√ゲーム開発部
ゲーム開発部、部室。そこではいつも通りの光景が見られた。
どことなく片付けられていて、しかしながらすぐに散らかってコード同士が絡み合うゲームハード。その傍らに積み重ねられた様々なタイプのゲームカセット。
壁には次々と新しいタペストリーやアートパネルが広がっていき、私たち
「こなくそぉ!」
「そこですっ」
「ぐはぁ!?」
そしてテレビの前、以前より大きくなったそれの前には座布団に座るモモイとアリスちゃんの姿。少し前に発売されたインディーズゲームで、操作性は悪いらしいがキャラの魅力に富んでおり、その独特な世界観に惹かれる人も多いんだとか。
「お姉ちゃん、絶対あのキャラ苦手だよね」
「好きだからで使ってるな、あれ」
「そうだよね」
「好きなら強くなるくらい練習すればいいのに」
「カウンター主体のキャラだから、攻撃することしか頭にないお姉ちゃんには厳しいと思うなぁ」
「それもそうか」
そしてその後方のソファには押されるモモイを見てニヒルに笑うネライくんと、プレイ画面を見ているようでその実彼ばかり見ているミドリがいて。
そんな4人を見ながらインスタントのコーヒーを作っていると、レアなグッズが収納してある棚の前で
「─────この靴下っ、誰の脱ぎ捨てですか!」
「ちょっ、今忙しいからまってぇ」
「まつもクソもありませんよ。毎日のように靴下だのストッキングだの、挙句の果てにパンツまで……っ!」
「パンツは私ー。ストッキングは知らなーい」
「何をしたらパンツをここで脱ぐんですか!」
「その靴下はアリスのですね。ケイに回収を要請します!」
「致しません!それに、ここには男子もいるんですよっ。もっとこう、慎みをもって……」
「もう見慣れた。というか片付け慣れた。今なら顔の上にパンツを置かれても何も思わん」
「いや、それはどうかと思うけど」
「ネライにパンツ見られるとか今更だよねー」
「慣れるなぁ!双方ともに恥じろぉ!」
「アリスはみんなに裸も見られてますし、今更ですね」
「─────なんなんですか、もぉぉぉっ!」
「……というか、ストッキングだれのだろ」
「知りませんよ!」
手にしていたほこりはたきを手に怒るケイだが、如何せんそんな彼女を見飽きたとばかりにそれぞれがそれぞれのやりたいことをやっている。
─────賑やかになったなぁ。
最初は私1人で、モモイとミドリが入部して、ネライくんも来てくれて。色々あってアリスちゃんが。本当に、本当にさらに色々あってケイちゃんが来てくれるようになって。
部室も私が入部した時点で誰もいなかった先輩方の残した少しのレトロなハードと少しのゲームカセット以外は物置だったような部屋から、今のゲーム開発部らしい─────いや、少しごちゃごちゃしすぎているだろうか。まぁ、それらしい部屋になってきて。
それに─────。
「ちょっと貴方たち、この経費申請は何か説明しなさい!」
「げぇっ、ユウカ!?」
「チビ共、遊びに来たぜ!ネライもちょっとツラ貸せや」
「チビネル先輩!」
「ネライ〜、部長に追い出されたから遊びに来たよぉ。エアコンのリモコン貸してぇ」
「服を着ろエイミ。そろそろ痴女として捕まるぞ。あとエアコンは貸さん」
「失礼します。リオ会長をお連れしました」
「その、ゲームをやりに来たのだけれど……」
「リオ会長!?」
「リオ、貴女まで来るようになったのですか」
─────本当に、遊びに来る人が多いなぁ。
少し前までの私だったら今頃人口過密すぎて爆発して死んでいただろうか。それほどまでに
「─────ユズ」
「ふぇっ!?」
声を掛けられ、飛び上がる。慌てて横を向くと電気ケトルとマグカップを手にしたネライが立っており、いつもより幾分か柔らかく感じる顔で笑っていた。
「ネライくん」
「あぁ。少し騒がしいから逃げてきた」
特にあれから。そう彼が指さす先には叱られるモモイに、ゲームを始める4人とそれを観戦するアリスちゃんとケイちゃん、そしていつの間にか全裸になっているエイミさんがいて。
