相棒 ーー杉下右京に憧れた転生者がキヴォトスで刑事になる話ーー 作:ほくほく亭ともを
週末投稿すると言ったな?あれは嘘だ(書きだめが多すぎるので、とりあえず1話だけ投下させてください!ごめんなさい!!)
『次のニュースです。きょう未明、ゲヘナ学園自治区にてヴァルキューレ・ゲヘナとゲヘナ学園の風紀委員会が合同で反社会的勢力・レッドヘルメット団の事務所を家宅捜索しました__
(ピンポーン)___ゲヘナや!!__(バン!!)
____早よ開けんかい!!___じゃがましいはよ出てこいしばくぞ___』
杉下サキョウはシスターフッド自治区の中心街であるラベンナの交番で紅茶を淹れながらクロノスニュースを眺めていた。
時刻は午後の5時を少し回ったところである。
歌住サクラコはいつの間にかこの派出所に来て、サキョウの馬であるカオル号を洗ってやっていた。
ササキョウが所属する交番はシスターフッド自治区の中心街であるラベンナにある。
トリニティ総合学園が現在領有する自治区の中で最も小さいながら、シスターフッドが結成される前から存在する最古の都市として、キヴォトスで一番最初に「ラベンナの初期トリニティ建築群」として伝統文化建築保存地区に指定されたことで有名である。
数百年前に60以上の聖堂が建設されていたらしいが、その後の風化や自治区間の抗争の影響を受けて今の姿を残している聖堂は約20か所、安全上の理由で立入禁止となっている聖堂が5か所存在し、ラベンナ郊外の街の一部もシスターフッドが立入禁止にしている。
他の自治区の初期建築は既に抗争や再開発によって見ることはかなわないが、何故かこの自治区の初期建築は奇跡的に残っているため、「初期のトリニティ」と呼ぶことがある。
サキョウはそのラベンナの交番の、たった一人の一国一城の主であった。
サキョウは銀の飾緒を揺らしながら、紅茶のティーポットを高く上げると、見事な放物線を描いてティーカップに紅茶を注いだ。
カップの縁は薄い銀に追随するように青いラインがぐるりと一周したシンプルながらも気品を感じるデザインである。
同じようにして紅茶をもう一杯入れるとサキョウはせっせと奉仕活動に励んでいるサクラコに、
「いつもどうもありがとう、サクラコさん。お茶でもどうです?」
と微笑んだ。
しかしながら、サクラコはカオル号の手入れに余念がないようで、シャツの袖をまくってせっせと片手にホース、片手にスポンジで昨日の雨の汚れを拭いている。
サキョウはカップを片手にもつと、サクラコのそばに近寄り、
「サクラコさん?」
とまた呼び掛けた。
「はい、なんでしょう!」
とサクラコが元気よく振り向くと、ちょうどホースの位置が悪かったのだろう。それまでカオル号にかかっていた放物線がサキョウの頬を濡らした。
「ああ!ごめんなさい、
そう言って慌てるサクラコを手で制してサキョウは、
「いえ、大丈夫ですよ?水も滴るいい女といいますからねぇ」
と飄々と笑った。
「いいえいけません!しっかりと水分を拭き取らないと、暖かくなってきたといってもまだ3月です!風邪をひいてしまいますよ?」
そう言うとサクラコはにサキョウの手を引くと、勝手知ったる交番の中へサキョウを誘った。
交番の中は日差しがよく通る小部屋に開放的な受付、一時的な拘置場、古い石造りの浴室にトイレ、そして二階の少なくとも3、4人が使うことが想定された2部屋の仮眠室__1部屋はサキョウ一人しかいないため、既にサキョウの趣味の紅茶やティーポットを飾る趣味の部屋と化し、もう1部屋はサキョウ専用の大きな寝室と化している__で構成されていた。
交番と言っても、これまでにシスターフッドが後ろ盾についた警察官もいなかったし、シスターフッド特有の
交番の中は旧世代の遺物をそのまま利用しているせいで、寒さを凌ぐものといえばサキョウが利用している奥の小部屋にポツンと置いてある小さな石油ストーブか、仮眠室__もとい、寝室の毎朝丁寧にたたんでいる毛布くらいであった。
そのような環境で暮らしているので、濡れ鼠となったサキョウは交番の中に入るといよいよ体を冷やして、160センチにまで伸びた体と、ちょっとロングに伸ばし始めたウルフカットをにブルブル震わせはじめた。
「もう、サキョウさん
