転生者の黒歴史による魔改造と四龍の超機人 作:バーニングミニラ
「ここはっ!?」
ただただ不快な倦怠感と共に俺が目を覚ました場所は見知らぬ部屋の中だった。
また不快感とは別に身体に違和感を覚えると、バイタルを測る為の電極が各所に繋がれている。
兎に角まずは状況を確認しなければと焦りが生じるものの、すぐに良く知った顔が見えて俺は胸を撫で下ろした。
「お兄様!!」
部屋に飛び込んで来るや俺に泣き縋るオウカに続いて、ユヅキとリョウトも部屋に入ってくる。
その憔悴し切った表情を除いては特に三人に変わった様子はなく、三人とも恐らく治療室であるこの部屋に揃っているという事は戦闘が継続されている訳ではないのだろう。
良く見ればオウカだけでなくユヅキも目を赤く腫らしており、心配を掛けた事は悪いと思いつつも取り合えず緊迫した事態には陥ってなさそうだ。
「……俺はどれくらい気を失ってた?」
「まだコロニー統合軍が撤退して3時間程度しか経っていません」
「戦闘も止んでアナタもすぐに帰艦したのだけれど、中々降りてこなくて。そうしたら黒龍機が自分でコックピットを開いて、中を確認したら血の気が引いたアナタが意識を失って倒れていたのよ」
正直な所ヴァルシオクスとの戦闘を開始した時点で限界に近かった俺はそれ以降の記憶が曖昧である。
それでも一応はコロニー統合軍を撃退し無事に戻ってきた事は自分を褒めてやりたいが、実際チームを預かる隊長としては失格なのは言うまでもない。
「それと准佐が鹵獲したヒュッケバインですが、四肢も全て欠損した状態のままシロガネの格納庫に保管してあります。パイロットもその時点で抵抗しても無駄な事を悟ったのか、今は二人とも艦内の独房で大人しくしているそうです」
「わざわざあんな念入りに無力化してから連れてきたくらいだから二人の事が気掛かりでしょうけど、アナタが目を覚ましたらすぐにミナセ艦長に連絡を入れるよう言われてるの。まずはそちらを優先してくれる?」
「あぁ、勿論だ」
「それと、オウカ。ヨダカも無事に目を覚ましたんだから、アナタも少しシャキッとしなさい」
「は、はい、ユヅキさん」
ユヅキに差し出されたハンカチを使って涙を拭ったオウカは、すぐに軍人らしく佇まいを正した。
最近はオウカも年頃のせいか少しばかりユヅキに対して対抗心のようなものを見せる事もあるが、こういう姿を見る限り何だかんだ二人の信頼関係に揺らぎは無いようだ。
そして激動の時代にある事や軍人という選択肢はさておきオウカが普通の少女と変わらぬ表情を浮かべているのは俺にとっても喜ばしい事である。
それと同じように未だ顔も知らないフルアームド・ヒュッケバインのパイロット達も助けたいという半ば偽善に従った結果それなりに痛い目に遭う羽目になった訳だが後悔はない。
ただそのせいで三人にこんな顔をさせてしまったのだとしたら反省はしなければならないだろう。
「身体の方は問題ないか?」
「はい、今はバイタルチェックも問題ありません。ご迷惑をお掛けしました」
「本当なら無理をするなと言いたい所だが、残念ながら今は君に頼らざる得ない事も多い。早速だが統合本部からの指令を通達する。まず第一に戦時階級としての略式であるが、ヨダカ・アマハを中佐に任ずる」
……どうしてこうなった?
