隣の君と日を向いて   作:ジェイヌ

7 / 12
いい話にまとまってるぽく見せかけてるけど例によってロクでもねぇ構文をしれっと仕込んでいます。

というか正直入れなくてもいい話だったんだけど、ぐろっくくんにこの話振ってみたらなんか良い感じに受け止めてくれたので組み込みました()
なんならコレを起点にして主の根底的には後ろ暗いキャラ付けが本格化したみたいなとこあります(汗)


EP7.自分らしさ

「やっべ!?」

 

数秒してから響く声に茜が振り返るとともに蒼白し、その背を追う。

無我夢中で飛び込んだ彼は膝の痛みも気にせずにそのまま腹に飛び込む衝撃を全力で受け止めた。

 

「主ー!!」「主くん!!」

聞き慣れた声を筆頭に、まばらな影がこちらに駆け寄ってきた…

 

〜EP7.自分らしさ〜

 

「あ゛ー、もうちょい上げるか…」

茜は、パレットと共に資材らしき箱を載せたハンドリフトの取手部を数度ガクガクと漕いでツメを高く上げる。

少しは動きやすくなったな、小さく笑いながら茜は引き続きリフトを引っ張ってまた歩き出す…

 

本日の支援委員会は、何やら搬入された資材を、指定された駐車スペースの一角に置いていく、とのことだった。

「んなことまで生徒頼りかよ…」

相変わらず主はそう吐き捨てながらもキレ良く状況を確認しながら自身も作業を進めていく。

何だかんだで順調に進み、残るは茜が牽いている分だけのようだ。

茜とて特段に…葵と対照的に運動が優れているという訳でもないが、彼女や主がやるような書類をどうのと言った動作よりかは、こちらの方が動きやすくて性に合うようだ。

 

ともあれ、彼女はなんとか最後のスペースに荷物を停め一息ついた。

すぐに少しだけ寄り掛かってため息をひとつ、

「さってと、ちょいと休んでも怒られへんやろ…」

そのまま、パレットを降ろさずツメを上げたままのリフト諸共に、資材に身体が離れた勢いの負荷が掛かったことも気付かず意気揚々と小走りで反対の方向へ駆けていく。

 

やがて彼女は、近づくひとつの影に気付く。

「お〜い、主!荷物は全部終わったで〜!」

「ああ、ありがとうアカネ。今から数えとく。」

手を振り返し、足早に去る茜の姿を見送りながら少し口元を緩めた。

未だにボヤキながらもやらねばならぬと臨むくらいなら、こんな作業ですら笑顔で切り抜けられる彼女の姿をもう少し学ぶべきだろうな…自分のことながらそんな雑感を抱いて一人首を振る…

 

さてと…そこまで考えながら振り返った時、その口元は一瞬にして強張った。

見れば、片隅の資材が上がったままのハンドリフトがじわじわとひとりでに車輪を回しているではないか。

 

「ッ!やっべ!?」

決して速い訳ではないが、経験上アイツは一度勢いがつくと簡単には止まらない。

なんと言っても向かっている先がそばのスロープだ。

遅いと言えどもあまり悠長に見てはいられないだろう。

無我夢中…決して主は俊足でもないが、それでもとにかく不慣れなりに駆け寄った。

勢い付いて膝からのめるも、その両腕と胸はリフトの取手を受け止め、その身に資材の重量を迎え入れた…

 

決して間一髪と言う程大袈裟なものでもなければ、幸いにしてリフトがギリギリスロープ手前まで来ていたなどのドラマティックも無い。

だが、主にとってそれは肝も凍てつくような思いには違い無いだろう。

やれやれ…胸を撫で下ろす彼に、やがて幾つかの声が聞こえてくる。

「主ー!!」「主くん!!」

「ちょオイオイ。おまっ、大丈夫かよ!?」

聞き慣れた声を筆頭に、まばらな影が次々と駆け寄ってくるではないか。

 