そのようなサキョウを慈母のような目でみつめるとサクラコはそのまま奥の部屋にサキョウを抱えて連れて行くと、ストーブに少なくなっている石油を足した。
未だに震えているサキョウを座らせるとサクラコは濡れて重くなった赤い詰襟の七つボタン、その首元にそっと手を寄せるとサキョウは困惑したように口を開いた。
「サクラコさん?別に私は子供ではないのですがねぇ、一人でもできますから、ほら、紅茶が冷めてしまいますよ?」
慌ててサキョウは自分でもできるとサクラコの手首をつかんだ。
翡翠色の瞳が困惑するように揺れる。
しかしながらサクラコはその手を逆に片方の手でそっと包み込むと、サキョウに構わずにゆっくりと金ボタンを外していく___
「サキョウさんは頑張っています。この6ヶ月の間、たった一人でこの自治区を守ってくださって……、そりゃあ
杉下サキョウには弱点があった。元々南部にあるD.U.でずっと過ごしていたからか、やや北部にあるこのトリニティ総合学園の独特な体温を奪う寒さにはめっぽう弱いのであった。
それに、このラベンナに来てからは夜ごとに何か不気味な、まるで地下に冥界の隙間があって、そこから名もなき霊たちが囁くような鈍い音が脳内に響き、神経質なサキョウを困らせたのである。
そのためにサキョウはこの6ヶ月、ろくに眠れぬ夜を過ごしていたのだ。
いつも丁寧で、疲れすら感じさせないように見える人ほどその疲れに人は目を向けることを忘れがちになるものである。サクラコがそのような性格をもつサキョウの
サキョウはサクラコを安心させようとしたのかその翡翠色の目をサクラコに向け、何か口を開こうとしたが、サクラコのまるで大昔の聖女のような微笑みに射され、そっと口を閉じた。
石油ストーブの上で温めているやかんがぽーーっと音を立てた。
「一つだけ、悩んでいることがあるです。聞いていただけませんか?」
交番の外は既に日が沈み、静かな静寂と暗闇が辺りを支配していた。
サクラコの助けを借りてシャツとスラックスだけの姿となり、毛布にくるまりながら差し出されたマグカップの熱いアールグレイを飲むとサキョウは口を開いた。
「ええ、もちろん。カウンセリングはシスターの義務ですから。もちろん、
そういうとサクラコは、このかけがえのない
サキョウは安心したようにうなずくと、右腰に付けた黒革のホルスターから少し錆びている___赤と黒、そして金色に縁どられた第17号ヴァルキューレ制式拳銃を取り出すと、ゴトリと鈍い音を立ててサクラコのそばのテーブルに置いた。
「私は学園の本当の平和のためなら、こんな銃などは使わずに文明人らしく、学生らしく議論なり、何なりで対処するべきなんだと思うんですがねぇ、それに、もしこの拳銃によって死傷者が出てしまうと思うと、私は恐ろしくて堪らないんですよ」
と伏し目がちに話した。
「少し触ってみてもよろしいですか?」
そういうとサクラコは何か聖遺物を持つかのようにそっと大事に持つと、シスターにしては手慣れた様子で拳銃を確かめ始めた。
「まあひどい、こんなになるまでほっといてらっしゃったのね。これじゃあ撃てるどころかマガジンも錆びてしまって取れないわ。もう長いこと撃ってらっしゃらないのでは?」
というとまた、拳銃を元の場所に戻した。
警察学校では学科の講習に義務付けられていたために、サキョウは毎日のように撃っていたが、トリニティに来てからは拳銃とステッキに隠したライフルを持っているものの一度も使わないばかりか、拳銃は錆びつき、ステッキはずっと突いていたせいで銃身が曲がり、撃てなくなってしまった。
「理想論しか語らない夢想家とお笑いになりますか」
「まさか!崇高な心情を持っておられて素敵ですわ」
でも……とサクラコは続ける。
「でも、このキヴォトス……シスターフッド自治区でそのようなことはあまり起きませんが、一日を銃声が聞こえることなく無事に過ごすのは一年に1回あるかないか。それを考えたら、持っておくに越したことはありませんわ。せめて、自衛のためにも___」
サクラコが言いかけると急に受付の方からけたたましく電話のベルが鳴った。
緊急で取り付けた固定電話が鳴ったのである。
サキョウはばさっと毛布をほっぽりだし、小部屋から飛び出すと受話器を上げた。
「こちらヴァルキューレ警察です。事件ですか?事故ですか?」
