いつも誤字修正まじあざます。情けねす( ´•̥̥̥ω•̥̥̥`)
その日、ゲーム開発部の部室にネライとケイが現れることはなかった。
アリスの衝撃的なタレコミから半日、部室の空気はお通夜のようになっていた。ミドリは俯いたままピクリとも動かないし、アリスは光のない目でモモトークの画面を凝視してるし、ユズはビビってロッカーから出てこないし─────。
─────あーもう、めちゃくちゃだよ!
私はイマイチ身の入らないシナリオ作成を投げ出して頭を抱える。今作成している簡単な16ビットゲームの締切はもう間近だと言うのに、一向に進む気配がないではないか。
まず一人一人解決していこう。そう思ってミドリを見る。キャライラストを18bitに落とし込む作業をしているはずが、その手は少しも動いていないし、なんなら瞬きをしているかも怪しい。
「あー、っと。ミドリー?」
「……なに、お姉ちゃん」
あっ、反応した。なんなら瞬きもした。そんなことを思っていると、ミドリがこちらへと顔を向ける。のそりとあげられた顔には、青紫っぽいクマがびっしりとその存在を主張していて。
「えっ、何っ、何があったの!?」
「ううん。なんでもないよ」
「いやそれは無理があるって!」
乾いた笑いを浮かべるミドリ。しかし、そんなミドリのスマホが震えた。聞き馴染みのある、モモトークの通知音だ。
「っ、だれ?」
タブレットを投げ出して、凄まじい速さでズボンのポケットからスマホを取り出す。一瞬ひかりの灯った瞳は、しかし段々とまた色彩を欠いていって、そして。
「お姉ちゃん」
「……な、何?」
「週末の予定……」
「週末?」
週末、週末。─────そういえば、週末にネライの古着屋巡りにミドリが着いていくんだとご機嫌に話していたのを思い出す。
キヴォトスの男性向けの服というのは、もっぱらオートマタの
さらにいえばネライのセンス─────どこかミリタリーチックなの、に合うものしか着たがらないため、古着屋で“外”の世界から流れてくる服をよく探しているのだ。
それも半ば趣味のようになっているようにも感じ無くはないが、とにかくネライはよく古着屋に行くし、それに私たちが同行することも少なくは無かった。
「それで、その予定がどうしたの?」
「……」
「わかった!ほら、ケイも一緒に行くからー、とかで2人っきりじゃなくなったとか」
「─────キャンセルされた」
少しでも場を明るくしよう。その思いは易々とあのとーへんぼくに砕かれた。
「キャンセル?え、キャンセルって」
「─────ケイの相手がしたいから、って。また、今度行こう、って」
「─────」
「そうだよね。ネライだって、新しい女の子の方をかまいたくなったんだよね……。ははっ」
「あっ、ちょっとミドリ!」
虚ろな目のまま立ち上がり、ユズの入るロッカーの横、ネライが使用しているロッカーの中にミドリが引きこもる。こちらの声が聞こえていなさそうなことを考えると、既に手遅れのようだった。
今度はアリスの方を見てみる。まるで電球を消したかのように、アリスの瞳にはまったく光がともっていなかった。
─────なんか久しぶりにアンドロイドっぽいな、とは口が裂けても言えないが。
「あ、アリスー」
「─────」
「アリス?」
「─────」
「おーい、アリスー」
「─────」
─────ダメそうだ。もはやこちらを向きもしない。
先程ケイとモモトークをすると言ったっきり、ずっとあの状態なのである。流石にそろそろ心配になってきた。そそくさとアリスの後ろへ回り込み、彼女の手の中で微動だにせず固定されたスマホを見る。
「アリスー」
「……」
「み、見るよー。見るからねー」
一応声はかけたから。そう思っても少し気が引ける中、そっと画面を覗き込む。
開かれたモモトークの画面はケイのアカウントとのトークルーム。以前ネタで作ったゲーム開発部の
「えー、っと?」
すすっと指で昨夜のやり取りを確認する。どうやらアリスが勝手にケイのスイーツを食べてしまったことが事のきっかけのようだった。ケイからのしばらく帰らない発言に対してアリスの謝罪がいくつか送られている。
続いて今日。今何をしているのか、なぜケイがネライと同じ苗字になっているのか、帰ってきてくれないのか、そしてスイーツを食べてしまったことへの謝罪。
「なーんか、私とミドリみたいな喧嘩もするんだね。アリスとケイも」
「……」
「それもそうか、ケイって意外と子供っぽいもんねっ 」
「……」
「ねぇー、へへっ、へ……、はぁ……」
─────沈黙がキツイなぁ、もぅっ!
