ルキンフォー・エム   作:來馬らんぶ

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Ex.#1 ”星核ハンターはおそろいが好き”

 

 

 

 

 

 目の前でそのパンストに包まれた美脚(おみあし)が組み直される。

 

 思わず、ゴクッと生唾を飲み込んだ。

 

 

「——で、これは?」

 

 

 俺はパンツ一丁に剥かれた上で正座なう。おまけに身体中にカフカさんの糸が()ってる人間ボンレスハム。そう、これがお仕置きタイム。

 

 じゃねーわ。

 

 (いん)を踏んでる場合じゃない。

 

 ほんの少しでも動こうものならば、糸はすぐに肉に食い込み、血がにじみ出てくる。

 

 仮にくしゃみでもしようものなら、あんま想像したかねぇことになること請け合い。

 

 いやもうこれ完全にサディスティックでマゾヒスティックなプレイなのよ。

 

 ……まぁ、血出ても、すぐに治るんだけど。

 

 

 

 

 シロッカを後にして、ロビンをルアン姉ちゃんの秘密ラボに連れてったときに”どゆことすか!”と質問攻めにしたが、どうやらこの身体の治癒能力は『Autonomous Remedy Protocol——A.R.P(アープ)と言うらしい。命名したのもルアン姉ちゃんfeat.(フィーチャリング)エリオ。あのー、この組み合わせ()ぜるな危険なヤツだと思うんですけどぉ?

 

 非常に専門用語満載で、淡々と、でも語るほど内心は興奮しているのか凄い早口になるルアン姉ちゃんは見物(みもの)だったし動画撮りたいほど最&高だったが、俺のオツムでは処理が出来なかったため、”ねぐら”に帰ってきた際にエリオに翻訳してもらった。

 

 まとめるとこうなる。

 

 メイン所の機能としては簡単に言やあ、——勝手に傷を治そうとする自己修復機能だ。

 

 まぁここまではいいわな。星嘯(せいしょう)との戦いの中で身を持って体験したし。

 

 

 問題はそっから先でして……姉ちゃん曰く、A.R.Pの燃料は、俺の身体の中にあるもんなのだと。

 

 

 たとえば食った飯。たとえば()め込んだ脂肪。筋肉。水分。そういうのをまとめて燃やして、無理やり疲労回復や修復に回してる……と。

 

 つまり、疲れれば疲れるほど、傷が重ければ重いほど、……腹が減る。

 

 致命傷レベルの大怪我を負った場合、下手すると身体そのものを削って治しにくる。食えてない=飢餓状態(きがじょうたい)でA.R.Pが機能しすぎると、実態として、本当に自分を食って命を繋いでいるという表現が正しい状態におちいる。

 

 つか一応フォローしとくと、俺も白い空間から戻って意識を失ったが、点滴つながってなかったらガチで「お願い、死なないでゼイン! あんたが今ここで倒れたら、カフカさんやロビン・エレーナとの約束はどうなっちゃうの? A.R.Pはまだ残ってる。ここを耐えれば、星嘯に勝てるんだから! ゼイン死す」で急転直下で、あばよダチ(こう)していた。そんなことある?

 

 あるんですね^^

 

 アベンチュリンから教えてもらったが、病室で意識を取り戻した際に俺とアイツに繋がれていた点滴(てんてき)は、なんでもスターピース・ファーマスティカル製の、マジで白目(しろめ)になるくらいそれはもう高性能な点滴だったんだと。あれがなけりゃ、俺は餓死(がし)していたと。やーんこわーい。

 

 んでもって、そんだけ高性能な点滴とくれば、でもお高いんでしょう? と疑問がわくが、実にその通り、薬価(やっか)を聞いたら卒倒(そっとう)しそうな(がく)だった。ダメでしょ、ちっこい宇宙船買えるわ。

 

「ま、いいさ、僕のおごりだよ」とアベンチュリンは軽く言っていたが……やはりスターピースカンパニーで”(じゅう)石心(せきしん)”サマともなるとクソほど稼いでるんですね。念のため年収を尋ねたら、ちびりそうになって、トイレで泣いちゃった。

 

 つ、つらひ。やりがい搾取(さくしゅ)されているぞ、星核ハンター(うち)は。

 

 で、話はそれたが、A.R.P(アープ)、……まだある。

 

 これがもっともヤバいのだが、A.R.Pは大きな傷だけじゃなく、普段の日常生活においての細かい損傷も勝手に(ひろ)って治してしまう。

 

 結果として、

 

 筋繊維(きんせんい)(いた)みとか、細胞の劣化とか、そういうのまで地味に潰していくせいで、俺の身体は——普通の人間より()けにくく、寿命(じゅみょう)が長くなっちゃったそうだ。

 

 

 なっちゃったそうだ♪

 

 

 なっちゃったそうだょ♪

 

 

 …………

 

 

 あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!)

