転生者の黒歴史による魔改造と四龍の超機人   作:バーニングミニラ

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STAGE 09 宇宙へ

 DC戦争が勃発してしまった以上、俺も軍人として務めを果たさなければならない。

 その中でまず優先すべきは地球防衛管理衛星群「サテライトシーカー」の防衛。

 ビアンの演説にはコロニー統合軍の制服を纏った軍人の姿も映っており、俺が本格的に行動を起こす前から潜在的に反連邦の気質を有していた統合軍がDCに加担するという歴史も変える事は出来なかったのだろう。

 だとすれば真っ先に狙われるのはサテライトシーカーと見て間違いなく、ゲームでもここが落とされた事で司令本部と各部隊のデータリンクが失われ連邦軍は大きく後手に回る事になってしまった。

 

 実際にゲームで描かれたのはサテライトシーカーが落ちた後に唯一ネットワークが残された情報ステーション「コムルナ」を巡る攻防だったが、今ならまだサテライトシーカー自体を防衛する事が可能かもしれない。

 その為には悠長に伊豆に帰還している暇はないと、俺はそのまま南極の地にて無事だったシロガネの艦長であるダイテツ・ミナセ中佐にその必要性を打診。

 すると驚いた事にその場に居合わせたグライエン大統領による鶴の一声にて、シロガネは直ちに宇宙へと上がる事になったのである。

 

 シロガネに乗船するのは元々配備されていた量産型ヒュッケバインMk-Ⅱの部隊と、発案者である俺が率いるDTXチームとなった。

 満を持して南極の地に集まっていたSRXチームやATXチームであったが、DCの襲撃に備えてそれぞれが所属する基地へと急いで帰還している。

 本当は俺も伊豆基地に残してきたミハヤ、アラド、ゼオラ、ラトゥーニの事が心配でならないが、例え一緒に暮らそうと今のように常に傍で護れる訳じゃない事は最初から分かっていた事だ。

 

 その為にアインストやラマリスの襲来に備えて開発を進めているシステム。

 アイドネウス島では結局使う事はなかったものの、開発途中の現時点でも4人が安全を確保出来るだけの機能は既に備えている。

 不安を挙げればキリが無くなるが、とにかく今は自分がすべき事に集中しなければ。

 

 そして不幸にもサテライトシーカーに急行する事を提案した俺の判断は正しかった。

 シロガネが到着したのと時を同じくして、今まさにサテライトシーカーを急襲しようとしていたコロニー統合軍の艦隊と会敵。

 あちら側もシロガネの接近に気付くと共に、無数の機動兵器が躍り出てくる。

 しかしその機体は量産型ヴァルシオーネもといビアンが演説で名を明かした「ヴァルシオクス」ではなかった。

 

 前世の知識にもある「コスモリオン」。

 これまで全く姿を見せていなかったが、どうやらリオンの開発も変わらず行われていたようだ。

 それにこの数を見るにDCで正式採用された量産機はあくまでリオンであり、恐らくヴァルシオクスは少数の生産に留まっているのだろう。

 南極でDCがヴァルシオクスだけを投入してきたのはデモンストレーションも兼ねた連邦に対する威圧行為で、撤退の判断が早かったのも虎の子であるヴァルシオクスの消耗を最小限に留める為だったのかもしれない。

 

 もしヴァルシオクスが目の前に広がるリオンと同じ数だけ量産されていたら連邦軍の勝利は絶望的だったが、リオンが相手であれば量産型ヒュッケバインMk-Ⅱでも互角以上に戦える。

 だがその事を理解しているのは前世の知識を持つ俺だけであり、他の兵士にとってはリオンも未知数の敵である事に変わりはない。

 未だ多くの兵士達が一方的にヴァルシオクスに蹂躙された恐怖が冷めやらぬ中、それを打ち払う為に俺が取るべき一手は……。

 

「俺が先行して量産型ヒュッケバインMk-Ⅱでも戦える事を皆に示す!流石に囲まれたら厳しいからフォローは頼んだぞ!」

 