だがこれではっきりした。この1件のきっかけはアリスであったのだ。これできっかけが
そしてアリスがフリーズしている理由もわかった。ケイから送られてきている画像が原因だろう。
画像は拡大せずともわかる。二人がけ用の
ネライの方は寝ているようでケイに身体を預け、肩ズンならぬ頭ズン状態、それに対してケイは幸せそうにはにかみながら自撮りをしたようだ。その下には一言、今から共に仮眠を取るので連絡できません。
「うわぁ、こりゃクルよね」
「……」
─────しかし返事はない。ただの屍のようだ。
一縷の望みを込めてユズを見る、というかロッカーを見る。今のところ引きこもったっきり反応がない。ここのところロッカーの外にいることも多かったために少し珍しい。
「あーもう、どうすればいいのさぁ」
頭を抱えるが、状況は決して好転しない。しかし、段々と苛立ってきたわたしのスマホにモモトークの通知が届く。
何だろうか。そう思いスマホを見ると、送信主はまさかのネライで。
「えっ、なに!?」
慌ててモモトークの画面を開く。そこにはネライから一言メッセージが送信されていて。
『アリス、大丈夫そうか?情報求む』
「─────自分で、見に、来いやぁ!」
私は怒りのスタ連を繰り出した。。秒間16連射の妙技をとくと味わえぇ!
△
モモイからの通知をオフにし、スマホをソファに投げ捨てる。流石に秒間16連射には届かずとも、スタ連行為はうっとおしいことこの上ないのだ。
寝ぼけ眼を擦りつつ、ぼーっとする頭だったとはいえ、迂闊なことを送ってしまったと少しだけ後悔する。いっそのこと放って置いた方がよかっただろうか。
「ん、どうかしましたか……?」
俺の方に頭を乗せたままのケイが、半開きの目でこちらを見あげている。
「いや、なんでもない」
「……そうでしゅか……。ふぁ……ぅ……」
ぽっかりと口を開けて欠伸をし、身体をこちらに寄せるようにして再び目を瞑るケイ。寝起きは意外と弱いのか、きっちりとした彼女らしくない行動だ。
ケイの苗字が“天童”から“鷹目”に変わったが、無事に今日一日を乗り切ることができた。
─────いや、無事ではないか。
学籍の苗字変更を一晩でハッキングして仕上げてくれたマキは何があったのかをずっと聞いてくるし、同じクラスのコトリとヒビキも休み時間になる度にこちらへ来ては話しかけてきた。
噂を聞きつけたコユキはケイをからかいに教室へと現れるし、その捕獲に来たユウカさん─────普通にハッキングがバレたので事情は話してある、からはとてつもなく同情するような目を向けられた。
先生からもモモトークで連絡があり、1度こちらの様子を見に来ると言って聞かないし、ゲーム開発部のみんなからはまともな返信がないし。
─────いや、無事じゃないなこれ。
問題だらけである。肝心のアリスの様子も、モモイのあれではわからないし、ミドリも既読スルーされているし、ユズにいたっては未読のままだ。
「ふぅ……ん……」
「……ふっ」
以前トキが勝手に持ち込んだふたり用の
そんなケイの体温がこれまた気持ちよくて、再び微睡みに襲われて─────。
「─────いや、飯も風呂もまだじゃねぇか」
「ん……?」
慌ててがばりと身体を起こす。時刻は18:30、明日も学校であることを考えるとそろそろ起きて諸々をすませなければならない。
まず飯を作ろう。下校中にケイと買いに行った鶏肉と野菜で鶏ちゃんを作ることにしよう。“外”にいた頃に旅先の温泉街で食べて美味しかったものだが、意外なことにキヴォトスのネットレシピにも乗っているのだ。
しかもこのレシピを載せているのはゲヘナの生徒だと言うから驚きだ。あそこには
「ケイ、は、まぁいいか」
「……すぅ……」
起こさないようにシャツを掴むケイの手を剥がしてクッションから立ち上がる。
かるく頭をひとなでしてみる。アリスの時も思うのだが、本当に人間と遜色ない身体だなと感心する。そう考えると彼女
そこにふと、チャイムの音が響いた。
「ん、みんなか?」
ゲーム開発部のみんなでも来たのだろうか。そう思った俺は玄関へと向かう。
そして、確認もせず、不用心にも扉を開けてしまった。
△
「いざゆかん、いざゆかん!」
「歩くの早いよアリス〜」
足早に突き進むアリスと無言で歩き続けるミドリの後ろを、ユズとモモイは着いていく。恐らくアリスには関係ないのだろうが、彼女のあのペースはインドア派である3人にはキツイものがあった。特にユズは息も絶え絶えだ。
「ユズ、大丈夫?」
「……うん……なんとか……」
「アリス、ユズが死んじゃいそうだからペース落として〜」