 

 

 いや、この反応も当然でしょ。なに、俺はメーテルより先にほぼ機械の身体みてーなもんを先に手に入れてしまったってワケ??? あのサイボーグカウボーイ野郎と仲良くロデオでもするしかないってワケ???

 

 ダメだこれ、落ち着かねば。

 

 寿命が長くなっちゃったということは、だ。

 

 ……見た目も、寿命も、今こそ問題ないが、数年数十年と年月を重ねていけば、普通の人間の時間尺(じかんじゃく)からは少しずつ(はず)れていく。

 

 

 

 

『おめでとうございます。わー』

 

 

 

 

 と、このことを説明されたとき、相変わらずの無表情+抑揚(よくよう)のない声でパチパチと拍手していたルアン姉ちゃんのお顔がよみがえる。ふつくし……

 

 

 ……

 

 

 …………

 

 

 いやいやいやいや、ダメでしょ。大丈夫なの? いやダメでしょ。ルアン姉ちゃんじゃなかったらマジでキレてたよ。いくら実験動物でも、怒るときは怒るんだからね? メッ!

 

 なんか知り合いにも似たような若返りの謎技術を使って前琥珀紀(ぜんこはくき)から生きてる人がいるとか。長命(ちょうめい)で有名な仙舟人(せんしゅうじん)とかもいますしとかなんとか(おっしゃ)ってたけども…………それほんとフォローなのぉ?

 

 

 

 ……はぁ……まぁでもA.R.P(これ)なかったら死んでたしなぁ……、

 

 

 ——付き合って生きてくしかねぇか……。

 

 

 ……はい、さておき、カフカさんの質問答えねーと、

 

 

「バッキバキの……スマホ、ですかね……?」

 

 

 下手人(げしゅにん)から押収(おうしゅう)したブツのように、置かれているのは、星嘯(せいしょう)との戦いを経てもはやヒビの入ってない箇所(かしょ)の方が少ない、マイスマホ。

 

 

 

 ——ぐいと糸が締まる。あいたたた。

 

 

 

「……本当にすぐ治っていくのね……」

 

「————ッ!」

 

 

 やばいわ、糸で切れたとこから血が出て、修復して、ゆるんで、また締まって切れるというこのエンドレスループを、カフカさんてばだいぶお気に召してしまったらしい。

 

 完全にスイッチが入り、ハイライトはオフとなり、それはもうネオメロサディスティックな目つきになってて、俺を見下ろしているが、正直……たまりませーん!! もちろん、いてーのはいてーが、控えめに言って、最高でーす!!

 

 A.R.P万歳!!!

 

 未来のことなんて気にしても仕方ねーや! 

 

 俺が生きてんのは今だもん! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ひとしきり玩具(おもちゃ)にされた後で、カフカさんはボンレス状態を解除してくださり、

 

「でも、……仕方ないわ。これじゃ使えないでしょ?」

 

「ま、まぁ使えないこともないですけど……厳しくはありますね」

 

 服を着ることを許可された俺はローブに(そで)を通しつつ答える。タッチパネルがアホになってるから、全ての動作が一苦労なのよね。

 

 完全に余計な出費だが、仕方ねー買い換える……はっ!?

 

 

 

 ——その時、俺に電流走る。

 

 

 

 もはや相当昔のことに思えるが、そもそもといえば、こちらのスマホはカフカさんに買って頂いた宝物のひとつである。その時も誕プレで紫水晶(アメジスト)のピアスを贈ったのだったが、

 

 ちらと見つめれば——、

 

 カフカさんの耳たぶにしかと光る紫の宝石。

 

 うーんこれは、ゼイン感激です。

 

 いやよくつけてくれてるなぁとは思ったものの、ここまで愛用してくれるというのならば贈ったかいがあるというもの。

 

 ……だいぶシロッカの件で心配と怒らせてしまったのも事実で、なんかまだその怒り収まっていないというのをひしひしと感じている。自分、カフオタ検定1級ですから。

 

 ——そうだ。

 

 第2弾。スマホ変えるついでに、お()びの品でもプレゼントしよう。というのは建前(たてまえ)のひとつに過ぎなくて、最近なかなか2人きりになれなかったので、早い話がデートがしたい。したいったらしたい。

 

 

「カフカさん、今日お暇ですか? お暇ですよね! エリオから別に指示きてないですもんね!」

 

「え? ……そうね……?」

 

 急にどうしたのかと訝しげな顔をするカフカさんに、

 

「俺と出かけましょう! 久し振りに! 2人きりで!」

 

 いえーいと、その両手を包み込んで詰め寄れば、

 

「え……あ、……うん」

 

「色々迷惑かけちゃいましたから! 任せてください! なんでもおごります!」

 

「————そ」

 

 突然、

 

 ババーンと部屋の扉が開いて、現れたるは、

 

 

「——話はきかせてもらった!」

「き、きかせて、もらった……」

 