「でっけぇ。すっげぇ」
「そ、その、あんまり見ちゃダメ、だよ?」
「無理言うな。モモイのパンツとはわけが違うんだぞ」
「が、ガン見してた……っ!?」
「流石にあれには勝てん」
「も、もうっ。す、スケベっ。えっちなんだから……。だめっ、だめだってっ!」
上も下も開けっぴろげな彼女をガン見するネライ。背伸びしながら両手で彼の視界を遮ろうとするも、身長差もあってそれも中々叶わない。
何時からだろうか。彼がその持ち前のスケベさを隠さなくなったのは。少し前まではロリコンじゃないだのなんだの言っていたが、リオ会長やC&Cの人たち、先生にはデレデレするようになったのは。
─────なんか、気に入らないなぁ。
「……もうっ。ネライくんは、ほんとばか」
「悪かったユズ」
「ばか、ばかばかはが。えっち、すけべ」
「あー」
「………………」
「ユズ」
「…………なに」
ぽさり、と頭の上に手を置かれ、軽く撫でられる。大きくて、固くて、少し熱い、そんな手が時々おでこにあたった。
「その、なんだ。ゲーム開発部、凄いことになったな」
「……うん。そうだね」
見上げれば、彼はこちらを見て先程までと同じ優しい笑みを浮かべていた。入部した当初は浮かべなかった、こちらを見守るような笑みだ。
「ユズにモモイにミドリ、アリスにケイまではともかく、ユウカさんにネル先輩にトキにエイミに、調月会長まで時々来るようになって」
「さ、3人から、ずいぶんと大所帯になっちゃったね」
「部室も、狭くなったな」
「ものも増えたしね」
「それに、酷かった俺の扱いもすっかりなくなった」
「そ、それは……」
「─────え、なに。昔話?」
彼の背後からの声に思わず飛び上がり、身を縮こませて大きな彼の身体に隠れる。だが彼は平然とした様子で声の方に振り返る。
つられて私もそちらを覗くと、そこにはいつの間に入室してきたのか、先生がいた。
「せ、先生……」
「来たのか」
「ちょっとヒマリのとこに用事があってね。そのついでに来たの」
ここに来れば気楽にゲームできるしね。そう笑う先生の目には濃いクマがくっきりと浮かんでいる。ゲームをするより休む方が優先ではないだろうか……?
しかしそんな先生の目は蘭々と輝いていて、その姿を見たネライくんとわたしは目を見合わせて笑った。
「そうだな、少し思い出話でもするか」
「ま、まだ1年、経ってないけどね」
「……そう考えると恐ろしいな」
「ふふっ、それだけ色々あったんだよ」
青春だなぁ、と天井を仰ぐ先生。ネライがボソリとおばさんくさいなんて言うものだから、その途端に凄まじい顔をして彼を睨みつける。女性にそういったネタは厳禁なのだ。
コトコトとインスタントコーヒーを入れる彼は、そんな先生の視線を無視して語り出す。
「遡れば、入学式から数週間経ったころか─────」
△
「─────ええい、しつこい!」
廊下をそこそこの速さで走り抜ける、エスカレーターを飛び降りた俺はひとりそうごちる。しかし
まさか、こんなことになるとは思ってもみなかった。たかが
「鷹目ネライくん、待ってくださぁい!」
『ふふっ、追いかけているだけでも興味深い。その身体データ、是非とも欲しい……!』
「ぜひ、ぜひトレーニング部に!その身体をさらに磨き上げましょう!」
『エンジニア部製の最新ドローンで追いつけないか。興味深いな……っ』
『いや、その前にまずは人体解剖学部に来てくれ!男の体のデータが欲しい!』
『美術部、美術部にぃ!裸像作成にご助力をぉ!』
「くっそ……っ!」
乙花スミレ、2年生でトレーニング部だと名乗った彼女はその身体能力は目を見張るものがあり、飛び抜けて優れていると言った様子は無いが、地道に鍛え上げられてきたであろう筋肉によって、こちらと付かず離れずの距離で追走している。
そして数機のドローン。それぞれ僅かに細部の意匠が異なっており、そこから様々な所属を名乗る少女の声がスピーカー越しに響いている。
