ミレニアム・ピンクアーカイブ   作:ウサギの化身

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久しぶりにピンク。


“Who are you”

 

 

「や、め、やめっ。このっ」

「ん……っ!ん……っ!」

「くっ……ふふっ」

「くっ、そっ」

「抗うべきじゃない……っ!受け入れる、べきっ」

「はなせっ、このぉっ」

「ぶっ、ふふっ、ふっ─────」

 

あっと口を開けるムツキの笑い声が木霊する廊下。私たちは見てしまった。

 

顔を真っ赤にした便利屋の面々、同じく顔を真っ赤にしたアヤネちゃん。そして、その円の中心にいるふたりを。

 

─────四つん這いになった男の子に後ろから張り付き、激しく腰をうちつけるシロコちゃんを。

 

「んっ……!ん……っ!」

「─────これじゃR-18だよっ!?」

「ホシノ先輩、そういう事じゃないから!」

「うへぇ……」

 

顔を真っ赤にするセリカちゃんがシャーっと吠えた。すると今度はノノミちゃんがぽんと手を打って。

 

「─────見事な後背位(バック)ですね、シロコちゃん!」

「何を言ってるの!?」

「ノノミちゃん、普通男女逆じゃない?」

「そうですけど、私はこういうの(・・・・・)もありだと思ってますよ♤」

「だから何を言ってるのよ!?」

「だってほら、後ろから抱きついて優しく責めてあげるのも……」

「言わないで!聞きたくないからそんな話!」

 

今度は頭を抱えるセリカちゃんにノノミちゃんは朗らかに微笑みかけた。嫌に生々しい事を暴露したにしては綺麗すぎる笑顔だ。さぶいぼでも立ったのか二の腕を摩るセリカちゃんに、どちらかといえば私も聞きたくはなかったかもしれない。

 

「あっ、おはようございます。それと助けて……」

「おはようアヤネちゃん。もう、起こした時に来ないからこんなことになるんだからね」

「うぅ……。そ、それはともかくセリカちゃん、シロコ先輩を……」

「……そうね」

 

そう言ってシロコちゃんたちの方に駆け寄るセリカちゃん。それに気がついたらシロコちゃんはんっと顔を上げてにこりと笑い、静かにおはようと呟くと。

 

「シロコ先輩、おはようございます」

「おはよう、セリカ」

「その、今、なにを?」

「─────今、理解らせてるからちょっと待っててね」

「は……?」

 

経緯を説明する為か腰の動きを随分とスローペースにしたシロコちゃん。首を傾げるセリカちゃんを視界に収めると。

 

「さっき、この無駄にデカいだけのネライは私に向かってチビシロコと言った」

「チビとは一言も」

「ん、口答えは無用っ」

「……あんっ!」

「ちょ、シロコ先輩」

 

激しいスパンキングが彼の右のおしりを襲う。ばしんという重たい音が響いた。

 

「……うん、確かに身体つきはいい。筋肉は凄い」

「─────あんっ」

「すごい腹筋してる」

「服の中に手を入れるなっ。腹筋を撫で回すなっ」

「硬いしすごいでこぼこ……。それに。ほら、おっぱいもセリカより確実にある」

「くっ」

「はぁ!?だ、大胸筋っていうんでしょそれ!?おっぱいとは違うってのは流石に私でも知ってるんだからね!?!」

「……ん、なんか全体的に硬くて、妙な弾力がある。あっこれ、乳首かな。ぎゅー」

「んっ、そんな、乱暴にっ」

「別に私だってそんなに小さい訳じゃないし……。って、さっきから男子は変な声あげるな!」

「すまん……っ」

 

嬌声をあげる男の子に思わず眉を顰める。大丈夫なのだろうか彼は。

 

ついに鼻血を垂らし始めたアヤネちゃん。なおも彼の背中にへばりついて執拗に彼の胸を揉んでは撫でるを繰り返し、やがてツンと真剣な顔になると。

 

「でも、多分強いよね。ホシノ先輩といい勝負できたりする?」

「……へぇ」

「……そのお身体なら納得ですね♣︎」

「シロコちゃんが言うなら、ちょーっとおじさんも気になって来ちゃうなぁ」

「よかったら今度、一緒にトレーニングしませんか?」

「くっ、敵が増える……っ」

「ん、ふたりとも、この子はネライだよ。それで、あっちはホシノ先輩とノノミ。ネライの先輩だからね」

「─────ホシノ?」

 

シロコちゃんの紹介に、彼はキリリと表情を整える。四つん這いのままというのも最高にカッコがつかないが、それでも彼はこちらを見上げ。

 

「ミレニアムサイエンススクールの1年。鷹目ネライです」

 

シロコちゃんの手によってグッと短い髪を引っ張りあげ、仰け反った彼はそう名乗った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、危うく*キヴォトススラング*されるところだった」

