転生者の黒歴史による魔改造と四龍の超機人 作:バーニングミニラ
感想はネタバレ防止の為に返信もせずに申し訳ありませんが
非常に励みになっております。
今までの流れからしてマオ・インダストリーに到着するや否や戦闘が始まる可能性も視野に入れていたものの、それも杞憂に終わり俺達はすんなりマオ・インダストリーのドックへと招き入れられた。
そこでまず目に飛び込んできたのは報告通りマオ・インダストリーで待機していた零番艦であるスペースノア。
同型艦だけあって全体的なフォルムはシロガネと大きく変わらず、艦首はハガネの『トロニウム・バスターキャノン』と同じく超大型の砲口となっていた。
俺もまだ詳しい仕様の説明は受けていないものの原型機の改修である為か、パッと見では他のスペースノア級と違って艦首モジュールの換装機能は備わっていないように見える。
ただそれ以上に俺の目を引いたのはスペースノア全体の基本となる艦の色だ。
青を主体として所々に金色の意匠が見られるカラーリングはエッジとアズとの出会いもあって、否応にも30に登場した万能戦闘母艦ドライストレイガーを彷彿させる。
そしてその印象に紐づけられた俺の予感は見事に的中する事になった。
「若輩者ではありますがスペースノア改め『ヒヒイロカネ』の艦長を拝命しましたミツバ・グレイヴァレー中佐です。噂に名高いDTXチームの皆さんと作戦を共に出来る事を光栄に思います」
そう言って俺達に向かって敬礼するミツバに倣うようにヒヒイロカネのクルーが続く。
ミツバの隣には副官のレイノルド・ハーディンが控え、クルーの中にはリアン・アンバードやジークン・リューの姿も見られた。
他にも何人か知った顔があるが、ミツバを始めとして別に俺が彼らと以前から顔見知りだった訳ではない。
その誰もが30に登場したドライストレイガーのクルーであり、エッジとアズだけでなく他にも30の登場人物達がこの世界にも存在したという事だ。
元々OGはそういう世界観であったとはいえ、やはり俺が知るゲームの知識とは違う点が随分と散見される。
そして懸念すべきはOGの登場人物は大体が敵勢力もセットとなっており、今回の件で言えばクエスターズや神文明エーオスが存在する可能性も高まった事。
これは俺にとって今まで起きた事を遥かに超える想定外の事態であり、今は目の前の戦争に集中しなければと精神的に自制しながらも何か胃がグッと重くなったように感じられた。
「早速だが作業の進捗状況を確認させて貰えるか?」
「はい。既にマオ・インダストリーより受領した試験PTは搬入が完了。その他にPT改修用のパーツや予備部品なども1:00内にて積み込みが終了する予定です」
「分かった。その作業が完了次第、俺達も機体の搬入に取り掛かろう」
「よろしくお願いします」
「その間に俺はマオ社長に挨拶を済ませてくる。先に他のメンバーへ艦内の案内を出して貰っていいか?」
「了解です。それと捕虜の二人は伊豆基地に送還すると聞いてますが、独房に入れておけば良いでしょうか?」
そう尋ねてきたミツバの視線の先には手枷を嵌めたエッジとアズが佇んでいた。
まだ完全に俺への不信感が拭えた訳ではないだろうが、二人の反応から察するに確たる実態が掴めない俺よりはアギラに対する嫌悪感が勝ったのだろう。
何より二人と同じアギラの被害者であるオウカが話に同席しつつ緩衝役になってくれたのも大きい。
エッジとアズが俺達に同行するのを決めたのも、伊豆基地に二人の関係と同じようなオウカの弟妹がいると話を聞いた事が決め手になったようだった。
「……この二人が捕虜である事は間違いないが、少し事情が込み入っててな。好き勝手を許す訳じゃないけど、せめて身体はしっかりと休ませてやりたいんだ。もし部屋が余ってるなら軟禁程度の扱いで済ませる事は可能だろうか?勿論責任は俺が取るし、空きが無いようなら俺の部屋を使って構わないからさ」
「待ってください!捕虜に対する規定はしっかり決まっています。そんな勝手が許される筈がっ」
「いえ、副長。ここはヨダカ中佐の言葉に従いましょう」
「しかし艦長、それでは軍の規律が……」
「女の子の年齢を考えればヨダカ中佐の言うように何か訳ありなのは明らかです。それにこれは私の私見に過ぎませんが、この二人はそこまで危険視する必要がないように感じられます」
「艦長がそこまで仰るなら」
普通に考えればレイノルドの主張の方が至極真っ当だが、どうやらこの世界でもミツバに甘いのは変わらないらしい。
それにしてもミツバが初対面ながらエッジとアズを半ば無条件で信用した理由、それも虚憶による影響なのだろうか?
