評価もお気に入りも凄い……。
もっと来てくれてもいいのよ(欲しがり)
早瀬ユウカとネライとノアと
「あら、鷹目さん。おはようございます」
「おはよう鷹目くん」
「おはようございます、早瀬先輩、生塩先輩」
最初はすれ違えば挨拶をする程度の仲だった。セミナーの会計として何度か顔を合わせたことがあるとはいえ、先輩後輩ということもあって交流はそこまでなかったからだ。
鷹目ネライくん。ミレニアムに入学した、キヴォトスで恐らく唯一の男子生徒。入学前の一時期はクロノスによる報道でちょっとした有名人であったが、いざ入学してみればなんてことはなく同級生の輪の中に馴染んで行った。
「失礼します。ユウカ先輩はみえますか」
「こんにちは、ネライ。何か用かしら」
「C&Cの作戦で使った経費について申請したいのですが」
「なら私が教えてあげるわ。こっちに来てちょうだい」
「お願いします」
そんな彼がどういう経緯かC&Cとしても動くようになった。あまり詳しくはないが、彼は卓越した戦闘能力を持っているらしく、リーダーである美甘ネルが直々にスカウトしに来たんだとか。
時折、C&Cの報告関係でセミナーを訪れるようになり、会計である私は彼とそれなりに話をするようになった。業務のことだけではなく、お互いの趣味や好きな物などで盛り上がれる仲だった。
そして彼と交流する時間は、私の中でも日々の楽しみになりつつあった。
会長であるリオは情報や権限を独占管理しているために仕事がやりづらい時があるし、書記のノアも普段は優等生なのに時たま記録するイベントを残そうと騒動を起こすし、コユキに至っては論外。
連日起こることもある爆発事故に予算不足をこちらに押し付けるような文句、ありとあらゆる部活も頭のネジがすっ飛んでいるような連中ばかりで頭を抱える中、彼だけは私のことを気遣ってくれていた。
「ユウカ先輩、C&C関係の書類まとめてきたので確認お願いできますか。ネル先輩とアカネ先輩がまたビルを3棟破壊してしまったので被害報告です」
「……はぁ、見たくないけど見せてちょうだい」
ビルを3棟破壊。今朝のニュースで見たそれを思い出しつつネライが差し出した書類を受けとって目を通していく。内容としてはビルを破壊したということと本人の名前、状況や理由、恐らくネライが作成したであろう形だけの反省文。
そして1番下には今回の破壊で発生した損害についてを取りまとめた資料があった。目を通す限り、数字に問題はなさそうだ。本来は私の仕事だが、これもネライが用意したのだろうか。
「これ、私の仕事じゃ」
「忙しそうだったので、こちらで仕上げました」
「助かるわ。あらかた目を通したけど特に問題なさそうだし、後で詳しく確認するわね」
「お願いします。あと、給湯室借りますね。トリニティの知り合いからいい紅茶を貰いまして」
「トリニティの紅茶って、いいの?」
「大丈夫ですよ」
大体いつもこんな感じで、書類は完璧に仕上げてくれるし、この日以降はこうして数字のことにも手を出してくれる。それにどうも各学園に知り合いがいるらしく、トリニティの紅茶に百鬼夜行の緑茶、山海経のジャスミンティーと色々なものを振舞ってくれていた。物がいいのもあると思うが、C&Cで身につけたという技術と彼の心遣いがさらに美味しいものにしてくれている。
それから、一緒にカフェに行ったこともあった。本当に意外なことに彼は数学が苦手なようで、小テストに備えて勉強を教えてあげることになった時だ。
「ここは、この公式を当てはめて……。説明文は……」
「……」
「よし、こうだっ。どうだろうユウカ先輩」
「残念。不正解ね」
「む」
「ここと、ここが間違えてるわね。何が違うかわかる?」
「ここは……、計算が間違っているのか。ならこっちは、……………………?」
「公式が違うのよ。ほらここ、これはこの式を使わないと」
「あっ」
ペンを置いて恥ずかしそうに頭を搔くネライ。残っていたコーヒーを飲み干すと、追加のコーヒーとともにケーキをいくつか注文した。
やっぱり男の子だから食べるのかしら。そんなことを考えていると彼がこちらを見て微笑んでいることに気がついた
「……ふっ」
「どうしたの?」
「いえ、ユウカ先輩は優しいなと思いまして」
「……と、突然何よ。褒めても何も出ないわよ?」
「書類のこともそうですが、こうして休みの日に勉強に付き合ってもらって、正直ありがたいです」
「そんなこと気にしないで。いつも助けられてるのはこっちだから。たまにはお返しも必要でしょ」
「それでもです」
そう言って微笑んだ彼の顔を見た時からだろうか、その次の日から私は、気がつけば彼を目で追うことが増えていった。
これまで気づかなかった彼のことにも気づくようになって。結構可愛いところがあることも知って。意外と、いやかなり天然なところがあることを知って。彼は毎週末に必ず行くほど温泉が好きだということも。
そんなある日、参考書を探しに古本屋に出向いた私は懐かしい少女漫画のタイトルを見つけた。幼い頃に月刊誌で連載されていたもので、主人公である先輩が後輩の男子と恋するものがたり。
手に取ってパラパラと流して見ていると、どうやら総集編のようで、うろ覚えの記憶を補完する印象的なエピソードがピックアップされているようだ。
「最初は他人だった後輩と生徒会の業務で仲良くなって、勉強を教えるためにカフェに行って、段々とお互いが打ち解けて言って……。でも、」
