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「はぁ……まさか向こうと話している間に、こちらの絵について話しているとは思わなかった」
「人に見せる用の絵だし、いいじゃん。」
「別に見られたくないわけではないが……はぁ」
ヒネの見送りが曲がり角によって終わったところで、ラディアが息をついた。彼は人と接するのに苦労する性質らしいと、シュンはその姿を見て思う。
「ラディアさんて普段なにしてるの」
「情報屋だ」
「それってなにしてんの? 裏社会関係?」
「どうしてそうなる」
疲れが顔に出ている少年にシュンは曲解の軽い言葉を送って、答えを探ろうとする。その平和な企みは思い通りに、ラディアは困惑したような顔をして、仕方がなさそうに口を開いた。
「このまちのほぼほとんどの人物の戸籍的な記録づけ、地区ごとで問題がないかなどの状況把握、記録、共有が主な仕事だな。」
「こうむいんみたい。図鑑はどうして?」
「あれは趣味を勝手に延長させられた……絵や文など、かきものがすきなのは、
「ダジャレで印象付けるレベルの注意喚起……?」
言いながらどこか、頭の中がふわふわしていそうな様子に見えたので、シュンはその姿を尊重して話題を変えようと思い立つ。
「と、ところでラディアさん」
「なんだ」
「さっき色々教えてもらう途中で、勇者について話題が出てさ。ラディアさんは何か知ってないかなって」
視線をそのまま慎重にラディアの方へ向けながらシュンは言った。彼は二藍の瞳をゆったりとシュンに向け、そのままの表情で、
「訊き返すので悪いが、何故知りたい?」
「言葉が悪いかもしれないけど、あんまりヒネさんが詳しくなかったのと、単純な好奇心。」
「だとしたら悪いが、こちらもあまり詳しくない。他をあたれ。」
ばっさりとシュンの好奇心を切り捨て、前へ向き直る。
シュンはその言葉に、むずむずと表情を動かしながら返答の言葉を喉奥にて探る。この煩わしい感情の原因は、この少年と隔たれた際に生まれたものだった。
「……狂うから?」
「そうだ」
「その割に図鑑の内容は充実してたね」
「……あれのことはよく憶えていない」
少年はなんだか懐かしむように、また苦でも示すかのように目を細めながら答える。その目をシュンはじっくりと見つめながら、
「ラディアさん、嘘ついてない?」
立ち止まり、これまで気にも留めなかった場所で勝手に膨らんでいたそれを、簡単に露呈した。
「何故そう思う。」
少し遅れて立ち止まったラディアが、変わらぬ無表情のまま問い返す。
「嘘というか、隠し事? なんか色々はっきり言わないし、どこからかなんだか地に足つかない感じがする。」
「『なんか』やら『どこから』やら『なんだか』など押しつけられても困る。もっと具体的にしてから話せ。」
「そうだなぁ」
あまりくどいようなことはしたくないと思いながら、シュンは記憶を探った。
「契約のさせ方が誘導的というか、あれは単純に自分が悪いけど」
「そうだな」
「魔法の話も曖昧に否定されたし」
「専門ではないので」
「あ、やぎに手紙食わせたのはなんだったの?」
「そんなことあっただろうか」
「そうだよ、手紙!」
はっきりとした違和感の元凶的な何かを見出して、シュンはぽんと手を叩いて叫ぶ。
「あれ、実際は何だったの?」
「もうおぼえてない」
「たった一行ぽっちの内容忘れたの?」
「年だからな」
のらりくらりと向けられた疑問符を躱し続けるラディアに、シュンは少しずつ苛立ちを募らせていく。
「便利な年齢だね」
「トペリが生まれる前から生きているからな」
「だったら尚更知ってるでしょ……」
「そうでもない。記憶というのは重ねるほど、過去のものが抜け落ちてしまうものだ」
言いながら、気を取り直してとでも背中で呟くようにラディアは歩き出した。
シュンはそれを追いかけず、
「だとしたら、たった一、二時間ほど前の出来事を忘れるのはありえないよ。はっきり答えるまで、じぶんは動かない」