「む、それは大変です。ではアリスが担ぎますね!」
「いや、それは……きゃっ」
「ミドリも、大丈夫そ?」
「─────」
「ダメそうだね」
ユズを担ぎあげるアリスに笑いつつ、倒れそうになっているミドリの手を引く。
「ネライのおうちはこの辺りなんですよね、モモイ」
「……そ、そうなの……?」
「多分そー」
アリスのその言葉にスマホの画面を凝視する私は頷く。実の所、ネライの住んでいるところというのはゲーム開発部の全員が詳しく知らないのだ。今もコユキから教えてもらった住所に向かっているだけである。
「で、でも、みんな知らなかったんだね」
「ネライはアリスにも教えてくれませんでした」
「私とミドリも知らなかったんだよねぇ。そーゆーとこ、微妙に冷たいよねぇ」
歩みは早いが、呑気に話しながら道を進む。部室の時に比べて遥かにマシになった雰囲気に肩の荷が降りる。
このままネライとケイとの話もスムーズに進めば─────。
─────その刹那、爆発音が響いた。
「わっ!」
「きゃぁぁぁ!」
「な、何事ですか!?」
「び、びっくりしたぁ!?」
慌てて辺りを見渡す。ここは住宅区、しかもミレニアムでも割かし平和な辺りになるはずだ。そんな場所での突然の爆発音の衝撃は凄まじかった。
「っな、なにっ!?」
「っ!あの方向です!」
「あっちか!」
轟音で正気に戻ったミドリがキョロキョロとしている中、立ち上る煙をいち早く見つけたアリスが北に向かって指をさす。そこで私はあることに気がついた。
あの方向、あの距離、それはまさにナビアプリの指すネライのマンションの方向であり、ナビアプリの“緊急テロ速報”で警戒区域に指定されたのもまた、ネライのマンションの辺りで。
「みんな、あれネライの住んでるマンションのとこだ!」
「えぇっ!?」
「そんな!」
「い、行こ!」
「うん……っ」
「行きましょう!」
私たちは走り出した。アリスはユズを抱えたまま、私とミドリはいざと言う時のために銃を持って突き進む。
ナビアプリの緊急アラートがうっとおしい。先程より小さな爆発音が2度3度と響き渡る。動揺する住民の声も聞こえてくる。そんな住宅区の中を全力で走った。
─────そしてついに。
「えっ……」
「うそ……」
「そんな!」
「こんな、ことって……」
ナビアプリが指すマンションは、炎に包まれていた。そしてネライの住んでいる部屋、305号室という3階の角部屋は、いちばん被害が大きく見えるくらい、あとかたもなく爆破されている。
「ネライ!ケイ!」
「……っ!だ、ダメだよアリスちゃん……!」
「でも、ふたりが、ふたりはまだ部屋にいるはずです!」
「なんで、そんな」
「さっき、写真を見ました!ケイとネライは、クッションで寝ていました!だからまだ……まだっ!」
「ダメだってばアリスちゃん!」
既にマンションの外には多くの人が集まっており、さらに続々と建物から避難してくる人が現れる。だがそのどこを見ても、ネライとケイの姿は見えなくて。
─────まさか、ほんとに中に……?
「うそ、だよね……?」
「お姉ちゃん……」
「いや、だってネライだよ?ケイだって、2人とも強いし、絶対なんてことも─────」
私の声を遮るように、ネライの部屋は再び爆発した。そして、ひらひらと風に乗って
血に濡れた、グレーのブレザー。そして、黒いリボン。それは間違いなく、ネライのブレザーに、ケイのリボンで。
それを拾った私たちは、消防車のサイレンを背景に、ただただ消火を待つことしかできなかった。
お気に入りとか感想とか高評価とかしてくれるととっても嬉しいのよ。
モチベ上がるからちょーだい(欲しがり)
つぎにみたいのをさんこうまでに
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○○○TS編
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ゲヘナ編(ゲヘナピンク無関係)
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しないと出られない部屋再来編
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シャーレ当番編
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NLP編
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なんかとりあえずイチャイチャピンク