ルキンフォー・エム   作:來馬らんぶ

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#16 ”Climax Crisis”

 

 

 

 

 戦いなさい。

 

 

 戦いなさい。

 

 

 女皇ティタニアのために。

 

 蒼穹帝国グラモスのために。

 

 ――戦

 

 

 ――女

 

 

 ――蒼

 

 

 

 戦女蒼戦皇穹な皇穹な皇穹な女グ蒼戦女蒼戦グ女蒼皇穹な皇さ穹な皇穹な戦二女蒼戦女蒼戦女蒼ティ戦皇穹な皇穹な皇穹な皇穹な皇穹皇穹なな皇穹な皇穹ティな皇穹な皇穹なラ女蒼戦女蒼戦グ女蒼戦女蒼戦女ス蒼戦女蒼戦女蒼戦女蒼戦女蒼戦女蒼戦戦女蒼戦皇穹な皇穹な皇穹な女グ蒼戦女蒼戦グ女蒼皇穹な皇さ穹な皇穹な戦二女蒼戦女蒼戦女蒼ティ戦皇穹な皇穹な皇穹な皇穹な皇穹皇穹なな皇穹な皇穹ティな皇穹な皇穹なラ女蒼戦女蒼戦グ女蒼戦女蒼戦女ス蒼戦女蒼戦女蒼戦女蒼戦女蒼戦女蒼戦女蒼戦女グ蒼戦ラ女蒼戦タ女蒼戦皇穹な皇穹な皇穹な女蒼皇ティ皇ラ穹ティな皇穹な皇穹なグ皇い穹な穹皇穹な皇穹ティな皇穹な皇穹な皇穹な皇穹なタな皇グ穹な皇穹な皇ラ穹女蒼戦女グ蒼戦ラ女蒼戦タ女蒼戦皇穹な皇穹な皇穹な女戦女蒼戦皇穹な皇穹な皇穹な女グ蒼戦女蒼戦グ女蒼皇穹な皇さ穹な皇穹な戦二女蒼戦女蒼戦女蒼ティ戦皇穹な皇穹な皇穹な皇穹な皇穹皇穹なな皇穹な皇穹ティな皇穹な皇穹なラ女蒼戦女蒼戦グ女蒼戦女蒼戦女ス蒼戦女蒼戦女蒼戦女蒼戦女蒼戦女蒼戦女蒼戦女グ蒼戦ラ女蒼戦タ女蒼戦皇穹な皇穹な皇穹な女蒼皇ティ皇ラ穹ティな皇穹な皇穹なグ皇い穹な穹皇穹な皇穹ティな皇穹な皇穹な皇穹な皇穹なタな皇グ穹な皇穹な皇ラ穹蒼皇ティ皇ラ穹ティな皇穹な皇穹なグ皇い穹な穹皇穹な皇穹ティな皇穹な皇穹な皇穹な皇穹なタな皇グ穹な皇穹な皇ラ穹、

 

 

 エコー、繰り返し。リピート、ディレイ、反芻(はんすう)

 

 

 

 ――声と共に意識が浮上していく。

 

 またいつものように、培養ポッド(コクーン)越しの視界が広がる。

 

 ただ、いつもと違うのは、今日が()()()だということ。

 

 繰り返される毎日と同じように、培養ポッド(コクーン)から出る。

 

 表面の金属にあたしの顔が映って、自分のことなのに、あまり血色は良くないな……、なんて考えていた。

 

 でも、それはあたし以外の同型(ナンバーズ)たちも同様のようで、どこか強張(こわば)った表情のまま、のろのろと立ち上がり始める。

 

 司令部からの音声が流れてくる。

 

 今まで顔も見たことはないけど、その威厳のある声にいつもとは違った感情がこもっているように感じた。

 

 

『――先の真蟄虫(スウォーム)襲撃により、我々グラモス鉄騎兵団は数多の同志を失った』

 

 

 音声の響くスピーカーの前に、徐々に同型(ナンバーズ)たちが集まっていく。

 

 

『彼ら彼女らの挺身(ていしん)努々(ゆめゆめ)忘れる事なかれ。だが、立ち止まり、悲しむことは許されない。我らが立ち止まるのは、命燃やし尽くしその時か、宿願たる蟲共を打ち破りし時のみである』

 

 

 一言一句が身に染みていく。

 

 

『これまで、我々は永く深い夜の底にいるがごとくであった。だが、第012中隊の尊い犠牲の果てに、一条の光明(こうみょう)()るに至った。今こそ、耐え(がた)きを耐え忍ぶ日々に終止符を打つのだ』

 

 

 気づけば、同型(ナンバーズ)たちはみんな整列していて、あたしもその一部になっていた。

 