頭の中で何がそうしたのかわからなかったが、赤い瞳を真っ直ぐに彼へ向けて、突き刺すように鋭い声音で繰り出した。
少年は固まる。シュンが自身のことが我儘であることを理解しながら、それでもついさっきの【契約】を利用したからだ。
「ここまで色々教えてもらってなんだけどさ、その部分がいま猛烈に引っかかってるんだ。ラディアさんを悪い人だと思わないし、思う気もないけど、疑いたくないよ。たったの短い間だけどさ、根っから大切だっていうことは教えてほしいんだ。」
「……随分と傲慢な言い方だな。しかし、その原因がこちらにあるのも自覚している」
ラディアはゆったりと振り返り、気怠そうに息をついてからシュンを見る。
「手紙の件だったか、」
「うん。」
「さっきも言った通り、知らなくてもいいこと……いや、知らないほうがいいことだ。」
二藍は真っ赤な瞳を射貫くようだった。
「そこまで?」
「ふむ」
それは純粋な疑念を晴らすための返事なのか、それとも彼自身に向いた鳴き声なのか、ちょうど境界に位置していた。
「……そちらのため、と考えていたが、どうやらこちらも恣意的な感情でそちらに無知を押しつけているような、感覚がわいてきた。」
ラディアは額に指を当てながら、ぽつりぽつりと言葉を紡ぎだす。
薄く開いた二藍が微妙に赤い濃度を増していた。
「しかし、この件について答えを出すとすれば、こちらは、詳細を何も言いたくない。それだけだ。」
「……え」
「そちらの期待違いの言葉で申し訳ないが、諦めてくれ。これ以上の言葉は、詳細を伝えるよりもそちらの説得となる。」
「ぇ、あ……あれ。」
目的の内容を聞き出せずに、目をぱちぱちさせて困惑するシュン。予想以上に萎んでいる割にはその恣意性を貫く少年に問いかける。
「それは、どうして……?」
「こちらの感情的な問題だ。それしか言えない。しゅんの抱いている疑問、関心は、こちらではない人物に訊いてほしい。掘り起こすには、言葉にするには、複雑すぎる。」
「……。」
諭すようにラディアは言い、シュンの腕を掴んで歩き出す。
まるで自分が悪者みたいだと子どもじみた焦燥を若干肌におぼえたので、シュンはそのまま引っ張られる形になる。
「そんなにマズいこときいた……?」
「こちらにとってはな。それと、内容のよく知らない【契約】を差し出して脅すような真似もやめたほうがいい、今のそちらに限定する話だとは思うが。結局そちらから離れれば再度迷子になるだけだ。」
「ああ、はい……。」
なんだかんだ企みを見透かされていたようで、シュンはその心に恥ずかしさが乗せられる。少年の隣を歩きさらりと顔を覗くと、特に何の変哲もないゆるい無表情があった。それにシュンは、安心も不安も感じるのだった。
「……ラディアさんってさ、」
その曖昧さを覆い隠したい気持ちが、シュンを熱心に動かす。ラディアが「ん。」と簡単に返事を済ませた。
「それ以外だと、どうして色々教えてくれるの?」
「どうして……、そんなことを訊く?」
「──なんとなく?」
ふわふわとした会話が、シュンにやさしく触れた気がした。
「はぁ。ふつう、なにか訊かれたら答えるだろう。そちらは路頭に迷っているし、知らないことがありすぎるのも当然のことだ。このまちは歪で、不変で、しかし平和な、唯一無二の世界なのだから、無理もない。」
ラディアはシュンの目をじっくりと見つめながら言う。
「……たしかに」
シュンはゆっくり空を見上げて、不思議な建造物の眺めに視線を滑らして、ラディアの二藍に着地してから返した。
「ありがとう、ラディアさん。」
「……、何故、礼を言った?」
「なんとなく。」
不思議な心持ちで、神妙な顔つきで二人は見つめあった。ふと、どちらかの蹴った石が通りのさきを緩やかに駆けて行ったのをそれぞれは見つめて、その雰囲気はやわらかく溶けた。
少年が掴んでいた腕を放し、再度シュンが口を開く。
「あと、どれぐらいで着く?」
