ミレニアム・ピンクアーカイブ   作:ウサギの化身

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最近仕事の関係でガチ疲れ気味。ハードワークすぎるのよね……。


ミレニアムのピンクな日常②
ハメてハメられ


 

 

 

 

─────その日、モモイのクラスの平和な日常は大きく揺れることとなった。

 

きっかけはほんの些細なこと。モモイが休み時間に友達へとはなったとある一言。

 

授業中に鼻ちょうちんを作って爆睡をかまし、常に大きな欠伸をするモモイ。そんな彼女の友達たちは、昨夜も遅がけまでゲームで遊んでいたのか、それとも珍しく開発でもしていたのかといつも通りに笑いかけ。

 

「あー、うん。ちょっと熱くなっちゃって。ネライとどっちが上か決めるぞってマウント合戦してた」

「鷹目くんと?」

「そ」

「子供じゃん」

「まだまだ子供だよーだ」

 

あんなんでもガキなんだからさぁ。仕方ないと言わんばかりに肩をすくめるモモイに、それを聞いていたどの口が言うのだろうかと首を傾げる。

 

普段の絡みを見ている限り、互いに勝ち越しを認めないふたりが“もう1回”を繰り返しただけなのではないか。そんなことすら考えられる。

 

そんな光景を想像して、あるものは微笑ましく思い、あるものはそんな関係を羨ましがり、またあるものは思わぬネライのギャップに胸を射抜かれた。

 

「けど、ほんとネライにも困ったもんだよね」

 

しかし、そんな周囲とは違いモモイは腕を組んで天井を見上げる。

 

「なにが?」

「だってネライが朝までハメてきた(・・・・・・・・)からさぁ」

「へぇー」

「ハメられてたのかぁ」

 

モモイのその一言に友達たちは体を固まらせ、近くで聞き耳を立てていたメガネの女子が声を漏らす。

 

「……いま、はめ、は、はめ、はめって」

「ハメられて、って。確かに言ったよね……」

「え、どういうこと。……え、そういうこと?」

 

ザワつく声はどんどんと伝播していく。それでもモモイはそんなことも意に返さずにけろりと笑い。

 

「私も頑張ってハメ返したんだけどさぁ」

「モモイからも!?」

「やっぱ体格差ってずっこいわ。小細工しても全然通用しなくて」

「やっぱり、そうなんだ……」

「ダメだって言ってもやめてって言っても無理やりしてくるし」

「無理やり!?」

「い、いやじゃないの……?」

「え?そりゃ嫌だけど、私も無理やりなときあるし文句言えないよ」

「そ、そうなんだ……」

「結局疲れて寝ちゃうまで、ずっとヤられっぱなしだったんだよっ」

「寝ちゃうまで!?」

「それ、気絶してってこと!?」

「あー、確かに気絶かも、あれ」

 

ざわざわと教室に喧騒が広がっていく。ざわめきの中で何人かが膝から崩れ落ちて真っ白になったミドリを保健室へ搬送する中、なおもモモイは止まらない。

 

「あとネライって上手いからさ、前も後ろも器用に攻めてくるんだよね」

「……上手いんだ……。って、う、う、う、うしろ!?」

「どんなとこでも確実に攻めてくるよ」

「責めて、くるんだ……。しゅごい……」

 

顔を真っ赤にしたメガネの女子が失礼と言ってトイレへ駆け出した。それを見ておしっこ限界だったのかなとモモイが笑う。

 

「あとさ、乱暴なんだけどいいとこに当ててくるからすぐ(・・)なんだよね〜」

「乱暴。……あの、おっきい指で……」

「優しいのかと思ってたとに意外だな……」

「あれ、前まで怖いって言ってなかったっけ」

「……流石に何度か鷹目のこと見てりゃ、優しいやつだって気づくだろ」

「ビビってたくせにぃ〜」

「ビビっちゃねぇよ!」

「でも、乱暴でちょっと強引なプレイはあるけど、基本的には優しいんだよ」

「……そう、なのか」

 

私は優しい方が好きだな。ガタイのいい彼女は勝気に見えるツリ目をそっと伏せて頬を赤らめる。

 

それからも続くモモイの言葉に更なる盛り上がりをみせる教室。休み時間を終えてもなお、落ち着きを見せることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、なんか眠そうじゃん」

「む」

 

休み時間。机に突っ伏すネライへと声をかける女子が1人。彼の隣の席に座るマキだ。

 

「……マキ」

「もしかして寝てた?」

「いや、流石にな」

 

けらけらと笑うマキを見上げてネライもまた笑う。しかし、その姿に周囲は少し違和感を覚えた。

 

目はいつもより浮腫んでいて目つきの悪さは半減しており、基本的に姿勢のいい彼にしては珍しく、机に突っ伏していたのだ。

 