再有生つまりは同一人物として生まれ変わった人間が稀に有する前世の記憶。
虚憶に関しては俺もギリアム少佐と何度か検証した事があるが、はっきりした答えはまだ出せていなかった。
「それじゃあ悪いが俺は少し席を外す。戻るまではミツバ艦長の指示に従っていてくれ」
そして俺はチームの皆をミツバに預けリン社長に挨拶に向かうのだった。
「まさか異星人と戦う為に開発していた兵器を人類同士の戦いで使う事になるとはな」
物憂げにリン社長はそう漏らすと、溜め息混じりに煙草の煙を噴き出す。
「いや、すまない。君にこんな愚痴を言っても仕方ないな」
「いえ、俺も同じ思いですから」
リン社長の嘆きに共感しつつも、既に戦端が開かれてしまった以上は戦力の補強は必要不可欠だ。
俺はリン社長から手渡されたデバイスに表示された補給物資の中身に目を通す。
「しかし結果的にEXのロールアウトが早まったのは幸いだったのかもしれませんね」
「我が社の開発部長が酷く君に触発された甲斐もあったというものだ。新たな力を得た009も含めて「EX-H PROJECT」を担う凶鳥達の性能は社長である私が保証しよう」
マオ・インダストリーの開発部長であるカーク・ハミル博士はこの世界でも初代ゲシュペンストを筆頭としたパーソナルトルーパーの生みの親だった。
少し人間性がドライ過ぎる面があるものの、技術者として俺もカーク博士の事を尊敬している。
半分インチキ臭い俺がカーク博士から意識されているのは大変恐縮だが、結果として良い刺激になっているならば素直に喜ぶべきなのだろう。
そしてEX-H PROJECTの下、カーク博士が新たに開発したEX(エクストラ)ヒュッケバイン──略して『エクスバイン』。
ある理由から009の改造ではなく新造された点と動力源が『Dエクストラクター』となってる以外は基本的にゲームやアニメとほぼ同一の機体であり、ヒュッケバインMk-ⅡとMk-Ⅲを繫ぐ機体として換装用の装備であるAMパーツのフィッティング調整を目的として開発されている。
その一方で同時に開発されたAMパーツに関しては随分と様変わりする事になった。
『AMバスター』
俺の黒歴史においてベルゼルート・ブリガンディの『バスター・アーマー』を参考にしたオリジナルAMパーツであり、変形機構によってボクサーの格闘能力とガンナーの射撃能力を両立している。
端的に言えばボクサーの『Gソード・ダイバー』における変形をガンナーの『フルインパクト・キャノン』に置き換えたといった感じだ。
ボクサー形態と言える装甲状態でも『バスター・アーマー』のように火器や機動力を補強しており、総合力で言えば完全にボクサーとガンナーを凌駕していた。
俺がこのAMバスターの原案をカーク博士に提出した所、マオ社のスタッフ達は見事にこれを再現。
エクスバインの出力では全ての武装を使うことは出来ないが、いずれヒュッケバインMk-Ⅲが完成すれば完全な性能を遺憾なく発揮してくれる筈だ。
尤も他に問題点が全く無い訳ではなく火器管制が複雑化してしまった為に、現状ではAMバスター側にもパイロットを要する二人乗りが前提となってしまっている点も挙げられる。
AMガンナーと同じようにAMバスター単体でも操縦が可能とはいえ、そこはいずれ改善すべきポイントかもしれない。
このように新たにエクスバインが生み出された傍ら、ゲームとは異なりヒュッケバイン009が素体として使われなかった理由。
それは俺が新たな動力源となる新型エンジンのテスト用機体としてマオ社から託されていた為であった。
