相棒 ーー杉下右京に憧れた転生者がキヴォトスで刑事になる話ーー 作:ほくほく亭ともを
やっとの思いでヴァルキューレについた私を待っていたのは、警察の制服を着たロボットさんだった。
「はあ…やっと来ましたね。あと二時間で入学式が始まってしまうところでしたよ。警察官として不甲斐ない……」
「ご、ごめんなさい。色々あって……ん?二時間?まだまだよくないですか?」
「よくありませんよ!届いた制服の確認と、拳銃の確認、それにまだ色々・・・とにかく行きますよ!」
ロボットさんは怒ったように歩いていく。
仕方なくついていくと、教室についた。
「ここは教場です。まだみんな着替えてませんから、ここで待っていてください。…はあ、一時はどうなることかと…」
ロボットはどこかへ行ってしまった。
ここが教場……前世で憧れていた場所の一つだ。
ここから私の警察官としての人生が……今はじまる!!
思いっきり息を吸い込んで、一思いにドアを開ける
ガラッ
「おはようございます!!杉下サキョウです!!!」
静かだった教場に声が響き渡ると、教場の中にいた生徒が一斉にこちらを見てきた。
痛々しい視線がサキョウに突き刺さる!!
「…あっすみません。ごめんなさい…」
「ええと、B21の席は……あっすみません、ここの席は何番ですか?」
近くに狼みたいな耳に金髪の生徒が座っていたのでそっと尋ねてみると、
「ああ?」
とじろりと睨まれてしまった。ギザギザの歯がギラリと光る。
「ひっっ!ごめんなさい!席の場所がわからなくて!」
「ああ、そういうことなら……」
番号を伝えると、手でまだ空いている席を指し示してくれた。
「あ、ありがとうございます。ちなみにお名前は?」
「……カンナだ」
サメのようにギザギザした歯を見せながらにこりと笑いかけてくる。にこり?これからお前を食うぞみたいな顔をしてるけど大丈夫かな?
「私は杉下サキョウです!よろしくお願いします」
私の引き攣った顔に気付いたのか、カンナはやや悲しそうな顔をしている。耳もペたーんとしていた。
「じゃ、じゃあこれで!」
いそいそと挨拶を済ませると、教えてもらった席に座る。
席に座ったと同時にガラリと前の扉が開き、教官が入ってきた。
「起立!!」
教官は教場を見回すと、ゆっくりと教卓の前に立つ。
「敬礼!!」
「着席!!」
銀がかった淡紫色のショートボブに真面目さを感じさせる涼しげな瞳。
ヴァルキューレ警察学校の制服に「教官」と書かれた腕章をつけている。
「初めまして。ヴァルキューレ警察学校高校二年、特別指導課の槙島ユラだ。これから六ヶ月、諸君らにとっては極めて厳しい期間となるだろうが、よろしく。基本的にはこの教場の管轄は私が取ります。厳しいことも言いますが、しっかりとついていくように。明日から授業が始まります。午前の座学は配布したタブレットで、午後の実技は私が担当します。銃や制服などについては既に諸君の寮に届けてあるので、確認した上で一時間30分後に大講堂に集合してください。以上」
「起立!!」
「敬礼!!」
話すことだけ話すとユラ教官は悠々と教場を後にした。厳しそうだけどなんか優しそうな……
座学はタブレットでやるんだ?確かに、教官もロボットばかりだし……
はっと周りを見回すと生徒たちがいつの間にかグループを作って教場を出ようとするところだった。
どうやら早速出遅れたらしい。このままではボッチだ……なんとかしなきゃ…
ぐるりと教場を見回すと、さっき助けてくれたカンナさん?がしょんぼりしていた。
どうしたのだろう?
席から立ち上がってトコトコと近づくと何やらぶつぶつと呟いている。
「また怖がられた…やっぱり私は怖いのだろうか?さっきロボットの教官にも『生活安全局志望?うーん……』と言われたしな…やはり公安に行くし『カンナさん』うわ!びっくりした。ん?お前はさっきの……」
「はい!杉下サキョウです!どうかしたんですか?」
「いや、まあ、うーん……」
カンナは少し迷ったように頭を振ると、
「…サキョウさん」
「はい!」
「私って怖いか?」
「へ?」
気まずーい空気がほぼ誰もいなくなった教場に漂う。
「や、まあ、別に怖くはないと思いますよ?ほら、笑顔も可愛いs『ニカっ』ひイ!!」
「………はあ、そうだよなあ……怖いよなあ……」
項垂れるカンナさん。
そこで私は思い切って、
「カンナさん!」
「…なんです?」
「笑顔!笑顔の練習しましょ!あと六ヶ月もあります!なんとかなりますよ!」
「はあ?」
「笑顔です!生活安全局に行くなら笑顔が肝心のはずです!一緒に頑張りましょう!ほら、早く寮に行きますよ!!」
「あ、ああわかった」
少し気圧されたようにカンナは席を立つと、相手を見つけて上機嫌になっているサキョウと寮に向かって歩き出した。
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寮はヴァルキューレ警察学校の敷地内にあった。驚いたことにカンナさんとは個室ながら、隣同士のご近所さんだったようで、驚きを隠しきれない。
カンナさんと別れて個室に入る。
机と椅子、そして簡素なベッドがあるだけの部屋。広さは…4畳半くらいだろうか
ベッドの上には既に真新しい制服と制帽が置かれていた。手錠や警棒、銃なんかはどうやら手渡しされるようだ。
ごくりと喉を鳴らす。
