いつも誤字報告ありがとうございます(´;ω;`)
「そんな……」
巨大な鉄の箱に項垂れかかる1人の少女がいた。嗚咽を漏らし、すがりつくも虚しく足へと落ちた手でズボンを固く握りしめる。
その顔には大粒の涙と絶望に侵された光のない瞳だけが苦悶の中に浮かんでいた。
少女の名を才羽ミドリ。巨大な箱に想い人を閉ざされてしまった悲劇のヒロイン。
泣きつきすがろうとも、冷たい鉄の箱はただ沈黙を返すばかり。もはや開発者にも開けることの叶わぬそれは、かろうじて聞こえる換気音以外の音をあげることすらしなかった。
「こんな、ことって……」
「ミドリ……」
「お姉ちゃん……」
「こうなったら……っ!」
「ネライくん………って、えぇ!?」
その背中を仲間たちは見守った。姉であるモモイは目を伏せ、その背を優しくさすり、友であるアリスは
「アリス、全力で行きます!この光に、意志を込めて……。エナジー、オーバーロード。貫けっ、バランス崩壊っ!」
「ちょ、ストップストーップ!」
「だ、ダメだよアリス、どうなるかわかんないから!」
「だってネライが、ネライが!」
この騒動に飛んできたコトリとヒビキに止められて、構えたレールガンから光を拡散させるアリス。軽々とそれを下ろすと箱を指さしブチ切れた。
「ですがコトリとヒビキ、あの邪悪なる箱にネライとウタハ先輩が囚われています!」
「邪悪なる箱とは失礼な!」
「むしろ生命を育む神聖なもの……っ」
「ミドリが言っていました。あれは魔王がウタハ先輩とネライを捕まえるために作った箱だと!きっと今もネライとウタハ先輩が苦しんでいるはずです。2人を、アリスは助けなくてはなりません!」
「誰なの魔王」
「ミドリが適当なこと言っただけですって……っ」
「そもそもアリスのレールガンでも、あの装甲を破ることはできませんからね!?」
コタマのその一言に、ムッとしたアリスが再びレールガンを構え、青い光を迸らせた。
「そんな道理、アリスの無理でこじ開けます!今のアリスは、勇者すら凌駕する存在です!」
「うわぁ、アリスほんとにストップですからぁ!」
「こじ開けなくていいし凌駕しないで……っ!」
キヴォトスの生徒である2人をも圧倒し引きずり回すアリス。そんな彼女たちを横目に、ミドリは静かにキレていた。
「ウタハ先輩とS○Xなんて、そんなの許せない……っ!」
「ミドリは何にキレてるの……!?」
「絶対、何も起きないうちに引きずり出してやる……っ!」
「怖い、ミドリ怖いって。ユズが泣いちゃうよ!?」
「わ、わぁ……わぁ……」
「もう泣いてます!」
△
「……カオスだ」
「……なんというか、だね」
湯煎したポトフ缶に缶詰のパンを浸して頬張り、ワチャワチャと騒ぐエンジニア部とゲーム開発部の姿を、モニター越しにに俺とウタハ先輩はぼーっと眺めていた。
「ふむ、アリスのレールガン、それも最高出力ならあるいは……」
「それ、俺らの無事担保されるのか」
「まぁ命があればいいほうだろうね」
「ダメじゃねぇか」
「まぁね」
「……それにしてもなかなか美味いな」
「料理研究部が作った非常食さ。特にOBが制作したこのシリーズは美味しいものが多くてね。こうして採用しているのさ」
「これうちにも置く。どこで買えるんだ?」
「なら、出れたら購入リンクを送ろう」
「出れたら、なぁ」
あっという間に閉じ込められて半日が経った。最初はお互い気まずい時間が流れたが、それは時間が解決してくれた。お互いサバサバしていて、尚且つ切り替えが早いのも幸いした。今のところ雰囲気が邪険になることもない。
むしろ─────。
「ん、そういえばデザートも食べるかい?ガトーショコラがあってね。ほらこれ」
「俺はバームクーヘン見つけた」
「ならばそれは明日のおやつにしよう。うん。よし、今日の夜はハンバーグにデザートのガトーショコラだ」
「大盤振る舞いだな」
「せっかくなら、いつもと違うこの状況を楽しまないと、ね」
「そうだな」
俺とウタハ先輩はこの状況を満喫……とまでは行かなくとも割とエンジョイしていた。
もちろんお互いに条件はしっかりと設けているし、俺も彼女の嫌がるようなことはしないと決めている。普段は決して服を着ないお風呂上がりも、今回ばかりは仕方なく着ることにしているし、暑苦しいであろう筋トレだって最低限に抑えている。
それに部屋自体もそこまで狭くなく、長期間の利用を見越して準備されていた保存食も、モチベーションを損ねないようにという配慮ため味もバリエーションも高水準。
水だって出るしコーヒーだって淹れられるし、シャワーだって普通に浴びれる。困っていることといえば、シャワールームの壁がガラス張りの為ウタハ先輩が浴びる時はシーツを使って簡易的なパーテーションを作らなければならないことと、ウタハ先輩が用を済ませた直後はトイレの使用を禁止されていることくらいだろうか。
「む、メイド部も参戦か」
「ほんとだ。全員揃ってる」
食後の一服のためにコーヒー用のポットを用意していると、ウタハ先輩がモニターに映るC&Cの姿を見て不敵に笑う。
何かと思えばそこには跳弾も周囲への被害もお構い無しに銃撃と爆破を浴びせるC&Cの姿があった。
「派手に、やってるな」
「ネルめ、いきなり撃つこともないだろう。それにあんなに派手な爆破まで。恐ろしいかなメイド部は」
「……それでも、衝撃どころか音ひとつ感じないな」
