隣の君と日を向いて   作:ジェイヌ

3 / 12
Q展開早くね?

A劇場として展開するならあまり話数多くできる自信ないっす


EP3.『アカネ』『アオイ』、『茜』『葵』

とある放課後。

帰ろうとする間際に呼び掛けられた声に、主は戦慄した。

「なぁ〜なぁ〜主クぅン。」

 

委員会の必要性で声をかけられるのはわかる。

もはや摂理として受け止めるべき事象だ。

だが、『今』はどうだ。

『私』だ。

圧倒的『公私』の『私』ッ!!!

 

堪らず主は咄嗟に、バッグへしまおうとした本で顔面を遮った。

まるで『盾』を構える如く。

否、主は実際に構えたのだ。

『心の盾』をッ!!!!

 

「ス、スンマセン、ヒトチガイっす……」

「なん〜〜でやねん!?!?」

的外れに展開した防御に、少女・茜の声が轟いた……

 

 

〜EP3.『アカネ』『アオイ』、『茜』『葵』〜

 

保健委員がそうであるように、学級委員も体育委員もそうであるように、行事支援委員も定例ミーティングの日ばかりに動けば良いというわけではない。

平時にも他委員から要請を受けることがある。

やっぱ『委員会支援委員会』じゃねーかオイ。

 

そんな訳で図書委員からの依頼を終えた図書室にて。

ついでにと葵がいくつかの本を借りる事にした。

が……

 

「ん…届かない。」

爪先と腕を精一杯伸ばすも書架の上段は叶わなかったようで、渋々とステップ台を探そうと辺りを見回す。

「あ、コトノハサン。取るよ、どれ?」

たまたまこの辺りに差し掛かったらしき主が声を掛ける。

「あっ、主くん。じゃ、じゃあ、そこの…」

タイトルを読み上げると、主が伸ばした手に目当ての本を収めて渡す。

「あ、ありがとう、主くん…」

いえいえ〜、素っ気ないと言うか淡々としていると言うか、そんな調子で返した彼は続ける。

「他には?」

「え、あっ…とりあえずは、これで良いかな。」

納得したらしく先を歩き出す主。

その背中を見ると、ふと委員会の度に愚痴を漏らしながらもテキパキと作業をこなして手助けまでしてくれる姿を思い返してしまう。

理屈っぽいような屁理屈っぽいような雑感を並べ立て、それでいて周りまで気に掛ける、なんとも不思議な人という印象だ。

「まぁ〜つまるとこ、ブキッチョやんな。」

茜はそう笑い飛ばすがしかし、『頼もしい人』なのは間違いない。

今も…そこまで考えていると、借りる手続きを済ませ、茜の待つ出口が近いことに気付き、切り替える。

「な〜んや。エラい嬉しそうやん?」

「そっ、そうかな…??」

その場は濁し、図書室を後にすれば主とは解散かと思いきや…?

 

「主、急ですまへん…大事な用事あらへんならちょっとええか?」

「コトノハオネエサン?どうかした?」

ピクリ、主には背中を向け続けているが、微かな肩の動きを葵は見る。

「(お姉ちゃん、遂にやる気だね。それなら…)」

「ちょっとクラス来てくれへん?葵も。」

ああ…気弱な返事で主が続く。

葵も勿論OKだ…というよりいつかはやるだろうという気はしていた。

 

・・・

 

で、予告通り放課後の無人クラスで3人適当な席に寄り集まるように座ると、

「主クンさぁ…」

茜が目論見通りに先陣を切った。

「ええ加減その『コトノハオネエサン』言うの気味悪いんやけど。『茜』やで?」

「え?」

茜の言葉に主が抜けたような声を出す。

まぁこれは想定内だろう。

ふと、葵が続くように口を開く。

「そうだよ、主くん。『葵』で良いんだよ。」

「そーそ…おろ?」

便乗する葵に茜が同意しかけるが、何か引っかかりを感じたのか少し躓く。

ともあれ些事だと思い直して主を見据えると、何やら黙りこくって頬を掻く。

「そうは…言われても。なぁ…」

委員会活動中はくどくど妙に饒舌な割に、個人としての対話はやたら歯切れ悪いところもいつも通り。

しかし茜はチャンスと捉えたのか、ニッと歯を見せて笑いながらわざとらしく言う。

「なん〜や、恥ずかしいんか?ややこしい奴らを呼びやすくできるんやからオトクやで?照れんなやオイ。」

うわぁ意地悪な顔…でもずっと気にしていたもんね。

内心で思いながらくすくすと笑みをこぼしてしまう。

 

