ついでに主も倍増しできっしょいです。
でもこういう文体書いちゃう、僕の悪い癖です。
今日はあれこれやってた支援委員会に関する書類の整理だ。
目の前では項垂れた頭を抱えて悶える茜にテキパキと葵が解説していく。
「うあー、ここは何書きゃええのん?」
「ここは…私達は大丈夫だね。この下、書いて。」
主としては、無理に苦手を克服するより適材適所でスムーズに進むように頑張ってほしいところではあるが、第一に今日は他の作業がなかったこと、第二に…
「お姉ちゃんは自分からやりたいって言って入ったんだし、主くんにばかり負担かけていられないでしょ?少しくらい覚えなきゃ。」
葵はそう穏やかな表情で言ってこそいるが、心の奥底に灯る確かな圧が、彼女の言い分の否定を絶対に赦さない意志を感じる。
どうも先日のハンドリフトの一件に対し、彼女なりに責任を感じてこその教育姿勢らしい。
主自身に絡んだ事象を引き合いに出されるとあまり反論もできず、今に至る…
〜EP8.Twilight−Blue〜
主が行事支援委員に入ってから随分と経った。
綺麗な顔立ちも相俟ってまさしく人形のように瓜二つな双子の顔も、見分けがつくようになってきたな…
二人して書類を前にあくせくする様子を見ながら、なんとなくそんなことを思う。
勿論輪郭や目鼻立ちなどのベースな部分は限りなく近いのだろうが、表情筋の動きや所作が性格と結びつく事もあってか、いつの間にやら黙っていても一発で当てられるほどには全然違う顔だと感じるようになっていた。
書類整理をイヤイヤ言いながらも、口を大きく開けて楽しそうに笑う姉の茜は目元もぱっちりとした溌剌系の顔立ちで、愛嬌がある。
人懐っこく、自分のような地味で捉えどころの無い奴にも隔てなく絡んでくる姿は、いわゆる『犬系』と言った感じで可愛らしい…
そう、くるくると表情豊かな様子も相まって『可愛い系』の顔立ちと言える。
一方、対する妹の葵は、『猫系』と言ったところか。
いつも伏目がちで大人しい、どこか物憂げな雰囲気は距離感を取りづらく感じるが、ひとたび内面を知ると柔らかく落ち着いた表情を見せてくれる。
ふわりと感情を見せる姿はどちらかと言えば可愛いよりかは美しいーーいわゆる『美人系』だ。
それでいて先日彼女の好物を巡って見せてくれた無垢で素直な笑顔には驚かされた。
そういう姿はやはり『茜と瓜二つの双子である』というベースを感じる愛らしさで、どこか新鮮な気持ちを揺さぶられたのは記憶に新しい…
・・・そこまで考えていた時、不意に思い至る。
マジで何を語っているんだ?
たかだか自分ごときが、会って間もないような女性を見定めたような態度を取るのは、いくらなんでも無礼、不遜、恥知らずの極みではないか。
ゴーマニズムを爆発させたるはおこがまシティの終身名誉おこがま市長、思い上がリンピックに出場した暁には万年金メダリストもほしいままの
「(そうか、きっと僕は疲れているんだ。)」
ともあれ、自制と自省をしよう。
余計なことは考えるほど綻びとなる。
そんなことを自問していると、ふと視線の先のふたつの顔が持ち上がる。
「主くん、どうしたの…?」
自分でもわかる、ほぼ間違いなく眉間を寄せた顰め面をしていたのだろう。
葵はやや心配そうな面持ちでこちらを窺う。
「なんやなんやぁ?ウチらの美貌にでも見惚れとったんかぁ?」
歯を見せながらニマニマとそこ意地悪そうに笑って煽るのは茜ーーこういうところも見事に対照的だ。
「なっ!?」
そんなことを考える暇など当然無い。
ある意味では図星だ。
しかし、ここで慌てても否定すれば丸く収まるようなことだろうが、この主という男はどうにも中途半端に真面目な軸があるもんで、余計且つ無駄な冷静さが咄嗟の判断と絡み合った結果、
「あっ、えと…そ、そ う だ よ 。」
彼はそう応えた。
・・・
「ふぁ!?」「ッ!?!?」
瞬間、茜が椅子をガリガリ鳴らしながら椅子ごと後退って仰け反り、葵は紅差す顔を包むように両手を添えて深々と俯いた。
「…アッ!?」
主も失態に気付き、無意識に火照る顔で咄嗟に横を向く。
「ななっな、なんやてーキミ!?まっ、ま真面目そ〜なツラして、結ッッ構言いよるなぁ!?」
「あっ、ゴメッ、イヤッ、オッ、即答で『美貌』を否定するのは失礼だと思ったらなんかややこしく…!!」
まぁ、『見惚れていた』というのも間違ってもいなかったし。
「なな、なんでや!文脈的に否定されるのは『見惚れてたかどうか』で、しかないやん!!」
日頃男子相手でも割かし無遠慮な距離の詰め方をする茜でさえ度肝を抜かれたらしく、わざとらしく指を突きつけながら、まさに茜色に上気した顔と引き攣った口元は、爆笑しながらも照れが混じっているのが目に見える。
「〜ッ!!」
二人が苦し紛れに言い合う中、葵は熱の冷めやらぬ頬を押さえたまま、顔も上げられずにグルグルと目まぐるしい視線の向けどころに迷っているではないか。
何か気の利いたことを言おうにも全く言葉が出てこない状態だ。
「あは、はは…やっぱ、主ぃ…おもろいわ〜。名前で呼ぶんも馴染んできたしぃ、主自身素を見してくれるようなったしぃ?い、委員会もまぁ〜、なんや。もっと楽しくなるなっ!葵〜?」
