ミレニアム・ピンクアーカイブ   作:オサシミの化身

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“存在しない記憶”

 

 

 

「─────う、あ……?」

 

その瞬間、突如としてホシノの脳内に溢れだした存在しない記憶(・・・・・・・)

 

『ネライくん!』

『姉ちゃん』

『はい、行ってらっしゃいのハグ!』

『…………はいはい』

『それで、どこ行くの?』

『デート。クラスの子に誘われたから』

『でっ……。お、お姉ちゃんもついて行きます!』

『はぁ?』

 

それは、姉であるユメ先輩とネライくんの仲睦まじい姿。ブラコンで執拗に彼に接触するユメ先輩に、うっとおしがりながらも受け入れるネライくんの姿。

 

『いたた……』

『何やってんだ』

『あっ、えっと、その……』

『……はぁ、無茶すんなって。力仕事なら、最初から俺呼べっての』

『でも、ネライくんに迷惑かけちゃうと思って……』

『……気にすんなよ。俺ら姉弟なんだから』

『ネライくん……っ!』

『抱きつくな暑苦しい!』

 

人助けを受け入れるもどうにもならず、影からその様子を伺っていたネライくんが颯爽と現れて解決してしまう。しかし照れくさそうに頭を搔く彼に、思わずと言った様子で飛びつくユメ先輩の姿。

 

『あれ、姉ちゃんどこ行くんだ。珍しくおめかしなんてして』

『……そのぉ、ちょっと合コンにぃ』

『……はぁ?』

『あっ、ちがうの!私はただの数合わせのためで』

『姉ちゃんが行ったら無双しちまうだけだろ。ちょっと待ってろ』

『心配してくれるんだ〜、って、なんで脱いでるの!?』

『着替えんだよ。俺も行く。姉ちゃんだけじゃ危ねぇから』

『それだとネライくんのほうが無双しちゃうってぇ!』

 

ユメ先輩を狙った男子たちの野望を打ち砕いたのも彼だった。あわよくばユメ先輩か、参加した女の子と仲良くなりたい男子だったが、彼がナイトとして近づけさせなかった挙句、参加した女の子の話題も彼で持ち切りにされてしまったらしい

 

『ホシノちゃん、紹介するね。弟のネライくん!』

『ネライです。いつも姉ちゃんが世話になってます』

『……どうも』

『こっちはホシノちゃん!……すごい子なんだよ!』

『語彙力どこやったんだよ』

 

彼との初対面の日、初対面ながらにお互いのことを知っている私たちはぎこちないながらも、ユメ先輩の話題で打ち解けることができた。あの日食べたカフェのパフェは彼のチョイスだったか。とても美味しかった。

 

そう思えば、あの頃のネライくんは今ほど大きくなくて、ユメ先輩より少し前小さいくらいだったか。男の子の成長率が羨ましいよ……。

 

 

『ネライくん、ハッピーバースデー!』

『……何やっての』

『何ってほら、日付またいだ瞬間にお祝いしようと思って』

『……まだ日跨いでねぇんだけど』

『─────あれぇ?でも、リビングの時計は……』

『壊れてるぞあれ』

『は、早く言ってよ!』

『忘れてた』

 

呆れたようなネライくんのボヤキ。ユメ先輩のドジさが目立つお話だった。ゲームを終えて眠りに入った途端に叩き起されたんだと随分怒っていたんだ。だがそれでもプレゼントのメモ帳(みんなのバナナ鳥)を見る彼の目は本当に優しいものだった。

 

『あーあ、ホシノちゃんが妹だったらなぁ』

『……何を言い出すんですか突然。なりませんし、なれませんよ』

『いや、そんなことないよ!』

『はい?』

『もしホシノちゃんとネライくんが結婚したら、ホシノちゃんは私の妹になるよね!?』

『……はぁ!?』

『ホシノちゃんなら、任せられるかな。……ネライくんのこと、よろしくねっ。……スピーチ、考えとくから。ぐすん』

『訳わかんないこと言った上に妄想で泣くのやめて貰えますか!?』

 

そうだ、あのユメ先輩の言葉のせいで、私は彼のことをどうしても意識してしまって大変だったのだ。身近にいる彼がいわゆるスパダリなせいもあって、一時は目も合わせられなかった。

 

