ミレニアム・ピンクアーカイブ   作:オサシミの化身

20 / 29


FOX、満を持して。


トリニティ散策記 〜恋する乙女と怪しいFOX〜

 

 

「─────♪」

「ねぇ……」

「うん……」

 

『カランコエの花言葉のひとつは“あなたを守る”』

 

その花言葉を聞いてからというもの、アイリはずっと心ここに在らずといった様子で歩いている。機嫌良さげに鼻歌を歌っているのを始め、目尻はだらしなく垂れ、頬は薄いメイク越しに上気し、口元のニヤけが抑えられていない。

 

そんな彼女を見て私とヨシミは頭を抱え、ナツはただ一人いつものようにニマニマと怪しく笑っていた。

 

「あんまりアイリには言いたくないけどさ……」

「うん……」

 

友達とはぐれて不良に捕まり、身の危険が迫っていた所を颯爽と駆けつけて助けてくれる人物が、果たして目出し帽の覆面なんて着用するだろうか。

 

少なくとも自警団にはそんな怪しい出で立ちの者はいないし、顔を隠しているというのは何か後ろめたい事を隠したいのではないのかと勘ぐってしまう。

 

それに、どう考えても状況が出来すぎている。不良から助けてくれた相手が、そんなに都合よくカランコエなんて聞き馴染みのない花を持っているだろうか。

 

「てかさ、あれ」

「男子だったね、あの体は」

「やっぱ?」

 

ナツがそうつぶやく。あの覆面は私たちとは違う、オートマタなんかでよく見る体型だった。背はずっと高くて肩幅は広くガッシリとしていて、胸は全く出ていなくてくびれもない。

 

だが、飛び退きく動きや壁を駆け上がっていく曲芸をこなしていた上、オートマタにしては動きが生身のソレだった。あまり詳しくは無いが、オートマタの関節部に使われる電磁アクチュエータと筋肉になるバイオメタルファイバーであんな動きはまず不可能に近いはず。

 

ただ、トリニティに男子生徒がいるなんて話、聞いたことがない。……まぁ、広すぎて噂が届いていないというのも、ありえない話ではないのだが。

 

「で、どーすんのよあれ」

「うーむ……」

「どーすんのって」

 

恐らくこちらの声は微塵も聞こえていないのだろう、アイリは目的地へと歩みを向けているとはいえ、1人先導してスキップまでし始めた。

 

「……私は、言えないわよ」

「……ナツ」

「なんというむりなんだいをおっしゃるか」

「いっそあんたが言いなさいよ」

「いやキツイって」

 

─────助けてくれたのは事実だけど、花の方は偶然落としただけだと思うよ。その一言が言えたらどれだけ楽だろうか。

 

カランコエの花言葉のひとつは“あなたを守る”。そして、黄色いカランコエには“新しい始まり”という意味があるらしい。そのせいもあって、どうやらアイリは厄介な勘違いをしてしまったらしい。

 

「恋する乙女の思考回路、恐ろしや……」

「─────こっ、恋!?そんな事言わないでよナツちゃん〜!」

 

都合よく聞こえるものなんだなぁ、乙女の耳は。否定しつつもデレデレとニヤけるアイリに、ため息がこぼれた。

 

─────まぁ、このまま覆面と会うことなんてないでしょ。

 

トリニティは広いのだ。ハイランダーのTライン(トリニティ線)で言えば学園正門前が3つあるくらいには広大な自治区を誇っている。そうそう出会うものでもないはず。

 

「ほら、ナツも変なこと言ってないで行くよ」

「うぐぅ、ケツを叩くなケツをぉ」

「ほら、アイリも行くわよ。あと動揺してると余計それっぽいから」

「うぅ……。ヨシミちゃんまでぇ……」

 

叩かれたおしりを抑えるナツと共に赤面しているアイリを追い越し、私たちは目的のお店へと歩き出す。

 

今日はアイリの好きなチョコミントのお店だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鷹目ネライ。ミレニアムサイエンススクールの1年。ゲーム開発部所属」

「……」

「兼部しているC&C……。たしか、ミレニアムのエージェント集団だったかな?緊急時や非常時に戦力として動員される予備戦力、さらにいえばミレニアム最強に次ぐ実力の持ち主でもある」

「……」

「趣味は温泉旅とスイーツ。うち(トリニティ)の郊外にある秘湯を紹介しよう。……いや、ホストしか入れないか。まぁ、その気になったら私の名前を使ってくれて構わないよ。スイーツはコーヒーに合うものならなんでも好きなんだったね。たしか最近はイチゴ系にハマっているんだったか」