乾いた笑いを漏らしながらも、なんとか場を収めようとヤケクソ紛いに話を締めようとする茜は葵に目を向ける。
「ッ!?…ッ!!ッ!!」
当の葵は咄嗟に声が出ないようで、やはりヤケクソ気味に連続且つ高速の頷きで応じていた。
「あ、葵ちゃん声出とらんやんけ…」
ヤバい、言葉はともかく軽率な自分が発端なのだ。
ハラを決めた主は床に…手をつこうとするも、アングルが最悪になりそうだったので机に三角形を象って両手をつき、勢いよく頭をーーそれこそ板面に叩きつける勢いで振り下ろした。
「こ゛め゛ん゛な゛さ゛い゛!!!」
「主!?戻ってこ〜い!?」「えぇっ!?」
※ ※ ※
帰り道、偶然学級委員のミーティングを終えたらしいゆかりと鉢合わせた流れで同伴し電車に乗るも、今日はやけに乗客が多く、乗り口の余裕を鑑みた結果、位置関係的にゆかりと茜、主と葵とで分断される形になってしまった。
語弊しかない言い分になるが最悪だ。
主は心で漏らす。
否、ただでさえそんなに話したわけでもなければそもそもファーストコンタクトが最悪(主くん比)なゆかりと二人きりにでもなってみろ。
彼女の以前の仕打ちと、今日の自分達三人の複雑な空気を察したように澄まし顔で首を傾げていた様子を思えば、二人きりを良いことに何を言い出すかはもはや見て取れるレベルだ。
ヘタすれば照れ隠しの為とはいえ、ボコスカにイジりまわして気まずい空気を押し流そうとしてくれた茜のほうがこの場合安心感すら持てる。
だが今主の側にいるのは、よりのよりのよりにもよって、先程の騒動でも自分の過失を真に受けたかのように紅潮し、何も言い返せず黙りこくってしまった『琴葉葵』だ。
ただでさえ、先日意外な一面に面食らった矢先となると、まだゆかりを面倒臭さ120%でも宥めて切り抜けた方が楽だったんじゃないか、そんな情けない雑感すらも頭を掠める思いだ。
・・・
さて、凶事は重なるものでして、ドア際の葵は…内側を向いて電子タブレットで読書に没頭していた。
この現代っ子め。
しかし自分の位置関係も相俟って向き合った状態だ。
混雑しているもので主としてもなかなか方向転換しづらい。
主はオタクや悪友と共有する趣味たるソシャゲのノルマを回収していくものの、今やほぼ惰性なのでルーティンをなぞるとすぐ飽きる。
ネットサーフィンも悪くないが珍しく見たいものも浮かばないし、SNS『Myvoice』もTLを眺めようなんて気分にはならない。
またしても何サマな言い分だとは自覚するが、正直『勿体なかった』。
いつにない至近距離ーーそれも目の前にいる葵の姿につい目が向いてしまう。
思えば先程主が自爆した一件からまるで声を交わせていない。
このまま変な空気が続いて委員会の業務に支障したらあまりにも良くない。
詰まる所、また声をかけて関係性の軌道修正をできるきっかけが欲しいのだろう。
…でも、本当に委員会がどうの、という話だろうか?
僕はもっと、こう、友人として……
そんな引っ掛かりを整理しようにも、視線は少女の存在に絡め取られ、煙のように曖昧な心はその泡沫へと溶け出してしまった。
どうにも目が離せない。
目が離せないとなると、またしても自ずとその姿にフォーカスされるわけで…
「(睫毛、長いな…)」
否、恐らく茜もパッと見でそっくりと思える要因としては同じくらいあるのだろうが、葵は…まして今読書に集中して普段より一層伏目がちな面持ちの彼女はひときわその美しさが際立って見える。
それを考えてしまうともはや泥沼だ、文字を脳内で復唱しているのか、閉じながらもわずかに動いている艷やかな口元、黄昏の影が差した柔らかな輪郭、本のページを捲るーーと言っても電子機器の画面をなぞるだけなのに繊細なしなやかな指付き…どこに視線を向けても意識を奪われてしまうようだ。
「(いやホントに肌白いな、髪もさらさらだし…)」
内なる声が語りかけます
この男、学習能力がない…と。
また別の声が返します。
それは男性的本能であり、学習能力もクソもない…と。
「っと!」「っ!?」
不意に車体が揺れた。
葵はドア側に寄りかかる形だけで済んだが、主は咄嗟にポールを掴んだものの、葵に被さりかかる前のような体勢になってしまった。
なんとか持ち直すものの、揺れた拍子に軽く揺らいだ滑らかな長髪ーーその甘やかな匂いが微かに漂い、内心を刺激される…
…葵が顔を上げる。
しまった、視線に気が付いたか…
さりとて逃げようとする方がもはや気色悪いまであるだろう、気まずさも恥も掻き捨てて、葵の目線をそのまま迎え入れるハラを決めた。
『…お降りの方はー、ご用意をお願いしますー』
目が合うなり、一瞬にして目を大きく開くと共に、その頬は先のような血色を帯びてまたしても反射のように顎を下げる。
黄昏色と相俟ってその顔が一層赤く見えた。
「だ、大丈夫…?」
しかし、揺れたことを心配したのであろう彼女は、電車内ということもあり…それでも満ちる喧騒の中で最低限聞こえるよう意識した声を届けるように、主にこわごわと上目を向けた。
速報:猫だと思っていた少女は小動物だった…?
