ミレニアム・ピンクアーカイブ   作:オサシミの化身

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というわけで突拍子のないトリニティ編。


トリニティ散策記
トリニティ散策記 〜出会いは突然に〜


 

 

 

どんな金持ちのお嬢様が揃えばここまでの街になるのだろうか。そんな感想を抱く石畳の上を、俺は1人歩いていた。

 

すでに見慣れたミレニアムやシラトリの景色を考えると、緑が多くて目に優しい。建物もレンガ造りや白い外壁の建物がほとんどで、近代的な高層ビルのような建物はひとつも見当たらない。

 

「あら、男の子?」

 

通り掛かった花屋の店主が声にかけられる。その声に振り向くと、井戸端会議にでも興じていたのか、スズメの店主を始め鳥系の獣人が3人集まっている。

 

「珍しいわねぇ。どこの方かしら」

「ミレニアムです 。ここには旅行に」

「まぁ、ミレニアム」

「かっこいい上に、頭までいいのかしら」

「顔立ちも整ってるし、立ち姿もしゃんとして。きっといい親御さんをお持ちなんでしょうねぇ」

「……まぁ。感謝しています」

「まぁ、私も言われてみたいわぁ」

 

おーとわーという歓声をあげる3人。だが、お上品に見えてどうにも違和感がある。そして、俺はその理由を知っていた。

 

「─────こんないい子が、ゲヘナなんかじゃなくてよかった」

「ほんとね。ゲヘナなんかに行っていたら、こんな立派に育てた親御さんが可哀想よ」

「そもそも、ミレニアムにももったいないくらい。トリニティに相応しい男の子だと思うのよ」

 

─────こういうところだ。

 

トリニティ自治区の住民たちは、いや、生徒も含めた全員が、どうにも他校を見下していることが多い。特に自治区を隣り合わせるゲヘナ学園とは古くから確執があるのか、それが酷い。

 

普段は温厚で人がよく、真面目で誠実な人が多いここだが、ことゲヘナの話題となればボロクソに叩く、そういう所だった。

 

「ミレニアムのなんの伝統も感じない制服なんかより、正義実現委員会の黒衣装よ!彼、体格もいいし顔もキリリとしてるから、学ラン姿がよく似合いそうだもの」

「あら、彼ならティーパーティーに見初められて親衛隊にでも入れるわよ。なんの高貴さもないミレニアムより、高貴なお方を護る姿の方が、輝くわ。きっと」

「救護騎士団もだけれど、シスターフッドとかどうかしら。あなた、牧師さんに向いてそうなのよ。科学だか物理学だか知らないけれど、神秘を冒涜するような論文を聞くより、懺悔を聞いてあげてほしいわ」

 

─────そりゃ、マスター(・・・・)も嫌になるか。

 

知った気になって語り出す3人に、心の中で1人そうごちる。

 

「すみません。先を急ぐので」

「あら、足を止めてしまって申し訳ないわねぇ」

「おばさんたちの会話に付き合わせてしまって申し訳ないわ」

「よかったら、これ、持って行って頂戴」

 

声をかければパタリと話をやめ、店主が奥から1本の黄色い花束を持ってきた。

 

「これは造花を使ったフラワーピックなのよ」

 

そう言って差し出されたそれを受け取ると、なるほど、1本伸びた茎の手触りは確かに樹脂のそれ。そこから少し伸びて黄色い花と緑の葉が複数ついている。フラワーピック。あまり聞き馴染みのないものだ。

 

「……じゃあ、貰っていきます」

「えぇ。それじゃあ、トリニティ旅行、楽しんでちょうだいね」

「他の自治区みたいに不良は少ないけれどねぇ」

「気をつけて行ってらっしゃい」

 

手を振ってくれる3人に背を向け、造花を片手に再び歩き出す。他校をこき下ろすことの多い人々だが、その本質はみんな優しい。

 

