転生者の黒歴史による魔改造と四龍の超機人   作:バーニングミニラ

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STAGE 10 囚われの凶鳥

 互いを視認すると同時に二機のフルアームド・ヒュッケバインが放った『リープ・スラッシャー』。

 そこに込められた明確な殺意を俺はヒシヒシと感じ取っていた。

 これまでと違いフルアームド・ヒュッケバインには間違いなくパイロットが搭乗している。

 それに少なからず動揺してしまった事を後悔する間もなく、敵は容赦なく攻撃の手を緩める事は無い。

 

 本気の殺意を携えながらも『リープ・スラッシャー』はあくまで牽制。

 リープ・スラッシャーに追随するように随伴機であるヴァルシオクスも散開し、黒龍機の動きを封じるが如く周囲を取り囲む。

 ヴァルシオクス達が一斉に『ディバイン・アーム』を抜いて切り掛かってくる中、更にその僅かな隙間を埋めるようにフルアームド・ヒュッケバインは『フォトン・ライフル』に加えてハイフライヤー・ユニットに装着されショルダーキャノンとしても運用可能な『グラビトン・ライフル』の銃口を向けてきた。

 

 逃げ道を完全に断たれた飽和攻撃。

 いくら黒龍機が『念動フィールド』と『ラプラスウォール』に加えて『Z(ズフィールド)オリハルコニウム』よる極めて高度な自動修復の機能を有しているとはいえ、許容量を超えた攻撃を一斉に喰らえば致命傷に至りかねない。

 しかしここまで追い込まれて尚、黒龍機のスペックを以ってすれば本当の危機とは成り得なかった。

 

「取り合えず『それ』だけは確実に潰させて貰う」

 

 『次元転炉』を使ったストレイバードと同様の亜空間を介した空間転移による背部からの奇襲攻撃。

 黒龍機が振り下ろした『殲魔轟龍刃』はフルアームド・ヒュッケバインのハイフライヤー・ユニットに担架された『ブラックホール・キャノン』を切り裂いた。

 そして続け様に相手の意表を突いた隙を狙ってもう一機の『ブラックホール・キャノン』も『滅因砲』にて完全に消滅させる。

 内蔵された『ブラックホール・エンジン』はやはり欠点を克服しているのか大規模な暴発こそしなかったが、ハイフライヤー・ユニットへの誘爆によって2機のフルアームド・ヒュッケバインは大きく体勢を崩した。

 

「浄化の光を纏いし翼にて、邪念を滅す嵐を起こさん!『玲瓏煌翼』!」

 

 そして俺がフルアームド・ヒュッケバインの無力化に動き出す一方で、攻撃をスカされたヴァルシオクスを光の奔流が呑み込んだ。

 俺の指示に従い駆けつけたユヅキが操る白龍機の背部に展開される高出力の推進器『玲瓏煌翼』。

 『玲瓏煌翼』はアストラナガンの『T-LINKフェザー』と同じように攻撃に転化した『念動フィールド』の特性を併せ持っており、それを前方に広く展開する事でMAPWとしても機能する。

 

 ただし物理的攻撃も加えた『殲魔轟龍刃』と違って純粋な『念動フィールド』による攻撃である『玲瓏煌翼』は『歪曲フィールド』を中和してヴァルシオクスにダメージを与えつつも威力は半減。

 大破するには至らなかったが、歪曲フィールドが中和されたヴァルシオクスに対して続けざまにヒュッケバインMk-Ⅱサーバントカスタムとアシュグリフィンが猛追を仕掛ける。

 共に遠隔誘導兵器である『サーバント・ギア』と『ソードブレイカー』が華麗な演武のように入り乱れ、確実にヴァルシオクスを葬り去っていった。

 

 残ったヴァルシオクスも体勢を取り戻して反撃を試みるものの、白龍機の『殲魔轟龍刃』とサーバントカスタムの『サーバント・ナックル』に『歪曲フィールド』を破られ、程なくしてヴァルシオクスの部隊は完全に壊滅する。

 隊長である俺が割とスタンドアローンな行動を取る事が多い中でも、敵機の特性に合わせたチームのコンビネーションは上々と言えるだろう。

 

(さて残る問題はこのフルアームド・ヒュッケバインだ。しかし『ブラックホール・キャノン』を背負ってるって事はソーディアンの技術が使われる訳じゃなく、どっちかって言えば30thに近い仕様なのか?)

 

 機体のスペックに物を言わせて脅威となり得る『ブラックホール・エンジン』を破壊する事に成功したが、切り札と言える武装を失っても尚フルアームド・ヒュッケバインのパイロットから向けられる敵意は寧ろ強くなったように感じられる。

 ハイフライヤー・ユニットは完全な機能停止には陥っていないようで、テスラ・ドライブをフル稼働させて一旦距離を取りながらもすぐさま旋回。

 ヴァルシオクスも失って状況は完全にあちらが不利にも拘らず、今度はビーム・ソードとフォトン・ライフルをそれぞれ構えて対峙する2機フルアームド・ヒュッケバインに撤退する意思は無いようだ。

 しかしその頑なとも言えるパイロットの戦意の中に俺は何やら歪な執念のようなものを感じ取っていた。

 

(これは怒り?いや、憎しみか?)

