ミレニアム・ピンクアーカイブ   作:オサシミの化身

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たくさんの評価感想お気に入り嬉しいです。

それと同時に誤字修正がめちゃくちゃ飛んできて、感謝と同時に情けなくて……。あっ。でもこれからもよろしくネ(他力本願)。


ゲーム開発部と格闘ゲーム

 

 

 

「うぉぉぉぉぉぉぉ─────っ!」

「─────────────っ!」

 

雄叫びと共にレバガチャを繰りだすお姉ちゃんと、それに対して冷静に、けれども手元は忙しく動かすネライ。ふたりはいつものように、拳1つ分ほどの距離で横並びに座り、対して大きくはないテレビの前でゲームに熱中していた。

 

「負けないぞぉ!」

「やらせるかよっ」

 

負けたら罰ゲーム。ゲーム開発部では定期的に行われる可愛らしい賭け勝負。先生からは程々にするよう言われているが、その頻度が減ることはなかった。

 

テレビゲームに映るのは様々な作品からピックアップされたキャラクターを操作して闘う大御所とも言うべき大乱闘ゲーム─────をゲーム開発部風にアレンジしたものだ。

 

元々は部活の実績報告用に作られたそれだったが、思いのほか出来がよく、没個性的な4タイプのプレキャラクターに変わって自分たちや知っている人達をキャラへと落とし込んでしまったが最後、時折こうして持ち出されてはプレイされるミニゲーム的存在となっていた。

 

「あーもうっ、避けないでよね!」

 

お姉ちゃんが操作するのは“ワンハンドレット・ファットサイ”。設定的には百戦錬磨の太腿技ファイターで、菫色の髪をツインテールにした女の子。シールドを持つタフな重量級であり、重量級ゆえの高火力蹴り技や絞め技、物質化した数字を投げつけるという中距離攻撃も可能なキャラだ。

 

「それには当たらねぇ」

 

対するネライが操作しているのは“U-Z-(ユーズー)”。編み込まれた赤い髪と広いおでこをした小柄な女の子。低火力の軽量級キャラだが、ダメージを負えば負うほど強くなるカウンタータイプで、扱いの難しいピーキーなキャラだ。

 

「ネライ、モモイ、2人とも頑張ってください!」

「このままだとお姉ちゃんの負けかなぁ」

「そうは行くかぁ!─────えいっ!」

「な、お前っ」

「よしっ!」

 

ふと体を傾けたお姉ちゃんのせいでコントローラーの操作がズレたネライの“U-Z-”が連続攻撃のクリーンヒットを受けてしまう。

 

ゲームで勝てぬならリアルで攻撃してやるぜというお姉ちゃんのラフプレー(ネライ相手だとよくやる)にアリスが絶叫した。

 

「あぁ、ネライ、ユズが、ユズがやられてます!!」

「うわっ、出たよラフプレー。あとアリスちゃん、ユズじゃなくて“U-Z-”ね」

「“U-Z-”が!」

「卑怯で結構っ、勝てばよかろうなのだぁぁぁぁっ!」

「けど─────」

「あぁ、これはチャンスだ……っ」

 

“U-Z-”の強みであるピンチからの一撃は、受けているダメージのバーセントによってある程度の固定倍率がある。そして、現在のダメージはその固定倍率が最大となるまさにそれ。

 

一撃貰えば当然負けるが、ここで一撃を当てれば勝てる。目に見えて調子に乗り始めたお姉ちゃんの横で、きりりとネライの目の色が変わった

 

「そこだぁ!」

 

ふと動きを止めた“U-Z-”の隙を、“ワンハンドレッド・ファットサイ”の重攻撃が襲う。それを見届けるお姉ちゃんの顔が喜色に満ちていく。すでに勝利を確信した顔だ。

 

─────しかし。

 

「ふっ」

「なっ、あぁ!?」

「おー」

 

画面に写るのは音符を振り回す“U-Z-”とそれに吹き飛ばされる“ワンハンドレッド・ファットサイ”の姿。スローモーションで流れたあと、“U-Z-”とプレイヤーA、ネライの勝利を伝えた。

 

「これって」

「うん、ネライの勝ちだ」

 