 でも、頭の中では、『第012中隊の尊い犠牲』という言葉ばかりが(めぐ)っていた。

 

 第012中隊のAR-6322は確か一度話をしたことがあった。

 

 彼女はキレイな……グラモス鉄騎兵団で長生き(ベテラン)、つまり実力と運を兼ね備えている証の長い髪の毛を持っていて、それを褒めたら、アナタもきっとなれるし、似合うと思うよと言ってくれた。

 

 たったそれだけのやりとりだけど、きっといい人だったんだと思う。その時、いつか親衛隊に抜擢(ばってき)してもらうのが夢って言っていたけど……今の話だと……。

 

 いい人ばかりが、どんどん先に退場していく。

 

 

『だが、ついに、だ。ついに、我々は長年探し求めていた蟲共の巣を突き止めた。

 

 ――これより、我々グラモス鉄騎兵団は全兵力をもって、その巣を叩く!!』

 

 

 どの同型(ナンバーズ)が言い始めたのかわからない。ただ、徐々に波紋が広がるように、腕を(かか)げ、口々にあの言葉を叫び始める。

 

 

『今、我々は蒼穹の果てにある虹を掴む――最終作戦(ラストオペレーション)名はArc(アーク)! 

 

 いかに深き夜といえど、明けぬことはない。諸君らの健闘を祈る!

 

 命を燃やせ! 女皇陛下のために! グラモスのために!』

 

 

 ――女皇陛下のために!!

 ――グラモスのために!!

 

 全身が震えるほどの声が四方八方から飛び交い、鮮やかな光を撒き散らしながらSAMへと変じていく。

 

 ――そうだ。これで決着がつく。

 

 どっちかが勝って、どっちかが負け――ううん、あたしたちが勝つんだ。弱気になる必要なんかない。

 

 必ず。

 

「――ファイアフライ-(フォー) 起動(ドライブ)ッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アーク作戦の内容は、比較的シンプルだった。

 

 α(アルファ)β(ベータ)γ(ガンマ)の三師団が正面から攻撃を仕掛け、最前線を担当。その隙にΔ(デルタ)師団を4つの連隊に、そこからさらに4つの中隊規模に分けた上で正面以外の三方向から巣の中心部にいると推定される聖母(マザー)真蟄虫(スウォーム)を叩く。

 

 元々、『繁殖』の星神(アイオーン)『タイズルス』から創出された真蟄虫(スウォーム)は、『繁殖』という名の通り、一体がもう一体へと分裂することができる。

 

 だけど、調査の結果、その分裂の指示を出していたのが聖母(マザー)と名付けられた、規格外に巨大な真蟄虫(スウォーム)だということが発覚した。加えて聖母(マザー)は、自分でも一度に数百から数千と大量に子供である通常の真蟄虫(スウォーム)を産み落とす。

 

 その生産性は比べものにならなくて、間違いなく聖母(マザー)を倒さない限り、あたしたちに勝利はない。

 

 

 

 

 つまるところ、あたしが配属された部隊――Δ(デルタ)師団第1連隊ブレイブ中隊の責任は重大だった。

 

 

 

 

 

「AR - 26710、応答しろ!」

「――ッ、申し訳ありませんッ!」 

「意識をしっかり保てッ。一分一秒でもこの地獄を生き延びたければな――!!!」

 

 中隊長――AR - 3398の叱責の声であたしは飛びかけていた意識を取り戻す。

 

 

 

 あたしは地獄を見たことはないけど、

 今の光景が地獄でないのなら、きっとその地獄は地獄なんかじゃないんだと思う。

 

 

 

 おびただしい数の真蟄虫(スウォーム)の死骸が転がっていて、間には同型(ナンバーズ)たちのSAMの破片や素体(ネイキッド)()()()ものが散乱している。

 

 それらの固く、なのに柔らかいものが混在した何かを踏み越えて、進む。

 

 耳は絶えず羽音を拾っていて、意識的に遮断(シャットアウト)しないと、おかしくなりそうになる。巻き上がる砂の向こうには赤い複眼がぼうと数えきれないほど浮かぶ。

 

「進むぞ、ついてこい!」

「はっ!!」

 

 もう考えている暇なんかない。ひたすら動きのあるナニカを認識すると同時に腕を振るう。

 

 右斜め前、殴る。前方、肩からタックル。上、頭突き。左、ブレードでなぎ払う。

 

 真蟄虫(スウォーム)の体液がカメラアイにへばりつく度に(ぬぐ)う。自動清掃(ワイプ)機能を設計時に考慮しなかったのかなと呪う。

 

 何度腕を振るえば終わるのか。

 

 ――獣みたいな声をずっと出しているから喉が痛い。

 

 なんで、こんなに殺しているのに数が減らないのか。

 

 ――ああもう、こっちが進もうとしてるんだから、邪魔をするな。

 

 ホントウニ?