俺の体調を気遣ってかダイテツ艦長自らわざわざ治療室まで足を運んでくれたのだが、その告げられた辞令に俺は唖然としていた。
「どうした、不服そうだな?」
「い、いえ、そんな事は……。ただ不服と言うよりは、自分が昇格となる理由が思い付かないというか」
「何を言っている?サテライトシーカー防衛の為の迅速な対応、並びにそれに伴う君達DTXチームの獅子奮迅の活躍。サテライトシーカーが陥落した場合の戦況への影響を鑑みれば妥当な評価と言えるだろう。事実サテライトシーカーが無事だった事でDCによる複数の地上基地に対するMAPWも防げたと報告を受けているぞ」
それも見越しての行動だったので結果が伴ったのは良かったが、それでも中佐という階級はやはり俺には荷が重い。
かくいう目の前のダイテツ艦長も本人が出世に興味がないからとはいえ未だ中佐であり、つまりはスペースノア級の艦長と同等の責任を負うという事になる。
私情を挟んだ結果今もベッドの上という体たらくを考えれば、俺に指揮官としての器がないのは火を見るよりも明らかだ。
かといって軍人が個人の一存で軍からの辞令を断る事が出来る筈もなく、俺は拝命の意を敬礼にて表した。
「そしてヨダカ中佐以下のDTXチームのメンバーに対しても戦時階級として現階級より一階級の昇格とする。言われずとも理解していると思うが、これは上層部が君達に寄せる期待の表れでもある。以降の作戦でも君達の活躍に期待しているぞ」
俺自身はともかくチームの皆は本当によく頑張ってくれたので異論を挟む余地はない。
しかしこれでチームのメンバーは三人共中尉という事になり、特にリョウトは早々にゲームの階級を超えることになった。
本当ならそれぞれ小隊の隊長を任されてもおかしくない階級なので、そう遠くない未来にチームの再編を迫られる時が来るかもしれない。
「では続いて統合本部からDTXチームに下された命令を通達する。既にヒリュウ改が本艦と共にサテライトシーカーの防衛の任に就いていることは聞いているな?」
「はい」
どうやら俺が気を失っている間に地上からヒリュウ改が増援として駆けつけてくれたらしい。
ヒリュウ改に搭乗するのはゲームと同じくATXチームとオクトパス小隊だ。
ユヅキ達から聞いた話だと天候の関係で南極に到着するのが遅れていたヒリュウ改はATXチームを拾ってラングレー基地に帰還するものの急襲してきたDCの部隊と交戦。。
それを撃退した後に量産型ヒュッケバインMk-Ⅱの部隊に基地の防衛を任せて、テスラ研で新型を受領してから宇宙に上がったという事だった。
そして何を隠そうその新型というのが俺がかねてからカザハラ博士とマリオン博士に開発の協力を要請していた『獣機人』なのである。
アルトアイゼンとヴァイスリッターのコンセプトを受け継ぎつつ特機として再設計した『ヴォルフアイゼン』と『シュヴァンリッター』。
その設計思想には原型機となる二機がアインストによって変貌したアインストヴォルフとライン・ヴァイスリッターも大きく影響している。
アインスト化による有機的構造はダイナミック・ゼネラル・ガーディアンと同様に人工筋肉で再現。
更に特機として大型化した事により重量が増えた分の機動力や推進力を補う為に両機ともテスラ・ドライブを二基搭載している。
それに加えて「あちらの世界」の技術である「EG装甲」やシュヴァンリッターにはアンジュルグの翼状スラスターを採用する等、系統を問わずに様々な特機の技術を盛り込んでいた。
これでもまだ俺の黒歴史に記された完成形には至っていないものの、カザハラ博士とマリオン博士の力もあって俺の想定以上に現時点でも『獣機人』のスペックは破格なものに仕上がっている。
それでもヴァルシオクスといった俺の記憶にない敵戦力の存在や、フルアームド・ヒュッケバインのようなイレギュラーが存在している以上は戦力が増強されるに越した事はないだろう。