『うわぁ、くじら、本物のくじらですよ!?』

『おっきぃ……』

『デケェな……』

『……ふたりとも、反応そっくりですね』

『ん、そうかな?』

『心外だな』

『心外ってなにさぁ!』

『それより、俺はホシノの変わりようの方が気になるな。くじら、そんなに好きなのか』

『……うん、まぁ』

『なんか、かわいいな』

『─────っ!?』

『でしょ!ホシノちゃんってすっごく可愛くて─────。……なんか、顔真っ赤になってる!?』

『み、見るなっ!』

 

3人で水族館に行ったんだ。電車とバスを乗り継いで、3人で駅弁を買ったのにユメ先輩が全部こぼしちゃって、結局ふたつの駅弁を3人でつついて。やっとのことでとっても大きなジンベイザメのいる水族館に。

 

『ホシノ先輩☆』

『ん、ホシノ先輩』

『……ん、先輩だ』

『やっと起きたの、ホシノ先輩』

『お疲れ様です、ホシノ先輩』

『ホシノちゃん!』

『ホシノさん』

 

ノノミちゃんがいて、シロコちゃんがいて、おっきいシロコちゃんもいて。セリカちゃんとアヤネちゃんがいて。そして卒業(・・)していったユメ先輩とネライくんがいて。

 

─────それが、アビドス高校なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございまーす」

「おはよー」

「おはようございます」

 

1年生の3人組は、とても仲が良い。新聞配達のバイトを終えたセリカちゃんがネライくんとユメ先輩の家に向かい、それからふたりで寝坊助さんなアヤネちゃんの家に迎えに行くんだとか。

 

毎朝仲良く登校してくる3人の姿は私たちにとって微笑ましいものだった。ネライくんとセリカちゃんの気風もあって、男女のそれより異性の友達という関係に落ち着いている。

 

「あー、涼しー」

「もう、セリカちゃん」

「いーじゃんべつに」

「おい、はしたないだろ」

 

カバンをおいて定位置の席に腰掛けると、下敷きでスカートの中を仰ぎ始めるセリカちゃん。その様子に眉を顰めるアヤネちゃんだが、それより先に隣に腰掛けたネライくんが思わずと言った様子で注意する。

 

「なに、気になっちゃう?」

「……知らん」

「照れてるじゃん。なに、今更?」

「うるさいぞ」

「あー、ネライってば私のことそういう目で見ちゃうんだぁ。えっちだなぁ」

「うるさいっ」

 

呆れた様子で目を伏せるネライくんに、ここぞとばかりにセリカちゃんがニヤリと笑いかける。そこに給湯室からお茶を手に現れたノノミちゃんが朗らかに笑い。

 

「もう、あんまりネライくんをからかっちゃダメですよ」

「はーい」

「…………むぅ」

「はい、お茶をどーぞ」

「いただきまーす!」

「ありがとうございます」

「……あざす」

 

ずずずとさんにんのお茶を啜る音。最初にコップを置いたネライくんが笑った。

 

「そっちだってジロジロと人の事見てるくせに」

「……はぁ!?」

「誤魔化せてないぞ」

「み、見てないし!ってか、見てるのアヤネちゃんだから!」

「─────なんで私に飛び火したの今!?」

 

顔を真っ赤にしてセリカちゃんに掴みかかるアヤネちゃん。そんなふたりに首をかしげているネライくんに、今度はノノミちゃんが。

 

「でも、本当に逞しくなりましたよね、ネライくん」

「鍛えたのはあんたでしょうに」

「それはそうですけど、こんなに大きくなるとは思わなかったのです☆」

「俺も、ここまでムキムキになるとは思わなかったよ」

 

体重でいえば私の倍近くあるネライくんは、その高身長よりムキムキの身体がそのほとんどを占めている。入学する前の頃はそこまでだったのに、ノノミちゃんと出会って一緒にトレーニングをするようになってからあっという間に大きくなっていった。

 

「いやぁ、若者の成長期って凄いよねぇ」

「また始まった……」

「もう、なんなんですかそのキャラ」

「ユメ先輩がいなくなって年長者になっちったからねぇ。もうおじさんだよ〜」

「こんなにかわいいおじさんがいてたまるか」

「ホントですよ」

 

ねーと顔を合わせるふたり。ようやくアヤネちゃんが落ち着きを取り戻し始めたタイミングでがらりと扉が空いた。

 