 

 本当に、終わりは来るのか。

 

 負、

 

 ノイズ。

 

 

 不意にAR - 18686の声が聞こえた気がした。

 

 

『――思うんだ。僕たちみたいな遺伝子をイジられた擬似有機生命体(レプリカント)と普通の人間でも変わらないこと。

 

 たとえば、最も辛く悲しいことって何だろうかって。

 

 終わりが見えないこと。

 自分の行動に意味がないこと。

 誰にも理解されないこと。

 

 僕はきっとそのどれかじゃないかと思うんだけど。

 AR - 26710、

 きみは、きみにとって、それはなに――』

 

 

 さっき、中隊長に怒られたばかり? それってどのくらい前のことだっけ?

 

 ああ、いいや、とにかく、

 

 ――思考の油断が衝撃となって、ツケを払わされた。

 

 背中から襲った衝撃。

 

 あたしはそれに逆らえず、無様に大地に転がる。2回、3回、4回。

 

 5回を数えて、砂に頭部が埋まり、カメラアイが黒に染まった。

 

 痛、い。

 

 ――ダメージ域40%突破。鎮痛剤(アンチペイナー)投入。

 

 アラートがSAMの中で鳴り響く。投薬されてもまだ暴れる痛みに顔をしかめつつ、あたしは追撃を避けるために身体を横に転がす。

 

 カメラアイを(ぬぐ)い――拭いきれない。

 

 思わず舌打ち。

 

 それでも辛うじて、とどめを差そうと突進してきていたおそらく真蟄虫(スウォーム)の輪郭だけは読み取れて、無我夢中で左腕のブレードを突き立てる。

 

「あああ”あ”あ”あ”あ”あ”ッ!!!!」

 

 ぐしゅ、ぶしゅという音。何度も息の根を止めるべくブレードに刺さった真蟄虫(スウォーム)を地面に叩きつけて、何度も何度も刃を突き立てる。殺す、殺さないと、殺されちゃう。

 

 ブレードがへし折れて、ようやくあたしは我に返る。

 

 

 

 ――地獄はまだそこにあって。

 

 

 

 気づけば一人になっていた。

 

 中隊長は!? と周囲を見回しても、砂塵がひどくて存在の有無がわからない。

 

 なのに、はっきりと、

 

 いくつも赤い複眼だけは見て取れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ああ、ここが”おしまい”なんだ。

 

 いつか、どこかで必ずやってくるもの。

 

 さけられ、ない、こと。

 

 

 ――これで、もう”おわり”なんだ。

 

 でも不思議と、ようやく休めるという思いもあって、

 

 ロストエントロピー症候群で終わりじゃなくてよかったとさえ思いもして、

 

 とてもじゃないけど、言葉にしたくてもできない思いばかりが、あふれそうになる。

 

 戦士なのに、なさけないけど。

 

 なのに、目からあふれて、止まらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――生まれた理由は、戦うためだったんだ。

 

 

 

 ――死ぬ意義は、女皇陛下とグラモスのためだったんだ。

 

 

 

 

 

 だったら、

 

 

 

 

 だったら、だよ?

 

 

 

 

 だったら、

 

 

 

 

 

 

 

 

 あたしにとっての生きる意味(ミーニング)は……なんなの?

 

 

 

 

 あたしがやってきたことは正しかったのかな。

 

 

 

 それしかできなかったよ。

 

 

 

 

 

 いつかビデオ資料で見た学校に通ってみたかった。

 

 

 

 そんなことできなかったよ。

 

 

 

 

 楽しいとか、苦しいとか、わかんないよ。

 

 

 そうしろとしか、言われなかったよ。

 

 

 

 だから、わかんないよ。

 

 

 

 

 あたしって――、

 

 

 

 

 

 ――ちゃんと生きれたのかな。

 

 

『AR - 26710、きみは、きみにとって、それはなに――』

 

 

 

 ああ、それは、きっと、

 

 ――やっぱり、■■■■たくない、な……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――顔わかんねぇけど、

 

 ――目ぇ開けろ」

 

 

 

 

 

 そんな声が聞こえて、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良い子は悪い夢から解放()める時間だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 光る剣で両断されたスウォームを踏みつける、

 

 その背中は、見覚えがあって、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待たせたな。

 

 ――――お前を奪いに来たぜ」

 

 

 

 

 

 振り返って、その人は笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 







執筆時BGM:
1.『at’aek ON taitn』『立body機motion』from 進撃の巨人 OST
2.『色彩~雪花の盾~』from Fate/GrandOrder OST
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