 

 両手を高く掲げ、うおーっとポーズをキメる(せい)とその隣で、似たようなポーズを取るも恥ずかしさに負けているホタルがいた。

 

「…………」

 

 俺の全表情筋がやる気をなくすのを感じる。

 

 一体、いつからいたんだこいつら……。

 

 全身で、『入ってくんな、しっしっ』という思念(しねん)を伝えようとするが、(せい)はまったく意に(かい)さず、ずかずか大股(おおまた)で部屋に入ってくる。

 

 そして、人差し指で(おのれ)をさすなり、

 

「なんでもおごっていいよ」

 

「なんで上から? 怒っていい?」

 

「だって、ゼイン、わたしのことすきでしょ?」

 

「……お前の自己肯定感の高さが銀河級過ぎてビックリしてるよ俺は」

 

 むふーそんなに()めないでと勝手にイイ方向に解釈(かいしゃく)をして、まだ成長の(きざ)しのない胸を張る(せい)に俺はげんなりするものの、

 

 同じように(せい)の後に続いてきたホタルもまた、

 

「あの、ゼイン……出かけちゃうの?」

 

 捨てられた子犬のように問いかけてくる。ねぇ、なんで目が(うる)んでんのキミ。

 

 いやあの、別にもう二度と戻ってきませんとかそういう話じゃねんだけど……せいぜい半日レベルで帰宅する話なんだけど。

 

「ぶーぶー! それもこれもおみやげもナシで、かってに帰ってきたゼインがわるい!」

 

「じゃ帰ってこねー方がよかったか、この……」

 

「え、帰って……こない……の?」

 

 ますます目を潤ませるホタル。その絵文字でよくある顔はやめなさい。

 

 ——ダメだこりゃ、こいつら無敵すぎる。そりゃクソデカため息も漏れるっつーもんだ。許してほしい。

 

 やがて、フフと肩をすくませながら、

 

 

「……まぁ、じゃあ今日はみんなで出かけましょうか」

 

 

 結局、この場におけるヒエラルキーのトップであるカフカさんによって、

 

 そういうことになってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 以前と同じく”ねぐら”から最寄りの惑星『シェアフォート-(スリー)』へと移動した俺たちは、スターピースモバイルショップに向かった。途端に目を輝かせて店内で走り回りだそうとする(せい)の首根っこを捕まえていると、

 

「こんにちはー、今日はどのようなスマホをお探しですか?」

 

 近づいてきた、にこやかなショップ店員に聞かれて、俺は迷いなく答える。

 

「あ、今ある中で一番丈夫なやつください」

 

「……丈夫、ですか!?」

 

「はい。なんかこう金の爪で貫かれそうになっても防げてたり、天罰レーザー浴びたり爆発で吹っ飛ばされたりしても大丈夫なやつがいいんすけど」

 

「すうぉーむの爆発に巻き込まれてもは?」

 

「あー、忘れてたわ、それもそうだな。サンキュ、(せい)

 

 シロッカ+グラモスの一連の出来事を思い出しつつ条件を並べ立てると、店員はガチで引いていた。

 

 ……いやだって本当のことだし。それくらい耐えられるヤツじゃないと今後も不安すぎる。壊れたら黄泉(よみ)のねーちんを守れない……ッ。

 

 崩れかけた営業スマイルを辛うじて修正し、

 

「……お客様、当店はスマートフォンの販売店でして、軍事装備の取り扱いは——」

 

「まぁそうっす——」

 

 はいはい、わかって——

 

「ありませんが、お客様の基準を満たすスマホケースでしたら取り扱っております」

「!?」

 

 この店員……できるッ!

 

 結局その店員と握手して、スターピース・マニュファクチャリング製の軍用基準(MIL)スペックの耐衝撃、防水性、防塵性、耐熱性全てにおいて最上級のケースと今のスマホ機種の後継機が出てたのでそれにした。

 

 見た目は超ゴツいが、まぁ命より大事なもんが入ってるからな。おねーさんたちの連絡先とか。連絡先とか。たっけぇケースだが、背に腹はかえられんわ。鬼の分割払いでお願いします。

 

 とまぁ、有能店員様々(ゆうのうてんいんさまさま)でスマホ選びはすんなり事が運んだ。

 

 つーか、契約ん時に料金はファミリープランに変更されませんか? そちらの(ほう)がお得ですがとか言われたんですけど。勘弁してほしいわ。カップル、いや新婚プランならわかるけどさぁ。

 

 ——俺はあえてそちらに目を向けないよう必死だったというのに。

 

 えー、時々に視界に入り込む(せい)さんは、展示品のタブレットを次々スワイプしまくっては店員に「これ持って帰っていい?」「ダメですよー」「これは?」「ダメですよー」と聞く無限ループが発生し、ホタルが必死に頭を下げていた。この2人を連れてくるとこうなることはわかっていた。わかっていたんだ……、