「鍛え上げられた腕!引き締まった確かな太さの両足!体操服からチラリと覗いたあの腹筋!素晴らしかったです!」
『なんかフェチっぽいぞこの女!』
『そんなことよりち○こ、ち○このデータ寄越せぇ!』
「なぁ!?」
『こら!せ、せめて、だ、男性器と言わないか!』
『わたしはいま、猛烈に感動している!私の望んだち○こが、いま、目の前にある!』
「なっ、なんて下品な!」
『うっせぇぞ筋肉フェチっぽいこと語る女!とにかく、一物しゃぶらせろやぁ!』
『誰かこいつ止めろぉ!』
「その前にお前ら全員止まれぇ……っ!」
随分と頭のおかしい奴がいる。どうにもミレニアム、いやキヴォトスにはそもそもの倫理観が終わっている生徒が多いのだ。それこそ、明らかに俺の
喧嘩が原因か、火花を上げでぶつかり合って、いくつかのドローンが落ちていく。そしてそれに巻き込まれた乙花スミレが足を止め、追走する集団からはずれた。しかし、それでもまだ俺の背後にはドローンが残っていた。
「くっ、なにか、どこか隠れられる場所は……っ!」
パタパタという音に急かされて、壁を駆け上がる要領で2階の廊下に躍り出る。しかし相手はドローンだ。難なく着いてくる。
─────あった!
上がった廊下の少し先、その右側に位置する部屋のドアが開け放たれているのを見つけた。これだ。そう確信した俺はその部屋へと飛び込み、すぐさま扉を閉める。
外で扉に何かが当たる硬い音と、やいやいと騒ぐ声が聞こえるが、流石に扉を開けることは叶わないようだ。まさかとは思うが扉を爆破することもあるまい。一安心、と言ったところだろうか。
ふぅと1つ溜息をつき、冷静になって考える。そういえば、ここはなんの部屋だったのだろうかと。部屋の中は薄暗く、いくつかの棚とソファ、小さなテレビとその前に置かれたゲームハードが目につき、そして。
「ちょ、おぉ!?」
「だれ!?なに!?」
「ぁ……あ……わぁ……っ!?」
「─────あ」
部屋の中には、3人の女子がいた。金髪に色違いの猫耳型ヘッドセットを付けたやつらに、赤いボサボサの髪と三つ編みが特徴的なやつ。
赤色は腰を抜かして地面へと倒れ込み、顔を青ざめさせており、金髪(ピンク)は情けのない格好でテンパり、金髪(緑)はソファに立てかけてあったアサルトライフル─────スナイパーライフルか、を手にビビり散らかしていた。
そんな彼女達の姿に、俺はどうすることも出来ず、扉に背を向け、頭を下げて。
「その、悪い。しばらく匿ってくれ」
ひとまず、そう頼み込んだ。
△
「それが俺とユズ達とのファーストコンタクトだな」
「……な、なにそれ」
「あ、あの時は、本当に怖かったからね」
「ほんとだよぉ」
トキさんにネル先輩にリオ会長、そんな3人にゲームでぼろ負けしたモモイが這う這うの体でこちらにやってくる。見れば先程まで彼女のいた場所にはアリスが座っており、負けたから交代してこちらに来たのだろうことが言わずともわかった。
それと共に説教を終えてモモイの観戦をしていたユウカ先輩もやってきて。
「先生まで、なにか話してたの?」
「ユウカさんか。少し思い出をな。コーヒーはいるか?」
「あら、お願いするわね」
「ヘイマスター、私にも1杯!」
「自分で入れろ」
「ぶー!けちぃー」
意地悪を言われてぶー垂れるモモイにも、コーヒーを作ってあげるネライ。そんな2人を見て、ユウカ先輩が呟いた。
「それで、さっきの話しぶり的に、2人も最初はぎこちなかったのかしら」
「あー……」
「うん……」
「……あれ?」
思っていたものと違ったのか、気まずそうなネライとモモイの様子に首を傾げるユウカ先輩。
それもそうだろう。
誤字報告ありがとうございます。
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高評価めちゃくちゃ嬉しいです!まだの人、よかったらヨロシクね。
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