重攻撃が当たるその直前、わずかな差で繰り出された回避が勝敗を分けた。ここぞと言う時に見栄を張って隙の大きな重攻撃を繰り出したがるお姉ちゃんの性格を読んだネライの勝ちだ。

 

「あぁぁぁぁぁぁ─────っ!」

「よしっ!」

 

ガッツポーズを繰り出すネライとコントローラーを投げ出し絶叫するお姉ちゃん。なんだか見慣れてきた光景だ。

 

「さすがネライです!」

「そう言うなアリス……照れる」

「きもっ!きっっっっも!男がそんなこと言ったって気持ち悪いだけで─────」

「今日は空気がよく澄んでいる」

「へ?」

「─────遠吠えがよく聞こえるんだ。負け犬の、な」

「〜〜~~~っ!」

 

アリスちゃんの賞賛を受けてポッと頬を赤らめるネライに喰らいつくお姉ちゃんだが、カウンターを受けて声にならない叫びをあげて背中から倒れた。

 

それを見て満足気にひとつ頷くネライ。─────個人的にはゲームをしている時のネライは好きだ。いつにも増して子供っぽく、クールを気取った話し方ではない素の口調、見ているとなんだかかわいく思えてくる。

 

ただ、その表情(かお)を引き出すのはお姉ちゃんにしか出来ないというのが何とも悔しいものである。

 

「ふぅ、さてモモイ。罰ゲームを実行してもらおうか」

「うぐぐぐぐぐ」

「罰ゲームはなんですか?」

「負けた方が操作キャラのモチーフになった人のところに行って本人のモノマネ」

 

私がそういうと、それを聞いたネライはコントローラーを置いてスマホを取り出す。画面に表示されているのはモモトーク、既にユウカ先輩とのトーク画面で会話が進んでいた。

 

「セミナーでの仕事が一段落したら来てくれるらしい。モモイが呼んでいると伝えたら1発だ」

「何勝手なことやってんのさぁ!」

 

薄く笑いながらテレビを消し、コントローラーを片付けるネライ。じゃれついていたアリスちゃんを剥がし、倒れたままジタバタするからめくれ上がるお姉ちゃんのスカートにブランケットを投げつけた辺りで、ふと思い出したように一言呟いた。

 

「やっぱり、“U-Z-”はいいな。好きだ」

 

その一言に、静かだった私の後ろのロッカーがガタりと大きく音を立てた。恐らくずっと中にいるユズにも、今の発言が聞こえていたのだろう。

 

「恐らく相性がいいんだろうな。どうにも具合がいい」

「前にも言ってたよねぇ」

『あっあっ、え、えぇ?』

「……」

 

ロッカーの中から微かに動揺の声が聞こえてくる。だがネライはロッカーのユズには気づいていない様子だ。ちょっと、からかってみようと悪戯心が芽生えてきた。

 

「ネライってユズのこと好きなの?」

「ん?」

『!?』

 

“U-Z-”を敢えてユズに近いイントネーションで言ってみる。ピタリとロッカーの声が途絶える中、不思議そうに片眉をあげたネライは。

 

「あぁ、好きだな」

『─────っ!』

 

その直後、部室内に響いた凄まじい音に私とネライ、罰ゲームの準備をしていたお姉ちゃんとアリスちゃんが一気にそちらへと振り返る。そこにはぶっ倒れて小刻みに震えているロッカーinユズの情けない姿があって。

 

「おわぁ、何事!?」

「ろ、ロッカーがっ。ユズがご乱心です!」

「ユズっ。そこにいるのか!?」

「あちゃー……」

 

まぁいいかと罰ゲームの準備を再開するお姉ちゃんとアリスちゃんとは別に、ネライが慌てて救出に向かう。あのふたりは中々に薄情なものである。

 

まぁソファに座ってそれを見ながら、若干やりすぎたのかと反省しつつ、意図せずともネライに好きと言われたユズにジェラシっているわけではあるのだが。

 

「ゆ、ユズ!」

「あ、ね、ね、ね、ネライ、くん」

「顔が赤い、それに呼吸も乱れて……。体調がわるいのか」

「あっ、あっ、あっ」

 