「エンジニア部の持てる全てを費やした複合装甲だ。そんな簡単に破られてはかなわないからね」
「そこに自信を持たれても……」
ことりと淹れたコーヒーのカップをテーブルに差し出すと、ウタハ先輩は待っていましたと言わんばかりにそれを口にする。
「うん、ネライ君のコーヒーは中々に美味しいね」
「ミレニアムにたどり着くまで、シラトリのカフェに居候してたからその時にマスターから色々と」
「君ってあれだよね。意外なことにインテリ系だよね」
「ミレニアムに来てんだから、そういうものだろ」
「そういうものか」
決してバカにするつもりはないのだろうが、何か可笑しいのかくすくすと笑う。そんな笑い声をBGMに、モニターに映る乱痴気騒ぎに近いC&Cの攻撃を眺めて俺はコーヒーを啜った。
「おっ、マキたちも来た」
「どうやらヴェリタスも来たようだね。システム面のハッキングの体制はどうだろうな……っ」
△
「なにこれ」
「うーん……」
「これは……どうだろ」
持ち込まれたパソコンを叩く音が静まり返ったエンジニア部のラボに響く。ミレニアム、いやキヴォトスきってのハッカー集団であるヴェリタスを持ってしても、閉ざされたドアを開くという作業は困難を極めていた。
「だめ、どこもアクセスに応じない」
「マスターキーの所持が絶対条件ですねこれ」
「マスターキーの所持者は?」
質問されたエンジニア部のふたりがドアの向こうを指さして。
「あの中、ってこと?」
「まさか動くと思ってなくて、キーはウタハ先輩が持ってるカードだけで……」
「つまりマスターキーによる認証はまず不可能、と」
そんなふたりに頭を抱える暇もなく、チヒロはキーボードに張り付いている。
「これ、ほんとに開けれないようになってる。下手に踏むとエアギャップされるようになってるし」
「どんな執念してるの……?」
「こんなしょうもない物に付随していいシステムじゃないよこれ」
「しょうもないとはなんですか!」
「私たちのロマンに……っ」
「うるさい。……マスターキーによる第1段階が認証されないと、そもそもの物理的な接続装置動かないから第2段階に進めない。それに物理的な接続の方を無視すると全部エアギャップで飛ぶようになってる。……装置を物理的に操作する方法はないの?」
「……一応、メンテナンスハッチは設けてるけど……」
「これウタハ先輩が組んだやつで、まだ回路図に起こしてないんですよねぇ」
「下手打つと本当に外部からのアクセス断たれかねないし、あんまりやりたくないかな」
「なんでそんなものをこの部屋につけたんですか」
「バカだからでしょ」
話しながら、なおもキーボードを叩き続ける。だが、どれだけ必死にやろうと待ちきれない人たちもいるわけで。
「─────やっぱぶっ壊すぞ」
「カリン、どうですか?」
「指定ポイントに設置完了だ」
「リーダー。いつでも爆発できますわ」
「よしっ」
汗を拭いそそくさと離れるカリンと起爆スイッチを片手に微笑むアカネを見て、怒りに満ちたネルが笑う。
そんな彼女たちにゲーム開発部が慌てた。
「だ、だめだよっ。ネライが中にいるんだから!」
「うるせぇ、あいつなら大丈夫だろ!」
「アカネ先輩、起爆スイッチを渡してください。……ほら、ユズも手伝って」
「うぅ……。ね、ネライくんのためだからがんばるっ」
「あら。ですが私としてもこれほどのものを破壊していいのなら、とっととしてしまいたいのですが……」
「……私も正直、ふたりが心配だ」
「カリン先輩もこう言っています!チビネル先輩は短気すぎます!」
「誰がチビだチビ!あとカリンっ、あたしに逆らおうってのか!」
「なんと言おうともチビネル先輩はチビメイドです!ネライくらい大きくなればアリスにチビといえますね!」
「あいつはデカすぎんだよ!」
かつてないほどに荒れるエンジニア部のラボ。ことが発生して一日が経過した今、既にミレニアム中を騒がせる1大スクープとなったこの件を解決すべく、別で動くグループもあった。
「……アスナ先輩、ほんとにいるんですか……?」
「確かに、以前にもこの辺りで身を潜めていたこともありましたが……」
ミレニアム校舎の地下通路、薄暗いその一角を歩くのはセミナーのふたり。そして、ふたりを先導するメイド服、アスナだった。
「うーん、何となくここにいる、と思う?」
「……疑問で返さないでください」
「ですが、ここにいればいいですね。今回の件を解決できるマスターキー」
「ノア……もしかして疲れてる?」
「そんなことありませんよ」
暗い笑みを浮かべたノアが、薄く笑った。今回の件でクロノスから複数の問い合わせがあり、その対応を彼女がしていたのだ。ストレスでも溜まっているのだろうか。そう不安になったユウカは、
「ぜったい捕まえて、この件を終わらせるわよっ」
「そうですね」
「気合入ってるなぁ。多分この先だから急ごっ」
明るく笑うアスナとともに、2人は駆け足でその後ろを追った。馬鹿みたいな1件を解決するために。
つぎにみたいのをさんこうまでに
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○○○TS編
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シャーレ当番編
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なんかとりあえずイチャイチャピンク