あ、ああ…ゆったり立ち上がって委員の面々に手を翳して応じるが、先陣を切るように血の気が引いた茜が目の前に飛び込んで深々と頭を下げる。

「主、ごめん!ウチがちゃんと下ろさんかったから!」

ずきり…泣き出しそうな顔に思わずたじろぐが、すぐに言葉を選ぶ。

「いや、気にするな。よくあることだし、僕もちゃんとそこは皆に言っときゃ良かったな。」

主くん!次に飛び込んできたのは葵だ。

茜と同じく気弱な面持ちで彼女は捲し立てるように言う。

「大丈夫?ぶつけなかった!?あと転んでたよね、血は出てない!?」

「大袈裟だよ、アオイ。運動不足の賜物だ、つってな…」

ずきり…葵を心配させまいと言うよりは、自身の内に重なる感覚を誤魔化すように、努めておどけた口を開く。

おいおい…呆れたように笑う悪友が彼の肩に腕を回し陽気に笑った。

「フォローになってねーっつの!何にせよお前が無事そうで何よりだよ。ありがとな。」

「あ、ああ…」

悪友の笑顔に、どこか歯切れ悪く返す様に、少し彼は顔を顰める。

しかし、程なくして空気は事なきを得た安堵へ変わり、和気藹々と和らいでいった。

「もぅ、お姉ちゃんは雑なんだよ。ちゃんとこういう作業は自分でも最終確認して!」

「ハイ。気をつけます…」

いつになく眉をつり上げて声荒く詰め寄る葵に、これまたいつになく塩を振った青菜のように意気消沈する茜。

当人にとっては洒落でもなかろうが、それでも大事に至らず済んだという事実には周りも解き放たれたようであり、その姉妹の光景に思わず笑いが漏れてしまう。

 

ただ独りを除いて…

 

「……」

主だけは、その和やかな輪に入れずにいた。

今はまだ、この感情を受け止めるには賑やか過ぎる。

なんでこんなに笑って自分の心配なんかしているんだろう。

主は独り、そう考えながら居た堪れないようにやや早歩きでその場を後にする。

「主?」「主くん?」

茜と葵がまずその異変に首を傾げる。

「あー…やべぇ、かも…」

悪友が先程の違和感を回収するように、頬を掻きながらポツリと呟くと、姉妹が食いつくように振り向いた。

 

※ ※ ※

 

自分のクラスで席に座り、主は頭を抱える。

「アカネがあんなにも沈んだ顔を見せるなんてな…」

そりゃそうか、自分の確認不足があったとは言え、一歩間違えば惨事になっていたのは変わらない。

「アオイにしたって、いつになく取り乱していたな。」

やはりゆかりやあかりが力説するように、彼女達は紛れもなく自分の友達で居てくれているのだろう。

ならばこそ、自分は彼女達を支える者としてもっと細心に気を配っておくべきだったのだ。

じわり…今になって傷が浅いはずの膝に痛みが滲み出す程に、主は委員会での2人の姿を思い出す。

茜にはコミュニケーションという、自分には無い圧倒的な強みで空気を和ませ、場を回してくれる力がある。

葵はあくまでもサポートという立ち位置でありながら、書類関係の処理が丁寧であり、自分も何度不備の指摘を受けて助けられたことか。

ソレに引き換え自分はどうだろう。

「…そうだな、全部僕のミスなんだな。」

ちょっとした食い違いで周りに迷惑をかけた自分の責任だ。

「最近、勝手に社交的になれたと思い上がって、周りに要らない心配ばっか振りまいたようなもんだ…」

自分なんか自分の全責任で退学にでもなれば良いんだろうか?