「ほぼほぼアウトだってきみぃ」

「完全な*キヴォトススラング*の体制だったわよ。変なもの見せないで欲しいんだけど」

「初対面の印象としては最悪でしたね♣︎」

「は、激しかったですね……」

「アヤネちゃんも見入ってないで止めてよね」

「せ、セリカちゃん!」

 

気まずそうに帰っていく便利屋を見送った後、俺は彼女達の案内で部室へと通されることとなった。

 

砂が積もるも換気のためか開けられた廊下は、やはり懐かしい景色。彼女たちに着いて歩くが、既視感と違和感にサブイボが立つ。しかし通された部室には砂ひとつなく、生活感はあるものの小綺麗に整頓されている印象を受ける。

 

「それじゃ、そこ座ってねぇ」

「はい」

 

─────“アビドス廃校対策委員会”。名前の通り、少人数且つ膨大な借金を抱えて喘ぐアビドス高等学校を盛り上げるべくして立ち上げられた委員会であり、現時点で生徒会(・・・)としての権限と立ち位置を確保しているそうだ。

 

部屋の中、ノノミさんによって両手を後ろに拘束されたシロコさん以外が席につき、俺もまた着席を促される。机も椅子もやはり至って普通のもの。ミレニアムの先進的なそれよりも俺はこっちの方が好きだ。

 

「じゃあまず、年齢を教えてくれるかな」

「……?」

 

腕を組み、ニヤニヤと笑う桃髪の女子。シロコさんの紹介から彼女がホシノさんなのだろう。ユメさんから聞いていた印象とはかなり違うが、髪の長さ以外の外見は一致している。

 

「16歳です」

「16歳、今は2年生?」

「1年です」

「1年生。あっ、大人びてるねぇ。え、身長と体重はどのくらいあるの?」

「身長が186cmで」

「うんうん」

「体重が92kgです」

「92kg!?そ、そっか……。今なんかやってんの?スポーツとか、賞金稼ぎ……。すごいガッシリしてるよね」

「特にはやってないんですけど。トレーニングと、あと予備戦力としては登録をし、されています」

 

─────なんの質問だろうか。

 

顔を見合せて首を傾げるセリカさんとアヤネさん。どこからか取り出した荒縄でシロコさんの手首を縛り上げる笑顔のノノミさん。カオス極まる部室で、なおもホシノさんは続けた。

 

「彼女とかいるのかなぁ」

「今はいません」

「今は、つまり前まではいたの?」

「去年、ですね」

「去年、ふーん」

「はい……」

「じゃあ、オナニーとかってのは」

「……やりま─────」

「─────いや、なんのやり取りよ!?」

 

勢いよく机を叩いてセリカさんが吠えた。それに関しては俺が聞きたいくらいなのだが。

 

「ま、セリカちゃんも怒るし、戯れるのも程々にしよっか」

「訳わかんない事聞いてるからじゃない!」

「うへぇ……。じゃあ気を取り直して、一応もっかい聞いてもいいかな。君は、どこの、だれだって?」

「ミレニアムサイエンススクールの1年生、ゲーム開発部の鷹目ネライです」

「ミレニアムの1年生かぁ」

 

─────これは。

 

瞬間、ホシノさんの目の色が変わった。声色も一段と低いものになる。先程までのぼんやりとしたそれとは違う、こちらを物とも思っていないような、そんな目だ。

 

「ミレニアムの生徒っていうのはホントかな。アヤネちゃん、先生から連絡きた?」

「はい。先程、先生からホシノ先輩に会いたい子がいる、というふうに。情報からして彼のことで間違いありません。学生情報も、はい。添えられてますね」

「じゃあ、便利屋は何のために?」

「それは私も聞いた。ネライはホシノ先輩に用があるって。便利屋は先生とミレニアムの生徒会につけられた護衛だって」

「ミレニアムでアビドスに関する情報は調べました。ただ誰も土地勘のあるものがいない上、砂漠にはわからないこともおおいので。」

「それで便利屋68と一緒に、と。なるほどねぇ」

「ホシノ先輩、先生からの裏付けもありますし、そこまで警戒しなくても……」

「ん、ネライは悪い子じゃないよ。理解らせたから」

「乳首はもう、やめてくれ」

 

タブレットを抱き寄せるアヤネさんと、簀巻きにされて地べたに転がるシロコさんが口を揃える。するとホシノさんの声色が少し和らぎ。

 

「……ま、先生から連絡来てるのならそこまで警戒しなくてもいいのかな」

「助かります」

「うんうん、素直な子でおじさん関心しちゃうよ。ま、便利屋とどうやって知り合ったのかは気になるけどね」

「普通に先生の紹介とかじゃないの?」

「いや、少し前に襲撃されて」

「襲撃」

「裸にひん剥かれて」

「……はぁ?」

「それからの付き合いだな」

「わかった。あんたも常識人ぶってるけど実は頭おかしいタイプでしょ」

「失礼な」

 