 

 くっ……カフカさんと2人で来てればこんなことには。

 

 なんて恨めしい目を向けると、当のカフカさんは店の入り口付近で腕を組み、涼しい顔をしている。助けてくれる気、ゼーロー。なにこの、今日はパパが面倒見てな感じは。

 

 ……ま、まぁいい、気を取り直そう。ここからが本題だ。

 

 カフカさん。そして何故か、(せい)、ホタルまで。

 

 シロッカの件で心配かけた3人へのお詫びの品。

 

 ……正直、カフカさんに何を贈るかはまだノープランだが、まず簡単な方から攻めよう。よし、(せい)からにしよう。どうせおもちゃか、お菓子とかだろたぶん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ——最初に向かったのは雑貨屋的な何でも屋だったのだが、

 

 (せい)が消えた。

 

 いや消えたっていうか、入店して3秒で視界から蒸発(じょうはつ)したのだ。鼻をひくひくさせたかと思えば、獲物を見つけた猟犬のごとく一直線にどこかへ吸い込まれていった。

 

「せ、星、さーん……あんにゃろ」

 

「ゼイン、あっち行ったよ!」

 

 俺は口元を引きつらせながら、ホタルの指差す方を追って、店の奥のアクセサリーコーナーにたどり着いた時には——星はすでに棚の前にしゃがみ込んで、ブレスレットの山に鼻を近づけていた。

 

 くんくんくんくん。

 

 完全に犬だった。

 

「おい、何してんだお前……」

 

「選んでる」

 

()いで?」

 

「うん。これちがう。これもちがう。——あ」

 

 ぱっと手が伸びて、一本を引き抜く。続けてもう一本。同じデザインのやつだ。

 

「これ、ゼインのにおいに合う」

 

「俺のにおい基準なの……それそんないい匂いしてんの?」

 

 (せい)が選んだのは、細い革紐に小さな星型(ほしがた)の金属チャームがぶら下がったブレスレットだった。飾り気のないシンプルなデザインで、チャームの表面にはうっすら模様が刻まれている。色はダークブラウン。確かに、俺がつけてても違和感のない渋さではある。

 

 が、問題はそこじゃない。

 

「……2本?」

 

「こっち、ゼインの」

 

 片方を少しだけ揺らしてみせる。

 

 いやいやちょっと待てや。普通、お詫びの品は俺が選ぶもんだろうが。なんで自分で選んで自分で決めて、しかも2本持ってきてんだ。

 

 てかお前が買わせて、お前が俺にくれるのか。お詫び、とは……? ……む、無ぅ理ぃ~、理解出来なさすぎて、頭が割れそうだよぉ……カフカさん、助けてぇ……。

 

 しかし、

 

「おそろい」

 

 当然でしょ、という顔をして、

 

「ゼイン、買って」

 

「…………」

 

「だって、おごるって言ったでしょ」

 

 確かにそう言った。言ったけども。言った相手はオメーじゃねーよ……。

 

 うなだれるものの、大した額ではなさそうだし、断ったら(せい)のことだ。床に仰向(あおむ)けに寝っ転がって、「買って」を連呼しながら、回転し始める可能性がないとも言い切れない。

 

「はぁ……待ってろ」

 

 レジを通して戻ってくると、(せい)はまず自分の細い手首にするりと一本はめた。子供の腕にはちょっとだけ大きくて、するする動く。

 

 それでも満足げに手首を回して眺めている。

 

 で、もう片方を俺に差し出して、

 

「はい、ゼインの」

 

「へぇへぇ。いや自分でつけるから——」

 

「だめ。わたしがやる」

 

 有無を言わさず俺の手首を掴んで、ブレスレットを通しにかかる。が、留め具がうまくいかないらしく、小さな指がもたもたしている。

 

「…………」

 

「…………ん~~」

 

「……はぁ……貸せって」

 

「だめ」

 

 頑固だった。

 

 しばらくの格闘の末、かちりと留め具がはまって、星がふんと鼻を鳴らした。

 

「——できた」

 

 してやったりの顔で、自分の手首と俺の手首を並べて見せる。同じチャームが、ふたつ並んで揺れている。

 

「おそろい」

 

 2回目のおそろい宣言である。

 

 振り返ればカフカさんが、肩を小さく揺らしていた。笑ってるのか、呆れてるのか、いやこれ……たぶん両方だな。

 

 ……まぁ、星が嬉しそうにちいさな手首を振ってんの見たら、もうそれでいいかってなっちゃうんだけどさ。って、……よくないこれはよくないぞ、気をしっかり持て俺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ——お次は、ホタル。

 

 こっちは星と違って、自分から「これがいい」とは絶対に言わない、というより言えないタイプだ。

 

 雑貨屋を出た後、上手い具合にカフカさんが(せい)の興味を誘導し、距離を取ってくれている。

 