新たな機体名としてEX-H PROJECTも因んでエクスバインのIFの姿とも言える『ヒュッケバインEX』の名を俺は拝借している。
OGではなくαに登場したヒュッケバインEXはタイプ008Rによるブラックホールエンジンの事故を受けて008Lを改修したという設定だったが、その事故が起きなかった為に白羽の矢を立てたのがブラックホールエンジンを搭載していない009という訳だ。
一応はリスペクトも込めて機体の色はゲームに登場したヒュッケバインEXと赤色に塗装し直しているものの、その動力は大きく様変わりしている。
試作型『量子波動エンジン』。
『量子波動エンジン』は言わずと知れたアストラナガンを始めとするバルマーが機動兵器に採用しているエンジンで、ブラックホールエンジン以上の出力と安定性を有していた。
表向きはメギロートのブラックボックスの解析に成功して開発に漕ぎ着けた事になっている。
ただしあまりに完成度が高ければ余計な疑いが掛けられかねないと、現時点でエンジンの出力は敢えて抑える形で設計しておりヒュッケバインEXも『Dエクストラクター』を補助動力として搭載したままだ。
それでも俺が『量子波動エンジン』の開発を推し進めた理由は俺が思い描くヒュッケバインの完成形に繋がる空間跳躍の力を得る為であった。
ゼ・バルマリィ帝国が行う空間転移は『量子波動エンジン』に準ずる技術が用いられており、空間跳躍の種類は量子テレポート。
『次元コンバーター』といった所謂ワームホール式の空間転移と比べると、より少ない予備動作での転移が可能となっている。
それだけ聞けば量子テレポートの方が優れていると感じるかもしれないが、ワームホールは空間単位での転移が可能だったり他にも色々と応用が利くなど能力の差は一長一短と言えるだろう。
ヒュッケバインEXはこの量子テレポートの実証を主な目的としているので、武装そのものはヒュッケバインから多少発展させた程度に留まっている。
それでも「テスラ・ドライブ」を標準搭載している他、空間跳躍を利用したゲームの設定通りの挙動を可能とする「リープ・スラッシャー」等パワーアップしている事は間違いない。
恐らくこのまま行けばカーク博士は本来のヒュッケバインの系譜から大きく逸れることなく開発を続け、俺はこのヒュッケバインEXを基点に新たな系譜を繋げていく事になる。
それに凶鳥の眷属に連なる機体は既に他にも……。
「それと君が新たに立ち上げたプロジェクト『DFR計画』の試作機となる1号機と2号機も既に組み立てそのものは完了している。しかしまだ実働テストは全く行われていない状態だが、本当にヒヒイロカネに積み込んで良かったんだな?」
「はい。流石にすぐさま実戦に投入するような真似はしませんが、機体の慣らしはこちらで引き受けます」
Dimensionale Fluegel Reiter計画──略してDFR計画。
その全容は四龍の超機人を解析し、その力を現代技術に転用して軍事利用する事を目的としている。
曲がりなりにも俺に対する評価の大半はあくまで技術士官としてのものであり、それが古代中国人の遺産である超機人の力に頼って無双感を出しているだけでは面目が立たない。
時系列が前後するものの『リファイン・スフィア』に関しては既に『Dエクストラクター』という形で不完全ながらも再現が可能となっている中で、次に俺が取り組んだのは『次元転炉』を実用化する事だった。
そして誕生したのが『次元コンバーター』を動力源として持つ『プロトフォーゲル』。
