D&D 虚空の神vs死竜王   作:ディミーアの鉄砲玉

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3話

 さて、「明けの明星」一行はウォーターディープを飛び出して、南方へ下って行ったは良いが

 

ポータルの在処というのは、聞けばハートランズでも最南端に広がる広大な草原地帯、グリーンフィールドのそばにあるという。

「ウッド・オブ・シャープトゥース(鋭歯の森)」と呼ばれる森は、古来より恐ろしげな名前の辺境として、沿岸都市の人々に不気味がられてきた。

曰く、そこはヒュドラやドラゴン、ウェアウルフが彷徨く魔境だと

 

実際、古ぼけた歴史書を紐解けば、ホーンホロウと呼ばれる伐採集落が、レッドドラゴンによって焼き払われた記録が残っている。

15世紀にはバルダーズゲートを追われた元大公・ヴァラーケンと、ライカンスロープ達が拠点を築こうと試みた事も、事実である。

 

そのような流れの中で、今では前述の通り、ヒュドラが森を闊歩し、

生き残った数少ないライカンスロープの末裔が隠れ潜む森となっている。

 

このような森に入るのだから、当然これまで派遣された連中も、ヒュドラから逃げ切れるくらいの手だればかりであった。

「明けの明星」とて、例外ではない。

彼らが4人で行った最初の戦いは、悪の魔導士が飼育するマンティコアを倒した事だったし、

最後に行った大仕事といえば

エレメンタル・カルトの呼び出したメフィットの大群や火のエレメンタルの討伐である。

ヒュドラを倒すには心許ないが、いざとなれば凌いで撒く手腕はあった。

 

 

評判通り鬱蒼と生い茂る森の中、ロップが獣道を探し出して辿っていく。

時折獣道に沿って木々の幹には深い爪痕が残り、何かの縄張りを示しているのか。

 

さらに不可解なのは、まるで馬車でも日常的に通っているかのような、草の生えない開けた道が森の中を走っていることだ。

しかしロップは絶対にその道を通ろうとしなかった。

他の3人も追求しない。

このトラブルメーカーなウサギが誰かの食事にならずにいるのは、りとえに危機に対する直感故。

最初は快適に見えた林道も、今の3人にはパックリと開けられたドラゴンの口に思える。

 

そうして進むうち、徐々に他の獣道が木々に見え隠れする様になり、収束していく。

木の間には麻ひもが張られ、そこに獣の毛皮が広げて吊るされている。

獣道の終端両脇にはいくつも棒が突き立てられ、その上には大きなエルクやイノシシの頭蓋が装飾の様に突き刺さる。

それは誇りある狩りの証であり、また警告でもある。進めばこうなるといわんばかりに

 

 

四人もその意味を正しく理解し、一瞬足を止め、そっと目配せする…

だが、再び歩き出して獣道の向こうに進んで行った。

この警告の場所に来ている時点で、匂いで気付かれている。

今更臆しても無駄だからだ。

 

獣道の奥は、集落になっていた。木々の間に麻ひもと獣皮を繋いだ物でいくつも天蓋が作られている。それが住まいなのだろう。

中央には大きな炊事場があり、今も少し煙が立ち上っている。

他にも天蓋の周囲には太枝を組み合わせて作った木枠に毛皮を張ったなめし作業場や、

獲物を解体して肉を切り分ける台など、

集落には生活の色が煩雑に散らばっている。

 

しかしどういうわけか誰もいない。

"卑金"が前に進み出て言う。

「頼もう!どなたかおられぬか!ここに住まう者たちの族長にお会いすべく参った!」

「突然の訪問無礼とは承知しているが、何卒話を聞いていただきたい!」

 

すると返事は卑金の真後ろから返ってきた。

「聞いてはやろう」

 

振り返ると、最後尾にいたロップが短刀を首に当てられ、ブルブルと震えている。あわれ、まるで屠殺前の野うさぎである。

「お前達が獲物でなく、人であればの話だが」

そのように告げ、短刀の持ち主は獰猛に笑んだ

──長い鼻に太い牙…狼の相貌で。

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