「惑星シロッカ……ねぇ」
エリオとの白熱チェスで圧倒的勝利を決めたときにかかってきた電話の主――ジェイドさんの送ってくれた資料に目を通しながら、俺はさきほどのやり取りを思い返していた。
「――はい? 債権回収のお手伝いですか?」
「ええ、ぜひあなたに頼みたいと思ったの」
なんでもジェイドお姉様は、もらった名刺に書いてあった
じゃあ本業はなんなんだという話になるので、失礼にならないよう聞いてみたところ、出てきた名前が、
「――スターピースカンパニーという会社なんだけれど。知ってるかしら?」
そりゃもう先日大変お世話になったばっかりなので、猛烈に知らんぷりしたいところだったが、男ゼイン、ジェイドお姉様に対して、そんなことはできない。
「ええ~超大手じゃないですかぁ~すごぉ~い」
完全に”お仕事何してるんですかぁ?”からの合コンOLコンボフレーズで乗り切ることにした。名もなきOLの英霊たちよ、俺に力を。
「ふふ、……相変わらずな度胸ね。やっぱりあなたが適任だわ」
「お任せください。で、実際何をやれば?」
そうお姉様が仰るのであれば、たとえ火の中水の中だ。
「ええ、”シロッカ”という、うちが取引をしている惑星でいま紛争が続いていてね。そこの債権回収のトラブル対処にうちの優秀なスタッフを送っているのだけれど、当然、荒事が必要になりそうでね。その子も頼りにはなるけれど、念を入れておきたいの。そこで
なるほどー。
紛争ね。ふーん、そう。
じゃねーわ、また争いかーーーーい!!!
ツッコミたくもなるわ。どいつこいつも物騒なことばっかしやがって、この宇宙は平和なとこないんかい。銃を撃つより花を植えろや。
ましてや、営業じゃない方のソルジャー要員である。
いつも真面目な俺でも時々発言には小粋なジョークを含むので、適度に
だが、男は年上に対し、二言はねぇ。
あの時、ジェイドお姉様のお陰で見られたカフカさんの表情は億千万じゃ利かない価値があった。
「あなたにはこれから、そのスタッフと現地で合流して、協力してトラブルを解決に導いてあげてほしいの」
「かしこまです。ジェイドお姉様に喜んでもらえるよう全力を尽くします!」
「――ありがとう。期待しているわ。必要な資料はこの後まとめて送るから、詳しくはそれを見て
――はい、かくして、宇宙艇をすっ飛ばして向かってるところである。俺、偉すぎる。
今回はエリオも関係ないので、完全に俺のプライベートということになる。
そう考えると、いやぁなんか久し振りに気楽でいいね。黒歴史未来日記ポエムと一緒に行動して、せかせかせんでいいわけだし? あ、そうだ。誰かから連絡来てもしばらく返せんかもしれんから、スマホのメッセージアプリも自動応答モードにしとこっと。
そういや、なんか送り出される時だけ、エリオが、
「ぼくは分の悪い賭けは嫌いだけど。ゼインは――「大好き」
って返しちゃったけど。なんかそこだけ切り取ると俺ぬこ大好き人間みたいで切り抜き動画が勝手に拡散されないか心配だわ。
その後、「まぁ、ほどほどにね」とか付け足してたけど意味わかんね。負け惜しみか? 帰るまでに、せいぜいチェスの練習しとけよ。
――
”惑星シロッカ”。
元は他の星の化学・重工に関する委託製造を引き受けることをメインの産業に据えていたが、これによって大気と土壌が汚染され――壊れた星。
そこで
これによって、シロッカは浄化用の装置と
ただし、
スクロールしていけば、都市や重要施設は「清浄エリア」として人が居住可能であるものの、それはあくまでエリア外と比較して、であり、基本的にフィルター付フルフェイスマスクが常に必須とある。が、
「……ま、それでめでたしめでたしにはならんわな」
問題は――暫定統治府が契約に際し、設定した
前述の通り、シロッカはわざわざ委託製造をメインにするくらいだから、カンパニーに対して差し出せるような資源や資産にロクなものがなかったのだという。
その結果として、差し出したものは”
それ以上の詳細はもらった資料には”職業訓練”や”保護”や”再配置”みたいな、やらしいほど小綺麗なワードでしか書いてないが、なんらかの労働に従事させられているのは想像に
しかもそれはカンパニー側から見て都合の良い方向に捉えた想像に過ぎない。労働なんてとりあえずラベル貼っとけば、なんでもありだしな。
……俺は蟲と戦争していたどっかの星のことを思い出して肩をすくめる。
続きをスクロールする。
なんとか命をつなげた暫定統治府も、実態としてシロッカ全域を浄化するに至れていないワケで、「清浄エリア外」=「汚染が濃い」扱いとなってしまった区域の住民たちは不満を抱き、反対運動が発生。
当然、野放しとなるはずもない。
暫定統治府に厳しく弾圧され犠牲者が出た結果、火が着いて、
まぁシロッカ民には悪いが、よくあるパターンだ。どちらの言い分も間違ってはないし、正しい、いわゆる悪はない、それぞれの正義があるだけってヤツ。
とかく、紛争がヒートアップした結果、港や輸送路、発電設備が不安定になり、触媒や部材が計画通りに届かないことで清浄エリアが縮小。
するとなんということでしょう、大黒柱である工場等の稼働率が落ちて、税収と輸出による獲得外貨も下がり、統治府のお財布はすっからかんに。支払いは未完に。カンパニーはカンカンに。とまぁフルコンボだドン。
そこで契約に則り、”
で、そのアサインされた本社社員のサポートというのが、ジェイドお姉様の言っていた、俺のミッションということになる。
あーなんか文字ばっか読んでたら、疲れてきたわ……。
なんかパッと見でわかりやすそうな……お、よさげなのあんじゃん。
添付されていた該当社員のものと思しきプロフデータを開く。
社員証からでもとったのか正面から撮影されたそのご尊顔は、白と黒の丸っこいボディにちょびっとだけ飛び出た四肢と鼻、紫の耳に金のフチ取りがされていて……わぁまるで、うり
「――は? なめとんのか?」