「このままDTXチームはヒリュウ改にサテライトシーカー防衛の任を引き継ぎ、1700を以って月に向かって出立。マオ・インダストリーにてスペースノア級零番艦と合流した後、伊豆基地の部隊と合流せよとの事だ」
「零番艦が今も運用されているのですか?」
「おや、君が知らなかったのは意外だな」
シロガネ、ハガネ、そしてクロガネ。
ゲームにはスペースノア級に分類される万能戦闘母艦は三艦登場したが、戦艦は最初に造られた艦の名前を取って級と分類されるのが通例だ。
つまりスペースノアという零番艦がこの世界でも造船されていた訳だが、設定上だけ存在していたゲームと同じく俺もその詳細は把握していなかった。
いずれにせよ戦争が始まってしまった以上は、運用できる戦力を放っておく理由がないのは当然である。
「しかしヒリュウ改も合流したのであれば、今はサテライトシーカーの守りをより強固に保つべきでは?」
確かにスペースノア級と同等の力を持つヒリュウ改に加えて戦力を増したATXチームも合流したとなれば、DTXチームが抜ける穴を埋めるには十分かもしれない。
しかしサテライトシーカーが連邦軍にとって最重要施設である事に変わりはなく、それなら戦力が増強された現状のまま防衛に当たるのが得策に思えた。
「先の戦闘が収まったタイミングで此処だけでなく各地の敵軍が完全な撤収の動きを見せているようだ。急襲に晒されながらも各基地は陥落する事なく良く持ちこたえており、敵軍の残存戦力が消耗している事は間違いない。これを好機として特記すべき戦力を一点に集結し、一気にアイドネウス島を落とすというのがレイカーの考案した作戦だ。それにやむを得なかったとはいえ君達の本来の所属は極東支部で、レイカーも君達の力を頼りにしているのだろう」
南極でシロガネが撃沈される事なく、サテライトシーカーも未だ連邦軍の手にある事でゲームとは戦況そのものも大きく変化していた。
DCの侵攻に対して防戦に回らざるを得ないとはいえ、戦果だけを見れば基本的に連邦軍側が優勢。
その状況であれば敵の本陣も明らかな以上、確かに攻勢に打って出ない道理はない。
そして俺がビアンの真意を最初から知っているように、ビアンもまたその事を把握している。
それを前提として今の時点で見えているピースを組み合わせる事で朧気ながらも見えてくる真実と矛盾。
俺の中に渦巻く疑念を解消する為には、どんな形であれ再びビアンと正面から対峙する事は避けられないように思えた。
「了解しました。準備を完了した後にDTXチームは月へと向かいます」
「うむ、任せたぞ」
「それと自分が鹵獲した機体に関してなのですが」
「『ブラックホール・エンジン』が搭載されているという話は既に報告を受けている。だとすれば君とマオ・インダストリーに任せた方が良いだろう。それに捕虜の扱いも君に一任しよう」
「ありがとうございます」
出立まで時間はあまり残されていない。
俺は月へと移動する為に用意されたレイディバードに各機の搬入を指示しつつ、遂にフルアームド・ヒュッケバインのパイロット達と対面する事になるのだった。
俺の顔を見たフルアームド・ヒュッケバインのパイロット達の反応は対照的であった。
恐らく俺と同じ年齢くらいの男は敵意を露わに、もう一人のまだ十代半ばくらいの少女は明らかに怯えた表情を見せる。
勿論初対面の相手であったが名乗る前からこの反応な辺り、俺の事をヨダカ・アマハとして認識している事自体は間違いないらしい。
一方の俺も確かに初対面の相手であるものの、二人の姿を見て大きな衝撃を受けていた。
(こういう事もありえるのか)
俺が知るスーパーロボット大戦OGの世界には登場しないながらも、俺はこの二人の事を他のゲームで知っている。
エッジ・セインクラウスとアズ・セインクラウス。
二人はOGとは異なるシリーズのスーパーロボット大戦30の主人公であり、確か同じ施設出身である義理の兄妹だった筈だ。
俺という存在を考えてもこの世界とゲームに異なる点があってもおかしくないが、果たして二人は元々この世界の住民なのか、それとも平行世界からの転移者なのか?