「……」

「身長は185cm、いや、186cmになったのか。成長期なのが羨ましいよ。この間、お風呂上がりに鏡を見て腹斜筋がさらにくっきりとしてきて喜んでいたね。体重が私の何倍もあるのは流石と言うべきか」

「……」

 

ここを訪れるにあたって、色々と調べたことがある。

 

正義実現委員会の委員長の剣崎ツルギに副委員長の羽川ハスミ。救護騎士団の団長、蒼森ミネ。シスターフッドの長である歌住サクラコ。クロノスの記事でも見かける彼女たち。

 

そして、トリニティにおける生徒会、ティーパーティーの 聖園ミカ。桐藤ナギサ。そして─────。

 

「百合園、セイア」

「……流石に知っているようだね。いや、キミのことだから下調べしてきた、と言ったところか」

 

百合園セイア。トリニティ総合学園の成立にあたり、複数の学園の中でも中心となった主要学園のひとつ、サンクトゥスの流れを組むサンクトゥス分派の代表で、生徒会長に当たる当期の“ホスト”。

 

そんな人物がなぜ俺を呼び寄せた(・・・・・・・)。そして、なぜ俺を知っている(・・・・・・・・・)

 

「不思議そうにしているね。いや、それも当然か。キミからすればメディアやデータでしか私を知らないだろう」

「生憎と、他所様の生徒会長とは交流がなかったと思いますので」

「そんなに他人行儀にならなくてもいいよ。私の知るキミはそんな話し方じゃないからかな、違和感しかないよ」

「そうか。貴女がそういうのならそうさせてもらう」

 

少し恐れ多い気もするが、相手がいいと言っているのだ。それに俺を呼び込んだティーパーティーの親衛隊らしき人物たちの気配もない。口調を崩しても問題ないのだろう。

 

だが、未だに納得のいかない様子で、彼女はその大きな片耳をしなだれさせた。

 

「違う。キミはもっと荒っぽい話し方だろう?高校デビューのクール口調、そこまで似合ってないと私は思うよ」

 

高校デビュー。その一言に息が詰まる。キヴォトスでその事を知っているのはこちらに来たばかりの頃の俺を知るマスターに色々と世話になったヴァルキューレくらいのはず。

 

何故そんなことを、初対面の彼女が知っている─────っ。

 

「私としては、以前の口調の方が好ましかったよ。男らしい、というのかな。あの雄々しい雰囲気がよく似合っていた」

「こ、高校デビューじゃねぇし!?」

「そうかい?中学時代のキミは“ストリートオブヤンキー”に出てくるキャラのような言い回しを好んで使っていた─────」

「だから……っ」

 

訳知り顔で語り続ける彼女を遮るように声を上げた。だが、それのお陰で少し冷静になれた。

 

行儀は良くないだろうが、提供されている紅茶を一気飲みして呼吸を整え、冷静さを意識する。

 

少し驚いた彼女は、しかしどうしてか目を瞑り、知ったように軽く首を上下する。ひとつわかったのは、目の前のキヴォトスの生徒、百合園セイアが過去の自分を知っているということ。それも、中学時代から現在に至るまで、日常からプライベートに至るまであらゆることを知っている様子。

 

「なんなんだ。あんたは」

「─────ふふっ」

 

思い知れず漏れ出た低い声にさえ、彼女は軽く笑い上品に紅茶を口にするだけ。

 

しばらくの沈黙。百合園セイアが話し出す。

 

「私は、そう。予知のようなことができるのさ」

「……未来予知?」

「未来だけではない。夢の中で過去、現在、未来、意識をはっきり保った状態で観測することができるんだ」

「何をバカな」

 

どだいおかしな話だ。いくらキヴォトスの生徒が常人離れした身体機能を誇るとはいえ、超能力じみた力を持っているなど流石に信じられない。

 

─────いや、たしかにコユキの事を思うとありえなくはないのだ。

 

それに、あまりにも俺のことを知りすぎている。いくつかは周りに把握されていそうなものだが、腹斜筋のことは乙花先輩とレイしか知らないし、昔の俺の口調なんていいあてようがない。

 

「ふむ、イマイチ納得しかねている、といった様子だね」

「そりゃな」

「なら、この力を信じさせるために今から君の秘密を3つ言おう。まだ、誰にも話したことの無い3つを」

 

ひとつ、と指を立てる彼女はニヤリと笑った。

 

「キミは初等部の頃、クラスの中でも1、2を争う低身長だった」

「っ!?」

 

当たっている。俺の身長が急激に伸びたのは中学に上がってからだ。

 

ふたつ、と立てる指を増やした彼女は肩目を閉じ。

 

「□□ □□」

「─────なんで、その名前を」

 