顔から下は女子と思われるが、肝心な顔の前にプーマンを持っているせいで、デキの悪いコラ画像みたいになっている。
賭けてもいいが、コイツぜってー性格悪いだろ。
よくもまぁこの反骨精神で会社員やれてるわ。上司部下同僚の苦労が忍ばれる。一応名前が書いてあるけど、カブ……か。変な名前してんな。
よし、カブ子(仮)。こいつは会ったら、ちいとばかりお説教だな。年齢もやっぱ年下だし。
一通り資料へ目を通した今、自然と漏れるのは、
「あ~~~帰りてぇ、おうちに……」
すっげー行きたくなくなってきた。
なんかねーのかよ、たまには、青い海と照りつける太陽に水着のおねーさんに
まぁ言っても仕方ねぇか……はぁ……とため息をつきつつ、ジェイドさんから最後に送られてきたスターピースカンパニーの
どうやら外部協力者という扱いではなく、これで俺もスターピースカンパニーの社会人インターン(笑)として身内扱いしてくれるらしい。
若干というかだいぶどうかと思うが、もういいわ。やれやれだべ。
まぁ、ただ言えることがあるとすれば1つ、
とりあえず、グラモスの反省を活かして、スターピース
――
もともとカンパニー関係者もここを利用していたのかもしれない。
ただなんか特段、検問とかIDチェックとかなしにヌルッと入港できちゃったんだが、大丈夫なのかこれ? ザルってレベルじゃねーぞ。
それでもとりあえず、空いてたポートに宇宙艇を停めるとおニューのマスクをつける。
安いのもいくらもあったが、奮発してかなりイイやつにしといたから思ったよりも息はしやすい。やー、もう熱とホコリと塵その他諸々はこりごりだわ、ケチんなくて良かったーマジで。
ホクホク気分で、テンションの上がった俺は前世時代になんかの悪役ピエロの映画で見た階段ダンスよろしく、両手両足をくねらせつつタラップを降りていき、最後は大きくジャンプして、両脚で着地するのと同時に、
――付近で爆発が発生し、勢いよく吹っ飛ばされた。
二度三度と
黒煙立ちのぼり、パララっというどっかで聞いたことのある小気味よい音と悲鳴、そして更に続く爆発音が耳に飛び込んで来る中で
「ぱ……パトラッ……シュ、ぼくもう……なんだかねむい」
「――キュウォン?」
どアップで視界の半分を埋め尽くす、うり坊と子豚を悪魔合体したようなそれは――次元プーマンという宇宙生物で、なんだか物凄く直近で見たことがあるような顔をしていた。
「か、……カブ……こ」
「キュ! キュウォン!!! キューーーウォーーーン!!!」
なんか飛び跳ねているプーマンと何かが駆け寄ってくる足音。程なく足音の主のフルフェイスマスクが見下ろしてくるのまで確
――俺は意識を失った。
孔明「今です」
▼おまけ▼
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-> グループメッセージ
ピッ
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<星核ハンター★ファミリア(5)>
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一番星*:かえったー
一番星*:どこー
一番星*:ぜいん
一番星*:( 'ω'; 三 'ω' ;)
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大女神カフカディーテ*:どこ
大女神カフカディーテ*:いま
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ほたるん*:え……そうなんだ。いつ頃帰るの?
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ほたるん*:あ、あのね!
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ほたるん*:あたし、今日50体以上敵をやっつけたよ!
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ほたるん*:ゼイン?
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ほたるん*:50体、だよ?
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ほたるん*:ご、ごめんね……
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ほたるん:あたし、何か怒らせるようなことしちゃった……?
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大女神カフカディーテ*:おしおき決定ね
大女神カフカディーテ*:勝手にお散歩は
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大女神カフカディーテ*:ホタル。これは別にポチくんが怒ってるわけじゃないわ
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ほたるん*:そ、そうなの?
ほたるん*:よかった……
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一番星*:(´;ω;`)ウッ
ほたるん*:(。>﹏<。)
大女神カフカディーテ*:( ꐦ◜ω◝ )ビキビキ
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くろぬこ*:まぁ、ほどほどにね……あなたたち。
*名前変更済
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