 その隙に先行し、通りをきょろきょろしながら俺の後ろをついてくるホタルに、「何か欲しいものあるか?」と聞いても、

 

「え、あ……あたし、よく、わからないから……」

 

 と控えめに首を振る。

 

 じゃああの店は? と適当に指差してみても、「うん、そこでもいい……かも」。あっちは? 「あっちもいいと思う……な」。全肯定ホタルbotだった。選択肢が絞れないタイプだわこれ。

 

 ……まぁでも仕方ねーよな。

 

 元グラモス鉄騎兵。管理番号を”名前”にしてたぐらいだ。個人の持ち物なんて概念すら薄いだろうしさ。自分のために何かを選ぶという行為自体に、たぶんまだ慣れてねーわな。

 

 つーことはだ。——こっちが選ばねーといけない。

 

 そんなことを考えながら通りを歩いていると、路肩に布を()いて、簡易的な作業台を広げている(あん)ちゃんが目に入った。

 

 近づいてみれば、どうやらアクセサリーの露店らしい。

 

 作業台の上にはペンチやら細いワイヤーやらが並んでいて、布の上には完成品と一緒に素材がごちゃっと転がっている。

 

 チェーンの種類、プレートの形、チャームの色などなどのパターン表が置かれ、看板には手書きで、

 

 

 

 ——『その場で作ります。銀河であなただけの一点もの』。

 

 

 

 足が止まった。

 

 おーいいじゃんか、これだ。

 

「うす。これ、名前とか入れてもらえんの?」

 

「おう、もちろんだ。何て入れる?」

 

 兄ちゃんが顔を上げる。日に焼けた手に、細かい傷がいくつもついていた。職人の手だ。

 

 横からホタルが覗き込もうとするのを、背中でブロックした。

 

「ぁぅ……み、見ちゃだめなの……?」

 

「おーよ。できてからのお楽しみ」

 

「……お楽しみ」

 

 ホタルがその単語を噛みしめるように繰り返す。「お楽しみ」という概念自体が珍しいんだろう。口の中であめ玉でも転がしてるみたいな言い方だった。

 

 兄ちゃんに小声で伝える。ペンダント。細いシルバーのチェーンに、小さな楕円のプレート。華美(かび)じゃない。でもちゃんと、アクセサリーだ。兵士には不要だったもの。

 

 

 刻む文字は3文字。

 

 

 

 ——"ホタル"。

 

 

 

 兄ちゃんが刻印用の道具を取り出して、プレートに一文字ずつ打ち込んでいく。コン、コン、コン。3回の小さな金属音が、通りの雑踏に混じって響いた。

 

 その間、ホタルはそわそわと足踏みを繰り返していた。どこからともなく取り出した『がんばったノート』を開いたり閉じたりしている。書くことがないのに手が落ち着かないらしいが、そのノートいつも持ち歩いてんのかよ……と苦笑してると、

 

 

「——はいよ、できたぜ」

 

 

 兄ちゃんが仕上がったペンダントを差し出す。プレートの表面を親指でひと撫でして、「いい名前だな」と笑った。

 

 受け取って、ホタルの前に立つ。

 

「ほれ」

 

「……う、ん」

 

 おずおずと差し出された両手のひらに、まだほんのり温かいペンダントを載せた。

 

 兄ちゃんが一打ずつ刻んだ3文字。

 

 ホタルの指が、プレートに触れた。

 

「…………これ」

 

「おう」

 

 文字をなぞる指先が、震えていた。

 

「……あたしの、名前……」

 

「そ。お前の名前」

 

「……あたしの……もの?」

 

「お前だけのやつ」

 

 何度も何度もなぞっている。たった3文字を、読み間違いでもないかと確かめるみたいに。

 

 AR-26710なんて無味乾燥(むみかんそう)な管理番号じゃなく、生まれ始めて自分で選んでつけた名前が、ここに刻まれている。量産品じゃない。看板に偽りなく、たった今、目の前で打ち込まれた、銀河中に同じものはない、一点ものだ。

 

「……つけて……みても、いい?」

 

「たりめーだろ」

 

 ホタルがチェーンを首に回そうとして、手が震えてうまくいかない。さっきの星と同じだ。ただ、星の時は留め具の頑固さのせいで、……こっちは別の理由で指が言うことを聞いていない。

 

「……貸してみ」

 

 今度は拒否されなかった。背中に回って、細いチェーンの留め具をかちりと止めてやる。

 

 ホタルが両手でプレートを包むように胸の前で握って、ゆっくり振り返った。

 

「…………あり、が、と……ゼイ……」

 

 ぐしゃ、と顔が歪んだ。

 

 

 まぁその、……正直、泣くとは思ってた。

 

 

 泣くとは思ってたけど、こんな、声にならない泣き方されると俺としても言葉に迷うことがあるが、

 