 黒龍機やT-LINKシステムを搭載した試作機に乗る事が多いとはいえ、俺も正規の訓練を積んだパイロットの端くれだ。

 俺は敢えて黒龍機ではなくシロガネに搭載されていた量産型ヒュッケバインMk-Ⅱの予備機へと搭乗する。

 TC-OSによるモーションパターンの最適化に加え、臨機応変に機体を操る為に操縦系の一部は俺仕様のマニュアルに設定。

 固定武装である頭部のバルカンに加えて携帯武器は標準的なビームソードとフォトン・ライフルに限られるが、この火力でもリオンには十分に通用するだろう。

 

 俺が開発した連邦のテスラ・ドライブにもブースト・ドライブの機能は標準搭載されており、これを使って俺は先陣を切るべく一気に敵陣へ肉薄。

 こちらを迎撃すべくコスモリオンはホーミングミサイルを放ってくるが、バルカンでこれを撃ち落としつつ更に距離を縮めた。

 すると今度はレールガンの標準が向けられるが、戦闘機に手足を付ける形で開発されたリオンは射線によっては構造上どうしても全身を使った挙動が必要になる。

 それに対してより人型に近い量産型ヒュッケバインMk-Ⅱの方が射撃のモーション速度は確実に上であり、レールガンが放たれるよりも先にフォトン・ライフルの弾丸がコスモリオンを射抜いた。

 

 その一撃でコスモリオンが爆散した事から、やはり歪曲フィールドのような特別な防御機構はリオンに備わっていない事が証明される。

 すぐさま他のコスモリオンは俺が駆る量産型ヒュッケバインMk-Ⅱを包囲しようと陣形を変えるが、それが成されるよりも先に後に続いていたDTXチームによって相次いで撃墜されていった。

 DTXチームの猛攻によってコロニー統合軍による布陣の一角が切り崩される中、多少なり俺の作戦も効果があったのか士気が上がったシロガネの量産型ヒュッケバインMk-Ⅱ部隊もそれに追従。

 パイロットの戦意高揚に呼応してDエクストラクターの出力も向上し、量産型ヒュッケバインMk-Ⅱは正に獅子奮迅の性能を発揮していた。

 

 次第に形勢はシロガネ側へと傾いてゆき、やがてコロニー統合軍の艦隊は撤退を開始する。

 取り敢えず敵の第一陣からサテライトシーカーを守り抜いた防衛戦は快勝と言うべき戦果であったが、そのまま追撃を試みようとした一部のパイロット達をダイテツ艦長が鋭い声で制止した。

 何よりも優先すべきがサテライトシーカーの防衛である事を鑑みれば当然の判断であり、この機に友軍の増援を待って強固な防衛体制を整えるべきだ。

 数は多くともコロニー統合軍の機動兵器がリオンだけの編成だった事を見る限り、今の襲撃は恐らく威力偵察の類に過ぎない。

 戦争におけるサテライトシーカーの重要性を考えれば、そう時間を置かずしてコロニー統合軍は本格的な攻勢を掛けてくるだろう。

 

 とはいえ南極からそのまま宇宙に上がるという強行軍。

 いくら軍人とはいえチームの皆も肉体的というよりは突如として勃発した人類同士の戦争に対する精神的な疲弊の色は隠せない。

 コロニー統合軍が撤退した機を見計らってシロガネに帰艦すると、俺達DTXチームは今後の要になるとしてダイテツ艦長から僅かでも休息を取るよう命じられたのだった。

 

「ヨダカ准佐、お加減は大丈夫ですか?」

 

 そして各々部屋に戻って身体を休める前に簡単なブリーフィングだけは済ませておこうと三人を集めたのだが、開口一番にリョウトは突然そんな事を尋ねてきた。

 

「しんどくないと言えば嘘になるが、それこそ大変なのは艦長から整備兵までこの艦に乗っている全員が同じだ。俺も一応は責任がある立場だから、そうそう弱音は吐いてられないさ」

 

「アイドネウス島でビアン博士達と決別した後も、僕が知らない所で准佐が戦争を回避する為に苦心しているのは何となくですが気付いてました。それなのに結局はこんな事になってしまって……」

