「ふっ……ふっ……ふっ……ふっ……」
部屋に閉じ込められて3日目、今日も今日とてパーテーション越しに聞こえるシャワーの音をBGMに、俺は筋トレに励んでいた。
ガラス張りのシャワールームは、中の様子がよくわかるようになっており、流石にそのままでの使用は憚られた。そこで、予備のシーツを使った簡易的なパーテーションを張ったのだ。
とはいえ、鼻歌さえ聞こえてくるようなこの状態、俺も冷静さを保つのに必死だった。
─────意外とあの人、スタイルよかったんだな。
これまでの2日間。嫌という程思い知らされた。人は見た目通りじゃないんだということを。
お互いにシャワーを浴びてさぁ寝よう、といったタイミングで、俺は初めてウタハ先輩の薄着姿を見た。
そして驚愕した。薄く華奢に感じていたウエストやヒップに対し、彼女のバストはそれなりに大きかったのである。どこに隠していたんだと言いたくなるようなそれは、俺にダメージを与えるのに十二分だった。
「というかっ、なんでっ、あの人はっ、普通にっ……っ」
今も呑気にシャワーを浴びているウタハ先輩に僅かに苛立ちを覚えた。
─────この閉鎖空間は危険すぎる……っ!
何の邪魔も入らない2人きりの空間に、これまで華奢だと思っていた人のそこそこ大きなおっぱい。ネライのネライくんがバンザイするのも仕方の無いことだった。
「はやく助けてくれ……」
─────俺、ウタハ先輩のこと、好きになっちまう……っ!
△
─────流石に、恥ずかしいな。
身体を流れ落ちる雫を拭きあげつつ、心の中で葛藤する。想起するのは彼のこと。
よく男はケダモノと聞くが、彼にだって理性はある、いきなり襲いかかってくるような真似はしないだろう。それに普段の彼を見ればわかる。常に冷静でクールな少年なのだ。
だから、わりと油断していた。だから、とある事実を目の当たりにしてしまった。
閉じ込められた日の夜のこと。シャワーを終えた私は、なんの考えもなくシャツとショートパンツを着用した。コスプレプレイ用に用意していた、安くて薄っぺらいものだ。
着心地は悪いが、ずっと同じ制服を着続ける訳にもいかないので仕方ない。不満を飲み込んだ私を待っていたのは、見たこともない目をした彼だった。
『……ネライ君?』
『う、ウタハ先輩、それ』
『あぁ、これかい。コスプレ用に用意していたものだが、どうにも着心地は良くないな。やはり結局は脱いでしまうからだろうか』
『─────っ』
『……?』
ふと気がついた。彼は基本的に目を見て話す。だが、あの時の彼は私の目を見ていなかった。見ていたのは─────。
「これ、か」
タオルを洗濯機に入れ、鏡の前に立って両手で胸に触れる。彼は確かにあの瞬間、私の胸だけを見ていた。あの彼が、である。
それはつまり、彼は私の体に目を奪われていたということであり、そして普段は感じていないであろう情欲を抱いたということなのではないだろうか。
─────もしかしたら、もしかするのかもしれないね。
鏡の前でくるりと周り、ドライヤーで乾かした髪をさりげなく整えた。最後に手を挙げて脇を見て、そして、何故か自然とムダ毛の処理を確認していた自分に赤面する。
─────これじゃまるで、私の方が期待しているみたいじゃないか……っ。
だが正直、興味はある。
幸い、赤らんだ頬はシャワー終わりだと思えば自然だ。冷静を装った私はあえて胸元の目立つ薄着のまま、シャワールームを後にした。
△
「─────」
「……ね、ネライ、君?どうだろうか」
「─────」
「その、有り合わせにしては、わりとよくないかいこれ。結構生地もしっかりして、てぇ……」
「─────」
「目が、なんだか目が怖いよ……?ど、どうかしたのか……」
「─────」
「えっ、ネライ君!?急に抱きしめられても……。ひゃぁ!?ちょっ、ど、どこ触って……っ!」
「─────あんたが」
「ぇ……」
「あんたが、悪いんだぞ」
「─────ぁ」
△
「─────馬鹿じゃないのっ。ほんっとうに馬鹿じゃないの!」
「─────うそ、だよね。ネライ」
「っ!?」
微睡みの中、枕元に響く怒鳴り声で目を覚ます。聞き覚えのあるその声は、今のこの部屋では聞こえないはず声。
