだが俺もそういったホテル、俗に言うラブホには行ったことがないし、キヴォトスにおいても一部にあるだけで決して多くはない。

 

外の世界で聞いたことのある話をすると、彼女はメモ帳を取り出してうんうんと唸った。そんな彼女を横目に、かなり広いベッドに触れてみる。

 

「うわっ、なんだこれ」

「ん?エンジニア部で試作されている硬さの変更が可能なマットレスさ」

「なんだその超技術」

 

座ってみると微かに硬さの残るそれだったが、枕元のダイヤルをウタハ先輩が操作した瞬間、俺の体が沈み込むほどにマットレスが柔らかくなった。

 

「おおっ、すげぇ。流石エンジニア部」

「ふふっ、そうだろう。あっ、これには付いていないが、元々は脚に小型ジェットエンジンを搭載する予定で、就寝時にでも飛行による緊急脱出が可能になっているのさ」

「それさえなければ俺にもくれって言いたかったのに」

 

褒め称えられるような発明をするのに、何故か余計なひと手間が加わって悪い方向へ進む。エンジニア部の特徴だった。

 

次はシャワールームでも覗こうか。そう思いベッドから立ち上がった時だった。

 

─────ガチャリ、という電子錠の音が部屋に響いた。

 

「え」

「ん?」

 

その音にふたりして振り返る。出入口のドアはこれでもかと電子錠によるロックが施されていて。そしてそれらは明確にロックを表しているであろう赤色の光を発していて。それを見たウタハ先輩の顔色はどんどんと青ざめていって。

 

「あ、あぁ─────っ!」

 

ウタハ先輩の絶叫が狭い空間でこだました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『この部屋は、S○Xをしないと出られない部屋です』

「……」

「おい」

『コンドームの使用設定は、使用可能になっています。そのため、コンドームを着用した状態での○出しフィニッシュを確認でき次第、閉鎖中の全ロックが解除されます』

「……」

「他にない、最悪なアナウンスだ」

『なお、本システムは試作段階のため、安全を考慮して120時間の経過により自動でロックが解除されます』

「……」

「一応、そこら辺の安全対策されてるのか」

 

恐らく最低最悪のアナウンスの間、無表情で一言も発さず忙しなく歩き回るウタハを見て半ば希望を捨てたネライは、恐らく考えうる中でいちばん最悪の事態が発生したという事実に、密かに頭を抱えた。

 

─────まさか俺とウタハ先輩でこんな部屋に閉じ込められるとは……っ!

 

ネライだって男だ。そういうことに興味はある。ゲーム開発部の面々の体型には反応しないとはいえ、さらにいえばC&Cの面々(1人から目を逸らしながら)が性癖どストライクとはいえ、ぶっちゃけ白石ウタハという先輩は美少女だ。

 

割とウザったらしい時もあるし公衆の面前で服を剥かれたこともあるし、今日も若干汗臭いしなんならじゃっかん焦げ臭い白石ウタハだが、シャワーさえ浴びれば特に問題は─────。

 

─────なんで俺はする(・・)方向で考えてんだ。馬鹿野郎。

 

「……1度、落ち着いたらどうですか。外にいるコトリとヒビキがどうにかしてくれるかもしれませんし」

「……無理だ。ロックを解除するには権限が必要だ」

「……2人には、ないんですか」

「権限は、私にある」

 

動きを止め、ネライに背を向けたままウタハはポツポツとつぶやく。

 

「あぁ、そうだ。ロック解除の権限は、まだ私しか持っていない」

「ならとっとと解除を」

「だが、内側に取り付けられた端末が反応しないんだ」

「嘘だろ……」

 

小脇に抱えた端末を差し出すウタハ。それを受けったネライは反応がないことを確認する。

 

「あとは物理キーか」

「あるのか!」

「もちろんだとも。安全対策は万全に─────」

 

懐をまさぐって取り出されたのは、いかにもといったデザインの物理キー。それを厳重な施錠装置のひとつに差し込むとかちりと回し、折れてしまった(・・・・・・・)鍵を片手に跪く。

 

「何やってんだほんとに……っ!」

「ま、まさか折れるとは……」

「くそっ、他に方法は」

「ない!」

「なんでだよ!無防備に入るなら他になにかあれ!」

「対策はしていたし、まさか閉じ込められるとは思わないだろう!?」

「知らねぇよ!」

だが何を言ってもどうしようと無いことはわかっている。お互いがお互い、頭を抱えて悩み倒すだけだ。

 

「このままじゃ、まずいな……っ」

「あぁ、マズイ……っ」

 

─────これはマズイ……!主に私の貞操が……!

 

白石ウタハは日頃、年頃の少女らしさを捨てているに近い、機械いじりに没頭する変わり種。化粧はするが最低限で割とすっぴんなことも多く、手は荒れてはいないものの切り傷とところどころ固くなった手はどちらかといえば無骨なもの。下手したら最低限の身だしなみが整っていないことがあるような少女だ。

 

だからといって乙女的な願望がない訳ではないのだ。彼女だってそれなりにロマンチックなものに対する興味はあるし、するなら愛した相手がいい。

 

いや、確かにウタハの目から見てもネライはかっこいい。顔は怖めだが嫌いではないし、身長も高くて体型もかっちりした男前だ。それに機械いじりに理解もあって、たまに世話を焼いてくれることも─────。

 

─────よ、余計なことを考えるなっ!

 

「む……」

「くっ」

 

万事休すか。恐らく助けを呼びに行ったであろうコトリの背中と必死に外部からのロック解除に努めるヒビキの姿をモニター越しに確認し、2人は深いため息を着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




割と暴走中かも。でも警告食らうギリギリ責めたいかも。

つぎにみたいのをさんこうまでに

  • ○○○TS編
  • ゲヘナ編(ゲヘナピンク無関係)
  • しないと出られない部屋再来編
  • シャーレ当番編
  • NLP編
  • なんかとりあえずイチャイチャピンク
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