「もうすぐだ。この通りを下って、しばらく──」
ラディアの言葉が途切れる。歩いていた足が止まる。表情は絵のように固まり、その二藍は何故だかさっきよりも濃く、赤がにじんでいた。
「……ラディアさん?」
「────どうしてここで、あのにおいがするんだ……?」
「におい?」
おそるおそる背後を振り返りながら、ラディアは独り言ちた。
シュンも訊き返しつつ、来た道を振り返ってみる。なだらかな坂、静かで緑が多く這った、もう見慣れた景色に異変は何一つ感じ取れない。試しに鼻ですんすんと音を立てそのなにかを嗅ぎとろうとしてみるが、これも意味がなかった。
シュンは再度ラディアの顔を見る。凍りついたかのように固まったその様子は、自分の中を必死に見つめていた。
「ラディアさ」
呼びかける最中に気づく。じんわりと、だんだんと、彼の瞳の赤い光が濃くなっていることに。
ようやく異常を認識し、
「──しゅん、」
久しぶりに聞いた声になんの形容も持てぬまま──
「息をするな!!」
脳を貫くような勢いで少年は叫んだ。
ラディアがとびかかるようにシュンの顔めがけて手を差し伸べた刹那、坂の上から濁流のように白い霧が流れ込んだ。
肌を突き刺すような冷たい暴風の中、バランスを崩したひとりは尻もちをついており、もうひとりはその人物の身体を押さえつけるようにして留まる。それから数秒。
ぴたりと風が止む。真っ白い霧のなか、シュンは混乱しながら声を、
「────ら」
「喋るな。しばらく、呼吸もするな、口も開くなよ。」
口と鼻を、片手で封じられる。緊張ですでに苦しい。
「霧状の睡眠剤だ。些細な量なら、いいが、大きく吸うと、しばらくねむって、帰れなくなる。」
「……?」
瞳を真っ赤にさせて言うラディアは、呼吸が浅く、声が震えている。
その言葉と目の前の症状の矛盾にシュンはまた疑問が生まれたのを感じながら、それを無視して息を止めることに専念する。
「悪いが、こちらはもう、うごけそうに、ない……だから、」
言いながら、ラディアはシュンの口を押さえていた手を離し、
「あたまの、中で、たすけてと、さけびながら、」
自身の胸をおさえながら、へたりこんだまま、続ける。
「はしれ。はやく、はなれろ。」
大きく開いた瞼の中の、震える真っ赤な瞳にうつった自身の姿を、シュンは見つめる。
──こんなことをしている場合じゃない。
「やめろ、さっさといけ……!」
シュンがラディアの腕を掴んだのを、少年は言葉と力で振りほどいた。排他するような視線で「間違っている」という圧力を感じるが、シュンも負けじと似たような視線をラディアに送りつける。
「こちらはいい! きっとこれの目的は──」
ぴたり。ラディアの抵抗が終わる。シュンの瞳を見つめたまま、静かに固まった。
わからないことだらけが、シュンの中を蠢いている。喉の奥が締め付けられるような感覚をどうにかしたい気持ちを、必死に抑えようとする。
「しゅん、」
何故か、やさしい声でラディアは呼んだ。シュンは、嫌な予感を感じ取った。
「……また会える日を、たのしみにしている。」
ラディアの理解が、悟りが、結果の諦観が、シュンに伝染する。どうにもならないそれを、どうにかする術など思いつく隙などなく──、
目の前を白が覆いつくして、ふわりとどこにでもない場所にいるような、心地の良いような感覚がしたかと思うと、本能が警鐘を鳴らすほどの落下感が突然シュンを襲った。重力の存在を無意識に再確認し、いつの間にか暗くて固い地面に横たわっていることに気づくと、今度は喉奥に迫る猛烈な嫌悪感を察知し、すぐさまそれを逃がす姿勢をとった。
「──ほんとに、このやり方でよかったの……?」
暗い、湿った空気の路地裏の奥へ、少女は静かに問いかける。
この空間にはほかに二人、人物がいた。
「どうしてそう思ったの?」
無意味に吐瀉物が生産される中、女の冷たい、棘の生えた声が響く。
「……、もっと、いい方法があったんじゃないのかな、って。こんなに、辛い思いをさせるひつよう──」