思いのほかあっさりと救出されたユズは顔を真っ赤にしていた。そして追い打ちをかけるように迫るネライは、彼女に顔を寄せ、その広いおでこに大きな手を当てて体温を測ろうとしている。

 

更にいえば。

 

「これは、すごい、汗の匂い……?」

「あ、せ、─────あっ」

「熱中症か!」

「っ!?」

 

季節柄、少し暑い今日この頃。恐らく今日一日ロッカーに引きこもっていたであろうユズはしっとりと汗をかいているはずで。

 

そしてその乾いた匂いは、否、臭いは身を寄せ顔を近ずけるネライの鼻がしっかり捉えているわけで。

 

「─────だ、大丈夫っ。大丈夫だから今日はもう帰るね……っ!」

「あっ、まてユズ!」

 

その走りだしは脱兎の如く。押しのけ、立ち上がり、身を翻し、駆け出して。彼女の姿はあっという間に廊下へと消えていく。

 

だがそれを許すネライではなかった。未だに乙女心も察せずにユズを体調不良だと思い込んでいるこのクソボケは、よりにもよってユズを追いかけて行ってしまった。

 

圧倒的なフィジカルと私たちのおへそ辺りまである長い足の前に、圧倒的運動不足のユズが敵うとは思えない。恐らく対して逃げることもできずに捕まるのだろう。

 

「ユズ、行っちゃったねー」

「あっ、これとかどうでしょうか!」

「いいじゃんアリス、これで行こう!」

 

─────せめて私だけでも合掌しておこう。

 

一瞬にして興味をなくし、どこから取り出したのかふっとい大根2つを囲ってよろこぶお姉ちゃんとアリスちゃん。この後落ちるであろうカミナリを想像して、そして今頃捕まって保健室に担ぎ込まれているであろうユズを思い浮かべて、私は1人合掌した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとモモイ、ネライから用があるって聞いたけど何かしら」

「あっ」

「キタキタ!」

 

少し苛立ったユウカの前にモモイが飛び出した。その太ももにはとてつもなく太い大根がガムテープでぐるぐる巻きにされている。

 

その時点で既に青筋を浮かべるユウカだが、珍しく目でその続きを促している。

 

恐る恐るといった様子のモモイは、その足をクロスさせ、備品であるタブレットを片手に青ざめたキメ顔を作り。

 

「ふぁ、“ファットサイ”!計算通り、かんぺきぃ〜」

「…………」

 

微妙にビビりながら繰り出されるモモイの全く似ていないモノマネは、確かに空気を凍りつかせた。既に察しが着いていたミドリはそそくさと部室をあとにし、アリスもあまりに異様なその空気に怯え、部室の隅で小さくなって震えている。

 

1歩、また1歩。ユウカが進む度に、モモイはジリジリと後ずさる。1歩、また1歩。

 

ついぞふたりは無言のまま、モモイが壁際に追い込まれた。

 

「ファットサイ。ファットサイ(太い太もも)、ね」

「あっ、はい」

「その大根を巻いた太もも、まさにファットサイだわ」

「は、ははぁ」

「それで、その状態でどうして私のモノマネをしたのか、説明してくれるかしら」

「ひぅっ」

 

細いモモイからもぎり取られる大根。処理されていない産毛がガムテープに巻き込まれ、モモイは小さく悲鳴をあげた。

 

「あ、あの、ユウカ」

「アリスちゃん」

「は、はいっ」

「少し黙っててくれるかしら」

「あ、アリスはマナーモードに移行します!」

 

ばしりと鳴る鈍い音。真っ二つに折れた大根の悲鳴と悲惨な末路に、流石のアリスも目を逸らす。

 

「さて、今日はコユキがいないから反省部屋が空いてるの。行きましょっか」

「えっ、いやあの、悪いことしてない……」

「行くわよ」

「……はい」

 

連行されるモモイを見送ったアリスは、戻ってきたネライとミドリにぽつりと漏らした。

 

─────ユウカは太くありません、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つぎにみたいのをさんこうまでに

  • ○○○TS編
  • ゲヘナ編(ゲヘナピンク無関係)
  • しないと出られない部屋再来編
  • シャーレ当番編
  • NLP編
  • なんかとりあえずイチャイチャピンク
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