プロトフォーゲルは四龍の超機人と同様に空間転移能力と『ラプラスウォール』に『イマジナリィロード』の機能を有しており、それぞれ1号機は近接戦、2号機は射撃戦を想定した仕様となっている。
また1号機は従来のTC-OSではなくダイレクト・フィードバック・システムをマシンインターフェースとして採用し、より直感的な操縦を可能としていた。
それも踏まえてメインフレームはより人体に近い動きを可能とするHフレームとなっており、外装も量産型ヒュッケバインMk-Ⅱに似ている事から凶鳥の流れを汲む機体とも言えるだろう。
このプロトフォーゲルに加えて現在オウカが搭乗しているアシュグリフィンと事前に事故を防いだ事で俺の預かりとなったビルトラプターの改修機にも『次元コンバーター』を搭載する事が決定している。
この並びから察せられるように特に何かが決まっている訳ではないが、俺の中でプロトフォーゲルはあの二人がパイロットを務める事を前提に開発を行っていた。
勿論そんな未来が訪れないように俺も気を遣っているものの、俺が考えていたよりも遥かに世界を取り巻く流れを変える事が困難である事を最近は痛感させられてばかりだ。
それに加えて予想外の敵が現れる可能性も出てきた今となっては、常に最悪のケースを想定しておく必要性を改めてを強く感じていた。
「この4機の他に『ビルトシュバイン改』と『トロニウム・エンジン』の調整を終えた『R-GUN』も伊豆基地に送り込む手筈になっている。地球に降りた後のことは頼んだぞ」
勿論俺がマオ社で開発しているPT全てに関わっている訳ではない。
ゲシュペンストとヒュッケバインの間を繋ぐ試作機であるビルトシュバインに『テスラ・ドライブ』を搭載するなど改良を施したビルトシュバイン改に、SRX計画におけるRW計画の一つとして開発されたR-GUNは特に俺も関与していなかった。
とはいえビルトシュバイン改だけでなくR-GUNにも『テスラ・ドライブ』が標準搭載されるなど俺が完全に無関係という訳でなく、ゲームと比べてR-GUNのロールアウトが早まったのも多少なり俺が影響しているのかもしれない。
「了解しました。それと俺が会敵したヒュッケバインですが……」
「特に社内でヒュッケバインのデータが流出した痕跡は見られなかった。しかしMk-Ⅱが既に量産化している以上は何かしらの形でヒュッケバインの再現を試みようとする輩が現れてもおかしくないだろう。尤も君が懸念する通り『ブラックホール・エンジン』もとなると看過は出来ないがな」
少しだけだがエッジとアズから聞けた話によると、ただ用意された機体に乗っただけでヒュッケバインに関しくて詳しい話は聞かされていないようだ。
しかしヒュッケバイン本体だけなら兎も角その発展形である30thに酷似した武装を持つ機体が狙いすましたようにエッジとアズに与えられていたという事実。
それは実験室のフラスコに例えられる世界の流れとは別に、何か人の意思のようなものが関与しているように感じてならない。
(もしかして他にも俺と同じような転生者が他にも存在するのか?)
だが今回の件のように時折その存在を匂わせる事はあっても、俺はその存在の影すら全く掴めていない。
今更後悔しても仕方ないとはいえ、もしそれが本当なら俺と比べて相手はずっと虎視眈々と計画を進める用意周到な性格のようだ。
それに曲がりなりにも俺がゲームにおける主人公側に立って行動しているのに対し、もう一人の転生者の行動には何処か悪意が見え隠れする。
転生者としてこの世界に生まれた意味を、否応に俺は意識せざるを得なくなっていた。