 

「……戦争は起きちまったもんは仕方ないで済まされる事じゃないが、それでも現実はちゃんと受け止めなくちゃならない。その中で俺が成さなければならない事は味方の犠牲を少しでも減らし、同じチームの仲間であるお前達を絶対に守り抜く事だ。色々と思うことがあっても自分の芯さえ折れなければ簡単に挫ける事はないし、何より俺にはこうして気遣ってくれる心強い仲間もいるからな。ありがとう、リョウト」

 

「ビアン博士に語っていた思いを聞いた時から、僕はずっと准佐について行こうと決めてるんです。だから何かできる事があれば、迷わず僕を頼ってくださいね」

 

 別に俺も一人で全てを背負えるとは思ってない中で、リョウトのように純粋に味方でいてくれる存在はやはり有難いものだ。

 根が単純というのもあるのだろうが、今の会話だけで心がスッと軽くなるのを感じる。

 

「ゴホン、ヒカワ君。そこは僕じゃなくて僕達じゃないかしら?」

 

「今の言葉に異を唱えるべき点はユヅキさんの指摘以外は一片たりともありませんが、やはり何事も順序があると思います。ヒカワさんは少し空気が読めない点があるようですね?」

 

「えぇ!?」

 

 しかし何故だか女性陣がリョウトに向ける視線が冷たく、可愛い部下が不憫で居たたまれない。

 それでも結局のところ二人とも考えはリョウトと同じという話のようなので、俺としては感謝すべきなのだろうが。

 

「と、兎に角、俺達は自分がすべき事をするだけだ。今回の新型は量産型ヒュッケバインMk-Ⅱでも対応が可能だったが、南極に現れたヴァルシオクスが出てきたら必然的に俺達DTXチームが相手取る事になる。その状況を想定しつつ、どう対応するか確認しておくぞ」

 

 そして作戦会議を終えてから俺達は少しでも身体を休める為に眠りについたが、予想通りその時間は殆ど許されなかった。

 敵の襲撃を告げるサイレンの音に叩き起こされ、俺達は再び戦場へと駆り出される。

 

 

 

「冥府を繋ぎし鍵となり、破滅の光を顕現せし門を開け!『閻繫剣・虚滅』!」

 

 黒龍機が有する動力の一つ『次元転炉』。

 遠隔誘導兵器でもある四振りの『閻繫剣』はこの『次元転炉』と連動しており、それぞれを頂点とした別次元へと繋がる門を開く能力を有している。

 そして『閻繫剣・虚滅』は詔刀によって繋がれた先の反物質世界から手繰り寄せられた反物質との対消滅によって門上の敵機を一掃するMAPW──Mass Amplitude Preemptive-strike Weaponだ。

 その性質上から敵味方が入り乱れる乱戦となっては使い勝手はあまり良く無いが、今のような防衛戦においては罠のように運用する事によって無類の破壊力を発揮する。

 

 コロニー統合軍の第二陣となるリオンの大群を正面から一気に殲滅し、何とか難を逃れて残り僅かとなった敵機も隊列を組んだ量産型ヒュッケバインMk-Ⅱ部隊によって確実に撃墜されていった。

 また他方の別働部隊からの攻撃にはヴァルシオクスが現れた時に備えて白龍機とサーバントカスタムがそれぞれ先頭を切って対応に当たり、機動力に優れたアシュグリフィンはオウカの優れた判断能力も含めて適時各所のサポートに回る。

 他に選択肢が無かったとはいえ杜撰な作戦と言わざるを得ないが、それでもMAPWを用いた戦果は一方的な蹂躙と捉えられかねない程に圧倒的なものであった。

 しかしサテライトシーカーの死守という作戦のスピードを優先した故に増援の目処はまだ立っていない現状で数の不利は否めず、それに加えて籠城戦に近い防衛作戦となれば手段は選んでいられない。

 

(それにリオンにもパイロットが乗ってないのは救いって言えば救いだな。……いや、それを救いだなんて考えてる事自体が甘えか)