「そのノートさ、……お前ががんばったことだけじゃなくて、嬉しかったこと、楽しかったこと、悲しかったこと、ムカついたこと、全部書き留めてけよ。そうすりゃ——きっとお前がちゃんとここにいたってことになっからさ」

 

 頭をぽんと叩いてやると、ホタルはペンダントを片手で握りしめて、うつむいたまま小さく頷きを一つだけして、もう片方の手で俺のローブの裾を掴んで、しばらく離さなかった。

 

 ちらと振り返れば、兄ちゃんがニィッと笑って、

 

「わりぃな、手元が狂って二つ作っちまったからよ。あんたの名前も教えてくれよ」

 

 親指を立てていた。

 

 (かな)わねぇなー、——チップ乗せて、金払ったよ、もちろん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて。

 

 残るはメインイベント。

 

 カフカさんへのお詫び。

 

 紫水晶(アメジスト)のピアスが好評だっただけに——第2弾のハードルが天元突破しているうえに、

 

 しかもご本人様が隣にいるのよなぁ。

 

 目の前で「あなたへの贈り物を選んでます」という空気がだだ漏れの状態で品定めするのは、生殺しに近い。

 

 何を手に取ってもカフカさんの反応が気になって、色んなもんを手に取って検討しているフリをしながら視界の端でチラチラ様子を確かめてしまう。

 

 通りの店を覗きながらうんうん唸っていると、声を発したのは、

 

「——カフカは欲しいものあるの?」

 

 (せい)だった。

 

 とてとてと近づいていって、カフカさんの顔を下から覗き込んでいる。

 

 いいぞ、珍しくファインプレーじゃねーか。と内心で親指を立てて、カフカさんの反応を窺っていると、

 

「……そうね、欲しいモノはないわ」

 

 思わずずっこけそうになり、

 

「ただ——」

 

 そこで、カフカさんの視線が、ちらと俺に流れた。

 

 だがそれも一瞬ですぐに()らされてしまう。

 

 ——なんだ?

 

 俺が首を傾げたその刹那(せつな)

 

 

「——あっ良い匂いする!! ホタル行こ!!」

 

 また何かのにおいを()ぎ取ったとばかりに(せい)がホタルの手を掴んで、全力ダッシュで駆け出した。

 

「え、(せい)——あ、ちょ——!?」

 

 戸惑うホタルの声が遠ざかっていく。

 

 

 なんというかまぁ…………空気、読んだな。

 

 

 あの(せい)がだ。読みやがった。

 

 読めたんだというかなんというか……あいつも地味に成長していってるのかもしれない。

 

 

 

 取り残された俺とカフカさんの間に、沈黙が落ちる。

 

 

 

 通りの雑踏がどこか遠くに感じられる。

 

 図らずも(せい)が気を利かしてくれたというのなら、

 

 

「……カフカさん」

 

「何?」

 

 

 やはりまだトゲはあるように感じて、

 

 

「——シロッカの件、ほんとに、すみませんでした」

 

 

 ちゃんと言おうと思った。茶化さず、まっすぐに頭を下げる。

 

「めちゃくちゃ心配かけました。無茶したのも、連絡できなかったのも。……全部、俺が悪いです」

 

「…………」

 

 カフカさんは何も言わなかった。

 

 腕を組んだまま、通りの向こうを見ている。横顔からは表情が読めない。

 

「……本当に欲しいもの、ないんすか? カフカさんは……」

 

 

 さっきの「ただ——」の続きが、気になっていた。

 

 

 カフカさんがゆっくりとこちらを向いた。

 

 

「——ポチくん」

 

 

 相づちを打たず、ゆっくりと続く言葉を待つ。

 

 

「——私は、(あかし)がほしい」

 

「……(あかし)?」

 

「モノはいらない。ピアスもそう。とても嬉しかったけれど、……大切だけれど、これはモノよ」

 

 カフカさんが自分の耳に触れた。紫の光が指先に揺れる。

 

「——私は、ずっと探していることがあるの」

 

「…………」

 

「——グラモスの時は、まだエリオの脚本があった。でも今回は、あなたから連絡がなくて、もしかして本当に何かがあったのか、そう考えた時に——知らない気持ちになった」

 

 カフカさんの指が、組んだ腕の中で、自分の二の腕を掴んでいた。無意識なのかもしれない。

 

「怒りとは違う。悲しみとも違う。それは知っているわ。だけど、その時感じた気持ちが……何なのか、わからなかった……いいえ、今もわからないわ」

 

 そのカフカさんの姿が、いつものサディスティックな笑みと、おねーさん然とした余裕のある振る舞い、色気、とは距離を置いたように、(はかな)げだった。

 

 そしてそれは、俺が見たことのある——初めてあの教会で殺されかけたときのあの姿そのもので、

 

 

 ——それ、

 

 

 ——見つかるかな。私も。

 

 

 

「不安になったの。あなたの約束が破られてしまうんじゃないかって」

 

 

 