受話器の向こうからは走っているのか、はあっはあっと息遣いが聞こえる。大勢でいるのかざわざわと話している声も聞こえた。
『事件です!ゲヘナ学園自治区からと思われるヘルメットを被った不審人物4名をシスターフッドが発見しました』
「はいぃ?」
『巡回中のシスター5名が発見し現在追跡中、場所は__北部立入禁止区域近くです!」
そこまで聞くとサキョウは交番の壁を破らんという勢いで小部屋の上着を着ようと猛然として向かおうとした。
すると出てきたサクラコがいつの間にか取り出した警察の制服を両手に抱えて出てきた。
「これがいるのでしょう?」
と笑いかける。
サキョウはうむとうなづくとサッと赤い制服を羽織り、外に出て愛馬であるカオル号にまたがろうとした。
「ああ待って!サキョウさん、」
サクラコもあわてたように付いてくる。
サキョウが着替えている間にまた持ってきたのか、サクラコらしい可憐なダッフルコートを両手に抱えている。
サクラコはサキョウのそばまで近づくと、ダッフルコートをサキョウの肩にかけるとボタンをとじ、カオル号にまたがった。
「サクラコさん、ここからは警察の仕事です。危ないですから交番か、それとも寮の方に___」
「___銃も持ってないのにですか?」
サクラコは心配そうにサキョウの目をみつめる。
サキョウはその目に、絶対的な友愛と慈愛の念を感じ取った。
「ヴァルキューレ条約によると、自治区内での緊急出動はその自治区の関係者の許可が必要です。体調があまりよくない上に自衛手段を持たない警察官は、シスターフッドとしても
そういうとサクラコはキッとサキョウをにらみつけた。
仕方ない、とサキョウは頭をふると、サクラコに続いて後ろにまたがった。
ロボットのくせにカオル号は重いといわんばかりに至極迷惑そうな顔をした。
「それじゃあ、仕方ないですねぇ、サクラコさん。行きましょうか」
そう言うとサキョウは、カオル号のあるボタンを押した。
たちまちのうちにカオル号の両側から赤色ライトが点灯し、パトカーのサイレンがウーウーと鳴り出した。
カオル号は大きくいななくと、一路、北部へと駆け出した。
「ところで一つだけ」
サキョウは馬上にてしがみついているサクラコに話しかけた。
「一つ気になってしまうのですがねぇ、サクラコさんは私の銃になってくださるのですか?」
サクラコは少しだけ笑うと、
「いいえ?私はサキョウさんの盾になろうと思います」
赤色灯が光り、サイレンが鳴り響く中、サキョウにだけ聞こえる声で相棒に返した。
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ラベンナ北部の郊外は、トリニティの中で最も歴史のあるシスターフッド自治区の中でもさらに古く、キヴォトス文化遺産にも指定されている聖堂や建築、絵画が多く残る一方で立入禁止区域のヴェールがかかった神秘的な街であった。
カオル号は稲妻のような速さでラベンナの石畳を駆けていく。
風化して白くなった煉瓦の建物や、灰色の石で造られたビザンティン様式の高いドームを持つ
「あそこですか」
サキョウは猛然と、太陽が沈むほどの速さで走るカオル号に振り落とされないように必死につかみながらつぶやいた。
「ええ、きっとあそこです。でもあそこは確か……」
そう言うとサクラコは何か思案顔でカオル号にしがみついていた。
カオル号がそのライトで照らされた場所に滑り込んだのは、それから20分ほど経った後であった。
あと20日で卒業になる白峰イノリ副代表も現場に到着しており、走り回るシスターたちに命令を矢継ぎ早に飛ばしていた。
「おや、白峰副代表もお越しでしたか」
普段はイノリさんイノリさんと呼んでいるが、気を引き締めているのだろう。サキョウはそうイノリに話しかけた。
「あら、主席警察官の杉下警部補。お疲れ様です。でももう既に全員捕まえて、そこにお縄になっていますよ?」
イノリもその空気を察したのか、慇懃に返すとライトに照らされ、銃弾によっていくつかの打撲跡を与えられた__金髪に小さな角、黒い羽にサキュバスのような尻尾が生えている容疑者__と、他にもう二人がサキョウとサクラコの目に入った。
金髪の容疑者は身長165センチほどで、身長は高いこそその顔立ちから中等部3年か高等部1年生ほどかとサキョウは判断した。