困惑するセリカさんを他所に、だらんと肩の力を抜いてうへへと笑うホシノさん。だが、それよりもとつぶやき。

 

「シロコちゃん、突然どうしちゃったのさ」

「……ん」

「そうですよ。突然男の人に襲いかかるなんて、いつからそんな大胆な子に……?」

「ノノミ先輩、やっぱり反応がおかしいからねそれ」

「……でも、どうして突然」

「ほら、アヤネちゃん鼻血拭いて」

 

全員からの視線を受け、簀巻きになったシロコさんはただ何も言わず、ゴロゴロと床を転がり始める。対策委員会の様子から察するに、今回の異常とも言うべき行動は初めてのことなのだろうか。

 

しばらくの沈黙。ごろごろと転がるシロコさんの音。すきま風。耐えかけねたのか、セリカさんが蚊の鳴くような声で。

 

「あー、多分シロコ先輩もなんでかわかってないのかな」

「……ん、セリカ」

「だってほら、ホシノ先輩もノノミ先輩も、そういうこと(・・・・・・)教えてあげたことある?」

 

頬を赤らめるセリカさんにふたりは顔を見合せ首をかしげ。

 

「流石にS○Xのことは教えてるよ?」

「はい、コウノトリじゃなくてしっかり男女のあれこれを……」

「そ、そういうのじゃなくてさ!」

「……なら、さっき言ってた発情期について?」

「あれって本当なんですか?セリカちゃんのそういうところ、見たことないけど……」

「み、見せないように薬飲んで抑えてんの!」

 

恥ずかしいじゃない!と叫ぶセリカさん。そう言われると、俺の身近にいるヒビキ。彼女のそういうところは見たことがない。やはり恥ずかしいものなのだろうか。

 

「ん、これが、発情期……?でもムラムラする時はオ○りまくってしっかり発散してるよ。お風呂場でしないと大変なことになるけど」

「シロコちゃん?」

「あのころは、うん。後が大変でしたよねぇ」

「……うん、廊下で進水式(浸水式)やってたもんね……」

「聞かなかったことにするわね。でもシロコ先輩初めての発情期って訳じゃないんだ。うーん、なら本能的なマウンティングなのかなとも思ってたり」

「何かきっかけがあるんですかね」

「ん、心当たりがある」

 

シロコさんの動きが止まり、穏やかな顔で天井を見つめた。

 

「さっき、ネライに抑えられた時。お腹、なんか変なとこがきゅってしたんだけど」

「あぁー」

「そしたら、凄くムカムカして、気がついたらやってた。でもオ○るときとムラムラじゃなくて、なんだろ。私が上だって理解らせたかったというか」

「……ん?」

「でも腹筋とおっぱい触った時はなんかこう、新しい扉が開けたというか─────」

「─────うん、この話やめよっか」

 

今度改めて話直そっか。そっと目を伏せたセリカさんはそうこぼして静かに着席する。

 

「それで、ネライくん」

「はい」

「私に用があるんだよね。その前にいくつか聞いてもいいかな」

 

部室が静まったタイミング、再び真剣な眼差しが突き刺さる。

 

「ネライくんさ、香水使ってる?」

「え……、はい」

「そっか」

 

悟った顔で動かないセリカさんの肩を揺り動かすアヤネさん。その横を、席から立ち上がったホシノさんが歩いてくる。その手にショットガンを携えて。

 

隣まで来た彼女の圧に、思わず椅子を蹴飛ばす勢いで立ち上がる。

 

「……うん、やっぱりだ。この匂い、間違いない」

「ホシノ先輩っ」

「ノノミちゃんはちょっと黙ってて。ねぇ、ネライくん。ネライくんは、こんな女の人知ってる?長い浅葱色の髪で身長が高くて、すっごくスタイルのいい人」

 

至って自然体なホシノさんの、不安に揺れる2色の瞳を見つめ返す。

 

「……少しバカっぽくて、抜けてて、どうしようもなくドジで」

「無邪気で無鉄砲で、でも底抜けた明るさにこっちまで絆されちゃう」

「とことんお人好しで、人を疑うことを知らなさそうで。だからこそ、守ってやりたくなる」

「あの人の笑顔には、いっつもこっちが折れちゃうんだよね」

「……男の俺がいるのに、無自覚にエロいのは勘弁して欲しかったがな」

「うへ、やっぱりそうなんだ」

「あぁ……」

 

ホシノさんがへにゃりと笑う。つられて俺も頬を釣り上げ。

 

「ユメさんのことだな」

「やっぱりネライくんは、ユメ先輩を、知ってるんだね」

「あぁ」

 

 

 

 

 

─────ユメさんは、俺の家族なんだ。

 

 

 

 





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