 ——探してくれるんでしょ。一緒に。

 

 

 

「……だから、(あかし)がほしい。あなたが、私の隣にいてくれるという証。消えないという証」

 

 

 

 カフカさんの目に俺が映っている。

 

 

 

「——私が欲しいとしたら、それだけ」

 

 

 (くい)を心臓に打ち込まれたようだった。

 

 

「…………」

 

 

 ——「もうしません」とか「大丈夫です」とか、そのどれもが嘘になる気がした。

 

 

 

 消えない証——か。俺はカフカさんに何をしてあげら——いや、愚問(ぐもん)か。

 

 

 

 

「——何でもします。俺が出来るコト。煮るなり焼くなり好きにしてください」

 

 

 

 

 両手を広げて、カフカさんを見つめる。

 

「——ついてきて」

 

 答える暇もなく、カフカさんが歩き出した。迷いのない足取りだった。ひょっとしたらカフカさんの中では最初から、答えは決まっていたのかもしれない。

 

 俺は半歩遅れてその背中を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 そうして連れてこられたのは——タトゥーショップだった。

 

「こっちよ、ポチくん」

 

「え、あ、はい」

 

 有無を言わさず中に入っていくカフカさんの背中を追って、俺は慌てて飛び込んだ。

 

 薄暗い照明。壁にはびっしりとデザインのアイディアが貼られている。針の音が奥から微かに漏れ聞こえる。

 

 カフカさんはカウンターに置かれてあったサンプル帳を開いて、既にページをめくり始めていた。

 

「ひょっとして、……(あかし)って、これ……」

 

「消えにくいでしょう? ——身体に刻むなら」

 

 物なら壊れる。なくす。

 

 けど身体に刻んだものは——少なくとも、自分がいる限り、そこにある。刺青(スミ)とはそういうものだ。

 

 ただ俺の場合は、……A.R.Pが本気で動かない限りはという但し書きがつくようになってしまったが。

 

 ——いや、なるほど……むしろそういうことなのかもしれねーな。

 

 サンプル帳をめくりながら、決めかねている様子のカフカさんの隣から覗き込む。カリグラフィ、花、幾何学模様、動物、抽象画などなど、カテゴリに分けられており——素人(しろうと)ながら、そのデザインセンスの高さに感心してしまう。

 

「あ、カフカさん。これとかどうですか——」

 

 たまたまあるページに載っていた図案を俺は自ら提案する。すると、

 

 

「……後悔、しない? 今ならまだ引き返せるわ」

 

 

 瞳はこっちを向かない。

 

 そして、不安そうな声。

 

 またもや、あの教会の時のような声。

 

 

「いやいや、これこそ証じゃないですか。俺そのものですよ」

 

 

 なんらためらう必要ねーわ。煮るなり焼くなりと好きにしてくれと言った手前、こんな身体にちっとお絵かきする程度でよくて、何よりカフカさんが望むのならいくらでもやるわ。

 

 

 それで、瞳が俺を捉え、

 

 

「……そうね。ポチくんらしいわ。おとなしくしてたことなんて、一度もないものね」

 

「それは……コイツよりトゲがありますね」

 

「フフッ」

 

 ようやく笑ってくれた。

 

 そうしてサンプルを元にデザインが決まった。

 

 

 

 

 

 モチーフは——蜘蛛(くも)の巣に捕まった(はち)

 

 

 

 

 

 やはり、カフカさんと言えば、そのコートなどに散りばめられた蜘蛛の巣の意匠だ。そんでもって蜂をチョイスしたのは、アレだ。(ちょう)って(ガラ)じゃねーし、かといって()はちょっと……、その点、いつも着てるローブも黒と黄色が基調だから(はち)っぽいし、まぁ一発この針でかましたるぜ、みたいな?

 

 そんなことを伝えると、腕にも首にもびっしりインクの入っている()()のおねーさんが「面白い組み合わせじゃん」と笑いながら、下描きを起こしてくれた。

 

 円形の蜘蛛の巣の中に、蜂を示すミニマルな六角形のシンボル。蜂は中心ではなく右下に少しずれていて、1本の糸に斜めに絡め取られている。また蜂の羽根は左右非対称気味で、まだもがける感じを残していた。

 

 写実的というよりかは、企業のコーポレートロゴとかに近いようなデザイン。

 

 まさに理想的だった。後は彫る場所だったが、俺は迷うことなく、左胸を叩き、ここにと彫り師のおねーさんに伝える。

 

 そしたら、その人の後ろからまったく同じ顔したおねーさんが出てきて、脳が混乱した。

 

 2人はこうやって驚かすのをやり慣れてんのか、まったく同じ声表情のまま、「「双子だよ」」とハモりながらすぐさまネタばらしをする。

 

 そして、俺が呆気(あっけ)に取られているのをよそに、後から出てきた方のおねーさんはこう問いかけた。

 