ああ、『敵』『敵』『敵』…

 

「僕自身が『敵』だわな…」

 

運良く事態を止められただけであり、あの一件が下手をすれば一大事を引き起こしていたのは間違いない。

 

 

 

主!ガラリと戸が開く音が聞こえ、振り返ると、顔馴染みの女子が二人、佇んでいるではないか。

 

「アカネ、アオイ…!なんで…?」

「アンタのことやし、まず思うとこあったら教室かと思ったわ…」

いつもよりゆったりとした足取りと、相変わらず神妙な面持ちで茜が歩み寄る。

後ろからはやはり心配そうに葵が付き添う。

「主!ごめんなさいっ!」

またしても茜が目の前に来るなり深々と頭を下げる。

「よせよ、アカネ。君がそこまで…」

ちゃうねん!主を遮るように頭を下げたまま彼女は続ける。

「リフト片し忘れたんはウチなんやもん!せやから主がそんなに思い詰めんといて!」

「それにしたって、僕がもっと勧告を徹底していれば…」

ちがうよ…静かながらも葵が口を挟んだ。

「それは皆自分で気をつけることだよ、主くんがそんなに気負わなくって良いの。」

「アオイ…」

それにね…主の言葉を待つよりも早く、彼女はやはり言葉を続ける。

「確かに主くんは人と喋るの苦手かもしれないし、お姉ちゃんが打ち合わせとかの空気を柔らかくしてるかもしれないけど、それでもちゃんと打ち合わせとして話を進めているのは貴方だよ…」

せやせや、自責による緊迫が和らいできたのか、少しほほ笑みを取り戻しながら茜も繋ぐ。

「葵もいつも言っとるで、アンタは相手ができることを選んでくれて、無理に苦手なことをさせないようにするから優しいって…」

「それは…全体的な効率の観点で…」

「それかて、人が動きやすいよう考えとるっちゅうこった。」

最近になって、もはや見透かされたように言葉の先回りが増えてきた、そんな気がして思わずたじろぐ。

 

「そして実際に今日、また私達は皆主くんに助けられたよ。」

だから主くん…隣に腰掛けた葵が最後に一押しするように口を開いた。

「あまり自分を傷付けないで。私達はね、委員とかじゃなくて友達として、貴方にもっと笑っていて欲しいの…」

「『自分が敵』やってなんのこっちゃか知らへんけどな、ウチらはアンタの『味方』やで、ゆかりもあかりも、悪友どもも、やろ?」

そう悪戯っぽく笑う姿はもう自分の知っているいつもの茜だ。

優しく微笑んで柔らかな喋り方をする姿はもう自分の知っているいつもの葵だ。

「ア…茜、葵……ごめん、ありが、とう…」

膝を擦った痛みはいつの間にか治まっていた…

「せやから、『ごめん』も『ありがとう』もウチの言い分やねん!」

あっけらかんと笑う茜に、ふと主は思い出したように口を開く。

「でも、よく僕の状況が分かったな?」

「まぁあの流れからあんな姿見りゃ一発やろ。それに悪友の奴がな…」

 

そう茜は悪友の話を思い起こす。

それは彼が語ったいつぞやの喧嘩のことだ。

「アン時、今思えばオレ自身もバカだったって思えるレベルだし、周りも満場一致でオレのが悪いって話だったのに、アイツオレなんかより気に掛けてたんだよ。なんにせよ、主の奴は真面目の方向がなんか歪んでるからな、こういう時に消えるんはヤベんだわ。」

そうどこか呆れたように笑いながら我に返ると、既に茜と葵の背は遠くなっていた…

アイツ…主はなんとなく携帯電話を開く。

案の定そこには件の悪友のメッセージが更新されていた。

 

『悪友:ジャンケンで負けただけ、なのに何でもかんでも自分のミスと思ってんじゃねーよ』

 

「(アイツ、勝手に恩作りやがって…)」

わざわざ得意げな…所謂ドヤ顔を誇示するようなイラストスタンプを添えたログに思わず主は口を緩めた。

 

おっしゃ!相変わらず元気を取り戻したように茜が声を上げる。

「話も済んだんやし、さっさか帰るで〜!そや、アイス寄ってかん?葵も好きやろ、チョコミント!」

「」

 

その瞬間、温まり始めた空気がまたしても張り詰めたように感じた。

 

