陰の実力者になっちゃった! 作:うおw
花澤さんが演じるキャラで好きなのは
・中野一花
・赤血球
・ポプ子
です。
シド・カゲノーこと俺の朝は早い。
「起床ッ!」
四時間の睡眠を経て起きた彼がまず最初に取る行動は一つ。
「……よし、部屋への侵入形跡なし。」
机の上に飾られている水晶の様なアーティファクトに魔力を込めると、床が紫色に染まる。
教団の拠点を潰した時に偶々見つけたこのアーティファクトは、魔力を込めた人間が就寝や外出など部屋に居ない状況での侵入者の痕跡を残してくれる優れものである。
「こっちは、っと…よし、手帳も無事だな。」
どこかの新世界の神が仕込んでいそうな仕掛けで机の引き出しの二重底を開けると、そこにあるのは一冊の手帳。
シドは手帳を開け、ページを捲る。
「今日か…」
[友人のヒョロ・ガリとジャガ・イモとの実技テストを利用した賭けに負け、王女アレクシア・ミドガルに告白。婚約者候補のゼノンへの当てつけでアレクシアに告白を了承され、偽の恋人同士となる]
それはこの世界の未来を断片的に示した手帳。
そして、今日は学園で行われた魔力を込めた剣術の実技テストの返却日。
「うっかりやり過ぎて罰ゲーム回避、なんて事になってなきゃ良いけど…」
万事上手くいくと良いんだが、と考えシドは手帳をしまった。
ーーーーーーーーーー
「ようシド!テストどうだった?」
「自分達は両方B判定でしたよ!」
教室でボーっとしてると早速ヒョロとジャガが話しかけてきた。
「僕はBマイナスだって。剣術は良いけど魔力量がからっきしみたい」
「って事は…!」
「約束、覚えてるよなぁ!?」
「えぇ…本当にやるの?」
所変わって校舎裏。
今からアレクシアに告白をしなければいけない。
この日のために練習をしてきたとは言え、告白なんて前世(シドに非ず)に一回だけだし緊張してきた…
「いいからとっとと行けよ!俺は人がこっ酷く振られる様を見てえんだ」
なんやコイツ。
「ちくしょー!後でなんか奢れよ!」
「慰めてはあげますからー!」
さて、ここで意識を告白に向ける。
シドとアレクシアが付き合うという原作でも指折りの一大イベント。
アレクシアに告白をするにあたって、俺は何故原作のシドは告白をOKされたのかを考えてみた。
手帳にもメモしてある様に、アレクシアが当て馬として不都合の少ない下級貴族を選んだ。
これが我々読者に提示された理由の一つだ。
だが、下級貴族であろうと上級貴族であろうと一応学園にいる間は制服を着なければならず、見た目で家柄を図る事は中々難しいだろう。
ましてや告白を受けた時のアレクシアの反応からして、シドの事を前から認知していたとも思い難い。
ならば真に決め手となったのは何か。
その事を考えた時、俺の脳裏に忘れかけていた原作のシーンがよぎった。
そう、あの「モブっぽさ100%」の無駄に洗練された告白である。
原作のシドはモブっぽい要素として、滑舌の悪さや目線等を駆使して[自信の無さ]を演出していた。
それもそうだ。
多少なりとも家柄や己に自信があるのなら、あんな卑屈な告白はしないだろう。
つまり、あの告白によってシドは言葉を使わずに己の家柄を暗にアレクシアに示していた事になる。
そこからは行動が早かった。
手帳にメモした事以外の殆どを忘れている記憶を必死に掘り返し、告白方法を研究。
今日に至るという訳だ。
睡眠時間を態々削って編み出した告白法。
外しはしないッ!!
「あ、あ、アレクシアおうにょっ!
ーーーーーーーーーーー
翌日。
「アレクシア王女の推薦で本日からこのクラスに来たシド・カゲノー君だ。みんな、仲良くするように」
「よろしくお願いします」
努力の成果と言うべきか原作通りと言うべきか。
めでたく(?)アレクシア王女と交際する事になった俺は、剣術の実技を受ける為に上級クラスに足を運んだ。
「おまたせ。早速打ち合いしましょうか。」
剣を持って現れたのはアレクシア。
…改めて聴いてもぐにゃぐにゃに曲がる刀と恋の呼吸を使ってきそうな声だ。
五つ子姉妹の長女とかしてそうだな。
「お手柔らかに頼むよ」
「心配しなくても、本気は出さないわ」
そうして始まる打ち合い。
アレクシアの剣を打ち返し、たまにこちらから攻める。
「……あなたの剣、良い剣ね。」
アレクシアが呟く。
「……でも、嫌いな剣」
瞬間、アレクシアの放つ気迫が少しだけ激しい物へと変わる。
恐らくこのままでは剣を弾き落とされるだろう。
だが、舐められっぱなしも癪だ。
「お褒めに預かり光栄、ッと!」
「あら」
アレクシアの剣を弾き返す。
「こちらの事を気遣ってくれたのは有難いけど、ただでさえ場違いな所にいるからね。」
「周りに納得してもらう為にも、少しギアを上げさせてもらう」
ガキンッ!