「それで、アンタはどうすんだい?」

 

 

 

 

 ——カフカさんに。

 

 

 

 

「——おそろいで」

 

 

 ついさっきどっかで聞いたことがあるような言葉をカフカさんは口にする。

 

 場所は——左脇腹の下あたり。カフカさんは割と露出自体は少ない方だから、そこだと服を着ていれば絶対に見えない。俺の左胸も然りだ。

 

 つまり、()()2()()()()()()()()()()()()

 

 表現できない妙な気持ちを抱きながら、カフカさんと俺は施術室へと入っていく。その直前で目が合って、「またあとで」と手を振られた。

 

 

 指示されるままに椅子に座って、シャツを脱ぐ。

 

「初めて?」

 

「そっすね」

 

「じゃあ先に言っとく。痛いよ。あと、変に力まんで、線が死ぬから」

 

 消毒されながら、まな板の上の(こい)の気分を存分に味わう。

 

 おねーさんは俺の腕を取ると、位置を決め、角度を見て軽く押す。眉が寄っていき、

 

「お兄さんさ、代謝(たいしゃ)いい?」

 

「……あ?」

 

「いや、肌の戻りが妙に早いなーって」

 

 表情には出さないものの、すぐさま見抜いたプロの目に驚く。

 

「まぁちっと事情があって、……特殊な体質なんすよ。身体の”異物”に敏感で、傷の治りが早くて」

 

 大丈夫すかねと尋ねれば、

 

「そいつは初めての経験だけど……まぁやってみるさ。プロを信じな」

 

 転写した下絵(したえ)を確認しながら、やがて機械音が響き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結論からいえば、どうにかなった。

 

 最初こそ皮膚(ひふ)の戻りがやはり早すぎてインクを押し返してしまい難航(なんこう)したものの、おねーさんが試行錯誤するうちにやり方を見つけたらしい。

 

 終わってしまえば、「定着までは七面倒だけど、一度肌ん中に完全に入っちまえばこっちのもんだね。むしろ肌の一部と認識しちまえばお兄さんの方がラクかもしれないよ」と頼もしすぎる姉ちゃんの弁だった。

 

 あと痛みだのなんだのは俺が我慢するから手を止めるなと伝えたお陰も大きかったんだろう。だいたい2時間と少しくらいで施術は完了した。

 

 普通はあれだけ針でチクチクやれば、炎症を起こし真っ赤になるのが当然とのことだが、(きざ)まれた線はまだ生々しいのにも関わらず、最初からそこに在ったかのように胸元に描かれている。

 

 俺はそんな仕上がったタトゥーを鏡で確認する。

 

 蜘蛛の巣と、そこに捕まった蜂。

 

 ……カフカさんの左脇腹にも同じ絵がある。

 

 なんだろうな。たしかにこの不可逆的(ふかぎゃくてき)な感じがアクセサリーとは違うつながりを覚えるというか。同じ痛みを乗り越えた連帯感というか。

 

 とにかくマンガやアニメで同じ組織に属するメンバーが、タトゥーを入れたりする意味が理解出来た気がした。

 

 やはり俺の方が時間がかかったんだろう、施術室から出ればカフカさんは既に待合室にいた。

 

 会話もなくすっと立ち上がり、双子の彫り師に見送られて俺たちは店を出れば、

 

 ——既に陽は地平線の向こうへ隠れようとしていた。

 

 

 

 

 先を歩くカフカさんが足を止めて、ようやく振り返った。

 

「ポチくん、——そのタトゥー消さないでね」

「はい」

 

 その言葉の意図するところを理解して頷く。

 

「毎回、帰ってきたら確かめるから」

「はい」

 

 何度も、頷く。

 

「もしも、消えてたら——」

「消さないです。今度こそ、約束します。こいつはその証ですから、何より、

 

 ——俺はとっくのとうにあなたに()らわれてますんで

 

 

 胸を叩けば、

 

 

 また沈黙が場を埋めて。

 

 

 気まずくなる一歩手前くらいのタイミングで、

 

 

 ようやく、

 

 

 ふぅ——と、息を吐いて、カフカさんは、

 

 

「じゃあ——こないだの件は許してあげる

「——はいッ!」 

 

 

 カフカさんの隣に並び、俺は、

 

 

「カフカさん——俺、すっごく腹減りました」

 

「そうね、私も実はペコペコなの」

 

「ははっ、俺のおごりでガッツリ肉にでもしますか。腹ぺこがどうやら——多いみたいですから」

 

 

 どうやら連絡して呼んでくれていたらしい(せい)とホタルが手を振っている方向へ、俺とカフカさんは向かっていく。

 

 

 

 

 

 




 執筆時BGM、ED:「TATOO」Official髭男dism






 へい、エクストラエピソードお待ち。

 地球のみんな、待たせちまったな……、
 これがオラの書きたかった星核ハンターファミリアだ(なお出力60%)



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