※ケイちゃん出ます(今更)。故にネタバレ?注意?
「今日から○○ケイです」
深夜、自室に響くチャイムの音に目が覚める。こんな時間に来客か、いったい誰だろうかと眠気まなこを擦り、作業机の上で整備を終えた状態の拳銃を手にとる。
ここはミレニアムでもかなり治安はいいほうである。が、やはりというかここはキヴォトス。これまでにもC&Cの件で逆恨みされれば、当然のように報復を仕掛けてくるやつがいる。ドアと玄関のリフォームは既に片手の数を超えていた。
再び響くチャイム音。しかし決してドアへは近ずかず、3度目のリフォームで添えつけたモニター越しに来客を確認する。もうドアごと吹き飛ばされるのは御免こうむる。
エンジニア部謹製のカメラは明かりのない夜間にもその性能を遺憾無く発揮しており、来客の姿をはっきりと映し出し、俺はその姿に一瞬目を疑った。
「は?」
─────ケイか。
固く目を瞑り、少し玄関から離れたかと思えばまた近づき、チャイムへと再び手を伸ばしたかと思えば、少しのところですっとひっこませ。そんな様子の、見覚えのない私服姿の彼女がそこにはいた。
何故ここに、そんな疑問を持つよりも早く、俺の身体は玄関へと向かう。ロックを解除し音を立てて扉を開ければ、天童ケイがたしかにそこに立っていて。
「ケイっ」
「ひゃぅっ」
さらにチャイムを押そうとしていたのか、ピンと伸ばされた指をわなわなと震わせ、身を竦ませた彼女は可愛らしい悲鳴を上げた。
キョトンとした顔でこちらのことを見上げて少し、彼女は両手を振り上げキレた。
「ビックリしたじゃないですかっ、突然ドアを開けないでください!」
「チャイム押したのはケイだろ」
「だからって、そこは優しく開けるのが紳士でしょう!あんなに勢いよくどーんって、どーんって!ビックリするに決まってるじゃないですか!」
「えー」
アリスと瓜二つの容姿だが、ケイの表情は少しやかましめであった。下手したら割と世間を舐めているところがあるアリスより、クールぶっていたクセに意外と感情的な彼女の顔はわかりやすい。
─────今も、照れ隠しの裏に険が隠れているのが見て取れる。
「それに貴方は……っ」
「そんなことより、どうしたんだ突然」
「……ど、どうしたって」
「ケイがひとりでうちに来ることなんてないだろ。アリスはどうした」
「……」
途端、ケイは大人しくなる。何も言わずに唇を窄め、俯いてしまった。
身長差と彼女の長い髪が顔を隠す。その表情を伺うことはできないが、何となく何かがあったことは察しがつく。いくら付き合いは短いといえど、ある程度女性の機敏に敏感でなければこの
「とりあえず、上がってくか。寒いだろ」
「……はい」
半袖の俺は鳥肌の立つ腕をさすり、ケイを家に招き入れる。彼女はひとつ返事をしたきり、ただ無言で俺の部屋へとあがった。
△
─────恐らく、話すのも恥ずかしい、そんなしょうもない事がキッカケです。
─────今日、ゲーム開発部の部室でゲームをしましたよね。貴方が持ち前の
─────なんですか。本当のことでしょう。
─────不貞腐れた貴方が先に帰ってしまい、自然と解散した私とアリスは帰宅し、いつものように家事をして、そして。
─────その、結構激しめの喧嘩を、してしまったのです。
─────珍しいこともあるな、ですか。そんなことはありません。既に私たちは“王女と従者”ではなく、“アリスとケイ”という友達になったのです。喧嘩だってしますよ。
─────しかし、アリスは友達だからといって、決してやってはいけないことをしてくれました。
─────アリスは私の大事なスイーツを、勝手に食べてしまったのです。
△
「─────何笑ってるんですか。ぶん殴りますよ」
痛むお腹と漏れ出る笑いを必死に抑える俺に、ケイの小さなゲンコツが炸裂した。
「もう、殴ってる……っ」
「うっとおしいんですよ。笑うならいっそ笑ってください」
「ふふっ、ははは─────いてぇ!?」
「笑いすぎっ」
「理不尽だろ……っ!」