 

 決して今の状況を楽観視する訳ではないが、戦争はまだ始まったばかりだ。

 それに俺が確認出来た範囲でDCとコロニー統合軍は無人機ばかりを戦場に投入している中で、何がそこまで憎悪を駆り立てるのか?

 勿論それぞれが抱える事情など俺が全て知る由は無いものの、気に掛かるのはフルアームド・ヒュッケバインのパイロット達はDTXチームと相対する今も俺一人だけに真っ直ぐに殺気を放っているように感じる事だった。

 

 まるで見えない刃を喉元に突き付けられるような感覚。

 単に俺自身が危険視されているなら兎も角、今まで深い憎しみを伴う感情を向けられるような事をしでかした覚えはない。

 謂れのない冤罪を掛けられているような感覚に気味の悪さを覚えながらも、どんな形であれ後顧の憂いはここで断つ。

 だが戦争の行方を左右するであろうサテライトシーカーの防衛は、やはり戦場を取り巻く展開も一筋縄ではいかなかった。

 

『4時ならび7時方面より敵艦が接近!っ、発進した機動兵器の中にヴァルシオクスの機影も確認しました!!』

 

 これだけの数のヴァルシオクスが一部隊に集められていたのは、DTXチームを誘き寄せる罠だったようだ。

 陣頭のリオンを相手にしていた時から鹵獲したいと言う思いが先走ってか知らず知らずの内に戦域が拡げられ、どうやら前に出過ぎてしまっていたらしい

 新たに攻めてきた艦隊が例えリオンが大半を占める混成部隊であっても、ヴァルシオクスが数機さえいれば量産型ヒュッケバインMk-Ⅱの防衛網を突破されかねなかった。

 更に俺達がいる宙域へ明らかに足止めを目的としたコロニー統合軍の艦が迫り来る。

 

「すまない、完全に俺の判断ミスだ。ここは俺が引き受けるから、お前達はすぐに引き返して新たな増援にも対応出来るようサテライトシーカー近辺の防衛に専念してくれ」

 

「……分かったわ、ここはヨダカに任せましょう。私は白龍機で先に跳んでヴァルシオクスを引き受けておく。オウカとヒカワ君も後ろからの追撃に気を付けて、戻ってきてちょうだい」

 

 今の戦力ではヴァルシオクスの相手をするのに白龍機の力が必須なのはユヅキも分かっているのだろう。

 俺の命令に異を唱える事もなく一足先に空間転移によって姿を消した白龍機の後を追うように、サーバントカスタムとアシュグリフィンもサテライトシーカーに向けて踵を返す。

 それに対してフルアームド・ヒュッケバインは追う素振りも見せず、銃口は黒龍機を捉えたままだ。

 ここまで来れば俺を標的としているのは疑いようがなく、それなら俺も直球を投げかける。

 

「ヒュッケバイン擬きのパイロット聞こえるか?こちらは地球連邦軍所属のヨダカ・アマハだ。何故俺の事を狙う?」

 

 オープン回線による敵軍との通信。

 後で大目玉を喰らうのは避けられないが、それでも自覚がない因縁がある可能性がある相手を何も知らぬまま撃墜する事は俺の良心が憚られる。

 既に戦争が起こっている今となっては甘いと断ぜられるのは百も承知であるものの、少なくとも誤解を抱えたまま殺し合いをするなんて真っ平御免だ。

 果たして返事があるかどうか可能性は低いと思っていたが、予想に反してすぐさま男の声が返ってきた。

 

「人を実験道具として売り飛ばすような糞野郎の言い訳を聞いてやる義理はねぇ!黙って墜とされやがれ!!」

 

 勿論そんな事をやらかした覚えはないし、完全な濡れ衣である。

 だが荒唐無稽な話によって却って冷静さを取り戻し、彼らの背景にあるものを俺は推察した。

 少なくとも返事をしなかったもう一人も含めてフルアームド・ヒュッケバインのパイロット達が俺に向ける殺意や憎悪は本物。

 しかし例え真実でなくとも俺を憎むだけの理由が彼らの中にはあり、その認識を歪める手段があるとすれば……。

 

(リマコン!アギラ・セメトの仕業か!!)