驚いて飛び起きると、そこには眉を顰め目尻を釣り上げるユウカ先輩がいた。その腕の中には締め上げられたコユキがいて、その横で血の気の引いた顔のミドリが佇んでいる。
「ミドリに、ユウカ先輩に……。ということは、開いたのか!」
「……えぇ、とっくに空いてるわよ」
「私が来たのでぇ。ぐぇ……」
「コユキも、助かった」
何故かヘッドロックされたまま青い顔で力なく笑うコユキに感謝し、
「ひゅっ─────」
「起きてくれウタハ先輩。助かったぞ」
「ん……んん……。もう少し寝かせてくれ……」
「まったく。仕方がない人だな」
「─────ネライ」
ゆったりと歩いてくるのは幾分か低いミドリの声。その横のユウカ先輩と随分と力が入っているようで、締め上げられたコユキの顔色がどんどん悪くなっていく。
「それ、どういうこと」
「……それ?」
「それ」
「むぅ……」
ミドリは未だ微睡みに沈むウタハ先輩を力なく指さした。人のことを
「なんで……。なんで一緒に寝てるの─────っ!」
爆発した。
ポロポロと涙を零し、顔をクシャクシャにして叫んだ。往年の名作をプレイしてストーリーで感動したとか、巷で話題のホラゲーが怖すぎて心が折れたとか、そんな時の比ではない。どちらかといえばゲームで負け続けた時のモモイがやるようなギャン泣きだ。
「なんだ、どうしたっ」
「まさか、呑気にヤってたんじゃないでしょうね。私たちが必死になって手を尽くしてたってのに」
「ヤる……」
言われて、思い立つ。慌てて俺が布団をめくるとそこには─────。
「─────よかった。パンツ履いてるからセーフだ」
「……いい身体……。って、騙されないからねっ」
「ミドリは何を張り切ってるの……。じゃなくて」
「ん?」
「……っ。そ、その横がアウトよ」
「ん……?」
頬を赤らめて視線を逸らすユウカ先輩が指さすのは、俺の横で寝ていたウタハ先輩。これまではベッドがひとつしかないということで仕方なく一緒に寝ていた訳だが、昨日は少し違った訳で─────。
「ん、んん……。寒いじゃないかネライ君……」
「─────」
「あっ─────」
「あんたたち……」
─────そこには、衣服が乱れ、ほぼ産まれたままの姿となったウタハ先輩がいた。
「……これで、言い逃れ出来なくなったわね」
「ま、まってくれ。これは違う!」
「何が違うの!?こんなの……こんなのNTRだよ!」
「ミドリは何から何を寝盗られた!?」
「あんたは寝てから言いなさい」
「ぐふっ」
胸を抑えて倒れたミドリと、その横でいつの間にか力尽きていたコユキ、無表情でこちらを見下ろすユウカ先輩。そんな3人を他所に、外にいたであろう他のメンツもぞろぞろと部屋の中に入ってきた。
「まさかメンテナンスハッチにハマるとは……」
「コトリ、太ったんじゃない?」
「確かにお腹周りが引っかかってたよね」
「モモイもそんなこというの!?」
「だってぇ……ってミドリ!?─────うわっなんかえっちぃことになってる!?」
「何やってるのウタハ先輩……っ!?」
「アリス知ってます。朝チュンですね!……えっと、つまり……」
「か、解説しましょう!朝チュンとは─────」
「し、しなくていいから……っ!」
モモイが、アリスが、ユズが。コトリが、ヒビキが。
「……おいおい、どうなってんだこりゃ」
「これは……」
「ま、まさか2人ともっ!?」
「あははっ。なんか、ごめんね?」
「まさか会長の力を借りることになる……と、は」
「どーしたのチヒロ先、輩……。お疲れ様の言葉の前に、これかぁ……」
「えっと、ちょっと、ありえないかも」
「くっ、やはり救出より盗聴を優先すべきでしたか……っ」
「ダメよ。……あー、その。みんな、1回出ましょうか」
ネル先輩にアスナ先輩、アカネ先輩にカリン先輩。マキにハレ先輩、コタマ先輩にチヒロ先輩が。
全員が全員、この部屋の惨状を見て顔を赤らめ、気まずそうにしていた。そしてなんとかといった様子で立ち上がったミドリが一言。
「こいつら交尾したんだっ!」
「交尾言うな。そしてしていない!」
「どう思いますか。
ユウカ先輩が後ろ振り向いた。先生。その言葉にドッと冷や汗が流れ始める。
恐る恐る全員の後ろを覗くと、そこには。
「不純異性交友は、ちょーっと見逃せないかなぁ……?」
「せ、先生……っ!?」
「セミナーとしても、あまり見逃せないわね」