しかし俺の声は無視される。かすかに眉をひそめながらもコーヒーを啜るケイ。そんな彼女は今、ガッツリと肩が、いや身体が密着するような位置でソファに座っていた。
見た目はそっくりそのままでも、体温はケイの方が少し高く感じる。一瞬不思議に思ったが、モモイとミドリでもミドリの方が
「だが、本当に驚いた。ケイとアリスでも喧嘩になるんだな」
「……どういう意味ですか」
「てっきり、ケイが遠慮して喧嘩になんて発展しないと思ってた」
「あぁ、そういう事ですか」
今でこそアリスと呼んでいるが、少し前まで“王女”と呼んでいたし、どうにもアリスにだけは丁寧な対応が残っていた。ここ最近になってようやく
これまでも部室で粗相をするアリスに対して厳しいケイであったが、基本的にケイが折れることで終わることが多い。それ故に今回ばかりはなにかのっぴきならない事情があるのかと不思議に思った。
もしかしたら大惨事になるのでは、そんな心配をする俺を他所に、顔を伏せたままケイが呟く。
「─────です」
「ん、なんて言った?」
「─────だからです」
グンとマグカップを煽りまだ熱を持つコーヒーを飲み干して、顔を真っ赤にするケイの顔が顔のすぐそこに迫ってきて。
「貴方がオススメしてくれたスイーツだったからです!」
「……はぁ?」
「そんなことで、とでも言いたげですね」
「いや、そんなことは、ない 」
「なんですか、覚えてないって言うんですか……っ!ほら、エンジェル24のクッキーサンド!しっとりビスケットとふんわりクリームのやつ!」
「エンジェル24のクッキーサンド」
言われて思い出す。エンジェル24のクッキーサンド、そういえば今日がそれの発売日だったことを。そして、発売日の翌日にケイやクラスメイトと感想会をしようと話していた事を。
「あぁ」
「今日の朝、早起きをして購入した後に帰宅してアリスの支度をした上で登校するというハードスケジュールをこなしたというのに!」
「……」
「ネライもですけれど、仲良くなれたクラスの子ともお話できると思っていたのに!」
「……」
「だと言うのに、だと言うのにアリスは!私のお風呂上がりにひとこと、あのデザート美味しかったです。また入手してきてください!なんて」
「喧嘩売ってるだろそれもう」
「えぇ喧嘩売ってます。もはや宣戦布告ですよ!それで、もちろん冷蔵庫にはないですし、焦ってあちこちのエンジェル24を巡っても人気すぎて全部売り切れ!」
「人気だもんな」
「─────それに……それに……」
「……ケイ?」
途端静かになったケイ。コーヒーを片手に聞き流そうとしていた俺が不思議に思って彼女の方を見ると─────。
─────ぼろぼろと、涙を零していた。
「ケイ……っ!?」
「それに……、なにより、貴方がオススメしてくれたそれを、どうしてか私は、とても大切にしたかったんです……っ!」
「……」
「恐らく私の好感度はアリスに依存する部分が大きいようです。……それも当然ですよね。あのキーホルダーとしても、貴方と共にあった訳ですから」
慣れていないのだろう、ぼろぼろとこぼれる涙を下手くそに拭うケイ。泣きじゃくる彼女を、おれは思わず抱きしめた。
「─────あっ」
たしかに最近、アリスはケイに甘えてかなりぐうたらしている。ただでさえ世界はゲームだと思っているふしがあり、割と舐めているのだ。少しお灸を据える意味も込めたことをしてみよう。
潤んだ瞳でこちらを見上げる彼女を見て、俺は腹に決めた。
「ケイ」
「……はい」
「俺の─────」
「俺の苗字を名乗らないか」
「─────はぁ!?」
△
なんてことのない登校日の朝、鷹目ネライと天童ケイ、小塗マキの所属するクラスは酷くザワついていた。
「……」
「ね、ねー。ネライ」
「……なんだ?」
「ほんとによかったのかなぁ」
「……さぁ?」
「さぁって……。でも、もうやっちゃったしなぁ」
「チヒロ先輩からは許可を得ているし、問題ないだろ」
「……いつのまに」