「脱ぐのか…服を……」
身体に引っ張られているのか、精神がやや女性的になっているものの、やはり前世は男。女性の体を見るのは大歓迎とはいえ、やはり羞恥心がある。
……背に腹は変えられない……
……おお
何がとはいうことはできないが、思ったよりもボリュームがあるようだ。
意を決して鏡の前に立つ。
顔を赤らめた少女が下着姿で立っている。思ったよりもこれはえr……
いやいや、何を考えているんだ。早く着替えて入校式に行かないと。
にしても、でもカンナさんに比べたらまだ慎ましやかな………そっと胸に手を近づけると……
不意にドアが叩かれた。
「サキョウさん?まだ着替えてないのか?もうそろそろ時間だぞ」
「えっ!?あっ、はいわかりました!すぐ行きます!別になんか変なことをしていたとかそんなんじゃなくて、別に何もないですからね!!!(早口)」
「お、おう…わかった」
カンナさんは外で待っていてくれているようだから、急いで警察学校の制服を着る。
警察学校の制服は前世で見たことがあるような雰囲気の制服だった。
説明書を読んでみるに、ズボンタイプとスカートタイプがあって、私はどうやらズボンタイプを選んだことになっているらしい。
着替えてから鏡の前に立つと、そこには立派とはいえない、かなり初々しい警察官がそこにいた。
髪型が短めのウルフカットだからか、ズボンタイプがよく似合う。制帽も婦警さんというか、普通の制帽だ。
部屋から出るとカンナさんも既に着替えて、私を待っていた。
カンナさんはスカートタイプにしたらしい。その…何がとは言いませんが体の一部が豊満なせいかネクタイが……
「……カンナさん、確か規定では、ネクタイはベルトの位置まで下げること……でしたよね?」
「ああ、それがどうした?」
「カンナさんのその……胸部にネクタイが押し上げられて、その位置まで行ってませんが大丈夫でしょうか?」
「……まあ大丈夫だろ」
「ですね」
時間もあまりないので、二人して大講堂に向かうことにした。
歩いている最中、私は気になっていることをカンナさんに聞いてみた。
「カンナさん」
「なんだ?」
「カンナさんってなんでそんなに身長が高いんですか?」
カンナさんは私の身長に比べて10センチは高い。まだ中学一年生のはずなのに160センチはある。それに比べてまだ私は150センチもない。一体何をどうしたらそんなに身長が高くなるのだろうか。
「まあ、遺伝だと思うが…牛乳とか飲んでもそんなに変わらんだろ、あとは寝ることとかじゃないか?まだ成長期だし」
「確かに……まあ今後に期待ですかね」
そう肩をすくませてみせる。
「私も質問があるのだが」
「なんでしょう」
「サキョウさんはどこの部署に行きたいんだ?」
ヴァルキューレ警察学校には色々な部署がある。
公安局、生活安全局、警備局、交通局、それに海警がある。さっき暇な時間に色々ネットサーフィンをしていたが、どうやら情報部などという、あらゆる学園に行ってスパイ活動をして、その情報を連邦生徒会にこっそり流してるとかいう都市伝説もあるらしいが……そういうのはSRT特殊学園の仕事だろうし、関係ないだろう。
「私は、公安局刑事一課に行きたいと思ってます!」
「おお、刑事か。いいな。実は私は、もうバレてると思うが生活安全局に行こうと思ってるんだ。」
「いいですね!じゃあ笑顔練習しなきゃ!」
そういうとカンナは、自分の夢を応援されたことに嬉しくなったのかニコニコしていた。……笑顔は怖いけど。
そうこうしているうちに、大講堂の控室みたいなところに着いた。他のみんなも集まってきているようで、列をなして集まっている。
「なんでしょう、この列?」
「さあ、なんかくれるんじゃないか?」
とりあえず列に並んでいくと、式典用の飾緒をつけてもらう列だったようだ。ついでに拳銃ももらった。
「おお、なんだか本物の警察みたいになってきましたね……」
「本物だからな」
そんなことを行っているうちにいつの間にか式典の時間になったらしい。大講堂に入って指定された席についた。カンナは隣ではないが、どうやら近くの席に座るらしい。
貴賓席をみると、やはりキヴォトス全体の治安を守っている警察組織の入校式だからか、三大派閥であるトリニティ、ゲヘナ、そして新興のミレニアム、そして連邦生徒会の面々が座っていた。
「起立!」
グッと背筋が伸びる。夢だった警察官への道がとうとう始まった瞬間であった。
杉下サキョウちゃんの性格が暴れてる………杉下右京さんみたいな性格にするはずなんだけどなあ……とても元気な子です。
キャラ紹介
名前:槙島ユラ
年齢:16歳
所属:ヴァルキューレ警察学校・特別指導課
身長160cmほどで、細身ながら引き締まった体つきをしている。淡い銀紫色のショートボブが特徴的で、光に当たると柔らかく銀色に輝く。瞳は薄藤色で、穏やかな印象の奥に鋭い観察眼を宿している。姿勢がよく、歩くときも無駄な音を立てないため、自然と落ち着いた雰囲気が漂う。制服は常に整っており、教官としての責任感が外見からも感じられる。
性格は基本的に丁寧で穏和だが、任務や訓練の場では一転して厳しく、判断も迅速。叱るときには年齢を感じさせない威圧感があり、後輩からは「優しいけれど怒ると怖い人」と思われている。本人は自分を過大評価せず、控えめで礼儀正しいが、誰よりも周囲の安全を気にかける面倒見の良さを持つ。