伝統に付随するプライドが邪魔するのか。それともゲヘナの件からの排他的な思考なのか。綺麗な街並みと裏腹に、中々に黒いものを持っているトリニティ自治区は、どうにも歩きずらかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やめてくださいっ!」

 

ふと差し掛かった路地裏から、そんな叫びが聞こえてきた。

 

「トリニティでも、こういうことはあるんだな」

 

ネル先輩の1件を思い出すが、少しだけ躊躇する。恐らくここで問題を起こそうものなら、俺はミレニアムに強制送還されることになるだろう。

 

─────だが、なおも聞こえる悲痛な声を無視する事は、俺にはできなかった。

 

懐から取り出すのは黒い覆面、頭頂部から首元までしっかりと多い、目元だけが露出するバラクラバだ。身元を隠してくれるであろうそれをしっかりと装着、ライフルケースは背負ったまま、ホルスターからリボルバーを抜き、銃剣を手にする。

 

「さて、行くか」

 

軽く体を解し、路地裏へと飛び込む。薄暗い路地裏の奥の奥、カバンを抱えた白い制服姿の生徒と、この街には似合わない真っ赤なヘルメットを被った不良が2人。

 

不良の1人は少女のものらしきストラップの着いた白い銃を取り上げ、もう1人がカバンを取り上げているようだ。

 

「返して、ください……っ」

「はっ、バカ言ってんじゃねぇ。せっかく取ったもん返すわけねぇだろ」

「返してやってもいいけどよ、中身は全部頂いてくぜ。あとこのサブマシンガンもブラックマーケットに売らせてもらうぜ」

「そんな……っ」

 

幸い、不良たちは少女に夢中で、背後に陣取った俺に気づく様子がない。

 

だが、少女は違った。その視線は不良たちの背後に立ってリボルバーを構える俺に向いており、ぱっくりと目を見開いている。

 

「おい」

「なんだ─────」

 

声をかけた刹那に左手の引き金を引く。まず振り返ろうとする側頭部に1発。いからせたままの右肩に1発。無防備に開かれた右脇腹に1発。放たれた3連続の弾丸は、喰らいついた不良の意識を易々と刈り取る。

 

「な─────」

 

残された不良は突然の銃声と崩れ落ちる片割れを見て動転し、手にしていたサブマシンガンを落として後ずさる。

 

明らかに戦い慣れていないのだろう不良の動きは遅かった。右手に持った銃剣で頭頂部に一撃を叩き込む。ヘルメットをかち割った程度の一撃で気絶してしまう不良の呆気なさに驚いた。

 

表立った戦闘をしないトリニティの不良なだけあって、随分と不甲斐ないんだな。そんな感想を抱きながら、銃剣を戻した手でサブマシンガンとバッグを拾い上げた。

 

「大丈夫か」

「……えっ。は、はい……」

「そうか」

 

少女は気が抜けたのか、それとも銃撃に驚いたのか、腰を抜かして地べたに座り飲んでいた。しゃがんで彼女と目線を合わせ、手を差し出す。

 

黒髪に近いダークブラウンと薄暗い路地裏でもよく見える綺麗な翠目、白いセーラー服はトリニティの一般生徒用のものだろう、それにカスタムであろう緑色の大きなリボンが特徴的だ。

 

「あっ。ありがとうこざいます!」

「勝手に首を突っ込んだだけだ。気にするな」

「いえ、でも……」

 

カバンとサブマシンガンを手に立ち上がった少女は、軽くスカートのほこりを払ったあと、勢いよく頭を下げてくる。

 

「本当に助かりました。なにかお礼を……」

「いや、気にしなくても─────」

 

いい。そう言おうとした俺の足元に銃弾が打ち込まれた。

 

「─────っ!」

「ひゃ!?」

飛び退き、振り返る。先程まで俺の立っていたその向こう、黒いパーカーを着た猫耳の少女が軽機関銃を腰だめに構えていて。

 

「アイリから、今すぐ離れろ─────っ!」

 