そのいたいけな仕草に脳の凍結を感じたが、主とて一端の男子として最低限残されしプライドがあった。
もはや恥の上塗りは断じて許されぬ、全力の理性を振り絞り、主は葵の言葉に応じる覚悟を決めた。
「あ、ありがとう、あと、その…ゴメン。」
突然の謝罪に首を傾げる葵。
このまま勢いで話せば声が大きくなりそうだ。
咄嗟に携帯電話のトークアプリを起動すると、彼女にメッセージを送った画面を見せる。
『主:さっきは急に変なこと言ったから反応に困ったよね。僕も悪かったけど、茜もおふざけが過ぎるよな。本当にごめん。』
それを読んでから数秒…葵は慌てて首を小さく横に振る、すぐに返答をしたいかのように。
程なくしてタブレットとスマホを持ち替えた彼女は、すぐにトークアプリを開く。
『葵:私、主くんから』
そこまで書きかけてからハッと気付いて慌ててバックキーで消して書き直す。
『葵:もちろんいきなりだったしビックリはしたけど、主くんにそう思ってもらえてるんだって、女の子として嬉しかったよ。』
『葵:私こそ、何も言えなくて気まずくしちゃってごめんね。』
「葵…」
思いがけない内容に思わず目を見張り、本人に視線を戻すが、彼女は申し訳なさそうに笑うと最後に両手を合わせて小さく頭を下げ、口元が緩んだまま再び読書を始める。
彼女なりの照れ隠しなのだろう。
たかだか…それでいて濃厚な数時間で、感じたことがあった。
『琴葉葵』は確かに美人だ。
姉といることの相対とかではなく、実際に彼女の立ち振舞や言動は『可愛い』よりも『美しい』という言葉が似合う。
だが、多分、恐らく、きっと、もしかしたら…
『琴葉茜』と双子の姉妹であることが示すように、彼女の根本は『可愛い』のかもしれない。
「(今日くらいはチートデイとでも思って大目に見るか…)」
そう自分に言い聞かせた主は、この期に及んで頭に浮かんだ身勝手な雑感を甘く受け止める。
それにしても…
「(『女の子として』)…」「(『嬉しかった』って、なんか…)」
『女性として褒められて嬉しい』くらいのニュアンスなのだろうが…イヤ、余計なことは考えるほど綻びとなる。
葵もほぼ同時に自身が意図せず生み出したかもしれない語弊を恥じていることも知らずに、主は携帯電話を取り出し、改めて降車駅を待つまでの日常へ戻ることにした……
EP.8ーーE N D
・・・と、こ、ろ、で。
「茜ちゃん?そろそろ重いんだけど…?」
「食い意地虫のあかりならともかく、ウチならまだイケるやろ…アッ、ほら見てみゆかりんゆかりん。主ずっと葵見とる…もはやガン見…!」
ゆかりは長くため息を漏らす。
小声で騒がしい茜は彼女の胴にコアラよろしくにしがみつきながら、シートを隔てた対角のドア近くで向かい合う妹と男友達に夢中ではないか。
「うっわ、葵やりよった…!最大兵器・『無意識キラー上目遣い』…!やっ↑たぜ…」
「茜ちゃん?満員電車ですけど?」
「きゃはー、おもろなってきた…!ウチも静観ばっかはしとれんかぁ〜…!」
何やらにまにまと口角を上げながら
最愛の妹可愛さで見境がつかなくなるのは、日頃陽気で憎めない彼女の悪い癖だ。
「(この姉、案の定まったく懲りてないのね…)」
それにしても…ふと彼女は、意識を茜がメロメロで見守る二人に切り替えると呆れたように小さく笑った。
「(葵ちゃんが大好きなお姉ちゃんのこんな醜態に全く気づく気配がないなんて…向こうも完全に『世界』入っちゃってるわね。)」
ボイ小説って詰まる所どなたの絵を想定するかで同じ人が書いてもキャラ付けも解釈も変わりそうだよね。
私ですか?自前()