 

 嫌な形で点と点が繋がってしまった。

 恐らくアギラは何処からか自分が逮捕された事に俺が関わっている事を知り、その恨みを晴らす為に洗脳してまで刺客を仕立て上げたのだろう。

 だとすればこのパイロット達もアギラの被害者であり、そうなった原因も俺と無関係とは言えない。

 その事に気付いてしまった以上は、ただ敵として排除するという選択肢が取れる筈がなかった。

 

 かといって今の状況でどんなに言葉を尽くそうと、説得する事など出来やしない。

 ゲームでリマコンされたゼオラやオウカが自分を取り戻せたのは、アラドやラトゥーニとの絆によるものだ。

 顔どころか名前も知らない相手をアギラの呪縛から解き放つ手段を残念ながら今の俺は持ち合わせていなかった。

 そんな中で俺に出来る事があるとすれば……。

 

「それなら俺もアンタ達の手足を捥がせて貰う!」

 

 俺に対する誤解を簡単に解く事が出来なくとも、せめてアギラからは引き離してみせる。

 もし2機に撤退されてしまえば同じ事を繰り返す事は明白なので、ここが完全に勝負時だ。

 既にフルアームド・ヒュッケバインの後ろには増援の姿が見えており、あまり時間を掛けている余裕はなかった。

 『閻繫剣』を使えばフルアームド・ヒュッケバインごと強引に空間転移する事も可能だが、転移した先で味方に被害が出ては元も子もない。

 だからまずは2機ともフルアームド・ヒュッケバインの戦闘力を完全に削ぎ落す。

 

 その手始めに俺は再び『次元転炉』で亜空間に突入し、『グラビトン・ライフル』諸共ハイフライヤー・ユニットを完全に破壊する事を決めた。

 しかし全く同じ戦法では対応されてしまう可能性もあるので一捻りという程ではないが、さっき後方に跳んで『ブラックホール・キャノン』を斬り落とした機体とは違うもう一機の方に狙いを定める。

 転移場所も少しズラして後方から上方へ。

 亜空間から飛び出すと同時に俺はハイフライヤー・ユニットに向かって必中のタイミングで『殲魔轟龍刃』を振り下ろしたが……。

 

「なにっ!?」

 

 『ブラックホール・エンジン』の力を流用して『ビーム・ソード』の出力を増強し刀身も巨大化した『ロシュセイバー』。

 俺が標的としたフルアームド・ヒュッケバインは振り返り様に逆袈裟斬りの要領で、『殲魔轟龍刃』を一太刀を阻まれてしまった。

 更に黒龍機が出現する場所と瞬間を完全に予測していたとしか思えない正に神懸ったタイミングで、もう一機のフルアームド・ヒュッケバインも『ロシュセイバー』で切り掛かってくる。

 逆に不意を突かれる形になった俺は辛うじて黒竜機がサイドアーマーに備える二刀一対の太刀『龍鬼封刀』を抜いて『ロシュセイバー』の剣戟を捌いた。

 

 純粋な勘の良さか、あるいはシャイン王女のように予知能力でも持っているのか?

 いずれにせよ当人達にとっては不幸な事だろうがアギラに才能を見出され、凶鳥の操者に選ばれたパイロットが只者である筈がない。

 まるでパイロット達の憎しみに呼応するかのように出力を上げた二匹の凶鳥が織り成す『ロシュセイバー』の剣戟に『リープ・スラッシャー』による多角的な攻撃を混ぜ合わせたコンビネーションは苛烈さだけでなく確かな練度も含まれている。

 空間転移する隙は与えんと言わんばかりに絶え間なく攻め立ててくるフルアームド・ヒュッケバイン達を前にして今や俺は完全に後手に回っていた。

 

 明らかに現時点で異質な存在と言えるフルアームド・ヒュッケバインを前に、決して舐めて掛かっていた訳ではない。

 それでも黒龍機なら何とでもなるという考えを抱いていたのは明らかに俺の怠慢だ。

 実際この状況からでも巻き返す事はいくらでも可能だが、問題なのは既に敵の増援が差し迫っている事。

 それも目に見える敵機は全てヴァルシオクスの大群であり、どうやら当たりを引いたらしい。

 

 敵を排除するだけならやりようはいくらでもあるものの、この状況で混戦となればフルアームド・ヒュッケバインを鹵獲するのは諦めるしかなかった。

 そして俺は知っている。

 こういうフラグを回収し損ねると、大抵は後々に碌な目に遭わない事を。

 だからここは俺もリスクを背負わなければならない。

 

 

 

 腹の底から湧き上がる不快感を吐き出そうとヘルメットのバイザーを開けると同時に、視界が一気に赤色に占められる。

 宇宙の無重力によって宙に舞った血反吐を払いのけると、目の前には再びヴァルシオクスの大群が迫っていた。

 しかしその中には既にフルアームド・ヒュッケバインの姿はなく、取り合えず俺は目的を完遂したのだ。

 これは黒龍機ではなく恐らく転生者である俺だけに許された力によるものである。

 だたしその代償はご覧の有様であり、決して多用できる類の力ではない。

 

「……これは流石にしんどいなぁ」

 

 仲間の前では吐けなかった弱音を思わずぼやきながら、俺はヴァルシオクスの大群へと斬り込むのだった。

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