「なになに。疲れてる?C&Cの任務とか」

「いや、そういうのじゃないんだがな……」

「じゃあなにさー」

 

教えてと彼の背中にじゃれつくマキ。何度かクラスの中では付き合っている疑惑の出ているふたりに、また別のふたりが近づいて。

 

「珍しくゲーム作ってたの?」

「明日は槍でも降るのでしょうか」

「お前ら、ゲーム開発部をなんだと思っている」

「毎日遊んでるだけでしょ」

「そんなわけないだろう」

「……そろそろセミナーの予算審査の時期ですけれど……」

「─────きっと、今月もゼロだな」

「何もやってないんじゃない」

「何もやってないんじゃないですかぁ!」

「何もやってないんじゃん」

 

コトリとヒビキ。エンジニア部のホープだと噂されるふたりだ。彼女たちもまた彼と仲が良く、クラス内ではよく4人組を作っていた。

 

「いや、実は昨夜モモイと盛り上がりすぎてな。気がついたら朝だったんだ」

「へ─────」

 

マキたちの動きが止まる。だが直ぐに立て直したかと思うと。

 

「げ、ゲーム!ゲームしてたんだよね!きっと!」

「そうだが、それ以外にあるか……?」

「そりゃ、男女が夜盛り上がるって、聞いたら……」

「……マキのすけべ」

「なぁっ。ひ、ヒビキは思わなかったの!?」

「知らなーい」

「………………?」

「コトリはそのままでいて。知らなくていいから」

「でも解説のためにも……」

「知らなくていいから。ね?」

 

不満をあらわにするコトリを黙らせたヒビキ。だが顔を真っ赤にしたマキはと言うと。

 

「S○Xのことじゃないよねネライ!?」

「正気か……っ」

「ってか、モモとネライがS○Xするわけないよね!?私の考えすぎだよね!?」

「お、落ち着いてマキ」

「マキさん!?」

「やだぁ!ミドとかユズとかユウカならまだしも、モモに取られるなんてなんかやだぁ!」

「マキ」

「こんなの実質NTRじゃん!あんまり好きじゃないんだけど!?」

「マキ」

「─────でも、モモイでイケるなら私でもイケるってこと……っ!?」

「マキっ」

「なにっ!?」

 

ネライの机を勢いよく叩いたところで、彼女はふと気がついた。

 

─────みんな、見てる……?

 

「……ねぇ、いまS○Xって言った……?」

「言ってたよね。S○Xって」

「小塗さん、どうしたんだろ」

「ついにおかしくなっちゃった……」

「S○X、S○Xって……。えぇ……」

「NTRとか、寝てからいえっての」

「ちょっと、マキちゃんは純愛なんだから」

「だってもどかしいし……」

「あ、あぁ……」

 

真っ赤だった顔からどんどんと血の気が引いていく。

 

耳に入るざわめきは全て自身が放ってしまった言葉のもので。それを全員が聞いていていたわけで。

 

「─────きゅぅ」

「マキぃ!?」

「マキさぁん!」

「……あーあ」

 

ついに髪までもが真っ白に燃え尽きたマキが気を失い、ネライにしなだれかかる形で倒れ込む。

 

しかしそこはさすがのネライ。すぐさまそんなマキを右肩に担ぎあげると席から立ち上がり。

 

「─────保健室に運んでくる」

「─────可哀想だから運び方変えてあげて」

 

ヒビキからの指導が入り、脱力しきったマキを軽々とお姫様抱っこに変えたネライ。その様を何枚か写真に残し、そしてクラスメイトによる即興撮影会を取り仕切ってから、ネライを保健室へと走らせた。

 

「それにしても、どうしてマキさんは突然性行為について話を─────」

「─────コトリ、もうやめてあげて」

 

彼女の尊厳のためにも。マキのモモトークに撮った写真を選別して送信し、チャイムの音と共に私は自分の席へと着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────才羽モモイはネライが好き。

 

と、思う。正直、私でもよくわかってないのだから断言は出来ない。友達がそうやって言うからふとした拍子に少しだけ意識してしまうだけだ。

 

ギャルゲーだの乙女ゲーだの、そういったシュミレーションゲームは数え切れないほどプレイしてきた。だが、いざ自身の恋愛感情となると全く勝手は違うもので。そしてそれが私に当てはまっているかというと─────。

 

─────あ、でもエロい目で見るのは仕方ないよね。

 

初めて性差というものを意識したあの日。野球拳をしたあの日のことを思い出す。あれは、じゃんけんで負けた彼が悪い脱いだ彼が悪い。……とはいえ、ここのところ裸さえも見かけるようになって見飽きてきたのだが。

 

「─────モモイ」

「あれ、ネライじゃん!」

 