他の二人については昏睡状態にあるせいでサキョウにはよくわからなかった。
サキョウとサクラコがその金髪に近づくと、縄で縛られたその少女は気がきつそうな目でサキョウをにらみつけると、
「なんだよ、ポリ公かよ、へっ、何しにきやがってんだい。ポリ公なんぞ来てもなんもかわりゃしないよ」
と吐き捨てた。
「杉下警部補になんてことを!杉下警部補はたった一人でこの自治区を守ってらっしゃいますのよ」
とサクラコ。
「へえ、そうかい。なら聞いてやるよ。あたいたちの仲間がもう一人いるんだ、それをこの偽善者どもはそんな人は初めからいなかったなんて言って、何か隠そうとしてやがる。そうだろ、そこのシスター___」
そこまで言うと縄を持っていたシスターの1人は遮るようにして、
「うるさいですよ!ゲヘナの角付きに翼にそのサキュバスのような尻尾、悪魔のような見た目をしている癖に__!杉下警部補、こんなゲヘナのやつを相手にする必要はありません!ここはシスターフッドにお任せを__」
そういうとそのシスターは縄を引っ張ってどこかへ連れて行こうとする。
「待ちなさい」
サキョウは無表情になると、そのシスターを遮るようにして間に立った。
当然サクラコもつられるようにしてサキョウの後ろに立つ。
「謝罪しなさい」
「はぁ?」
「その生徒は現行犯の容疑者であって悪魔ではありません。一人の教育を受ける生徒であり、あなたに彼女をそのように言う資格はありません。さあ、はやく」
「なんで私が___」
「そうだそうだ、よく言ったよお巡りさん、この偽善者どもは見た目こそ清楚で善良なふりをしているが、中身は真っ黒。嫉妬と憎しみの権化みたいな輩だよ、こんな奴らにあたいは___」
______ダンッッッ!!!______
そう、ゲヘナの容疑者は言いかけたが、我慢しきれなかった一人のシスターがライフルを向け、発砲した。
「おやめなさい!!」
サキョウはその発砲した生徒に向かって頬をプルプルと震わせながら激昂した。
「抵抗できない相手に向かって発砲するとは…………恥を知りなさいッ!!」
「まあサキョウさん、落ち着いて。」
サクラコはそう言うと肩をポンポンと宥める。
「…………ヴァルキューレ条約によると自治区内での学校間紛争に発展しそうな事件はその自治区の主席警察官が逮捕権を唯一行使することができる……よろしいですね?白峰副代表」
「えぇ」
白峰イノリは仕方がないと首をふると、そう首肯した。
カオル号には流石に5人も乗り込む余地はないため、昏睡しているゲヘナの生徒たちを馬上に載せ、杉下サキョウと歌住サクラコはカオル号を引いて歩くことにした。
カオル号はもっと重くなった荷物に文句を言いたげに尻尾を揺らしながらその真っ黒の体に白いタテガミを街の明かりに反射させながら歩いている。
「それにしても、あそこまで言ってしまって良かったんですか?」
とサクラコは相棒の横顔を見つめながらそう尋ねた。
「ええ、角がついていようが、真っ白な羽が生えていようが、はたまた、狼のような耳を持っていようが、何人も他人を差別する権利はありませんからねぇ、それに抵抗できない人に発砲するという輩は決して、私は許せないものですから」
そういうとサキョウは翡翠色の目を昏睡している三人の容疑者に向けた。
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いつも静かな赤レンガの交番は、今日は珍しく波乱に満ちていた。
「なあお巡りさん!一体いつになったらあたいたちはここから出られるんだよ!」
と金髪を揺らしながら、留置場に入れられた、雷坂は抗議するようにこの自治区で一人しかいない警察官に話しかける。
「いつになったら、と言いますがねぇ、他の自治区から入ってきた容疑者はすべて主席警察官の裁量になりますから、私がいいよ。と言ったら釈放になりますかねぇ」
サキョウはそう言うと、ティーポットを肩の位置まで上げて見事な放物線を描いて紅茶を注ぐ。
「だったら今釈放してくれよ!あたいたちはもう一人の仲間を探しに行かなくちゃならないんだ!」
そうだそうだといつの間にか目を覚ました二人の生徒も野次を飛ばす。
「それで、お聞きしたいのですがねぇ」