あのフルアームド・ヒュッケバインが仕様に引っ掛かりを覚えた通り本当はヒュッケバイン30thだったと仮定すると後者の可能性も捨てきれない。
本当なら詳しく事情を確認したい所だが相手に敵意を持たれている上に、時間もあまり残されていなかった。
「君達が俺に恨みを抱いているのは承知しているし本当はその誤解をすぐに解きたい所だが、生憎その手段を俺は持っていない。だから取り合えず君達の名前を教えてくれないか?」
「……エッジ」
「……アズです」
「エッジとアズか」
少し不誠実かもしれないがエッジもアズもこの世界では初対面である事に変わりはないので、更に余計な誤解を生まぬよう俺は完全に二人の事を知らないように装う。
「それじゃあエッジとアズ。気は進まないだろうが俺の質問に答えられる範囲で良いから答えてくれ。まずはアギラ・セメトという名に聞き覚えは?」
「白々しい!!お前があの糞婆にアズの事を売ったんだろ!?」
「……そういう事になってるのか。では次の質問だ。今も君達はアギラの下にいるのか?」
「さっきから他人事みたいにふざけやがって!折角アイツが逮捕された隙に俺達もあの実験場から逃げおおせたのに、お前が脱獄の手引きをしたせいで実験動物のように扱われる日々に逆戻りだ!!」
取り合えず今の会話で凡そだがエッジとアズの背景にあるものは理解できた。
恐らくスクールが設立する以前から二人はアギラに実験体として扱われてきた被害者であり、エッジの言葉通りアギラが逮捕されたのを機に逃げ出す事に成功したのだろう。
その実験場がアギラの古巣である特脳研なのかどうかは後で調べ上げるとして、その経歴はA機関で被検体となっていた30の物語とも何処となく似通っていた。
ただし決定的に異なるのは再びアギラに捕まってしまった事で、更にその要因として俺という異物が二人に刷り込まれてしまっている。
この様子だとやはり認識を正すのが一筋縄ではいかない事が予想される中で、少しでも活路を見出す点があるとすれば……。
「つまり今もアギラの命令で動いている訳だな?だけどおかしくないか?今の話を聞いた限りじゃ俺とアギラは協力関係にある筈だ。君達自身の意思は兎も角アギラが俺を狙う理由は無いように思うんだが?」
「っ、それは!?」
取り合えず当てずっぽうに感じた矛盾を指摘しただけとはいえ、二人の反応を見るにその点に関して明確な答えを持ち合わせていないようだ。
リマコンに関して詳しい知識がない俺の目から見ても些かお粗末に思える設定の漏れだが、俺にとっては確かな光明であった。
「これだけで俺の言う事を信じろなんて言うつもりはない。ただ俺の事と同じようにアギラの事を憎んでるなら、こうして連邦軍の捕虜になったのは却って距離を置くことが出来たって考えられないか?」
「いくら何でもそれはアナタに都合が良すぎる解釈だと思う」
「かもな。だがどちらにしたって今の君達の立場が変わる訳じゃない。そしてこの状況で俺が君達に示せる道は二つ。一つ目は捕虜としてこの場に留まること。この艦の価値を考えれば戦争がどちらに転んでも、何も出来ないまま艦と運命を共にするって可能性は低いと思う」
「……もう一つは?」
「俺はこれから地球に降りる事になってるんだが、それに同行するかどうか。暫くは捕虜の待遇である事に変わりはないけど、地球に降りた後なら俺が後継人という形になるが自由を約束する」
「別にアナタの事を信用した訳じゃないけど、どうして私達の為にそこまでしてくれるの?」
「ただの偽善と同情だ」
「随分はっきり言うんだな」
「一応俺もアギラがどんな人間か知っている。アレと同列にされるのは心外といえば心外だが、だからこそ例え間違った認識であっても関係者と思しき俺の事を君達が憎む理由は理解できるつもりだ。でも悪いが君達が本当に納得できるかどうか最後まで待ってる時間はないんだ。一時間後に返事を聞きに来るから答えを聞かせてくれ」
いくら現実にそぐわない矛盾を突かれたとしても、そう簡単に人の感情が変えられる訳ではない。
俺が言葉を尽くせるのは精々これくらいで、後はエッジとアズ自身に選択して貰う他ないだろう。
そして俺も新たな任務に備え準備を急ぐのだった。