撃ち放った。アイリ、というのは今助けた彼女のことだろうか。説得する暇もなく、俺が飛びのいた事で彼女が射線から外れた事を皮切りにこれでもかと弾をバラ撒く。

 

更にその後ろから金髪と桃髪の2人も走ってきている。狭い路地裏で挟み撃ちにならなかったのは助かるが、この閉所で盾持ちにアサルトライフルも相手にするとなると少し厄介だ。

 

これは流石に堪らない。それに、アサルトライフル程度なら気にならないが軽機関銃は流石に痛い。再び腰を落とすアイリと呼ばれた彼女に片手を振って、俺は壁を駆け上がり屋上へと逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ─────」

「ちょっと今壁駆け上がったわよ、なに今の!?」

「なんという身のこなし……」

「身のこなしとかそういう次元じゃなくない!?」

「アイリ、大丈夫!?」

 

─────物理の法則を無視したように垂直の壁(・・・・)を駆け上がった覆面の人は、そのまま建物の屋上へと消えていった。

 

それを確認した私は急いで尻もちをついたまま空を見上げるアイリへと駆け寄る。だが、彼女はそれにも気づく様子がなく、ただ空を、覆面が消えていった方を眺めていた。

 

地面で倒れているヘルメット団は覆面の仲間だろうか。ただ、いくらアイリに絡んでいた不審者とはいえ、あの身のこなしから只者では無いのは伝わった。

 

─────多分、あの頃(・・・)やり合ったことのある誰よりも強い……っ!

 

しかしそれが姿を消した以上、深堀はしない。今は1人はぐれてしまった挙句に不審者と不良に絡まれていたアイリの方が優先だ。

 

「アイリ。あの覆面に変なことされなかった?大丈夫?」

「……して」

「─────へ?」

 

ぽつりとアイリが何かを呟いた。あまりに小さなそれは聞き取れず、ピクリと耳が跳ねた。

 

なんと言ったのか。それを聞き返そうとした矢先にアイリが絶叫した。

 

「なんで撃ったの!?」

「えぇ!?」

 

その勢いに思わず後ずさる。私たちの足元で倒れるヘルメット団を指さしたアイリは、続けて空を、覆面が逃げていった方を指さして。

 

「あの人、あの人がその2人から私を助けてくれたんだよ!?」

「えっ」

「だからお礼をしようとしてたとこだったのにぃ……」

 

ガクりと肩を落とすアイリ。早とちりでアイリの恩人を撃ってしまったのかと、顔から血の気が引いていく。

 

「おや、やらかしてしまったようだねキャスパリーグ」

「あ、あんたが早とちりしちゃったのね。ま、まぁ?私はそうじゃないかなぁー、って」

「あんたたちねぇ……っ!」

 

今の今まで覆面が消えた方を指さして忍者だ、忍者じゃないと争っていたふたりが、のそのそとこちらにやってくる。

 

そしてふたりは何かをアイリに差し出した。

 

「これは……?」

「さっきの覆面が落としてったっぽいの」

「もし探すのなら、何かの手がかりになるハズ」

「ナツちゃん……ヨシミちゃん……」

 

ふたり、ナツとヨシミが差し出したのは、黄色い花の装飾が施された棒。所謂フラワーピックのようなものだろうか。

 

「これ……花?」

「造花ね。……あんなのが持ってるなんて、へんなの」

「これは……カランコエって花らしい」

「へぇ」

 

ナツはスマホのAIで検索したのか、同じ花の画像をいくつか表示させて見せてくる。たしかにそこには造花と同じような花ばかりが並んでいた。

 

そしてそれを見たアイリが頬を赤らめた。

 

「カランコエの花言葉は─────」

 

 

 

 

 

つぎにみたいのをさんこうまでに

  • ○○○TS編
  • ゲヘナ編(ゲヘナピンク無関係)
  • しないと出られない部屋再来編
  • シャーレ当番編
  • NLP編
  • なんかとりあえずイチャイチャピンク
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