彼女の口から紡がれる6文字の名前に、思わず立ち上がる。いくら彼女がトリニティ総合学園のティーパーティー、そのホストだとしても、俺と□□(・・)の関係にたどり着くなどまず有り得ない。冷や汗がダラりと滴った。

 

だがそんな俺の事などお構い無しに、彼女は3つ目の指をもちあげて。

 

「3つ……」

「……」

「キミの─────」

「─────俺の……」

 

溜める。そして、途端に頬を赤く染め、目を伏せた彼女は。

 

「キミの陰茎は、膨張時で24.4cm……」

「─────なんで知ってんだおいっ!?てか俺でもそんなに細かく知らないぞ!?」

「その、いろいろと見て(・・)しまうからね。仕方ない」

「何が仕方ないってんだ……っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────彼の“夢”を見たのはいつだっただろうか。

 

当初、私の中で目の前で項垂れる彼、鷹目ネライは突如としてキヴォトスの未来に現れた異物であった。

 

これまで認知もしていなかった、できなかった彼の存在は、これからの“未来”を識っている私にとって目新しい存在だった。

 

決まっている不幸な未来を覆しえる可能性を秘めた“なにか”(イレギュラー)。そんな彼のことを意識すると、彼のことばかりを夢に見るようになった。

 

小さかった頃の彼に起きた特徴的な出来事。突如として向上した身体能力に戸惑い、ある日を境に化け物として扱われるようになった過去。そして喧嘩に明け暮れる彼と彼女(・・)の、本来なら有り得ないはずの出会い。突如として彼の身に起きたヘイローの発生とキヴォトスへの転移。

 

私の知るものとは違う、刺激的なそれに、いつしか私は惹かれて行った。

 

─────しかし何時しか気がついた。今の己は、気づかれないことをいいことに彼のことをストーキングしているのだと。

 

私は己を恥じた。だが、己の内に芽生えたそれ(・・)は、最早止めることなど叶わないものとなっていた。

 

そんなある日、友人の彼女がこんな話をしてくれた。

 

『知っていますか?不良系の男の子には独特の魅力があるらしいですよ』

『……突然どうしたんだい』

『いえ、今読んでいる(R-18)にそういった展開がありまして、つい。特にセイアちゃん、柄は悪いけれど根は真面目な不良の男の子とかにコロッと食べられちゃいそうです』

『男の子か』

『えぇ。特に男の子の雄々しい所なんて見せつけられたら♡』

『……ふむ、不良系……。雄々しい、か』

『あ、あれ?セイアちゃん……?』

 

なるほど道理で。彼女の言うことは的を得ていた。私はどうやら彼の勇猛で雄々しい所に惹かれていたのだから。

 

そしてその日の夜、私は再び彼の夢を見た。少し先の未来、今思えば今日この頃のことだろうか、彼の自室の夢だった。

 

いつものように、トレーニング終わりと思わしき彼はハンドタオルを首に上裸で鏡の前に立ち、身体の仕上がりを確認する。確かな太さがありながらもスマートに仕上がった筋肉群は、ギシギシと音を立てているのかと錯覚するほどに満ちていた。

 

その光景に生唾を飲んでいると、彼は何故か携帯を片手にそのままベッドへと寝転んだ。

 

どうかしたのか。その疑問は直ぐに解消された。

 

─────彼の股間が、大きく膨れ上がっていた。

 

知識として知ってはいるソレ。しかし、突如として目の前に現れたソレに気が動転し、その場でもんどりうって倒れた。

 

しかし当然ながら彼は私のことなど気にしない。やがて呼吸を早くする彼は携帯を片手に、大きくなった陰茎に手を─────。

 

『あっ……♡』

 

─────彼のそれは、強烈で過激で凄まじく“男”を感じさせるそれは、私の脳裏に深く刻み込まれた。

 

そう、だから。

 

「ふふっ」

「なんで人のちんこのサイズ言い当てといて笑ってんだこの人……っ!?」

 

─────ようやく会えた本物の彼をそういった目で(・・・・・・・)見てしまうのも、仕方の無いことだろう。

 

「なんでニヤニヤしてんだよ……っ!怖えよ……っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 





「いやらしいいFOXですまない」
「なんでちんちんのサイズ俺より詳しいねん……っ!」

そして例にも漏れず投稿しておいてやりすぎたかと不安になる男。

つぎにみたいのをさんこうまでに

  • ○○○TS編
  • ゲヘナ編(ゲヘナピンク無関係)
  • しないと出られない部屋再来編
  • シャーレ当番編
  • NLP編
  • なんかとりあえずイチャイチャピンク
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。