「あったわ。最善の方法をとっているの、もう既に何度も話した気がするのだけれど。」
「でも、」
「今更文句垂れないでよ。変なことも考えないでくれるかしら。兎が来ちゃう」
女は少女に嫌悪を孕んだ視線で突き刺しながら接近し、
「そうね、納得は重要ね。何回でも言ってあげるわ」
勝手に食べたくもない食事を用意し、強引に口の中へ突っ込むが如く、言葉を続けた。
「まず私たちの目的は、勇者の同行者を引き剥がし、これをあの人のもとに繫ぐ道をつくること。それを果たす最中、私たちはこの街の兎、また騎士団に見つかってはいけない。同行者が兎じゃなかったのは運が良かったわね。」
少女は俯いて、嵐が過ぎ去るのをじっと耐えるかのように動けなくなる。
「引き剥がす方法は、極北で奪った催眠剤をレトの風でばら撒いて、誰も寄せ付けないかつ、誰にも私たちの存在を知られずに、レトが防護面をつけて迅速に勇者を回収する」
「……。」
「そして、薬を吸った勇者をまた薬で強引に起こして、軽い尋問の後にシエプで眠らせ、身体に石を埋めて放置する。そうしたらあの怪物に見つかる前にトペリから離れる。これでこの計画はおしまい」
シュンが体内のものを吐ききって、吐瀉物の枕にぐったりと倒れる。その音で、二人の間に一瞬だけ静寂が顔を出す。
「都合よく人が起きるようなものなんてないけれど、ちょうどこうして弱らせることができたでしょう? 目的は、すべてあの人の助けになるために。それに、今回は誰も殺していないじゃない。」
「……! それは確かにそうだけれど、でも、最初からこんなことしていいわけじゃ──!」
「うるさい」
怒鳴る少女の頬を、女は低い声で言いながらはたいた。奥にいる人物がびくっと身体を震わせて瞼を開き、落ちているシュンは咄嗟に目をつむった。
静かになった少女は、女を見ないままでいる。
「最初からこういったことを嫌うなら、最初からついてこなければよかったじゃない。わたし、あなたのそういうところが嫌い。」
「…………。」
「文句ならあとでいくらでも聞いてあげるから、さっさと消えなさい。今のあなたは雑音になってるから。」
最後の一文ははきはきと、突き放すように告げる。
畏縮した少女は後ずさり、顔を見せないように俯き、後ろを向いて駆けだした。その後ろ姿が見えなくなったところで、女は落ちているぼろ雑巾の如くに目を向ける。
「次はこっちの番、」
淡々とした声で女は言う。
「あなたゲロ臭いわ。立てる?」
──そっちが吐かせておいて? なんて問う思考は出てこない。今のシュンのなかにあるのは倦怠と疲労、凍ったように働かない脳と身体、そして、鮮やかな恐怖。
「……はぁ、体力ないのね」
女はシュンのパーカーのフードを掴み、小さな体の踵を引きずらせるようにして路地裏の奥へと移動し、その行き止まりにゴミでも捨てるかのようにシュンを放った。
背中から壁に強くぶつかり、壁に寄りかかって座る体勢になるシュンに、女はナイフを向け、もう一つの手で頭を壁に押しつける。その様子を、幼い少女が隣でじっと見ていた。
「おとなしくしていれば、痛くも苦しくもしないわ。おとなしくしていればね。」
「────」
首元にあるそれをシュンは正しく恐れて、その言葉の通りにする。冷や汗を垂らして、目の前の人物をおそるおそる見る。真っ黒い瞳と、長い髪。ぶかぶかのローブの中にはなにもない。くだらない思考を呼び覚まそうとするのは冷たい策略か。
「シエプ、灯りを持ってきてくれる?」
「はい」
幼い、感情を忘れたような声が、すぐさま懐中電灯らしきものを持ってくる。強烈な光を突然浴びせられ、シュンが瞼を閉じようとするのを女が「みせて」と、無理やりこじ開けてくる。
「うん。もういいわ。ねぇあなた、本名は?」
「……ぁ」
光が消え、動揺の絶えないシュンに女は伝えなおす。
「ほんとうの名前、おしえてくれる? 言わないと、きる。」
「────」