打ち合いを再開する。
こちらからの攻め込みを少しだけ激しくし、アレクシアとの力関係を五分程度に調整する。
「…ッ!あなた、中々やるじゃない!」
気づけば周りには、同じクラスの生徒が集まってきていた。
「すげぇなアイツ」
「誰か知らないの?」
「確か、あいつの姉が騎士団に仮入団してるっていう…」
「ブジン祭優勝者のクレアさんの弟?へぇ〜」
「やっぱりそうなるよな…」
「シド君、あなた…」
「はいはい、そこまで!そろそろ時間だ!」
ゼノンに止められて、授業終了5分前になっている事に漸く気づいた。
「にしても筋が良いねシド君!誰か師匠がいたりしたのかな?」
「いえ、姉と比べて劣る非才の身なりに努力を続けたまでですよ」
「良ければこの後少し稽古でも「先生、私たちこの後デートなので、失礼します。」
アレクシアに抱き寄せられる。
さて、問題はこの後か。
にしても、抱き寄せられた場所が不味いな。
いやある意味美味しいけども。
あっ、あっ…
Oh…Yeah…
ーーーーーーーーーーーー
「成程ね。察する所、俺は当て馬にされたわけか。」
「理解が早くて助かるわ、罰ゲームで告白してきたシド君?」
校舎裏でアレクシアと話す。
後は原作通りにゼノンへの不安を引き出せば今日は終わりだ。
「ていうかあなた、そっちが素なのね」
「そっちが仮面を外すなら俺もそうするまでだ」
「なあ、いくつか質問して良いか?」
「何よ」
「いや、ゼノン先生のどこが不満なんだろうと思って」
「何もかもよ。欠点が無い人間なんていない。でもあいつの胡散臭い顔ときたら!婚約者に弱みの一つも見せない人間なんて面白く無いもの」
「今日の打ち合いの時、どうして急に俺の剣が嫌いなんて言い出したんだ?」
「あなたの剣は私と同じ、凡人の剣。所詮ゼノンやアイリス姉様のような才能はない。それなりに努力したつもりではあるけど、それでも結局追いつけ無いのよ」
「そんな時、ブジン祭で姉様に負けた時に言われたわ。『私はアレクシアの剣が好きよ』って。どれほど屈辱だったか!どれほど悔しかったか!だから私は、私の剣が嫌い。」
「………ふーん。」
「こっちからも一つ、答えなさい」
「何?」
「あなたのその剣、悪くない太刀筋だった。
でもあなたの姉は確かブジン祭優勝経験もある実力者。あなたとは才能という点で差がある筈。」
「その洗練された凡人の剣、何処で、どうやって習得したの?」
困った。
こんな質問原作にあったか?
ってか凡人の剣云々のくだりってもうちょい後じゃなかったか?うろ覚えだけど。
「ちょっと、聞いてるの?」
うーん…
ただ鍛錬の時間の差なんて言ってもプライド的に受け入れられるとは思えないし、どうしたものか…
そうだ!
「昔盗賊に襲われかけた時に、通りすがりの魔剣士が助けてくれてな。そこから一ヶ月くらいしかなかったけど弟子入りしたんだよ」
結局名前も教えてもらえなかったんだけどな、なんて適当な事を言って誤魔化す。
「……ねえ、あなたから見てその魔剣士ってどれくらい強かった?」
「知ってる中では誰にも負けないかな」
「…姉様よりも強い?紅の騎士団、アイリス・ミドガルよりも?」
「うん。最強」
まあ通りすがりも何も俺の事だしな。
アレクシアを救い出す時に適当にそれっぽい事でも言って帳尻合わせすりゃいいだろ。
「あなたに一つ、提案があるんだけど」
「なんだよ」
「あなたが罰ゲームで告白してきた事を黙っておく代わりに、私に剣を教えなさい」
…マジ?
「で?どうなのよ?」
「提案っつーか命令じゃん…。わかったよ」
え?マジで?
明日からどうしよう…
・シド(偽)
なんの因果かモブ式告白法に辿り着いてしまった。
「やっぱりそうなるよな…」は
(やっべムキになりすぎたわ)が正解。
原作通りって散々言ってる割にはオリチャーをぶっ込みまくるせいで原作通りにいかない。
原作通りのポチ扱いで小銭を稼ぐ計画がおじゃんになった。
おバカ。
・ヒョロ&ジャガ
腹いせに一番高い学食を奢らさせられた。
・アレクシア王女
「やっぱりそうなるよな…」を好意的に解釈した。
(あなたも姉との差に苦しんでるの…?)ってなった結果シドへの当たりがちょっとだけ優しくなってポチ扱いしなくなった。
シド(偽)と師弟関係になった。
幕間(日常回)好きかい?
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うん!大好きSA!
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本編書いて、役目でしょ