 

 リオンもまたヴァルシオクスと同様に今の所パイロットの気配を感じる事が出来ない。

 まだ人殺しをせずに済んでいると都合良く考える事も出来るものの、南極での戦いも含めて既に味方に犠牲が出ている以上は戦争という現実から目を逸らして良い理由にはならなかった。

 その一方でDCが用いている無人機のシステムそのものに関しては今後の為にも調べておかなければならないだろう。

 俺が知る限りDCが関わる無人機の技術はAIによるSystem-ZLAIくらいだが、その由来も考えると今の時点で運用されているとは考え辛い。

 

 いずれにせよ真相を確かめる為にはリオンを鹵獲する他なかった。

 その際に考慮しなければならないのはトーマス・プラットが行ったように機体に爆弾が仕込まれている可能性だが、撃墜された時の状態を見るに武装以外に誘爆するようなものが内蔵されている可能性は低い。

 だとすれば鹵獲した機体を艦に持ち込む前に武装さえ解除しておけば、危険が及ばずに調査する事が出来る筈だ。

 今の戦況ならリオンを一機鹵獲するくらいなら容易いと、俺はまだ撃墜を逃れているリオンの一気に狙いを定めたその時だった。

 

「重力震反応!?空間転移か?いや、これはっ!?」

 

 非常に小規模ながらも桁外れな反応を見せた重力震は発生地点に留まる事は無く、凄まじいスピードを伴って黒龍機に迫り来る。

 マイクロブラックホールを特殊な重力フィールド内に発生させて撃ち出す常識外れな武装。

 俺も良く知るヒュッケバインのブラックホールキャノンと同一の反応を示しているが、今この場にヒュッケバインが存在し、ましてや俺を攻撃してくる理由はない。

 だとすれば考えられるのは……。

 

 しかし今は視認出来ない敵の正体を探るよりも先に、この攻撃に対処しなければならない。

 例えMAPWでなくともブラックホールキャノンのように広範囲に渡って甚大な破壊を齎しかねない兵器への対抗手段。

 下手に迎撃する事で誘爆を引き起こし味方を巻き込んでは元も子もない中で、俺は再び『閻繫剣』を使って別空間へ繋がる門を開く。

 ただし今度は門の繋がる先は反物質世界ではなく、何も存在しない完全なる虚無の世界である亜空間だ。

 この亜空間に攻撃そのものを飲み込ませる事で無効化した俺は、戦域に存在する全ての友軍機に向かって通信を入れる。

 

「シロガネ所属の各機は母艦ならびにサテライトシーカーを防衛に専念する為に一時後退。敵の新手にはDTXチームが対応する」

 

 もしヴァルシオクスが出てきた場合は歪曲フィールドに対して決定打を持たない量産型ヒュッケバインMk-Ⅱを下がらせるのは、予めダイテツ艦長とも話し合って決めていた事だ。

 尤も今はそのヴァルシオクスよりも遥かに厄介な相手である可能性が高いのだが、どちらにせよ不用意に犠牲を増やす訳にはいかない。

 命を懸けるという点で言えば恐らく今までで一番の修羅場となる予感を胸に俺は黒龍機を駆るが、待ち構えていた敵は予想外の相手であった。

 

「どうしてヒュッケバインがここにいるんだよ!?」

 

 ライが搭乗する008Rを改造したランチャーカスタム以外は008Lも009も、ヒュッケバインはマオ・インダストリーで厳重に管理されている筈だった。

 にも拘わらず二機のヒュッケバインが多数のヴァルシオクスを従えて俺の前に異様なプレッシャーと共に佇んでいる。

 まさかマオ・インダストリーが落とされたのかと焦りが生じると共に、ヒュッケバインの本来ならありえない姿を見て俺が持つ先入観の類はもはや殆ど通じない事を察する。

 フルアームド・ヒュッケバイン。

 バンプレストオリジナルの機体の中でも最も俺が愛すると言って過言でないヒュッケバインが最終形態の姿で俺の敵として立ち塞がっているのだった。

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