とくりと胸が弾んだ。背後からかけられた彼の声、他に聞くことのない彼だけの低い声に振り向き駆け寄る。

 

「部室行くとこ?」

「あぁ」

「じゃあ一緒に行こう!」

「だな」

 

伸ばした手で彼の手を取り歩き出す。改めて、大きな手だ。私たちが持て余すコントローラーを被ってなおも余りあるその手は、やはりと言うべきか比較になりないほど大きくて。

 

あとはゴツゴツしている。私だとかユズだとか、タコ(・・)とは違って手のひら全てがガッチリ硬い。あとは結構温かい。平均体温は私の方が高いのに、なぜだか彼の手はとても温かかった。

 

「今日は何して遊ぶ?」

「遊ぶのもいいが、ゲーム開発をしなきゃな」

「えぇー」

「予算審査、そろそろらしいぞ」

「うげっ、もう予算ないよぉ」

 

今月はまだ買いたいゲームがあるというのにどうしたものか。流石にひとつくらいは何かを作るべきだろうか。

 

うーんと悩むと、そんな私を見て彼は微笑んだ。

 

「ちょ、なにさぁ」

「いや、何でもない」

「なんでもなかったら私見て笑わないでしょ!絶対なんか変なこと考えてたでしょ!」

「どうだかな」

「ほら、ニヤニヤしてる!」

 

さらにくすくすと声を漏らすネライ。ムッと思って、そしてひとつやり返して見ることにした。

 

「わかった」

「何がだ」

「私と一緒にいれて嬉しいんでしょ!」

「…………」

 

さぁどう返す。内心ほくそえみながら振り返り彼の顔を見上げると、彼は拍子抜けしたようにぽかんとこちらを見つめていて。

 

やがてそっと目を伏せて考え込むと。

 

「─────それも、あるな」

「─────はぇ?」

「モモイといる時は落ち着くからな。というよりかは、他といるより気楽にいられるというか」

「……そ、そうなんだ」

 

そう言って口角を吊り上げるネライから思わず視線を外して前を見る。

 

こちらを揶揄うというよりも、本心からの言葉に聞こえたそれは、どうにも私の心を的確に掴んでいて。ばくんばくんと心臓が煩くなった。

 

「─────よし、じゃあここからは部室まで競走ね!」

「─────はぁ!?」

 

そんな鼓動を誤魔化すように手を離して走り出す。だがネライはすぐさまそんな私の背中を追いかけ始めて。

 

─────やっぱ足なっがいなぁ!

 

私が2歩走る距離を、彼は1歩で縮めてくる。そういう所がほんとずっこい。

 

「ならば─────っ!」

 

目の前の階段をぴょいと飛ぶ。これまでの修羅場で無駄に鍛えられた運動能力は、10数段の階段を一気に飛び越せる程度にはなって─────。

 

「あだぁ!」

「モモイっ」

 

─────いなかった。過信しすぎた

 

最後の数段手前でつま先を引っ掛けた私はその勢いで踊り場に身を投げ出す。すると一息で階段を飛び越えてきたネライが追いついてきて。

 

「大丈夫、か」

「いったいなぁ……」

「……」

 

無言。珍しく、無言。何も言わない彼を不思議に思っていると、ついに言葉を発した彼が一言。

 

「モモイ、お前、パンツ」

「ふぇ?」

 

その瞬間、勢いよく立ち上がったネライは私の身体に怪我ないことを確認すると、すまんと一言だけ告げて走り去っていった。

 

部活は休むからな。そう叫ぶ彼の背中を見送って、私は1人不思議に思う。突然どうしたのだろうか。

 

立ち上がって服を正す。めくれ上がったスカート。彼はパンツを見てしまって慌てたのだろうか。

 

「でも、パンツなんて見飽きてない?」

 

ぶっちゃけ寝転がっている時にパンツなんて見られているだろうし、部室にパンツを脱ぎ捨てていたこともある。彼がハンカチだと思って手にした布が私のパンツだったこともある。なんならパンツに何も思わないと断言されたこともある。

 

そんな彼が、今更パンツごときで慌てるだろうか。だがミドリのように過激なものは持っていないわけで。

 

「……あれ」

 

そういえば、今日はどんなのを履いていただろうか。ネコチャンマークのやつ?イチゴ柄?それともピンクの水玉模様?ミドリのやつはデフォルメのやつが減ってから使わなくなったからないとして、いったい何を選んだだろうか。

 

「あれ……っ」

 

しかし、考えても考えても、思い当たるパンツがない。どっと汗が滝のように流れ出た。思わずスカートの上から腰とまたぐらに手をやってみて。

 

「─────あ」

 

─────今、履いてないや。

 

 

 

 

 

 





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