「ん、おはよう」

「おはようございます、シロコ先輩」

「おっ、はよ」

「おはよ〜」

「おはようございます☆」

「おはようございます」

「……なんでセリカは締めあげられてるの?」

「色々あったんです」

「……そ」

 

ハンドタオルを手にしたシロコちゃんだ。上気した頬に少し濡れた髪を見るに、今日も登校がてらサイクリングしてきたのだろう。

 

手にしていたタオルを首にかけ、ガンスタンドに銃をあずけるシロコちゃん。するとすんと鼻を鳴らしてネライくんの方へと振り向き。

 

「ん、ネライ」

「なんですか」

「汗かいたからお姉ちゃんの背中を拭いて」

「また狂ったことを」

 

─────出た、シロコちゃんのお姉ちゃん節。

 

シロコちゃんはどうにもネライくんのことを()として扱いたがる。なぜとかどうしてとか、そういった疑問は全て本能という言葉に負けるのだろう。

 

だが悲しいかな、ネライくんの発言権はシロコちゃんの足元にも及ばない。手首を引っ掴まれたネライくんはそのままシロコちゃんと共に廊下へと消えていった。

 

「……シロコちゃん、朝から元気だなぁ」

「元気というか、なんというか……」

「……うちに風紀委員会あったら1発アウトですよ」

「去年まで一緒にお風呂入ってたし、まぁいいんじゃない?」

「よくないでしょ」

「あはは……」

 

ノノミちゃんの苦笑。でもまぁ、これもまたアビドスの日常だと思えば私はとても微笑ましく感じた。

 

「それじゃ、ふたりが戻ってきたら今日の活動を始めよっか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────私たち、“家族”だったんだね……」

「は─────?」

 

ぽんと手を打つホシノさんの姿に思わず惚ける。俺だけではない。シロコさんもノノミさんも、セリカさんもアヤネさんも、それぞれが目を見開いて固まっていた。

 

─────突然黙ったと思ったら。

 

ユメ先輩と俺が家族、そう聞いた矢先にガクりと首を落としたホシノさん。何をどうしたのか30秒を無言で過ごした彼女は、ついに顔をあげると。

 

─────なんで、泣きながら笑っているんだ。

 

「どうしたのネライくん。そんな顔してぇ」

「え、いや……」

「うへ、おじさんなんか変なこと言ったかなぁ」

「…………」

「あっ、せっかくだしおっきいシロコちゃんも呼ぼうよ。この前柴関であった時に連絡先交換したんだよねぇ。どれだっけなぁ」

「……ん?おっきいシロコさんとちっさいシロコさんがいるみたいな言い方─────」

「─────ん、小さくない!あれはデブなだけ!」

 

スマホを操作し始めるホシノさんに首を傾げていると、なにかの裂ける音。なんだと振り返る刹那、腰へ凄まじい衝撃が走った。確認せずとも分かる。シロコさんを縛っていた荒縄が張り裂けたのだ。

 

「何!?」

「し、シロコちゃん!?」

「やっぱりまだ理解ってない!」

「一体何を─────やめろぉ!?」

 

力では俺が勝てる。だが、呆気にとられたタイミングでの強襲はやはり効く。なんとか膝はつかずに堪えるが、それでも尚シロコさんは俺の背中に顔を埋め、へこへこと腰を動かし続ける。

 

「ネライくんが言った俺たちは家族だって言葉、今でも忘れないよ─────」

「ホシノ先輩はどうしちゃったの!?」

「あれ、セリカちゃん今日はネライくんの隣に座ってないんだね」

「今日()って何!?初対面じゃないの!」

「何言ってるのさぁ。今日も3人で一緒に登校してきてたじゃん」

「はぁ……っ!?」

 

ぼんやりと天井を眺めるホシノさんの肩をセリカさんが激しく揺する。

 

慌てるノノミさん。絶叫するアヤネさん。カオス極まる部室の中、シロコさんの猛攻に耐えかねたズボンとベルトがずるりと落ちた。

 

 

 

 





感想とか評価いつもありがとうございます!でももっとちょうだい♡

あと1話で行きたいかも。

……キャパオーバーしてぶっ壊れたホシノ先輩、こんなんで大丈夫か……?

つぎにみたいのをさんこうまでに

  • ○○○TS編
  • ゲヘナ編(ゲヘナピンク無関係)
  • しないと出られない部屋再来編
  • シャーレ当番編
  • NLP編
  • なんかとりあえずイチャイチャピンク
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