程なくして、

「お姉ちゃん!?そ、そういうの今は良いよ!」

次に声を荒らげたのは葵だ。

「へ?ウチなんかアカンこと言うた?」

「もぅ、主くんに聞こえるから…!」

あたふたと手を振って遮る姿に、いまいち要領を得ず、茜は首傾げてしまう。

先とはまた別のベクトルで焦る葵の姿に主は訝しんだ。

「別にええやろ。なんなら好み知っとったほうが後々便利やん?」

「絶対変な子って思われる…!」

コイツもしや?顔を赤らめ、人さし指を突き合わせる姿に、にんまりと口角を上げた茜がわざとらしく続けた。

「なんや、いつも『歯磨き粉つったら●す』くらいの覇気漂わせて、チョコミントに関しては誰に何を言われようが我が道を行くって感じやんけ。なぁ主、それはそれはもうこの子の情熱たるや」

葵「茜ぇええ!!!」

奇声か悲鳴か、姉の肩を掴んで揺らす葵。

所謂キャラ崩壊か…?

とは言え、言葉を収めるには率直に事実を言うしかあるまい。

「僕好きだけど、チョコミント…」

 

・・・

 

一瞬にして静寂…手を止めた葵は、いつもより大きく目を開き、主を見る。

「主、くん…今なんて…?」

「あー…店とかで見かけたら一回頼んでみるくらいには好き、だよ…」

俯き、肩を震わせる葵の姿に首を傾げる。

「葵…?」

 

「良かった、すごく嬉しい…!」

「ッ!?そ、そうかい…?」

ぱぁっ…と光が差すような…今まで見たことのない笑顔で顔を上げた姿に思わず息を呑むが、即座に葵は背を向けてしまう。

「や、やだ。こんなことではしゃいだら、はしたないよね…?」

我に返る姿に、どこか気まずそうに主は頭を掻いた。

「嬉しい時くらい、素直に喜んでも良いと思う。」

「おうおうおう、だぁ〜れが『素直』を語っとんねん。」

ブフッ!頭をつんのめらせながら吹き出した茜が肩を竦めるが、主は気にせずに話し続ける。

「それにさ、そんなことで『はしたない』なんて言ったら、茜はモンスターメンタルだよ。」

 

「てめぇ様は、何を言ってくれちゃっとんねんヤナー?」

「うゎこわ…ごめんて。」

どこぞのスライム状生物を思わせる虚ろな表情と異様に甲高い声で鬼詰めする茜、その姿を焦り気味に諌める主…コントのような様相に葵がくすくすと笑う。

 

ともあれ、そろそろ帰ろう、茜の号令に二人もバッグを持ち直し、今一度教室を後にした…

 

 

「あ、そーそー主。さっきの話やけどな。完璧超人なんて目指したって疲れるだけやで。アンタが手際の良い優等生や尊敬しとる葵かてな、昔から今でもウチと一緒に寝るのが大好きな甘えん坊の…「茜ぇええ!!!」あおっ、ギブ、ギブアップ!!」

奇声、或いは悲鳴…そしてヘッドロック。

もはや絶叫というより発狂。

そんな光景を前にして…

 

「フッ…はははは…!」

 

低くも無邪気な声が響いた途端、手を止めて姉妹は彼に目を向ける。

 

「主…!?」「主くん…?」

「あっ、ご、ごめん。えと、失礼……」

 

が、即座に主は口を噤んで顔ごと横に背けた。

友人の弱いところを笑うなど、流石に無礼だったな。

そんなことを考える少年には…

 

『ちゃうねん!』『そうじゃないよぉ…!』

二人の少女の心などまだ届きそうにはなかった…

 

EP.7ーーE N D

 




なんかボイ創作ってテセウスの船みたいだな、
自分はちゃんと『琴葉茜』と『琴葉葵』を描けているのだろうか。
そんなことを思ってしまう(哲学)

姉だけ関西弁で話す姉を書けている?そういう話でない(確信)

そしてまた文字数が更新された。
幾つかの案から短くなりそうなのを繋げたりしてるからそういう時もあります。
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