「……調月会長」
いつも通り朗らか笑う先生と共にいるのはセミナー会長、調月リオ。流れ出た冷や汗が滝のようになったのではないかと錯覚するほどになった。
「せ、先生、聞いてくれ!俺は、俺とウタハ先輩はヤッていない!」
「その状態で?」
「言い訳はダメよ。それに、大人である先生からすればすぐわかるはず」
「……あ、あははぁ」
ベッドの上で正座する俺に、先生はやさしく笑ってくれていた。
「その、多分そういった行為はしてない、かな」
「─────神かっ」
頬をポリポリと掻きながら、照れたように先生は続ける。
「2人とも、それにベッドにもそういった行為の痕跡が欠けらも無いし、何よりあの
「だから、していないと?」
「うん」
「流石だ先生!俺は先生のこと、信じていたぞ!聞いたかミドリ!俺はS○Xなんてしていない!アイドント交尾!アイアムチェリー!」
「なんか余計なことまで言い出した!」
「ネライが見たことないくらい暴走してる……」
「もうダメね、彼」
「─────だけど」
全員のドン引きしたような視線が突き刺さる中、先生はきりりと笑みを消して。
「今回の1件の罰として、1週間の出席停止処分、その期間シャーレで奉仕活動を行ってもらいます。これはセミナー会長、調月リオの判断でもあります」
「……はい」
「クロノスに情報を掴まれている以上、騒動の大元であるふたりには形だけでも罰を受けてもらわないといけないの。我慢して頂戴」
「むしろ、この程度で済むならありがたいです」
「真面目な話してるっぽいのに、ネライ裸だからしまんないのー」
「モモ、静かにね」
モモイのその一言に、俺はベッドから降りてそそくさと制服を着た。そして、未だに眠りこけるウタハ先輩の肩を揺すって起こす。
「ウタハ先輩」
「ん……あぁ、ネライ君」
眠気まなこを擦り、ともすればポロリと色々なものがはみ出してしまいそうなウタハ先輩は、起床するや否や周囲の状況に気が付かないのか、とんでもない一言を言い放つ。
「─────昨夜は、激しかったね。だが、悪く、なかった」
「あっ─────」
刹那、俺に銃撃が殺到した。
△
「う、ぐふっ……うっ…………」
どこのギャグ漫画だろうか。せっかく着なおした制服を銃痕と煤でボロボロにし、頭部はたんこぶでいっぱいになったネライが、エンジニア部ラボの冷たい金属床に打ち捨てられている。
私からすれば、むしろよくそう言った行為に及ばず、この3日間を耐えきれたものだと、思春期男子に有るまじき精神力に驚いた。
しかし、それとは別のことが気になっている子もいたようで。
「そういえばさ、先生」
いつもは活発なマキが、どうにもしおらしくこちらの裾を引っ張った。
「どうしたの、マキ」
「さっきさ、特有の匂い、って言ってたじゃん」
「え、うん」
「それって─────」
そこまで言われて、ハッとする。それじゃあまるで、私が嗅いだことある匂いについて語ったようなもので、それはつまり私はその匂いを知っているということになって。
「や、やっぱり大人なんだなぁ」
「マキ」
「えっと、みんなにも言っちゃえ!」
「マキ!?」
介護しようと思ったネライがこちらに手をさし伸ばしているが、男の子だから大丈夫。そう判断した私は、顔を真っ赤にしたまま走り出したマキを止めるべくあとを追いかけた。
つぎにみたいのをさんこうまでに
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○○○TS編
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ゲヘナ編(ゲヘナピンク無関係)
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しないと出られない部屋再来編
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シャーレ当番編
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NLP編
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なんかとりあえずイチャイチャピンク