いつものように席につき、素知らぬ顔でスマホを弄る鷹目ネライ。そんな彼のその横の席でそわそわとしている小塗マキ。
そして─────。
「その、天童さん……?」
「いえ、今は
「鷹目、って」
「今の私は鷹目ケイです」
「……どういうこと?」
「どうもこうもありません。私は天童ケイ改め、鷹目ケイになりました。それだけの話です」
「全然話が見えない……っ!?」
「ちょっとネライくーんっ、君の嫁が説明してくれないんだけどー!詳細求むー!」
「よっ、よよよ、嫁じゃありませんが!?」
「……早計だったか?」
「だと思うけどなぁー」
複数人のクラスメイトに囲まれるも、堂々とした面持ちで自席に座る
そんな3人を取り巻くクラスメイトたちの姿を、教室の外から覗き込む人影がひとつ。
「え……」
廊下に擦りそうな黒髪と身の丈を超える大きな砲を携えた少女、天童アリスである。
至って冷静を装いながら、それでいてどこか幸せそうな空気を醸し出すケイを見て、そんな彼女に優しい笑みを向けるネライを見て、彼と目を合わせると顔を赤くして鼻を鳴らすケイを見て、じゃれつくマキをあしらうネライを見て。
ぐるぐるとまわる視界と完結することのないあまりの情報量に、見たことのない幸せそうなケイとそれを見て微笑むネライに、アリスの
「なんで─────」
声にならない声がこぼれる。わいわい、がやがやと騒がしい教室からの声に掻き消されたそれは、アリスの中にだけ木霊した。
ふと、僅かに正常に作動する電脳を活用して思い出す。ケイの時々浮かべるあの微かな微笑みは、発情期の雌猫のそれだというミドリの言葉だ。
─────ケイはもう堕ちている。
─────わりと発情気味な雌猫になってる。
当時のアリスはミドリが何を言っているのか理解していなかった。むしろ、わりと発情している雌猫はミドリなのでは?と返して悶えさせるまであった。
割かしアリスは舐めていた。アリスはネライのことが好きであり、ネライもまた自身のことを好いていてくれていると考えていた。そこにラブかライクかの見境が存在しているのかあやふやではあるが、はたから見たらラブのそれである。
一緒にゲームをした。一緒に勉強をした。登校も下校も、放課後デートだって楽しんだ。なんなら2人きりで旅行に行ったし、
だが今この瞬間、アリスは理解した。いや、
「アリスは、ネライをケイにNTRれた……っ!?」
なんということか、勇者パーティの重要メンバーの2人がくっついて、このまま離れていってしまうのではないか。アリスは酷く不安に襲われる。
昨夜、思い詰めた顔をした後に飛び出して行ったかと思えばこれである。きっと昨夜、何かあったに違いない。
おぼつかない足取りのまま、私はゲーム開発部の部室を目指す。まずは、仲間への情報共有が大切だとネライも言っていた。まずは、モモイとミドリとユズに情報共有を─────。
「─────まだ結婚していませんが!?」
「まだってなんだ、まだって」
「籍入れてないってことー?」
「そりゃ学生だしそうでしょ」
「そういう意味ではありません!ただ、私はネライと同じ苗字のを名乗っているだけで」
「それってそういうことじゃん〜」
「ケイは家族だ」
「貴方は余計なことを言わないでください!ぶっ飛ばしますよ!?」
「……私のことも、鷹目にしてくれないかなぁ」
「マキ、何か言ったか?」
「んーん。なんにもだよ。このとーへんぼく」
「まて、なんで罵倒されたっ」
─────ついでにマキのこともミドリに言おう。ぐちゃぐちゃになった思考の中で、アリスはそう心に決めた。
つぎにみたいのをさんこうまでに
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○○○TS編
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シャーレ当番編
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なんかとりあえずイチャイチャピンク