「そっ、そーゆーのじゃないよっ。ただ、その…」

一瞬語気を強めるも、すぐ何も無かったような歯切れの悪さを残して主は言葉を詰まらせた。

『ただ』?催促するように茜、やはり気にはなるので続くように葵が首を傾ける。

ハァ…ため息をひとつ、観念しながらも気不味そうに視線を泳がせながら主が口を開いた。

「僕、こういう係とか委員会活動的なのでくらいしか女の子と話したことないし…況してや下の名前で呼んだことなんてないし……」

 

・・・

 

「なんやン〜なことかぁ。そんなんすぐ慣れるって!」

「簡単に言うな、『女子の名前を呼ぶのにハードルを感じる勢力』は幾らでもいるし共感も呼ぶ。恐らくは読者諸氏の8割以上は」

「主くん、『ダメ』。」

「ごめんね?」

「いいよ?」

「なんや今の?とにかく、いつまでもコトノハオネエサンコトノハオネエサンはシンプルにきっしょいねん。ほらアンタ女子にきしょいまで言われとんねんで。」

「言われているのは呼称そのものだろう?僕だとしてもまぁ…キショイのは知ってる。」

なんやこの捻くれメンタル、ねじれた軸が寄り集まって逆に図太くなっとるやんけ…茜は呆れ交じりにそんなことを考える。

「なんやねん主、ウチが『茜って呼ばれる方が好き』のLikeを尊重してくれへんのけ?」

「メンタリティ上簡単にできることじゃない、という相手の『欠陥』は配慮してくれないのかい?」

不毛な押問答が続く中、一人顎に指を添えていた葵は不意に口を開く。

「ねぇ、主くんはさ…」

「っ、コトノハサン?」

「どった葵?」

二人が突然の乱入に驚きを見せるが、葵は気にせず続ける。

「私達との支援委員のこと、どう思ってるの?」

え……思わず言葉を詰まらせる。

「どう、てのは…つまり…?」

降参のように音を上げると、葵は覗き込むように首を傾ける。

「やっぱり、その…『じゃんけんに負けただけ』だから、楽しく、ない…?」

う゛…不安も諭すような素振りも感じさせない、淡々と事実を確認するような言い方に思わず言葉が詰まる。

いや、そもそもに立ち返れば、だ…

「いや、その…『やることになった以上、やるしかない』と思ってるから、正直コトノハサン達とか関係なく楽しいとかつまらないとかを思ったことないんだ…なんか、ゴメン…」

そっか…突然の問いかけにしどろもどろな主、そんな様子を見ていた茜に目線を送る。

にまり、口元が少し上がる。

「ウチはな、楽しいで。そもそもおもろそう言うて入った身やし、主も頼もしいしな。」

「たのもっ!?え…?」

茜の追い打ちに困惑気味に応える姿に葵も小さく微笑む。

「私も、楽しいよ。貴方にも色々と助けられてるし。」

「そ、そう、かい…?」

かなり揺らいでいる、もう一押しだろうか。

「それに、ね…私達は、同じクラスになって、流れはともあれ同じ委員会になって…折角なら主くんと仲良くなりたいかなって思ってるの。」

「こ、コトノハサン…??今日は、どしたのカナ…?」

いつになく攻め込んでくるような距離感に主の目線がまたしても目まぐるしくふらつく、完全に処理落ち(じゃむじゃむじゃむ)だ。

つまりアレや、そう茜がまたしても切り出した。

「もし主が委員会が嫌いやないとか、ウチらと活動するんが苦やないとか思えるんなら、な、ウチの…」

そこまで言いかけて見守る葵にちらりと視線を送ってから話を戻す。

「『ウチら』のこと名前で呼んでくれへん?『茜』『葵』ってな。」

「・・・」

汗ばみ、今一歩を踏みあぐねている主。

ごめんね、主くん…でも、私も同じ気持ちだから。

そう葵も内心呟いていると、茜が追い討ちのように言った。

「あ〜せやせや。『支援委員もウチらもうんざり』言うんやったら別に今まで通りの呼び方を貫いたってウチは怒らへんよ。」

「なっ!?」

「んもぅ、お姉ちゃん…」

意地悪なニヤケ顔で言う姿に呆れながらもつい笑ってしまう。

 