しかし、最後は結ばれることなく先輩が卒業を迎える形で距離が離れ、だんだんと疎遠となってしまう。そこで漫画は終わっていたはずだ。
「……私も、こんな恋愛してみたいなぁ」
そんなことを零しつつ脳裏にネライの姿を思い浮かべてしまう自分に、つい顔が熱くなった。
△
─────なんて、思ってたのに。
「ノアさん、荷物は俺が持とう」
「あら、いいんですか?」
「荷物持ちとして声をかけてくれたんだ。任せて欲しい」
「……そういえば、そういう名目でした。ではお願いしますね、ネライくん」
「あぁ」
参考書の入った袋を片手に、私は物陰から2人の様子を盗み見る。どこからどう見ても私服姿のネライとノアだ。
「私の服は買えましたし、次はネライくんの行きたいところへ行きましょう」
「俺の?ふむ、ならブーツを買いに行こう。今使っているものがかなりヘタレてきていてな」
「それなら、少し行った先に良さげなお店があったはずです」
「そうか。男性用も取り扱っているといいが」
「ネライくん、足も大きいですね」
「あぁ、29.5だ。しかしキヴォトスの靴屋ではそろそろサイズが厳しくなってきた」
「手のひらも大きいですし、男の子って感じですね。かっこいいですよ」
「絡めないでくれ。流石に、恥ずかしい」
「ふふっ、やっぱりかわいいの方がいいでしょうか」
「勘弁してくれ」
指を絡められて照れているネライを見てはにかむノア。それを遠目に見ている私は、もうどうにかなってしまいそうだった。
まず、ネライの話し方が私に対するものとは全然違った。ノアのことをさん付けで呼んでいるし、口調もゲーム開発部の子たちや同級生の子と接するそれと同じだ。
ノアはノアで、いつの間に彼とそんなに仲良くなったのかわからないし、時たま彼の顔を見上げながらほほ笑みかけるその姿は、まるで彼女だ。指と指を絡ませるようにして手を触ってみたり、今なんて彼と腕を組み始めた。
距離が近いとかそういうレベルでは無い。風紀が乱れるレベルだ。そもそも彼のひじと前腕に胸が当たっている気がする。
「……?なぜ、腕を」
「ふふっ、なんででしょう」
「まぁいい。ところでこの後は……」
「ええ、本命のお買い物、ですね」
楽しげに会話しながら歩いていく2人を、私はただただ見送ることしか出来なかった。
△
「あの、生塩先輩」
「はい、ってあら、鷹目くん」
ある日の放課後、私は鷹目くんから声をかけられた。
たしかゲーム開発部とC&Cに所属していて、ユウカちゃんと仲良くしている1年の男子生徒。セミナールームで何度か顔を合わせたことはあるが、私とはすれ違ったら挨拶をする程度で、今まで対して交流はなかった。
「珍しいですね。ユウカちゃんに用ですか?ユウカちゃんなら今は各部を回って予算関係の調査をしていますよ」
「いえ、用があるのは生塩先輩の方でして」
「私ですか」
「はい」
なんだろうか。彼がセミナーの書記である私に頼む仕事はないと思っていたが。そう考えていると気まずそうに彼が切り出した。
「その、ユウカ先輩に贈り物をしたいと思うんです」
「贈り物ですか」
「いつも、世話になってるので」
ゲーム開発部しかり、C&Cしかり。そうつぶやく彼の言うように、どちらもユウカちゃんが頭を抱える原因になるものだ。彼がいるから何とかなっている、とはユウカちゃんからきいている。
「ただ、イマイチ先輩の好きそうなものが思い浮かばず……」
「それで私に聞きに来たんですね」
「……恥ずかしながら」
若干頬を赤らめながらそっぽをむく彼に思わず微笑ましくなった。普段の姿を見ているとクールで大人びた子だとばかり思っていたが、こういう可愛らしい1面もあるらしい。
「構いませんよ。ユウカちゃんが喜ぶことなら協力します」
「では」
「ただし」
─────ちょっと、イタズラを仕掛けさせて貰うことにした。
「その日は、私とデートと言うことで」
「いや、荷物持ちにしてくれ」
「逢い引きの方がお好みでしたか?」
「荷物持ちだ」
どうやらそこは譲れない一線らしい。だが、今度は敬語が崩れかけている所を攻める。
「なら、今日から私には敬語抜きでお願いします」
「それは……いや、ノア先輩がいいのであれば」
「ノア、でいいですよ?」
「ノアさん、だな。それならかまわない」
どうにも彼の敬語は距離を感じて好きではなかったのだが、彼自身も好んで使っているわけではないらしい。あっさりと普段の話口調に切り替わる。
「では次の日曜日、校門前で待ち合わせしましょう」
「あぁ、よろしく頼む。ノアさん」
─────こうして、何も無いはずだった次の日曜日のイベントができた。
つぎにみたいのをさんこうまでに
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○○○TS編
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ゲヘナ編(ゲヘナピンク無関係)
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しないと出られない部屋再来編
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シャーレ当番編
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NLP編
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なんかとりあえずイチャイチャピンク