一口紅茶を含むとサキョウは意味ありげに拘置場の方を向いた。
「確かに、最初の通報が入った時ははっきりと『四人』と話していました。ですから、あなたたちの言う方が正しいのでしょう。では、なぜシスターフッドが3人と言い張っているのか」
サキョウは取調室でそうつぶやくとちらりと雷坂を見た。
「そんなんしらねえよ、大方、逃げられちまったからそう噓ついてるだけじぇねえの?シスターフッドは秘密にするのが得意だもんな!」
というと不機嫌そうに腕を組んだ。
「確かに、その線はあるかもしれませんねぇ、しかしそうなると、もう既にゲヘナ自治区に帰っているはず。先ほどゲヘナ学園の風紀委員会に電話で聞いたのですがねぇ、自治区はいま、反社会的勢力の合同捜査の影響で極めて警備を厳重にしていて、誰もそんな人は見てないって言うんですよ。それじゃあ、そのお仲間はいったいどこに?それに、あなたたちはなぜこの遠く離れたシスターフッド自治区へ?」
「ふん!そんなに聞いたって何も出てこねえよ、あたいは黙秘するからな!」
ますます不機嫌になった雷坂はぷいとよそを向いてしまった。
「振られてしまいましたねぇ……、では別の方に任せましょうか」
そういうとサキョウは取調室を出ていった。
雷坂がほっとしたのも束の間、入れ違いに一人のシスターが入ってきた。
「サクラコさん。彼女は相当お疲れのようですから、よくよくねぎって教え諭していただけませんか?」
「
と黒い笑顔。
サキョウはにっこりと笑うと、紅茶の準備に取り掛かった。
数分後、取調室からはまるで子羊が狼に襲い掛かられる時のような悲鳴が響いてきた。
杉下サキョウがおやどうしたと取調室に顔を突っ込むと、さっきまで傲慢不遜な態度だった雷坂が一転、蛇に睨まれた蛙のようにブルブル震えていた。
そばには困った顔をしたサクラコ。
「おや、どうしましたか雷坂さん」
「ど、どうしたじゃねえよお巡りさん!このシスターがあたいの爪を剥いで市中引き回しの上、
「私何もしてませんよ!ただ
と焦るサクラコ。
「おや、そうでしたか」
そういうとサクラコに退室するよう伝えると雷坂と二人きりになった取調室で、
「ほら、もう怖いシスターはいませんよ。安心してください」
と座り、まだ少し震えている雷坂に笑いかけ、
「
と尋ねた。
神経衰弱した雷坂は恐る恐る頷くしかなかった。
雷坂が話すには、彼女ともう三人はゲヘナ学園のレッドヘルメット団という反社会的勢力の一つの所属で、シスターフッド自治区の地下墓地に何かお宝があるという噂を聞きつけてこの自治区に足を踏み入れたらしい。
立入禁止の街に入って地下墓地に入ろうとしたが、異様な寒気と音を感じて三人が少し入って引き返したのを見た行方不明者がたった1人で入ったところにちょうどシスターフッドの巡回に見つかり、捕まったというのが事の顛末のようである。
「それで、シスターフッドにそのことは?」
「ああ言った、言ったさ。最初の巡回してた奴に捕まったときにもう一人いるから助けてやってくれって言った。そしたら奴ら、初めはうん分かった、とか言ってやがったのに途中であの副代表とか呼ばれている女が来た途端に元々3人しかいないように振る舞いやがった。おまけにあたいを縄でくくりやがったんだぜ、見ろよ、まだ手首にその痕が残ってる!」
そういうと雷坂は手首をぐいっとサキョウに見せた。
確かにきつく縛った縄の縫い目が痕となって白い肌を赤く染めている。
「そのことを話したシスターの特徴はわかりますね?」
サキョウは興味深そうな顔をして、雷坂の顔を見つめた。
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「昨日縄を持っていたシスター……ですか?」
そういうとサクラコは困惑したようにサキョウを見た。
「ええ、少し気になることがあるのですがねぇ、明日ここに呼ぶか、今すぐ行くかどうしようかと考えていたのですがどうやらここに呼んだほうが良さそうです。」
「あら、それはなんででしょう?」
「それはまたおいおいわかります。ああそれともう1つ。偶然にここに立ち寄ったことにしておいてください、できますか?」
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