やれやれ、主は何度目かもわからないため息もつく。

メロドラマとかならばこういう選択を迫られた主人公はきっと『ずるい』と言うのだろう。

とは言えコレは…

「それはもはや『脅迫(せこい)』だろ。」

まぁ、ウン…彼の言い分にくすくすと思わず笑う2人。

 

一瞬、固唾を呑む。

 

そして意を決したように主は言う。

 

「わかったよ、えっと…『あカ、ね』…」

「はいな。」

「…私は?」

「あ、『あ、ぉぃ』…」

「っ!ふふ、ありがとう。」

何だか不思議なーー胸を打つ感覚に顔が緩みかけるのを必死に抑える。

「フフッ、イントネーションガバガバやんけ。まぁ合格でエエっか。さて帰ろか!」

脱力どころか魂まで抜けたように長く息を吐く主をヨソに立ち上がってバッグを取る茜。

でもごめんね主くん、お姉ちゃんはそれじゃ終わらないかも。

「なぁ主も一緒に帰らへん?」

「ことっ……、アカネ…言ったろ?僕は女の子とまともに喋ったこともないって、況してや」

「やぁ〜からこうやってウチらで慣れてきゃええやんか、いつまでもそれやと通用せんで?な、葵も一緒に帰りたいやろ?」

余韻を感じていた矢先に急に振ってくる話題に思わず声が上擦る。

「おっ、おね…!?う、ウン…私も、主くんさえ、良かったら……」

「決まりやな〜」

完全に姉妹のペースにのまれた、敵わんな。

やれやれと気まずく頭を掻きながら主も二人に続くように立ち上がった。

 

昇降口まで来るが、葵は何やら置き忘れがあったらしく二人を促して引き返していった。

「それにしても今日はたまげたなぁ〜」

「一番疲労困憊は僕だ。」

茜の言い分に、不服ともジョークともつかない口調で主が挟む。

「も〜、そうやないねん。葵のことやで。」

「え、なんで?」

そういう彼に対し、茜はどこか楽しげに続ける。

「葵な、あんな性格やし…ウチが茜って呼ばれる方が気楽やからな。基本的に…特に男子にはアンタみたいに苗字で呼ばれることの方が多いねん。ウチが名前で呼ばれてれば区別もつくしな。」

いまいち要領を得ない、そう思いながらも思い返すとハッと主も気付く。

「せやから、葵がうちの要望をアシストはしてくれても、まぁさか自分まで名前で呼んでほしいまで言い出すとは思わんかったわ。」

「それまた、なんで…?」

「んっふふ〜、なんでやろなぁ〜?ウチにもわからへんなぁ〜」

じんわりと浮かぶ汗を拭うが、茜はいつものへらへらとした語調で返す。

 

 

「ごめん、お待たせ。」

程なくして本人がやってきた。

しおらしい笑顔で歩み寄ってくる姿に、どこかくすぐったい疼きを感じる。

すこし気が抜けたように緩む妹の口元…その頬を姉は興味本位でつつく。

「わ!ちょ、お姉ちゃん!?」

「なんやあったかいな葵。今日はありがとな。」

「もぅ…私こそ、だよ。」

二人、笑い合いながら新たな友人と三人で歩く。

 

あかね色の夕とあおい色の帳とが交わる放課後の空は、どこかいつもより眩しかった……

 

 

EP3ーーE N D




『あかね色の夕』とか『じゃむじゃむじゃむ』とかこういう小ネタ投げ込むの楽しいもっとやりたい()
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。