D&D 虚空の神vs死竜王   作:ディミーアの鉄砲玉

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4話

「進め」

まるでアイスウィンドデイルの万年雪の様に冷たい命令。

会話の意思はなく、従わないなら殺して捨てるまで。その言外の威圧。

「明けの明星」一行は素直に従った。

 

集落中央へ促されて向かう中、4人とも同じ懸念を抱いていた。

──誰も戻らなかったのは、ここで豪華なディナーに変えられたからでは……?

 

 

 

─────

 

ダーナンから依頼の詳細を説明されている時、彼は「鋭歯の森」にすむライカンスロープの一族についても言及していた。

ポータルについての情報の出所こそ、その一族。

現在の族長は部族の行末が緩やかな絶滅である事を理解し、打開策を外に求めている。

ヴァラーケンの死後、この森に残ったライカンスロープ達は、次第に文明を捨てていった。

原始的な狩猟生活に回帰し、ライカンスロープの根源的な信仰、すなわち、「狩猟神マラー」に己の狩りを捧げることを至上として連帯感を維持する社会構造に変化を遂げた

 

だが、血が濃くなれば病に弱い個体が増え、子は育たず、人口は減っていく。

元がそう多くなかったのだから尚更だ

これまで続けてきた昔ながらの獲物を追いかけ、マラーに祈ればよかった生活はもはや破綻しかけており、いまや40人ほどのライカンスロープ、それも半数はそれなりに年老いた者たちを残すのみとなった。

 

従って、ライカンスロープたちは外に出て文明に順化するか、遥々Archwoodなどに旅をして、他のライカンスロープに合流するしかない。

そのためには、身一つとはいかない。

仮に老いた者たちを切り捨てるとしても、

馬と荷馬車、外の知識、Archwoodまでの道案内役、さまざまなトラブルを回避するための外貨など

必要なものはあまりに多かった。

 

ポータルが危険なものであり、繰り返し調査隊を送ってくることは、ライカンスロープにとって都合が良い。

従って、調査隊が事前に結んだ盟約通り、出すべきものを出す限り、余計な手出しはされない。

 

それがダーナンが「明けの明星」4人に語った、ライカンスロープたちの詳細であった

 

─────

 

ところが、どうした事か。今まさに四人は刃物を突きつけられている。

集落に踏み込むと天蓋の中や木々の間から次々に身を潜めていたライカンスロープたちが現れ、槍や斧を構えてくる。

四人は戦う意志がないと必死に手を挙げて示すが、緩める気配はない。

 

「我々はダーナンの使いとして来た!渡すべきものは持って来ている!どうか穏便な対応を願いたい!」

"卑金"は仲間たちを庇う様に前に出て、胸を張り、堂々と大声で訴えた。

 

「それがわからぬほど愚かと思うかね?

お前達が集落に近づいた時点で、最初に奴がよこした連中と同じ匂いが漂って来たよ。酒に溺れた軟弱者どもの、ゲロに塗れた醜悪な香りだ。」

最初に現れた大柄な獣面の男が、せせら笑う様に告げる。

 

「ではこの狼藉の所以はなんだ?

まさか約定を無視して対価だけ持っていくつもりではあるまいな?」

"卑金"は怒りを込めて睨みつける。ドラゴンボーンの恵まれた体格をさらに鍛え上げた彼は、目の前の男にも勝るほど大柄で、威圧感も負けていない。

その短刀を使うならば、一太刀浴びる代わりに脳天から股下まで叩き斬る。

じわりじわりと、重心や力みの変化とともに、その気概を滲ませていく。

 

「それも良いな。端から抵抗の意思もみせんウサギ共には相応しい末路だろう?」

獣面男も、それまで短刀を突きつけながらも脱力していた姿勢から、徐々に重心を前に向けていく。いつでも飛びかかれる。殺気が高まっていく。

 

だが…

「やめよ、ランドルフ」

間を割く様に、落ち着いた声が響く。

「皆の者、武器を下げよ」

その声を聞いて、周囲のライカンスロープ達は槍の石突を地につけ、斧を下ろした。

 

「ランドルフ、聞こえなかったのか?」

再び重みのある声が響く。

沈黙……

 

一拍おいて、獣面の男…ランドルフも武器を下げた。舌打ちと、嘲笑うような一瞥を残して。

 

 

憤懣やるかたない"卑金"の背後、

ラグニルとロップはお互い抱き合ってブルブル震え、ウルスは素知らぬ顔であった。

しかしよくよく見れば足元には菌糸がバレぬ様にじわじわと周囲を侵食し、ウルスはケープの下で聖印に触れている。

事となれば、仲間たちも"卑金"を援護し、刺し違える用意はあった。ロップを除いて。

ロップはシンプルにビビっていた。かわいいね…

 

さて、ライカンスロープ達が遠巻きに一行を見守る中、一際大きな天蓋から中に入る様声が飛んでくる。

周囲の者たちも顎で指すようにそちらを示し、入るように促して来た。

さてはあの声の主こそ、件の族長ではないか?

そう思い、恐る恐る幕をずらして足を踏み入れると、

そこにいたのは老いたウェアウルフの男。

先ほどのランドルフと比べれば幾分小柄だが、

"卑金"は全く侮る感情が浮かばなかった。

何故ならこの老人が纏う静けさを知っていたからだ。

これは研ぎ澄まされた獣の静寂、

吠えずとも歯を見せずとも、周りが勝手に道を譲り、獲物達は身を潜める。

群れの王だけに許された気品であった

 

「先ほどは失礼した。あの粗忽者、ランドルフは、強きものこそ不要な戦いを避けると、道理も弁えておらぬのだ。」

 

「お心遣いいたみいる。族長とお見受けしたが」

そうかえしながら、"卑金"はチラリとロップを見た。リラックスしている。この集落でここが1番安全ということだろう。

裏を返せば、あのランドルフという若い男は、本気で我々を害するつもりだったわけだ。

"卑金"は早速旅のつまずきを予感し、深いため息をついた。

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