この空間よりも、女の目は暗い。ブラックホールを彷彿とさせるような、深い黒の底を何をいまさら、シュンは案じながら、
「……しゅ」
最適解を口に出そうとした途端、静電気のようなささいな電撃が脳を突き刺した。
──あと、ほんとうに些細なことだが、信用のおけない人物に実名を明かすのもやめておいたほうがいい──そんな警鐘を、思い出した。
「なに? どうしたの?」
「…………」
シュンは、女から目をそらした。
小さな停滞の間に、女への疑問が渦巻くのをやめなかった。何故、本名を尋ねるのか。
「言わないと、何もわからないわ」
「ぃ──ッ!?」
停滞に耐えかねた女が、シュンの頬を浅く切りつけた。
じわり、しかし、急激に熱くなるその感覚に、シュンは理解が足りないと発する視線を女にぶつける。女はその頭を掴む手を強くする。
傷を手で押さえようとしながら、たったの刹那に、ようやく判断を誤ったことにシュンは気づく。
「なんで動くのかしら、鈍感なの?」
首元に、それと言葉を突きつけられて、シュンは氷のように動きを止めた。
あふれ出そうな涙も、鼓動も呼吸もおとなしくさせようとしながら、ようやく焦りを自覚する。命の侵害を、自身の無力さを、目の前の脅威を払う手段をひとつしか持っていないことを。
「さ、はやくおしえて?」
女は弄ぶかのように問いかける。子供にやさしく尋ねるようにはっきりとその音を発する、使い道の違うその外面は、ここでは恐怖しか与えない。
だからこそシュンはその言葉の意図を、歪んだ思考で、正しく受け取った。
「──しゅ」
「きこえない」
「……!」
また誤った。首に刃物の迫る感覚がして、いしゅくした喉奥を強引に拡げ
「しゅんです……っ! なまえ、しゅんっていうから──」
「そう、シュンね。」
叫ぶように告げると、女は笑った。
「それじゃあ、シエプ」
「うん」
「あとはお願い」
隣で二人の様子を見ていた、無機質な返事を繰り返す少女が、女と場所を入れ替える。女は横でナイフを向けたままだ。
「うごかないで、じっとしてて」
長くてまっすぐの髪、側頭部に羊のような大きな角がついている。プラスマークの瞳孔が、じっとシュンを見つめている。
両のてのひらを、静かに向けて、
「めをみてて? それで、そらさないで。なにも、わるいことじゃないから」
ふわふわとした言いかたで、言い聞かせる。
シュンはただぼんやりと、その不思議な瞳孔をみつめかえしていた。
「ゆめのせかいは、たましいのせかい。さいごになったら、だれもがひとしく、だれもがいきつく、えいえんのせかい」
その瞳が妖しく光りだし、意識が吸い込まれるような錯覚をする。
「わたしたちのゆめのせかいは、ねがいのせかい。たのしいことも、かなしいことも、ぜんぶおいてあるせかい。すくいも、じごくも、びょうどうに」
視界がぼやけてきた。
ぼんやりとした薄紫の光と、幼い声だけを感じる。
「りそうも、れっとうも、こうふくも、さびしさも、すべてがつどう。そのなかでも、いっぱいのしあわせをみられますように」
視界がほとんど判断できない黒に染まって、声しか届かない。
「おやすみなさい。」
その声も、もう聞こえなくなった。
あとがき
九話目! 無事すべて投稿し終えていたならいいな!
読んでくれた人へ、ほんとうにありがとうございます! ここまであとがきも読んだのならあなたは紛れもなく奇人です! 大好きですよ! マジで
それはそうと、ここで一区切りです。次いつ上げられるんだろう。次の区切りまで今年中は一応メドにしているけれども、正直かなり自信がないです。これからどうなるのか気になって狂いそうというひとは、小説家になろうで旧 いかれた桃源郷があるのでできたら読まないでいただきたいです。めちゃくちゃ変わってしまったから……読んだとしても半分は信じないでほしいし、結構突拍子もないことしているので、なんとも。
そんなこんなで、ここまでご覧いただきありがとうございます。
気分でまた書くので、ぜひまた読みにきてください。